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ことば遊び



2011年09月06日

西欧人の名前の由来

■一字の苗字
 
韓国にはぺ・ヨンジュンとか、イ・ビョンホンなど、一字性がほとんど。
そこで電話帳を繰って、 金沢市にどれだけ一字の苗字があるか、
探してみた…そうしたらあった!
 
[まず、屋号から…]
あいうえお順に繰っていったら、のっけから「(あ) 」という一字の
お店が三軒も出てきた…鍵屋さん、ペットホテル、 そしてラウンジ。
ちなみに、「 (えー)」という婦人服店も一軒あった。
 
繰っていったら、「」という名で、スナック、喫茶、美容院の3軒、
」と「リー」いずれも、 スナックが1軒づつ…期待したほど件数は
なかった。
 
[次に、個人名を繰ったら…]
能(のう)さんとか、高(こう)さんではなく、 単純一字の苗字を探した。
(い)さん、(さ) さん、(ち)さんが一名、(り) さんが二名、
(せ)さんと、(た)さんが、それぞれ3名載っていた。
 
 
896  【吉村外喜雄のなんだかんだ】
~ことば遊び~ 「西欧人の名前の由来」
 
アラブ人には苗字がない。日本人も欧州人も、昔は貴族を除いて”苗字”がなかった。 庶民の間に苗字が広まったのは、12~13世紀にかけて。
ロシアでは15世紀、スエーデンやノルウェーに至っては、 19世紀になってからである。
 
貴族や領主たちは、国王や高貴な聖職者から下された、 偉そうな苗字を使っていた。
日本でも、臣下が領主の名前の一字を頂いて忠義を誓う…
といったことがよ行われた
 
羽柴筑前守秀吉の場合…浅井攻めの軍功で、 北近江十二万石の城持ち大名り立てられた。
出過ぎたクイは打たれる…古参の家臣の妬みを恐れた秀吉は、田勝家、丹羽長からそれぞれ一字をいただいて、 我が苗字とした。
 
洋の東西を問わず、庶民が名字を考える時は、偉そうな名前を真似たりすると、 にらまれるので、 自らの身分・職業にふさわしい名前を用いた。
 
白髪が特徴の人はホワイトさん、赤毛の人はリード(レッドの古語)など、 自らの身体の特徴を名前にして、人に呼ばせた。
十九世紀のアメリカの詩人ロング・フェロー(ヘンリー)は、
「のっぽ」という意味…彼の先祖は、 背が高かったのだろう。
ブラウン(色黒の顔をした人)のように、あだ名に由来する姓も よく見られる。
 
14世紀初頭…庶民の多くは、100名からなる共同体の中で生活していた。 ウイリアムさんが20人、ジョンさんが15人、ロベルトが10人、リチャードが10人と、 同じ名前の人が多かった。
一人ひとり区別するために、あだ名を付けて呼び合ったのです。
 
職業を名前にしたケースでは、スミス(鍛冶屋)、ミラー(粉屋)などがある… 39代大統領カーターは「大工」である。
暗殺されたケネディの後、大統領に昇格したジョンソンは、
「ジョンの息子」という意味になり、 父親の名前に由来した姓も多く見られる。
 
地名・住まいの方角などに由来する名前では、
ヒルトン(hill+ton/丘の囲い地の住人)がそう。
ブッシュ前大統領は、先祖が大きな藪の近くに住んでいたのだろう…
ヒル(岡)やウエルズ(泉)…日本同様、 住んだ土地から付けた名前が多い。
歴代大統領で庶民的な名前が多いのは、 民主主義国アメリカだからだろう
 
西欧では、聖書に由来した名前が多い…聖母「マリア」、「マイケル(天使の一人)」、 「ジョナサン(ダブィデの友人の名)」 「ディブィッド (イスラエルの王様の名)」などがある。
使徒パウロは英語で「ポール」、天使ミカエルは英語で「ミッチェル」「マイケル」になる。

2011年07月26日

折 句

■ことば遊び 「ん回し」
上方落語に「田楽喰い」という噺がある。
 
『皆で田楽を食うことになった…
「田楽はそう…味噌をつけたとか…なんとか言うさかいな、
  ええ…げんを祝うて運がつくように…”ん” まわし…”ん”を一つ
  言うたら…皆一本取って食べるのや」 ということで噺が始まる。
 
「れこん」 「にじん」  「だいこ」 「なんき」 
「みか」 「き」 こちゃ好か
「ぼさん」 ぼのくぼに てかふ…  
「て天満の天神さん」と、 だんだん長いものになっていく…』
 
現代なら…「アンパンマン」「新幹線」で、田楽が食べられます。
私は、幼稚園へ孫を迎えに行った折りに、「ん回し」を楽しんでいる…
                 
                        小林祥次郎「日本のことば遊び」
                       
 
884 【吉村外喜雄のなんだかんだ】 
~ことば遊び~ 「折 句」
 
「蛙(かわず)飛ぶ 池はふかみの 折句なり」と」いう古川柳
がある。
芭蕉の「古池や 蛙飛び込む 水の音」は、 句の頭を拾って
読むと「フカミ(深み)」になる。
芭蕉が、折り句を意識して詠んだかどうかは定かでないが、
古池の句に”深み”が折り込まれている。
 
広く知られた折句の歌は、伊勢物語に、”在原業平”が
「かきつばた」の五文字を頭に、折り込んだ歌が知られる。
ら衣 つつなれにし ま (妻)しあれば るばる来ぬる 
  び(旅)をしぞ思う」
 
”業平”の折句は「古今集」にもあり、 「倉山 峰立ちならし 鳴く鹿の 経にけむ秋を 知る人ぞなき」 と、「をみなえし」を
折句にしている。
となく ものぞ悲しき 秋風の 身にしむ夜半の 旅の寝覚めは」 は、「南無阿弥陀」を折句にした、 平安時代の旅の歌です。
同じく平安中期に詠まれた、 「こそ 心を測る 心なれ の敵は 心なりけり」 は、”心”を折句にしていて、現代の”教訓”にもなっている。      
その他”教訓” を折句にしたものでは…
せば為る 為さねば為らぬ何ごとも 為らぬは人の さぬなりけり」 …山本五十六が詠んだことで知られている。
 
いまと 今というまに 今ぞ無く 今というまに 今ぞ過ぎゆく」
りを 言わぬ人こそ いさぎよし 偽り多き いやな世の中」
語読みの 論語知らずは 論もあれ 論語読まずの 論語知らずは」
季節を詠んだ歌では…
春… 「咲く 桜の山の 桜 咲あり 散るあり」
夏… 「そがれに なびく雲の ちいつつ なばたつめや 
     れを待つらん」 は、「た・な・ば・た・ま・つ・り」の七首を
         に折りこんで、 最初に”た”を詠んだ歌です。
 
    「瓜売りが 瓜売りに来て 売り残し 瓜売り歩く 
        瓜売りの
      は、 じりじり照りつける夏の風景が浮かんでくる。
 
秋… 「月づきに 月見る月は多けれど 月見る月は 
        この月の
最後に、「南無釈迦じゃ 娑婆じゃ地獄じゃじゃじゃ
               どうじゃこうじゃと 言うが愚かじゃ
                                                             じゃ、バイバイ・・
                               小林祥次郎 「日本のことば遊び」

2011年06月28日

米国・州名の由来

■字謎あそび
 
言葉遊びに「字謎あそび というのがある。
江戸時代、庶民の間でトンチを効かせた” 字謎”がもてはやされた。
 
香林坊・東急109の道路向かいに”菊一”というおでん屋がある。
その店の欄間に飾られている色紙に、次のような文章が書かれている。
「春夏冬二升五合」
このまま読んでも意味不明トンチを効かせて読みます。
 
「春夏冬」…秋が抜けている…「秋ない」、すなわち「商い」と読む。
「二升」は、「升+升」ですから…「ますます」と読む。
「五合」は、一升の半分ですから「半升」、すなわち「繁盛」と読む。
これらを合わせると、「商いますます繁盛」となる。
 
「一斗二升五合」 という色紙も並べられている
一斗は五升の倍なので「五升倍」…すなわち「ご商売」 と読む。
「ご商売ますます繁盛」となる。
 
 
876  【吉村外喜雄のなんだかんだ】
~ことば遊び~ 「米国・州名の由来」
 
アメリカ51州、州名の由来をたどっていくと、その土地の先住民、 インディアンの言葉に絡んだものが多いのに驚く。
 
アラバマ  … 北米インディアン・クリーク族の部族名。
                     「茂みを開く」の意味
アリゾナ  … 北米インディアン・パパゴ族の言葉「小さな泉」
アイオワ … 北米インディアン・ダコタ族の言葉「眠い人」
アイダホ … 北米インディアン・ ショショーニ族の部族名
アーカンソー … 北米インディアン・クオーポー族の言葉
                          「下流の人たち」
イリノイ   … 北米インディアン・ アルゴンキン族の言葉「人」
オクラホマ … 北米インディアン・チョクトー語「赤い人々」
オハイオ … 北米インディアン・イロコイ語「きれいな川」
オレゴン … 北米インディアン・ アルゴンキン族の言葉
                    「カンバの樹皮製の皿」
カンザス … 北米インディアンの部族名
 
ケンタッキー … 北米インディアン・イロコイ語「平原」
コネチカット … 北米インディアン・ モヒカン族の言葉
                        「干満のある長い川のところ」
テネシー …  北米インディアンの村の名前
テキサス … 北米インディアン・カドー族の言葉 「友人・仲間」
ネブラスカ … 北米インディアン・オートー族の言葉 「浅い水」
ノースダコタ/サウスダコタ … 北米インディアン・ スー族の
                                                「同盟者」
マサチューセッツ … 北米インディアン・ アルゴンキン族の
                                  言葉「大きな丘」
ミシガン  … 北米インディアン・ チペワインディアン語
                    「大きな湖」
ミネソタ  …  北米インディアンの言葉
                      「乳白色がかった青色の眠い人」
ミシシッピー … 北米インディアン・ オジブエー族の言葉
                          「大きな川」
ミズリー  … 北米インディアン・ アルゴンキン族の言葉
                     「大きなカヌーに乗る人たち」
ユタ     …   北米インディアン・ユテ族の言葉「山の住民」
ワイオミング … 北米インディアン・ デラウェア族の言葉
                          「大平原」

