2234 認知症患者と共生する社会(3)

世界の認知症患者は、2019年の5700
万人が、50年には1億5300万人と
約3倍に増えるという。人口の増加と高齢化
が主な原因です。

国内の認知症患者は、2025年には700
万人を超え、65歳以上の5人に1人
認知症になるという。

政府は、認知症の有無にかかわらず、
誰もが幸せに暮らせる町づくりを標榜し、
支援整備を進めている。
認知症者への接し方を具体的に示した手引書
を、小売編や金融編など業種別に発行し、
留意しなければならない点を、具体的に解説
している。
手引書では「驚かせない、急がせない、
自尊心を傷つけない」と、当事者への気遣い
に言及している。

しかし、社会全体でサポートする仕組みは
未整備のまま・・患者と家族が求めるのは、
ちょっとした日常の支援。
例えば、道路やトイレの案内板も、少しの
工夫があれば、随分暮らしやすくなります。

売り場で商品を食べてしまう。レジでお金の
支払いが出来ない。自宅への帰り道が分から
ない・・食品スーパーでは最近そのような
お客が増えているという。

認知症は誰もがなりうる。来店いただくお客
様の中にも、認知症の人が相当数いるので

「ゆっくり対応する」「小銭を一緒に数える」
といったことから実践していきます。

2233 認知症患者と共生する社会(2)

「お金を盗まれた」「物がなくなった」
一緒に暮らす高齢の母が、頻繁に言うように
なった。このような時、家族はどう対応すれ
ばよいのか?
「物を盗んだ」との訴えに、家族は「誰も盗
んでいない」と強く否定し、繰り返し説明し
て納得させようとしますが、それでは何も
解決しません・・
状況を更に悪化させるだけ。

否定も肯定もせず『それは心配だね』と気持
ちに寄り添い、背景にある不安を取り除いて
安心させるようにします。

例えば「無くなった」と訴えていた物を
家族が見つけた時、「あるじゃないの」と
強く非難するのではなく・・

本人の気持ちに寄り添い、さりげなく目に
入る所に置いて、本人が自然に見つけられる
ようにするのが望ましい・・
本人の不安解消につながるのです。

家族の間できつい言葉が飛び交ってギスギス
してしまうのは悲しい。
「あるじゃないの」と、本人の心情への配慮
を欠いた言動は、そうせざるを得ない場合を
除いて、避けるようにします。

何かを探し続けたり、同じことを何度も聞い
たりするのは、自分で何とかしようと頑張っ
ている証拠です。

認知症の症状によって起きていることと分か
っていても、毎日向き合う家族は、思い悩ん
でしまうのです。
認知症の家族は、本人に「間違っている」と
言い聞かせようとせず、本人の生活環境に
配慮するようにします。

ずっと家で一緒にいる状況を変える選択肢も
あります。
「デイサービス」などの介護施設に任せる
ことで、家族がケアから距離を置く時間が
持てるようになり、心にゆとりが生まれます

家では家族に失敗を咎められ、緊張し、
肩身の狭い思いをする日々。
ディーサービスで入居者と親しくなり、
リクリエーションで気分転換すれば、失敗し
ても怒られることもなく、楽しく過ごせます。

「不安なこと」への意識は小さくなり、
落ち着きを取り戻し、表情も穏やかになり
ます。
   
         読売新聞「安心の設計」

2232 認知症患者と共生する社会

「お金を盗まれた」「物がなくなった」と、
一緒に暮らす高齢の母が頻繁に言うように
なった・・どうしたらいいか
わからない。
認知症の症状が出たとき多くの家族が戸惑う
のです。
80代の母が最近、部屋の中でずっと何かを
探している。大切な現金や通帳を失くさない
ように、引き出しの奥にしまい込んで・・
しまい込んだ場所を忘れてしまったようです。
 

嫁に「お前が隠したんだろう」と突っかかる。
誰も物を取ったり、隠したりしていないのに
認知症状で「盗まれた、嫁が取った」と思い
込んでいるのです。

お昼ご飯を済ませて1時間もしないのに、
「ご飯はまだ」と台所をうろつく・・

認知症になると、新しいことを記憶するのが
難しくなる。引き出せる記憶がなければ、
少し前に起きた出来事でも、その人にとって
は「無かったこと」になる。

ここにあったはずの財布や車の鍵が、
突然目の前から消えたら、誰でもあわてます。
探し続ける物は、その人にとって大切で愛着
のある物が多いのです。

しかし「忘れてしまった」ことを自覚するの
は難しいのです。自分にとって大切な物が
無くなることが重なると、身近にいる家族を
疑ったり、怒ったりするのです。