2245 認知症と向き合う

認知症という病は、人間らしさの一部とみな
されるものが、一つひとつ失われていくのを
目にしたとき、初めて知ることになる。

日頃それを当たり前に思っている間は気づく
ことはない。
例えば会話・・相手の言葉を受けて答えたり
質問したりするには、直前に語られた内容を
ごく短い間、覚えている必要がある。

この”短期記憶”をなくすと、言葉のやりとり
ができず、同じ会話を繰り返すようになる。
また”時間と空間の認知”は、あらゆる行動の
基本です。この能力が壊れると、居場所を探
してさまようことになる。

認知症の前段階「軽度認知障害」を発症した
ころ、「まるで暗い洞窟の中へ入って行くよ
うな気持ちになった」という。

ついこの間まで当たり前にやっていたことが
出来なくなる・・今がいつで、ここがどこか?
わからなくなる不安と孤独は、患った本人に
しか分からない・・
幼い少女のようにおびえている。

6年後の2030年には、65歳以上の7人
に1人が認知症になるという。
老いとともに誰もがなりうる病・・私たちは
その病に苦しむ人たちのことを、どれほど
理解しているだろうか・・

日経新聞「春秋」