2011年05月30日

落語・ちりとてちん

■福井県の話題
○東尋坊の「もみわかめ」
 福井県三国の東尋坊は日本海にせり出していて、 魚介類が豊富で
  す。ダイバー仲間と越前の海によく潜った。その頃、魚を手ヤス
 突くのが楽しくて、ハチメやハタ、カサゴなど、 沢山持ち帰っもの
 です。
 越前海岸はワカメがよく採れる。海が荒れた日の翌朝、地元の
  年寄りが、 先に鎌をくくりつけた竹竿で、ちぎれて岸に打ち上げられ
  ているワカメを採集する。
 
  そのわかめを天日に干して細かく手もみして、「もみわかめ」 する。
  それを一升瓶の空瓶に詰めて売っている。塩の香りがして、焚き
  てご飯にフリかけると美味しいし、おにぎりに混ぜても美味い。
 
 収穫の時期は春…初夏には土産店に並ぶ。越前海岸へドライブ
  したおみやげにいかがでしょう…
 
○コシヒカリは福井県生まれ
 新潟県といえば「コシヒカリ」…新潟県を代表するブランド米ですが、
 福井県で生まれたお米だということを、 知る人は少ない。
 
 
868 「吉村外喜雄のなんだかんだ」
~ことば遊び~ 「落語・ちりとてちん」
 
落語「ちりとてちん」平成19年、 NHK朝の連続テレビ小説での稽古風景に登場してから、広く知らようになった。
テレビの物語は、故郷福井の若狭から大阪へ飛び出し、落語家を志す女の子が、 落語修業を通して成長していく姿を、 笑いと涙でつづったものです。
 
落語「ちりとてちん」の「ちりとてちん」とは、稽古場から聞こえてくる三味線の音色を表している。
♪さる家の旦那が、お向かいに住む金さんを座敷に招き、ご馳走する。
金さんはお世辞のうまい人で、振舞われた鯛の刺身や鰻の蒲焼を、「生まれて初て食べました」 「寿命が伸びます」などと言いながら、美味しそうに食べる。
 
宴がすすむうち、近所の竹さんのことが話題になる。
この竹さん、金さんとは正反対の性分で、ご馳走をしても、何をあげても、 素直に喜ぶということがない。
なんとかして竹さんをへこましてやろうと、考えている旦那のところへ、家の者が「豆腐を腐らせてしまった」と言いにくる。
 
それを聞いた旦那…「そうだ!この腐った豆腐を、 竹のやつに食わしてやろう」と思いつく。
腐った豆腐を「台湾名物ちりとてちん」だと偽り、薦めようというある。
 
さっそく家の者が竹さんを呼びにいき、旦那は鯛の刺身や鰻の蒲焼を振舞うが、 案の定「鯛ねえ…マグロのほうが美味しいね」「この鰻… 養殖でしょう」などと憎まれ口。
次に旦那が、瓶詰めにした「ちりとてちん」を薦めると、知ったかぶりの竹さんは、「台湾では、朝に晩によく食べていた」と言い出し、 旦那の前で食べてみせることひと口食べるや…悶え苦しむ。
 
旦那「どんな味や?」と聞くと…竹いわく 「ちょうど豆腐の腐ったような味です…」
 
 ー * ー * ー * ー * ー* ー * ー * ー * ー
 
落語「酢豆腐」を、3代目柳屋小さんの門下生だった、 初代柳屋小はんが改作してまれたのが「ちりとてちん」。上方では初代桂春団治、東京では5代目柳屋小さん得意ネタにした。
 
小さんの語り口は、前半はのどかな宴の様子をほのぼのと描き、後半、 金さんが場すると、 旦那と金さんのやりとりや、飲んだり食べたりする仕草をして、情景が目に浮かぶように暖かく演じていく。
                              「落語の蔵」 より
 

2011年04月25日

日本で生まれた漢字

■漢字の語源を探る…「鱈」
 
冬の魚「(たら)」は、雪が降る頃になると、産卵のために比較的浅い所に
上がってくる。それを獲って食べると、魚肉が雪のように白くて旨い。
そこで魚に雪をくっつけて「鱈」になった。鱈は、日本で作られた”国字”です。
 
鱈は産卵期になると、餌が少ない深海から浮上してくると、目に付く餌は
何でもよく食べる。
その大食漢から「矢鱈(やたら)に食べる」「鱈腹 (たらふく)食う」が生まれた。
 
北陸の鱈は冬の味覚。金沢の方言の「だらほど食べる」の「だら」は、
鱈が語源ではなく、「だらぶち(バカもの)」からきた言葉です。
仏教用語の「南無阿弥陀羅仏」が、「だらぶち」の語源です。
 
タラバカニは、鱈の漁場にカニに似た生き物がいる、「鱈場のカニだ…」から
ついた名前。ちなみにタラバカニは、カニの仲間ではなく、ヤドカリの仲間です。
 
 
860 【吉村外喜雄のなんだかんだ】 
~ことば遊び~ 「日本で生まれた漢字」
 
ことば遊び…日本で生まれた漢字をいろいろ取り上げてみます。
中国から伝わってきた漢字に対して、 日本で生まれた字を国字という。
国字のルーツ…語源をたどると 「象形文字」が多い。
 
「山」に「上」 と「下」がくっついて出来た 「」は、 その代表でしょう。
の他に、「身」と「美」 をくっつけて出来たのが「」。
(かみしも)」もそう。 その他「」「」「」「」「」などがある。
「辻」もそうだが、日本で生まれた字は、漢字で「美」を”び” と読むような「音読み」 がない…ほとんどの国字は 「訓読み」だけである。
 
・神にささげる木「」       ・堅い木 「」  
・風が止むのは「(なぎ)」   ・風で上がる布 「」 
・雨だれが下りる「(しずく)」 
・道の十字路「」                   ・白く乾いた田ハタ「」  
・ひそかにつつむニオイ「」  ・火で焼いた田「
・田にいる鳥「(しぎ)」            ・ 他人に弟のオモカゲ「
 
お隣の中国も、急速な経済発展に伴い、外来語があふれるようになった。
そうした中、「一語」で意味を表現できる、 新しい漢字の創作を試みる”焦応奇”という学者の創作漢字を紹介します。
 
      「パソコン」                
パソコン
 
画面「口」+キーボード「-」 +マウス「、」                
 
       「テレビっ子」
テレビっ子
 
アンテナを意味する「ソ」+画面の「口」を組み合わせた「テレビ」のつくりの下に、「心」で、 テレビの心理的な影響を受けたテレビ人間、テレビっ子。
 
「大げさで誇張した言論をする知識人」
大げさで誇張した言論をする知識人
                       口+士

2011年03月22日

落語・はてなの茶碗

■住友生命「創作四文字熟語」
 
’10    「棄想県外」(奇想天外) …  「最低でも県外」普天間問題
     「諸牛無情」(諸行無常) … 口てい疫で、牛大量処分
     「全人見塔」(前人未到) … スカイツリーを見上げる都民
 
以下、優秀200作品から、歌人・俵万智さんが選んだ四文字熟語
 
’09  「遠奔千走」 … 高速道路千円ぽっきり
’07  「医師薄寂」 … 小児科や産婦人科の医師不足が叫ばれた
’04  「様様様様」 … ヨンさま、韓流ブーム
’02  「日本熱闘」 … 日韓W杯開催
’01  「万国胸痛」 … 米国9.11同時テロ
 
’98  「倒行巨費」 … 山一證券など、金融危機多発
’96  「高官無恥」 … 霞ヶ関官僚接待汚職
’95  「震傷膨大」 … 阪神・淡路大地震
’93  「扇扇狂狂」 … ジュリアナ全盛
’90  「異旗統合」 … ベルリンの壁崩壊・東西ドイツ統合
 
 
850 「吉村外喜雄のなんだかんだ」 
~ことば遊び~ 「落語・はてなの茶碗」
 
今日の出しものは「はてなの茶碗」…話が面白く、場面転換が多く、 色々な人物がてくるので、 描写が難しい…ベテランでなければ演じきれない噺です。
上方落語・三代目桂米朝の十八番と言われるだけあって、 米朝の右にでるものはいないという… 上方落語、屈指の名作です
 
♪京都は清水寺、音羽の滝のほとり。
大阪から来た油屋が、茶屋で休憩していると、 京では名の知れた茶道具屋の金兵衛… 通称”茶金”が、油屋の隣に座ってお茶を飲み、茶屋の茶碗の一つをこねくり回しながら、しきりに「はてな?」と首をかしげていた。
 
道具屋の茶金が帰った後、 あの目利きの道具屋が注目する茶碗…さぞかし値打ちに違いないと、 茶店の主人からすったもんだの末、なけなしの二両はたいて買い取った油屋。
 
桐箱に入れ、風呂敷に包み、身なりを整えて茶金の店へ…
番頭に「五百両…いや、千両の値打ちもの!」 と息巻くも、どう見ても清水焼でも一番安い茶碗… 「うちでは取り扱えない」と、らちが明かない。
 
無理やり茶金を呼び出して、事の次第を聞いてみると、ヒビ割れもないのに、 どこからともなく水が漏れてくる… 「はてな?」と、 首をかしげていたのだと言う。
油屋、意気消沈し、若い頃に勘当された自らのヤクザな身の上話で、 茶金を口説く…
 
そこは通人の茶金…二両で自分を宣伝してもらったようなものと… 茶碗を油屋から更に一両足して、三両で買い取ることにし、この金を持って、 ふた親に孝行するよう諭した。
この話が噂になって伝わり、時の関白・鷹司公に、
「清水の 音羽の滝の 音してや 茶碗もひびに もりの下露」
と歌が詠まれた。
 
更には、帝の耳にも入り、帝・直筆の「はてな」の箱書きが加わった。
こうして立派肩書きが付いた茶碗… 噂が鴻池家の耳に入り、とうとう千両の値がついて売しまった。茶金は油屋を呼び出し、千両の半分、五百両を渡した。
 
