2233 認知症患者と共生する社会(2)

「お金を盗まれた」「物がなくなった」
一緒に暮らす高齢の母が、頻繁に言うように
なった。このような時、家族はどう対応すれ
ばよいのか?
「物を盗んだ」との訴えに、家族は「誰も盗
んでいない」と強く否定し、繰り返し説明し
て納得させようとしますが、それでは何も
解決しません・・
状況を更に悪化させるだけ。

否定も肯定もせず『それは心配だね』と気持
ちに寄り添い、背景にある不安を取り除いて
安心させるようにします。

例えば「無くなった」と訴えていた物を
家族が見つけた時、「あるじゃないの」と
強く非難するのではなく・・

本人の気持ちに寄り添い、さりげなく目に
入る所に置いて、本人が自然に見つけられる
ようにするのが望ましい・・
本人の不安解消につながるのです。

家族の間できつい言葉が飛び交ってギスギス
してしまうのは悲しい。
「あるじゃないの」と、本人の心情への配慮
を欠いた言動は、そうせざるを得ない場合を
除いて、避けるようにします。

何かを探し続けたり、同じことを何度も聞い
たりするのは、自分で何とかしようと頑張っ
ている証拠です。

認知症の症状によって起きていることと分か
っていても、毎日向き合う家族は、思い悩ん
でしまうのです。
認知症の家族は、本人に「間違っている」と
言い聞かせようとせず、本人の生活環境に
配慮するようにします。

ずっと家で一緒にいる状況を変える選択肢も
あります。
「デイサービス」などの介護施設に任せる
ことで、家族がケアから距離を置く時間が
持てるようになり、心にゆとりが生まれます

家では家族に失敗を咎められ、緊張し、
肩身の狭い思いをする日々。
ディーサービスで入居者と親しくなり、
リクリエーションで気分転換すれば、失敗し
ても怒られることもなく、楽しく過ごせます。

「不安なこと」への意識は小さくなり、
落ち着きを取り戻し、表情も穏やかになり
ます。
   
         読売新聞「安心の設計」