小踊りせんばかりの油屋…後日、再び茶金を訪れ、 「十万八千両の大儲け!」と叫んだ。茶金が問い質すと…
「今度は…水の漏る不思議な水瓶を見せにきました」
 

2011年03月07日

かなざわなまり(7)

■冬の金沢なまり
[たるき]
1月末、金沢は久しぶりの大雪に見舞われた。
子供の頃は今よりずっと寒く、たくさん雪が降った。
冬になると学校やお寺の軒先に、1メートルくらいの長い「つらら」が
下がった。子供のころ、「つらら(氷柱)」のことを「たるき」と言った。
 
語源は「垂氷(たるひ)」…垂れる氷。
東北宮城県と石川県、そして何故か雪の降らない長崎県…その三ケ所
でのみ呼ばれる方言です。「たるき」は、”たるひ”がナマったものです。
 
[雪すかし]
「今朝、たくさん積もったので”雪すかし”したら、足や腰が痛いわいね…」
何気なく言うこの「雪すかし」という言葉…これってかなざわ弁? 
「すかし」は「空かし」の意味でしょうが、「雪を除ける」とか、「除雪する」と
言うのが普通…。
 
 
846  【吉村外喜雄のなんだかんだ】
~ことば遊び~ 「かなざわなまり(7)」
「あてがいな」「らくまつ」「まいどさん」
「だちゃかん」「言いまさんな」「おいでましたら」
「おいだすばせ」
 
夜の明けるのが日ごとに早まって、明るくなってきた…春はもうそこまで来ている。
あと二週間もすると選抜、そしてプロ野球が開幕し、桜咲く。
 
60万人と36万人…兼六園事務所と県警が発表した、一昨年の兼六園の” 花見”人出のである。
花見の人数を厳密に数えられないだけに、どうしても食いが生じる これを金沢弁であてがいな…」と言う。
 
「あてがい」は、「いいかげん」「当てずっぽう」という意味になる。
また、何をするにも、 大ざっぱで無責任な人を、「あてがいな人」と言う。
らくまつ」もあてがいな人… 当てずっぽうにモノを言う人に投げかけられるです…「ノー天気な人」 「のん気者」のことです。
 
「まいどさん…このタケノコ、少しまけとくまっしま!」
『う~ん、だちゃかんわいね』
「そんなら、三本で千円にしとくまっしま!」
『アリャ~ムチャクチャ言いまさんな』
 
まいどさん」は、子供の頃、 近所の商店主が訪ねて来たとき耳にした、親しみを込めた「こんにちわ」の挨拶言葉である。
また、金沢では「駄目だ」を だちゃかんわいね」 と言う…
これも味わいのある言葉です。
 
金沢市内の医院で…「○○さん、おいでましたら受付へお起こし下さい」のアナンス。 「おいでます」は金沢で使われる方言で、 「いらっしゃる」敬語になる。
県外から来た人が「エッ」と驚くのは、身内に対する場面である。
お客様が訪ねてきたとき、「父はおりません」 と言うところを、「父はおいでません」と言う。会社でも、「社長はおいでません」と言う社員さんを時折見かけ.。
 
身内を名乗るのに、敬語は可笑しいかもしれない…が、金沢は百万石城下町。 かって、家庭での父親は偉い人… 敬語の対象にされてきた…そのなごりです。
 
「おいでます」に、金沢ことば「あそばせ」がくっつくと、 おいだすばせ」 になる。
昔「あそばせ」は宮廷言葉だっが、現代の日本では、この”京言葉” を残す数少な町が、金沢なのです。
 
茶屋街のお座敷に上がるとき、おかみさんの「お上がりあそばせ」がここちよい。 食事をすすめる際にも 「お箸をお付けあそばせ」と言う… 「召し上がれ」とは言わない… 金沢だなあ~と思う。
                                      「頑張りまっし、 金沢ことば」より

2011年01月05日

落語・初天神

あけましておめでとうございます
今年もお付き合い、よろしくお願いします
 
■落語家の「駄じゃれ」
 
・ある朝、米朝が楽屋で高座着に着がえているとき、どうしたわけか、
 何度やり直しても長じゅばんがハミ出すのを見て…
    「じゅばん長いが見せたいな…」と、誰かが節を付けて歌った。
 →「♪自慢じゃないが~ 見せたいなァ~」 
 
・米朝が盲腸で入院したとき、中村扇雀が一句口ずさんだ…
   「ベィチョウめ~ ベィチョウめモウチョウ(米朝め盲腸)」
 →「♪ベッサメ~ ベサメムウチョ~」
 
・上方落語で人気があった、今は亡き三遊亭百生が、
 お得意の『天王寺参り』のなかでの会話…
    「これが天王寺の石の鳥居や」 「りっぱな鳥居でやんなァ」
    「りっぱな鳥居やろ、これは日本三鳥居というねや」
    「あァほんなら、ここの坊んさん、ウイスキー造ってんのんか? 
                         日本サントリーちゅうて…」
 
 
828  「吉村外喜雄のなんだかんだ」 
~ことば遊び~ 「落語・初天神」
 
縁起のよい噺として、毎年正月の寄席で演じられる「初天神」…縁日を舞台に、ほのぼのとした父親と息子の会話が繰り広げられる。
 
♪男が天満宮に参拝に出かけようとした。
すると女房、息子の金坊も連れていけと言う。
男は、息子は「物を買ってくれと、うるさくせがむから…」と渋っていたら、折悪しく息子が帰ってきた。
 
連れてってほしいと懇願する息子をつっぱねると、
ヘソを曲げた息子…お隣の家に行き
「あのね…昨日の晩、うちのお父っつあんとおっ母さん、何してたと思う?」
そんなこと、外で喋られてはたまらないと、大慌てで息子を連れ戻し、 初天神に連れて行くことに…
 
天満宮への道を歩きながら、父は息子に『買い物をねだるなよ!』と念を押す。
「うん、金坊いい子にしているよ…いい子にしているから、何か買って…」
『ほら始まった…今日は買わない約束だろ』
 
それでも息子がしつこくねだるので、口塞ぎに、止むを得ず飴玉を買い与える。
飴がなくなると、またグズりだす息子…今度はどうしても凧が欲しいらしい。
『何でこんなところに店を出していやがる』
と、凧屋の親父にカラミながら、 渋々凧を買い与えた。
 
『さあ…これを持って走るんだ…それっ! アッだめだよ…人にぶつかるよ』
子どもがやること…凧が思うように揚がらない。
しだいにイライラしてくる父親…
しまいには、子どもから凧を取り上げて、自分で走り出す始末。
 
『どうだ…揚がっただろ。もっと糸を出せ…ちゃんと父ちゃんに貸せ…ほら… こうやって糸を出して…どうだ…すごいだろう』
「うわあ…すごいよ…ずんずん揚がっていく」 
『そうだろう…もっと揚がるぞ』
 
「すごいすごい…ちょっと、父ちゃん…おいらにも糸を引かせてよ」
『だめだ…お前には無理…ほら…どうだ…こうすりゃ横にも動くんだ』
「うわあ…ねえ…ちょっと貸してよ」 
『だめだ…子どもは引っ込んでろ!』
 
「ちょっと貸してよ…ねェねェ」 
『うるせえ…黙ってないとひっぱたくぞ!』
「なんだよ…こんなんなら…お父ちゃんなんか…連れてくるんじゃなかった」
 

2010年12月13日

落語・長短

 ■落語「長短」のルーツ
 
落語「長短」のルーツを探っていくと…
中国・明の時代の文人が著した「笑府」に行きつく。
その巻六の小噺は「長短」と同じ、物が焦げるところがオチに
なっている。
 
ところが、この「笑府・巻六」の小噺にも元ネタがあって、
宋代の小噺本に載っているものを、更に面白可笑しく脚色した
もので、内容は「長短」そっくりです。
 
「笑府」をネタ本にして、沢山の江戸小噺が作られているが、
その多くは下ネタになった。
落語ネタになったものには、「三軒長屋」「松山鏡」「饅頭こわい」
などが知られてる。
 
823 【吉村外喜雄のなんだかんだ】
~ことば遊び~ 「落語・長短」
 
毎週火曜日夕方6時の「BS2寄席」…面白いネタがあると、 ダビングして見てる。先月の出しものでは、 柳屋喜多八「長短」が面白かった。
 
せっかちとのんびり屋の二人は竹馬の友…正反対の性格だが、なぜか気が合う。 この噺は、三代目桂三木助、五代目柳家小さんが十八番にしていた。
 
三木助は”短気”の方に、小さんは”のんびり屋”の方に芸風が強く出ている。
登場人物が二人だけなので、人物描写やメリハリをつけるのが難しく、 演じる上で基本技術が試される…芸の浅い若手落語家は、苦手とするネタです。
 
♪「う~ん、よいしょッと…お~い短七、いるかァい…
  へへッ来たよ…長七だよォ」
『なにウロウロしてんだ…早く入れよ』 「ああ、やっぱりいたね」
『いるよ…俺んちだからよ。早く上ってきてそこへ座れよ…
 グズグズすんな』
会話の速さがまったく噛み合わない
 
「どっこいしょッと…どうも、こんちわ」 
『何がこんちわだ…何かあったのか』
「いやね…夕べね…小便したくて夜中に起きてね…それでね…驚いちゃった」
『どうした…泥棒でも入ったか』 
「そうじゃァねえ…空が変な色なんだ。こう…赤いッていうか…
 紅色ッていうか」
『まさか…火事でもあったのか?』
「違うよゥ…あのね…変な色をして星も見えねえんだ。こりゃァ…もしや明日は雨かと思ったら…今日は天気がいいね」 
『天気かよ! 張り倒すぞ…この野郎』
イライラする短七に臆することなく、まるでペースを崩さない長七。
『さあ…茶が入ったぞ…飲め。冷めるじゃねぇか…ほら…
 菓子も食え…腐るから』
「フフフ…そんなすぐにゃ腐らないよゥ…短七さんは面白いや…」
 
『あ~、まだろっこしい…ほら、煙草に火がついたぞ…
吸え吸え…火が消えちまう』
「そうかい…じゃ一服しようかねェ。よいしょ…プカ~~リ…
 プカ~~~~リ」 口から出た煙が、 ユラユラ揺れている。
 
『なんだそりゃ…煙草なんてこうやってスパスパ吸って…
 ポンと灰を落とすもんだ』
「そうかい…じゃやってみる…スパ~~」
『ちっとも変わってねえよ…こうやってスパッ、ポンてなもんだ。
 俺なんざ、たまに吸わねえで火種を落とすこともあらァ』
 
「ふう~ん…あの~…ま、いいや…」 
『なんだよ、言いかけてやめるなよ』
「でも怒るから~…やっぱり言わない」 
『気になるだろ…怒らないから言えよ』
「本当に怒らない? じゃ言う。あのね…さつき短七さんが火を落としたとき… 火種がね…煙草盆の中に落ちなかった…あれあれ… どこへ行ったかと思ったら、 たもとから煙が出てるんだ…早く消さないと…」
 
短七、あわててたもとを払って、
『バカ、なんでもっと早くいわねェんだ』
「ほら~やっぱり怒鳴られた…だから、言わねェほうがよかった」

2010年08月09日

落語・錦の袈裟(けさ)

■ 袈 裟
 
袈裟には大小二種類ある。特に大きな袈裟を「大袈裟」という。
「大げさなことを言うな…」の”大げさは、ここから出た言葉です。
薄地の夏用、裏地の付いた厚手の冬用、中間のあい物があり、
キンキラキンの派手なものから、地味で落ち着いたものまで、
いろいろです。
 
座禅を行う禅宗の宗派は、袈裟に”輪っか”が付いている。
蚊帳のつり紐の輪と同じ役割で、他宗では直接紐で結びます。
”袈裟”から派生した言葉には、「「坊主憎けりゃ、袈裟まで憎い」
「袈裟斬り」があり、選挙のたすきを「袈裟にかける」という。
 
袈裟がけにからむ逸話を一つ…
江戸時代、処刑が決まった罪人を、唐丸籠や、両手を後ろ手に縛られ、
裸馬に乗せられて、護送されていく。
見物の高僧が、囚人に向かって着ている袈裟を投げかける…
その袈裟が見事罪人にかぶされば、処刑は中止される。
僧侶は、その罪人を貰い受けて、更生を計ることが許されたのです。
 
 
789 「吉村外喜雄のなんだかんだ」 
~ことば遊び~ 「落語・錦の袈裟(けさ)」
 
落語のネタには、吉原を題材にしたものが多い。
いずれも艶があって、江戸庶民心意気が伝わってくる。
 
♪昔は、男が遊びに行くと言えば、吉原に決まっていた…
隣町の若い衆が昨夜吉で、緋縮緬(ひちりめん)の揃いの長じゅばんで、 カッポレの総踊り。 帰り際に「隣町のやつらにゃ、しみったれで、 こんな銭のかかった遊びは出来めえ」 と言った… そんな噂を聞き込んできだ。
 
「あっちが”縮緬”なら、こっちはもっと高級な”錦”だ!」
伊勢六・質屋の番頭に、「錦布が10枚あるので、何かの時は使ってください」 とれていた。
質流れの錦でもって褌をこしらえ、相撲甚句で総踊り…
ということになったが、あいにく与太郎1人があぶれた。
「女遊びがしたかったら、錦の褌でないとダメだ」釘をさされた。
 
家に帰っておかみさんに相談すると、あきれるやら、バカにされるやら… しょんぼりする亭主を見たおかみさん… 「お寺に行って… 親戚の娘に狐がついた…ありがたい和尚さまの袈裟をかけると、狐が落ちると聞いたので、お貸し願いたい…と言って、借りといで!」
 
さすが女房…但し、明日和尚が法要で使うので、 朝には間違いなく返さなければならない…と言う。
その袈裟を女房に締めてもらうと、まことに豪華な”褌”になった。 が、白い輪っかが魔をしてサマにならない…「そのまま行っといで…」
 
その晩、若い衆連れ立って吉原に繰り込み、相撲甚句に合わせて、 錦褌の総踊りを披露した…驚いたのは廓(くるわ)の連中…座は盛り上がり大盛況…与太郎も、前に白い輪っかをブラブラさせ、 尻まくりをして踊りまくった
 
「錦の褌を締めてるよ! どこかお大名の隠れ遊びに違いない」
「ちょいと…誰がお殿様かわかるかい」
「あのすこ~しぼんやりした人だよ…ほら、輪っかが付いているだろ… そりゃあご身分のあるお方だもの…お小用なさるにも、手で持たず、 あの輪っかにひっかけてなさる…あれはきっと”ちん輪”だよ」
 
家来はどうでもいいから、お殿様だけ大事にするようにと、 女郎たちの間でささやかれた。
おかげでその晩、与太郎一人…大もてだった。
 
翌朝、一同揃いに揃って不首尾のようで…浮かぬ顔。
ふてくされて、さっさとうとすると、 与太郎の姿が見えない。なんと、与太郎は花魁(おいらん) といい思いをしていたのだ。
 
与太郎に、「おい! 帰るぞ」と告げに行くと…
花魁が「いいえ、今朝(けさ)は帰しせんよ」
それを聞いて慌てた与太郎…
「袈裟(けさ)は返さない? そりゃ大変だ…お寺をしくじる」

2010年07月01日

かなざわなまり(6)

大阪出張の折、大阪国立国際美術館の” ルノワール”展を観た。
「幸福の画家」として親しまれる、19世紀の印象派の巨匠です。
 
ボストン美術館、シカゴ美術館など、国外の美術館、そして、 ポー
美術館や国内の美術館が所蔵する”ルノアール”の作品が77点
集められ、毎日行列の出来る人気…来場者は30万人を突破した
という。
「女性と裸婦」を描く芸術家として親しまれてきたルノワール。
装飾芸術に関心を持ち、各地を旅して風景画を多数制作…。
そうしたルノワールの作品を、こころゆくまで堪能した。
 
▲クリックすると拡大写真をご覧いただけます。
 
777 【吉村外喜雄のなんだかんだ】
~ことば遊び~ 「かなざわなまり(6)」
「頑張るまっし」「りくつな~」「気の毒な~」
「しなしなと」
 
金沢なまりは、文末の言葉、イントネーションに特徴がある。
「頑張るまっし」まっし」は、 「しなさいよ」という意味の、金沢独特の言い回しです。
「早よ、しまっし」「片付けまっし」など、日常よく使われる金沢ことば。
「♪いらっし、見まっし、寄るまっし、ねェ、ほんまにいらァッし、寄るまっし…」
題名は忘れたが、金沢の方言・なまりを歌詞した一節である。
 
金沢の方言で好きな言葉に、「りくつな~」「気の毒な~」がある。
「りくつな人や」とよくう。 りくつな~」は、「巧みな」 「面白い」「気のきいた」などの意味で、 物事ばかりなく「あの子は親孝行で、 りくつな子や」と、人に対して使こともあり、”プラス” の評価与える言葉である。
 
しかし、県外から来た人には、違和感がぬぐえない。 理屈といえ「理屈っぽい」 「理屈をこねる」のように、”マイナス” のイメージに受け取めてしまうのです。
 
気の毒な~」は、金沢だけの方言ではない。
しかし、金沢ではよく耳する言葉です。
金沢では「ありがとう」より更に強く、感謝を込めた言葉として、広く親しまれているのです
 
この言葉を県外から来た人が聞くと、「なんで自分が、 目の前の人に”気の毒な人” と同情されるのか?分らなかった」という。
日本語における「気の毒」の本来の意味は、 他人の不幸や苦痛に同情して心をめる、 「かわいに」という意味が一般的です。
そこで、江戸小話から…
『年ごろ四十五、六の米屋の男が遊びにやってきた。 その家の母と娘と三人でコタツにあたって、話しがはずんだ。男はついむらむらして、娘の手だと思って母の手を握ったところ、母はびっくり、大声を出して「あきれた、この人、 何しなさる!」…それを聞いて男もびっくり。 娘は二人の顔もよう見ずに、 気の毒がって”コタツから出て行った…』
 
語尾の「に」と「な」の違いで、まったく違った意味になってしまう。 金沢ことばの 気の毒な~」 は、自分が相手にかけた面倒に、”感謝の意” を表した言葉が一般的です。
しかし、同情するときにも使われる。
「あんたのお里、能登の輪島やと聞いとったが、こないだの地震どうやったがいね」『地震で、家が傾むいてしもぅたがや』  「アリャ~ほんながかいね、気の毒に
 
金沢ことばに「しなしなと… 」がある。年配の女性が、お客を店から送り出すときに、 「しなし行っておいだすばせ」という。
慌てずに気をつけてお帰りください… そんな気持ちが込められている
「しなしなした女(ひと)」と言うと、なよなよした女と、 マイナスの意味にとるの普通です。
しかし金沢では、「しなしなとした女らしい娘さんやねェ」となる。 もっぱらプラスのに使われてきた。 この言葉を若い人が言うときは、「しな~ッと」になる。
 
                              「頑張りまっし、金沢ことば」より

2010年05月31日

2009年・怒りの川柳大賞

「いい夫婦」川柳コンテスト入選作
 
2008年  「花嫁の 父の涙を 母が拭き」
       「ひとごみで 母の手を取る 父が好き」
       「あなたより 三歩少ない 万歩計」
       「何ごとも なく過ぎてゆく 夫婦の日」
       「いまだから 愛してるより ありがとう」
       「喧嘩して それでも風呂は  沸いている」 
 
2007年 「手をつなぎ 荒れた手知って そっと撫で」
       「十年目 呼ばれた旧姓 振り向かず」
       「分娩室 妻より上手い ヒッヒッフー」
 
2006年  「夜泣きする 子を抱く妻を 抱きしめる」
       「肩抱いて 十年たつと 肩もんで」
 
 
768 【吉村外喜雄のなんだかんだ 】
~ことば遊び~ 
「2009年・怒りの川柳大賞」
 
鳩山首相が、普天間移転問題解決を国民に約束した最終日、
5月31日の朝刊…社民党が連立与党から離脱するニュース
が、紙面ていた
参議院議員選挙が二ヶ月後に迫る中… 「国民の期待に応え
ることできる政党は?」と問われると、ハタと困しまう
 
[怒りの川柳大賞]大賞に入選した川柳
’09大賞 … 「あっぱれな 企業努力で 首切られ」
’08大賞 … 「古靴の ように捨てるな 人間だ」
’07大賞 … 「限界は ゴムヒモだって 僕だって」
’06大賞 … 「幸せに すると言われて この程度」
’05大賞 … 「利子よりも 高い切手で 来た通知」
’04大賞 … 「もう少し 長生きします 悪しからず」
 
○進まぬ雇用対策
「にっこりと お出なさった 肩叩き」 
「こんなとこ 来とうなかった 派遣先」 
「職安の 頃がよかった 職あった」 
「にぎわいを ハローワークが ひとりじめ」
 
○弱者に冷たい福祉
「長寿国 命伸びても 居場所ない」 
「廃棄処理 されてたまるか 高齢者」
「少子化の 国で保育所 入れない」 
「子を育て 孫みてわしを 誰が看る」
 
○信用できない政治
「マニフェスト 得票だけで 用は済み」 
「仕切り手は 二人羽織の 中におり」 
「役人を 削減しない 仕分け人」 
「公約も 仕分けしました あしからず」
 
○その他
「ぬくもりの 欠けた地球が 温暖化」 
 
[第一生命/第23回サラリーマン川柳・ベスト10]
 1位 … 「仕分け人 妻に比べりゃ まだ甘い」
 2位 … 「先を読め! 言った先輩 リストラに」
 3位 … 「ただいまは 犬に言うなよ オレに言え」
 
 4位 … 「離さない! 10年経つと 話さない」
 5位 … 「すぐ家出 論吉はわが家の 問題児」
 6位 … 「先を読め 読めるわけない 先がない」
 7位 … 「こどもでも 店長なのにと 妻なげく」
 
 8位 … 「体脂肪 燃やして発電 出来ないか」
 9位 … 「70歳 オラの村では 青年部」
10位 … 「妻キレて 来とうなかった 嫁になど」

2010年04月09日

落語・寝床

■「全日本落語選手権大会」
 
昨年9月東京で「全日本学生落語選手権大会」が開催された。
全国の大学・落語研究会から193名が出場し、8名が予選を
通過して決勝に進出…大学落語日本一を競った。
 
審査委員長は、上方落語協会会長・桂三枝師匠。審査の結果、
創作落語「動物園」を演じた、大阪大学の銀杏亭魚折(ぎんな
んてい うおーり)・青山知弘さんが、頂点の最優秀賞に輝いた。
:
惜しくも賞を逃した7人の演目は、今日紹介する「寝床」の他、
「長短」「飴屋問答」「初天神」「だくだく(ブログ645)」など…
 
創作落語にチャレンジしたのは二人…その一人は、トルコの
留学生で、日本語の難しい駄じゃれを連発しての大熱演だった。
決勝進出8名のうち二人は女性で、8名何れも、プロとして高座
に上ってもおかしくない、実力の持ち主ばかりでした。
 
 
 
755 「吉村外喜雄のなんだかんだ」 
~ことば遊び~ 「落語・寝床」
 
取引先の温泉一泊招待会で、宴会の後二次会会場へ…
ところが、マイクを離さないおじさんがいて、 下手なカラオケに無理やり付き合わされる羽目に…興ざす。
 
♪ある大家の旦那もそんな類の一人で、直ぐ他人に”義太夫”を語りたがる… あまりにも下手なので、誰も聞きに来ない。
だったら、ご馳走を用意してご機嫌をとろうと、 いろいろ準備してから、店の者を長屋に呼びに行かせたが…
 
ちょうちん屋は開業式の注文がどっさり入って、手が離せない…金物屋は、 寄りい…小間物屋は、おかみさんが臨月… 豆腐屋は、ガンモドキと厚揚げを120も作ていて大忙し…鳶の頭は、翌朝早く成田に行かなければならない…
 
以前には、旦那の義太夫で失神した人や、 他所へ引っ越してしまった人もいたというから…必死で断ってくる。
「で…早い話…誰がくるんだ」 
『その~誰というのは来ないんで…』
長屋の者がダメなら仕方がない…
店の者に聞かせようと言い出す旦那。
ところが、店の者もそれぞれ二日酔い、脚気、胃ケイレン、神経痛、眼病と、 仮病を使って、出て来ようとしない。
 
いくら察しの悪い旦那でも、さすがに気がついた。
「わかった! 義太夫が聞きたくないから、みんなで逃げてるんだ。 そんなら義太夫はやめだ…その代わり、長屋一軒残らず追い出し、店の者は全員クビだ」 と言って不貞寝してしまった。
追い出されるとなると穏やかではない。店の者が長屋をもう一回りして、 店子を連きた。
 
『ええ…旦那、長屋の皆さんが義太夫を聞きたいと、集まっていらっしゃいますが…』
なだめたり、すかしたりしているうち、だんだん機嫌が直り、しまいには…
「それほど聞きたいなら…みっちり語ろう」
と、すっかりヤル気に…まるで子どもだ。
 
長屋の連中…仕方なく、料理や酒を慰めにして我慢している…旦那は大熱演。
しばらくすると、客席が静かになった…感じ入って聞いているのかと見ると、 どいつこいつも、酒が回って寝ている。
 
またもやカンカンに怒りだす旦那。
ところが…おや、このさなかに、一人だけ泣いている奴がいるな…
「おお定吉か…お前は見込みがあるぞ…義太夫のどこが悲しかったんだ?」
旦那が尋ねると定吉、今しがた、旦那が義太夫を語っていた床を指差して、
『あそこでございます』 「あそこ? あそこの何が悲しいのだ?」 
 
『あそこは…私の寝床なんでございます』

2010年02月01日

落語・河豚鍋

■河豚の毒
 
スキューバーダイビングが趣味の私…越前海岸に潜った時、時折手ヤスで
河豚を突いて持ち帰った。
カワハギのように、頭と背の間に包丁を入れ、親指を差し入れ、身ぐるみ
はがしていく…すると、皮と内臓が丸ごとくっついてはがれ、身だけが残る。
骨付きのままブツ切りにして味噌汁の具にする…これがたまらなく美味しい。
 
昨年11月、富山県のすし店で、フグの肝臓を客に出して二人が重体になった。
テトロドトキシンと呼ばれる猛毒で、その毒性は青酸カリの400倍にもなる。
卵巣に最も多く、次いで肝臓、表皮、腸の順…この毒、熱っしてもこわれません。
 
河豚を調理できるのは、「河豚取り扱い講習会」に二日間受講し、筆記と実技
の試験に合格した者に限る。ただ、一度合格すれば更新や再講習はない。
食中毒を出した寿司店主…免許を取得したのは23年前だった。  
                                       中日新聞                          
 
735 【吉村外喜雄のなんだかんだ】
~ことば遊び~ 「落語・河豚鍋」
                                      
鍋物が美味しい季節です。そこで河豚を題材にした落語「河豚鍋」のさわりを一席…。 原作は”十返舎一九”の小咄「河豚汁」。これをもとに、 二代目林家染丸が上方落語に仕立てたものです。
 
免許がないと、フグの調理ができない今の時代と異なり、 昔は素人が家庭で調理して、 中毒死することがたびたび起きた。
「あら何ともなや 昨日は過ぎて 河豚と汁」… 芭蕉の句にそれが伺える。
 
♪ある商家の旦那が、一杯やろうと支度をしていたところに、
知り合いの男が顔を出した。
旦那「ちょうど飲もうと思っていたところだ…相手になってくれ」と男を誘う。
愛想のいい男は、旦那、おかみさん、女中、はては飼い猫にまでヨイショして、 出された地酒や、塩辛の味も褒め上げる。
 
そうこうするうちに、かねて用意の鍋が、良い具合に煮立ってきた。
「これは何の鍋でしょう?」と客人…旦那『これはテツだ』
「テツと言いますと?」…『河豚だ』
 
答えを聞くと、男の様子は一変…当たるのが怖いから、一口も食べようとしない。
旦那も旦那で、先に食べるのは怖い
お互いに薦め合うが…どちらも先に食べるのはイヤで
箸は進まない。
 
ちょうどその時、勝手口に物貰いがやってきた。
『そんなら、あいつに食べさせて、具合を見てやれ』
旦那は、物貰いに河豚鍋を食べさせて、安全かどうか確認することを思いついた。
『そら…よろしいな』と、少し分け与える。
 
頃合い由と…様子を見にやると…何でもない…
まずは大丈夫と、二人で鍋を平らげた。と、そこへ物貰いがやってきて…
「旦那さん方…大丈夫ですか? …大丈夫な・よ・う・で…なら、ゆっくり頂きます」
 
                                フリー百科事典「ウィキペディア」

2010年01月08日

創作・四文字熟語

■2009年/オリックス「マネー川柳」
 
・大賞 「家計簿の 損失欄に ダムと書き」 
 
「草食と 言われる息子 金を食う」 
「小遣いも 妻の基準で 仕分けされ」
「エコカーに 乗ってる彼に 乗り換える」 
「千円で 増えた思い出 車内泊」
「インフルで サンタ来れぬと 子に諭す」 
○仕事編
「客の入り ハローワークに 負けている」
「ボーナスは ないがボーナス 払いあり」
○恋愛編
「婚活で 財布痩せたが 目は肥えた」 
「あわよくば 働く彼氏に 天下り」
「割り勘を きっちり割って まだ一人」
○家庭編
「女房が 鵜匠にみえる 給料日」 
「寝返りを うてばあなたが いる不幸」
「減税を 子ども店長 から学び」
 
○歴代一位のマネー川柳
第一回 ’04  「ペイオフに かすりも      せぬ金 壷にため」
第二回 ’05 「ケータイで 夢もおでんも 買う日本」
第三回 ’06 「また一つ タダが消えてく レジ袋」
第四回 ’07 「社保庁は 未納者だけを 覚えてる」
第五回 ’08 「百年に一度 も 長寿なればこそ」 
 
 
727 【吉村外喜雄のなんだかんだ】
~ことば遊び~ 「創作・四文字熟語」
 
あけましておめでとうございます
住友生命が昨年12月10日、「2009年創作・四文字熟語」 の入選作を発表した。 年の初めに当たり、昨年1年間を 「四文字熟語」 で振り返えってみます。 「愛夢総理」…6085作の応募中、3分の1が、政治をテーマにした作品でした。
 
「断反対」 昨年は、 覇権切りや雇い止めで、職を失う人が続出した
「一機冬川」…旅客機が川に奇跡の不時着。 機長の離れ業が喝采を浴びる
G販沈価(じーぱんちんか)」 ユニクロの一人勝ち。経済、デフレ傾向へ
 
「一両断」 有権者の抜き放った刃が、日本の政治を袈裟懸けにした
「政権好待 54年ぶりの政権交代で、国民の期待が膨らむ
世済民」 新政権を引っ張る、鳩山首相の手腕やいかに?
 
「顔面白」 新型インフルエンザで、店頭からマスクが消えた
「一触発」うつされまいと、 通勤電車も人ごみもピリピリ
接種待腕」 予防したくてもワクチンが足りず、順番待ち
 
走」 高速道路を千円で「東奔西走」 
「千そうしたら、 あちこちで大渋滞。客が減ったJRが泣いた
日」初の秋の大連休… 全国あちこち大渋滞
 
民参加」 国民参加の裁判制度がスタートした
民」 裁きに市民感覚がにじみ出た
 
「皆日食」白昼の天体ショー… 晴天を祈ったが、悪石島は無情の雨
「阿美共感 奈良興福寺の阿修羅像展を見るようと、東京国立美術館に行列
「一目遼戦 賞金王の石川遼を見ようと、ゴルフ場はギャラリーで溢れた
 
※「切歯扼腕(せっしやくわん)」
・歯ぎしりをして激しく怒ったり、じりじりイライラすること
 
※「阿鼻叫喚(あびきょうかん)」
・仏語 阿鼻地獄と叫喚地獄を合わせた語
 地獄で様々の責め苦にあって、泣き叫ぶ様子をいう 
 

2009年11月30日

サラリーマン川柳

■言葉遊び「笑点」の句題
 
三遊亭円楽師匠が亡くなられた。そこで「笑点」の句題からいくつか…
[わんわん冠句]…句の頭に「ん」を付ける
           「クンクンと  中国産を  嗅いでみる」
 
[着せ替え句]…有名な句の一部を残して、言葉遊びをする
          松尾芭蕉「古池や 蛙飛び込む 水の音」
         ⇒「バンカーを やっと抜けたら 水の音」
           「豆腐屋は もう起きている 水の音」
           「自動車が 来たと振り向く 水の音」(これ、私の作品)  
 
[笠づけ]…頭の5文字をあらかじめ決めて、五七五の句を競い合う
       (例)「あれこれと…」
        ⇒「あれこれと 気付く女房が 鼻につき」
   
[前句づけ]…下の句「七七」をあらかじめ決めて、「五七五」の上の句を考える
       (例)「切りたくもあり 切りたくもなし」
         ⇒「罪人を 捕らえてみれば 我が子なり」
 
[同字サンド]…に同じ漢字が入る
         ⇒「涼みして 祝う七」 (夕)
          「年の恋は もう遠い過」 (去)
          「学者でも 下手な恋」 (文)
 
 
718 【吉村外喜雄のなんだかんだ】
~ことば遊び~ 「サラリーマン川柳」
 
第一生命の「サラ川」の応募が、この4日に締め切られる。
今回の応募作品か100首を選定…来年2月中旬に発表される。 当選した100選の中からさらにスト10候補を、一般投票で3月中旬まで受付け、5中旬に発表される。
 
■昨年の応募総数は、22,245句。投票総数は94,314票と、
 その人気の高さうかがえる。第21回のベスト10は…
 1位  「空気読め! それより部下の 気持ち読め!」
 2位  「今帰る 妻から返信”まだいいよ”」
 3位  「減っていく…ボーナス・年金・髪・愛情」
 
 4位  「円満は 見ざる言わざる 逆らわず」
 5位  「ゴミ出し日 捨てに行かねば 捨てられる」
 6位  「好きですと アドレス間違え 母さんに」
 
 7位  「国民の 年金、損なの 関係ねえ」
 8位  「社長より 現場を良く知る アルバイト」
 9位  「赤字だぞ あんたが辞めれば すぐ黒字」
10位  「いつ買った? 返事はいつも 安かった」
 
■一昨年、第20回の応募総数は、23,179句。
 投票総数は79,631票
 1位  「脳年齢 年金すでに もらえます」
 2位  「このオレに 温かいのは 便座だけ」
 3位  「犬はいい 崖っぷちでも 助けられ」
 
 4位  「アレどこだ? アレをこれする あのアレだ!」
 5位  「ありがとう そのひと言が 潤滑油」
 6位  「忘れぬよう メモした紙を また捜す」
 
 7位  「イナバウアー 一発芸で 腰痛め」
 8位  「ご飯ある? ツクレバアルケド ならいいです…」
 9位  「脳トレを やるなら先に 脂肪トレ」
10位  「たまったなぁ お金じゃなくて 体脂肪」
 
■2006年、第19回の応募総数は、21,774句。
 投票総数は130.745票
 1位  「昼食は 妻がセレブで 俺セルフ」
 2位  「年金は いらない人が 制度決め」
 3位  「ウォームビズ ふところ常に クールビズ」
 
 4位  「二歳だろ トロ ウニ 選ぶな 卵食え」
 5位  「妻の口 マナーモードに 切りかえたい」
 6位  「片付けろ! 言ってた上司 片付いた」
 
 7位  「痩せるツボ 脂肪が邪魔し 探せない」
 8位  「ダイエット 食費以上に 金かけて」
 9位  「買っていい? 聞く時すでに 買ってある」
10位  「散髪代 俺は千円 犬 一万」

2009年10月29日

落語「紀州」

■世間の声
 
欲しい物がある時「みんな持っている」と言い、「みんな言っている」と言って、要求を通そうとする。いったい「みんな」とは、 何人のことを言うのだろう?
アメリカの心理学者の調査では”3人”だった。
島国日本…世間がどう思っているか…やたらと世間体が気になる国民のようです。
 
♪兄弟が二人で、馬を引いて歩いていた。
「なんで二人で引いているの? 1人は馬の背に乗っていけば良いではないか」
通りがかりの人に、そう言われて、兄が子馬に乗った…
 
それを見た、次に通りかかった人…
「兄が馬の背に乗って、年下の弟に馬を引かせるなんて…なんと偉そうに…
兄貴風を吹かせて、みっともない」
ならばと、弟を馬に乗せて、兄が馬を引いて歩いていたら…
「何だね、年長者に馬を引かせるなんて…」と避難する声が耳に入る…
 
ならばと、二人そろって子馬の背に乗って歩いていたら…今度は…
「小さな馬の背に二人も乗って…動物虐待だ」と言う声が聞こえてきた…
思案のすえ、二人で子馬をかついていった。
                           春風亭小朝「紀州」の枕から
 
 
710 【吉村外喜雄のなんだかんだ】
~ことば遊び~ 「落語・紀州」
 
♪お昼時…都電に乗っている男が、ふと、時計に目をやった。
「もう12時か…」        …アナウンスが『腹空く~♪』(原宿)
「何をたべようかな?」     …アナウンスが『マグロ~♪』(目黒)
「刺身か…喉が渇いたな~」 …アナウンスが『お茶と水~♪』
                                                                          (御茶ノ水)
「お茶は…濃いめがいいな」 …アナウンスが『渋めや~♪』
                                                                              (渋谷)
「やっぱりビールがいい」   …アナウンスが『エビス~♪』
「肴は秋刀魚がいいな」   …アナウンスが『目黒~目黒~♪』
                                                                                   
春風亭小朝の得意ネタ「紀州」…短い噺を”場持ち”させるために、 枕に上記の「聞き違い」 小噺や、馬と兄弟の「うわさネタ」を加えて、 一席の落語にしている。
 
♪7代将軍・徳川家継が幼くして急死し、次代の将軍を決めなければならなくなった。 その候補に上ったのは、尾州候・徳川継友と、紀州候・徳川吉宗の二人。
二人の勢力が均衡していて、とうとう幕閣の評定で、次代を決めることになった。
 
さて、その最終日・大評定の朝…尾州候が駕籠で登城する途中、遠くから鍛冶屋が槌を打つ音が聞こえてきた…「トンテンカン、トンテンカン」
尾州候の耳には、その音が「テンカトル、天下取る」と聞こえる…
「これは瑞兆である」と、大喜びの尾州候。
 
大評定の席では、少しでも貫禄を出そうと、こんなことを言ってみる。
「余は徳薄く、将軍の任ではない…」
すぐ飛びついてはあまりに露骨なので、一度辞退してみせ、周りから無理やり薦められる形で、 嫌々ながら引き受ける…というセコイ算段だ。
 
ところが、ライバルの紀州候…質問されると「余は徳薄くして…」と、 全く同じことを言う。
いかがなっているのか? と尾州候が首を傾けた…その時!
「しかしながら…かほどまでに乞われて固辞するのは、御三家の身として、 責任上心苦しい。しからば天下万民のため…」
 
自分が言うつもりだつたセリフを、そっくりそのまま使われてしまい、 あえなくその場で「次期将軍は紀州候…」と決まってしまった。
意気消沈の尾州候…帰りに同じ所を通りかかると、また鍛冶屋の槌の音が聞こえてきた…「テンカトル、天下取る」
 
なるほど紀州の奴、あそこで一度引き受けておいて、後になって「やはり将軍職は尾州様に…私の分ではない」と、余に引き受けさせようとする算段だな…
そう思い、ほくそ笑む尾州候。
 
まだ鍛冶屋は「テンカト~ル、テンカト~ル」と打っている。
と、テンテンテンと打ち上げて、真っ赤に焼けた鉄を水に入れると…
「キ、シュ~ウ!」
 
※原作者は、江戸時代の大名、肥前の国・平戸藩・9代藩主”松浦静山”
  徳川幕府の一大事、「次代の将軍選びの顛末」をギャグにしてしまった…
  このギャグが公になって、幕府のお咎めはなかったのでしょうか? 驚きです。

2009年10月02日

落語「死神」

■演者によって異なる、落語「死神」のサゲ
 
古典落語で、よく高座の演目にかかる「死神」。グリム童話の「死神の名付け親」を
読んだ三遊亭園朝(1839~1900)が、落語のネタにしたとされている。
 
◎円生師匠の「アァ~蝋燭が消える」と、高座でひっくり返るサゲが一般的だが、
   正月など、縁起がからむ高座では、その直後にむっくり起き上がり、
 「おめでとうございます」と、蝋燭の継ぎ足しに成功して生残るサゲをやる。
 
[志の輔師匠のサゲ]
◎見事…新しい蝋燭に火が灯る。死神「こんなはずではなかった」と嘆く。
 男は喜びいさんで、新しい蝋燭を手に、洞穴の外に出てきた。
 と、死神「もう外は明るいから、明かりはいらないんじゃないの…」と言う。
 「アッそうだぁ」と、男は思わず「フッ!」と、蝋燭の火を消してしまった。
 その途端…男は死んでしまった。
[その他]
◎成功して喜色満面となったところで「ハァクション!」と”くしゃみ”…
 蝋燭は消え、噺家無言で倒れこむ。
◎継ぎ足した後に気が抜け、思わずため息が出て「ふぅ~」…火を消してしまう。
 
 
702 【吉村外喜雄のなんだかんだ】 
~ことば遊び~ 「落語・死神」
 
♪お金の算段が出来ず、女房に悪態をつかれて家を飛び出してきた。
女房に言われたとおり「死んじゃおうか」 と思い始めた矢先、死神が現れた… これも何かの縁、「金儲けの方法を教えてやる」と言う。
 
病人には必ず死神が付いている。死神が病人の足元にいれば助かる。
枕元に座っていたら、いくら手当てしても、 寿命だから助からない。
足元の死神は、これから教える呪文を唱えれば、 消えていなくなり、病人は助かる。
その呪文は「アジャラ・カモクレン・テケレッツノパア」
 
男は早速「いしゃ」の看板を出した。
と…まもなく、日本橋大店の番頭がやってきて、「病人を診てほしい」と言う。
旦那の様態がはかばかしくないので、易者に厄除け祈祷してもらったら、 こちらの方向で、 最初に出会った医者に診て貰うといい… と言う。
 
旦那の寝床に通され、見ると、足元に死神が座っている。
「しめた!」と、例の呪文を唱えると、 旦那の様態が急に良くなり、全快した。
店の者喜んで、数十両の礼金を差し出した。
 
味をしめた男、次から次と病人を診るが、幸い足元に死神が座っていたので、 してしまう。頭の方に座っていると 「寿命です」… と言って家を出ると、亡くなるので、 生き神様ではないかと、評判が立った。
 
お陰で、生活も豊かになり、裏長屋から表に引っ越した。
女を囲うようになって、女房・ 子どもを追い出してしまった。
女に「上方を見たい…」と言われ、家屋敷を処分して豪遊に出た。
しかし、金は使えば無くなる…金の切れ目が縁の切れ目…女は逃げ出し、一文無しになって江戸に戻った。
 
また医者をやれば、直ぐに金持ちになれると、たかをくくっていたが、 診る病人皆、枕元に死神が座っていて、 お金にならない。
困り果てた男は一計を案じた…枕元に座っている死神がうとうとしたすきに、 人の床を180度回転させて、 足元に死神を座らせようという魂胆である。
 
気の利いた若い者を4人四隅に置いて、男の合図で回転させた瞬間に、 呪文を唱えると、死神の驚いたのなんの…「あっ!」と言って消えてしまった。
喜んだ店の者は、千両という大金を差し出す。
それはそうだろう…もう寿命が無いのを、無理やり助けたのだから…
 
得意満面になって帰る男の前に、例の死神が現れた。
「良い所に連れて行くから、付いて来い」という。
暗がりの洞穴みたいな所へ入っていくと、一面、 蝋燭がビッシリト灯っている場所に出る。激しく燃えているものや、 今にも消えそうなものなど…様々である。
 
その中に、今にも消えそうな一本があった…聞くとそれが男の蝋燭だという。
「そんなはずはない」と食い下がったが、死神は… 「さっきの病人の寿命と、お前の寿命が入れ替わったのだ」と言う。
 
あわてた男…大金を差し出して、新しい蝋燭に変えて欲しいという…
死神…新しい蝋燭を手渡して、今にも消えそうな蝋燭の火をうまく移せば、 助かると言う。
男は、必死に火を移そうとする…失敗すれば命は無い…手がブルブル震える。 なかなか火がつかず、あせる男…消えるよ…消えるよ…とうとう火が消えて… 高座の上でバタン…死んでしまった…   フリー百科事典「ウィキペディア」

2009年09月01日

落語・お神酒徳利

■世界のジョーク 「幸せを感じる時」
 
・イギリス人…「うまいブラックジョークが決まった時」
・ドイツ人  …「計画通りに物事が運んだ時」
・スペイン人…「おいしいものを食べて、 のんびり昼寝をしている
                        時」
・フランス人…「長期のバカンスに出かけようとしている時」
・日 本 人…「食事を素早くかき込んで、再び働き始めた時」
・中 国 人…「同朋が、世界一になる何かをした時」
・韓 国 人…「経済・スポーツ何であれ、日本を負かした時」
 
「働き蜂」「モーレツ社員」を自称し、働いてきた私たちの世代…
日本人が世界に与えた印象は、いまだにぬぐいきれずにいる。
今の日本に、「働いている時が一番幸せ」と感じる若者…どれだけいるでしょうか?
 
 
694 【吉村外喜雄のなんだかんだ】 
~ことば遊び~  「落語・お神酒徳利」
 
占いを題材にした噺です…なかなか面白いので、 あらすじをかいつまんで紹介ましょう
♪江戸のある八百屋。長年のお得意だったお店(たな)だが、 女中が代わってから、まるで買ってくれなくなった。それだけならいいが、 「台所のことは私の料簡しだいだ、くずぐずしていると、水をぶっかけるよ」 という調子だから、しゃくにさわってしかたがない。
困らせてやろうと、女中が旦那に呼ばれた隙に、 信心家の旦那が大事にしている、錫(すず) のお神酒(おみき)徳利を、水瓶に投げ込んでおいた。その徳利が紛失したというので、女中が旦那に叱られている。 八百屋が挨拶すると、女中が八百屋を締め出したと知って、更に叱りつけた。
 
そ知らぬ顔で訊いて見ると、大切なお神酒徳利がなくなったという。 そこで八百屋は、自分は易者をやっていて、算盤占いが得意だと言う。 紛失物なら、誰が盗んだかを言い当てるので、犯人が外部の者でなければ、 お店から罪人を出さなければならない。それが嫌で、 気楽な八百屋になったのと言った。
旦那は、品物さえ戻ってくればいいので、 占ってくれという…。
 
いい加減に算盤を弾いて、水瓶の中にございますと言明…
見事、的中である。茶と菓子を出した旦那、 三島にいる弟が相応の資産家になり、田舎にいては仕方がないので、江戸で商売を始めようと思っているが、 易者の言う易が全部違っている。
だから、占ってもらいたいと言う。
易はズブの素人の八百屋。なにかと理由をつけて断ったが、結局、 引き受けなればならない破目になった。
 
途中の小田原宿で、夜中になって亭主と番頭がやってきた。
百両という金が紛失したが、外から賊の入った様子はない。
奉公人を離れに集めて、彼らの部屋を探したが見つからないので、客の持ち物を調べさせてもらいたいという。
 
それなら、占いの名人がいるからと、起こされた八百屋。
百両という大金なので、 かな部屋で一晩算盤を弾くからと、 離れの二階を借り、 ろうそくに提灯、五両小銭で、 おむすびに三間ハシゴ、草鞋などを用意させた。
 
夜逃げするつもりで仕度を終えたところに、宿の女中がやってきた。 江戸の算占いの先生が、犯人を弾き出してしまうと知って、 顔色を変えている。 女中が言うに、 田舎の母親が急病になつたので、前借を頼んだが、 主人が貸さい。 盗みはしたが、 大金なので手をつけず、 裏のお稲荷の縁の下に埋めたとう。
『算盤に出ておりますかいの?』
「ああ、出ている、出ている…が、心配せずにまかせなさい!」
 
女中を帰すと、ポンポンと手を叩いて宿の亭主を呼んだ。
裏に稲荷がある。ここ三年祀りを怠っているので、大変なお腹立ちだ。
女中の母親が病気で、前借を頼んだのに、 貸さなかったのにも稲荷はご立腹あると… なにもかも稲荷のお告げにして、ケリをつけてしまった。
 
大先生だというので、次々と依頼人が押しかけたが、八百屋の姿が見えない。
『うーん! こんどは先生が紛失した』

2009年07月30日

江戸小噺・二題

ことば遊び「駄じゃれ」
 
落語には、酒飲みを扱ったものが沢山あります。「試し酒」は、大酒飲みが五升の酒を一気飲みする、すごく面白い落語です。 その中に出てくる駄洒落。
 
「相撲に負けて高下駄履けば カッタカッタと音がする」
「お酒のむ人花ならつぼみ 今日も咲け咲け(酒酒)あすも咲け(酒)」
これは畳語としても紹介しました。
 
・駄じゃれではないが、聞き違えたために大騒動になった話…
飛行機の中で、アメリカ人…思わぬ場所に友達が乗り合わせているのを見て、
ハァイ!ジャックと、友達の名前を呼んだ。
 
隣の席でうつらうつらしていた日本人…突然の大声にびっくり勘違いして…
ハイジャックだァ~と叫んで、 機内騒然となった…本当にあった話です。
 
 
686 【吉村外喜雄のなんだかんだ】 
~ことば遊び~  「江戸小噺・二題」
 
■夕立屋
「暑いねぇ、こういう暑い日には、 一雨ザーッと来てくれるとありがたいんだけど…」
夕立屋『え~夕立や夕立、え~夕立や夕立』
「なんだい、あの夕立屋ってのは、雨を降らそうってのかな。
面白い、呼んみよう…おお~い、夕立屋」
夕立屋『へい、毎度ありがとうございます』
 
「お前さん、夕立屋ってぇくらいだから、雨を降らせるのかい?」
夕立屋『へぇ、さようでございます』 
「「へぇ~、で、いくらなんだい」
夕立屋『へぇ、これはもうほんのおこころざし程度で結構でございます」
「そうかい、じゃさっそく、三百文ほど降らしてもらおうか」
夕立屋『へぃ、かしこまりました」
 
なんてんで、男はしばらく呪文を唱えておりましたが、 やがて雨がザーッと降ってまいりまして…
「おや、お陰で涼しくなったよ、だけど、こうして雨を自由に降らせたり、 止ませたり出来るなんて、お前さん、ただ者じゃないね」
 
夕立屋『はい、実は私は…空の上に住んでおります、龍でございます』
「なるほど、道理で不思議な術を知ってなさる。だけどね、 お前さん、夏暑いは、こうしてお前さんが、 雨を降らしていれば商売になるけれど、冬、 寒くなったら、商売はどうするんだい?」
 
夕立屋『へぇ、寒くなりましたら、倅の子龍(炬燵)をよこします』
 
おすわ
あるお代官の屋敷で、粗相をした女中の”おすわ”、 代官に切り捨てられまして、井戸へ投げ込まれてしまいまして…
ところが、その次の日から、井戸のある庭先で、夜中になると、
ばたばたっという音、そして、 火の玉がボ~ッと障子に写りますと…すすり鳴くような声で、 「おすわど~ん…おすわど~ん」と声がする。
 
代官、すっかりおびえてしまいまして、屈強な浪人者を雇いますと、 この幽霊退治を命じました。
浪人者が、庭に面する部屋の中で、こう待っておりますと…
夜中、ばたばたという音がしたかと思うと、 障子に火の灯りがボーッと写りまして、「おすわど~ん… おすわど~ん」
 
浪人が、「おのれ…おすわ…迷ったか」と、障子を開けてみますと、 夜泣きソバ屋が、渋うちわで、ばたばた火を起こしながら、
「おそばうど~ん…おそばうど~ん」

2009年07月02日

落語「ぞろぞろ」

■日本漢字能力検定協会「変換ミスコンテスト」   
・理事長親子が
 采配を振るっていた頃        … 「検定協会、 良く出来た内容です」
                     「ぜんざい三杯の誘惑に負けた」
                                            「お金の貸し借りは現金です」
・理事長親子が
 収賄・横領の疑いで辞任      … 「検定協会、 欲で汚いようです」
                    「全財産倍の誘惑に負けた」
                                       「お金の貸し借りは厳禁です」
 「深くお詫び申し上げます」 → 「不覚お詫び申し上げます」 
 
○エントリー作品から
「500円でおやつ買え」 → 「500円で親使え」
「言わなくったっていいじゃん」 → 「岩魚食ったっていいじゃん」
「帰省中で渋滞だ」 → 「規制中で渋滞だ」 → 「寄生虫で重態だ」
「助走は出来るだけ速く」 → 「女装はできるだけ早く」 
「正解はお金」 → 「政界はお金」
「根気よく待ったかいがあった」 → 「婚期よく、待ったかいがあった」
「私と居てください」 → 「渡しといてください」
 
 
678 【吉村外喜雄のなんだかんだ】  
~ことば遊び~ 「落語・ぞろぞろ」
 
落語の値打ちは、噺の面白さと”落ち”で決まる。
最後の”落ち”で、噺を何倍も面白くし、 味わい深いものにしてくれる。落語フアンにはそこがたまらないのです… 「ぞろぞろ」は、そんな噺です。
 
♪浅草田圃の中ほどに、小さな寂れた稲荷の祠。
すぐ近くに流行らない茶店があった。
ある日、その茶店の主人が、お稲荷さんにお参りをして帰ってくると、 まもなく夕立になった。珍しいことに、客が飛び込んできて、雨宿りをした。
 
雨も上がったので、店を出ようとした客が、道がぬかっているので… 主に「わらじはないかい」と訊いた。
主は、一年前から一足売れ残っている、天上からぶら下がっているわらじを薦めた。
「いくらだい?」『八文でごぜえやす…引き抜いてくださいまし…』
客は八文置いて、わらじを引き抜いて履き替え、店を出ていった
と…また客が入ってきて「わらじをくれ…」
『一足残っていたわらじ…今しがた売れたところで…もう有りません』
「なにを言ってんだい…一足ぶら下がっているじゃねえか…」
 
『あれッ?』と思いつつ…売った。
客は八文置いて、わらじを引き抜いて履き替え、店を出ていった
と、またもや客が…断わると…客は
「なに言ってんだい…一足ぶら下がっているじゃねえか…」
主はまた『あれッ?』と思いつつ…売った。
 
よくよく見ると、客がわらじを引き抜いて、履いて店を出て行くと、
天井裏から新しいわらじが、ゾロゾロッと下りてくるのだ。
「こりや、稲荷のご利益に違いねぇ」と大喜び。
これが口伝に伝わり、評判となって、毎日毎日えらい行列…
 
と、この店の向かいの流行らない床屋。
「近ごろはとんと客が寄り付かなくなった…それに引き換えなんでぇ… あの茶店の人だかりは…」
 
親方、主から”ぞろぞろわらじ”の話を聞かされて、 お稲荷さんへすっ飛んでいった…「床屋もわらじのように、ゾロゾロ繁盛しますように…」 と拝んだ。
店に戻ってみると、珍しいことに客が待っていた…
 
「急いでいるんだ…ヒゲをやっておくれ…」
ありがてえ…早速ご利益様々だ。この客が帰ると、後から、後から新しい客がゾロゾロ…その客が帰ると、また新しい客がゾロゾロ…
『ゾロゾロ、ゾロゾロ客がやってくるなんて、こんな嬉しいことはねぇ…』
親方は腕によりをかけて、客の顔をツーッと剃ると…
あとから、新しいヒゲがゾロゾロ…
                               三遊亭円窓「五百噺ダイジェスト」から

2009年06月05日

落語・あたま山

■上方落語「一門」
メルマガ629号で、アメリカで英語落語にチャレンジしている"桂かい枝"師匠を紹介しましたが、06年、天神橋筋に「ライブ繁昌邸」が竣工するなど、 近年上方落語の人気が急上昇。
以下、上方で活躍する「一門」です…

[笑福亭松鶴一門]…"笑福亭仁鶴"一門59名(名六代目笑福亭松鶴は故人)
             弟子に鶴瓶がいる
[桂米朝一門]…三代目"桂米朝"一門58名
          弟子に、月亭可朝、月亭八方、枝雀、雀々、ざこば、などがいる
[桂文枝一門]…"桂三枝"一門42名(五代目桂文枝は故人)
          弟子に、きん枝、文珍、かい枝 がいる)

[桂春團治一門]…3代目"桂春團治"一門24名
[露の五郎兵衛一門]…2代目"露の五郎兵衛"一門12名
               今年3月30日死去。前・上方落語協会会長
[桂米團治一門]…昨年、五代目"桂米團治"を、57年ぶりに、桂米朝の息子
           "小米朝"が襲名した。
[林屋染丸一門]…4代目"林屋染丸"一門11名
[森乃福郎一門]…2代目"森乃福郎"


【吉村外喜雄のなんだかんだ - 670】
~ことば遊び~ 「落語・あたま山」

先々週の土曜日、香林坊赤羽亭・四列目のかぶりつきで、「桂米助、桂雀々・東西落語ふたりの会」を楽しんだ。
上方落語界で異彩を放つ"桂雀々"…もっさりと噺すが、オーバーなアクションが売り物で、身振り・手振りよろしく、 あほな人物をやらせたら天下一品!

この日の出しものは、得意ネタ「あたま山」…期待通り、お腹がよじれるくらい大笑いした。
645号の「落語・だくだく」は、噺家が自らの話芸を駆使して、 聴き手の想像力を喚起して笑わせる噺です。「あたま山」は、それを上回る奇想天外な噺…聴き手をイマジネーションの世界へ… 落語ならではの語り口で引き込んでいく。

♪けちな男がいて、さくらんぼを食べたが、もったいないからと、種まで飲み込んでしまった…この種、温かい腹の中で根をおろし、 やがて頭のてっぺんに芽を出した。
桜はすくすく育ち、幹が太くなって枝も広がっていく…やがて春になると花が咲いて、"あたま山の一本桜"と評判になった。
(ここからにぎやかなお囃子が入り、聴衆をイマジネーションの世界へ…雀々の話芸が冴える)
それを伝え聞いた"たいこもち"が、さっそく旦那に持ちかけて…
「それは見事でございますよ…どうです、出かけようじゃございませんか…
花奴に歌奴、冷奴なんぞ、芸者衆も勢ぞろいしておりますから…」

という調子で大店の旦那が、たいこもちや芸妓衆を連れて花見を始めるし、町内の連中も群れをなしてやってくるようになった。
花を見て楽しむだけならなんの問題もないが、花見客の目的は飲んで騒ぐこと…。

それも朝っぱらからドンちゃん騒ぎで、飲めばへどを吐くし、喧嘩にもなる。
「なにィ? 俺の言うことォ聞けねえか…」などと、江戸っ子は気が短い。
あまりうるさいので頭を振ると、「地震だ!」と驚き、大騒ぎして逃げてしまう。

こんな木があるからいけないのだと、桜の木を引き抜くと、頭の真ん中に大きな窪みが出来てしまった。 この男が用足しに行くと夕立にあって、穴に水が溜まった…が、根がけちでものぐさだから、水を捨てようとしない。

するとボウフラが湧き、それを餌にフナだのコイだの、ドジョウなどが湧いて、それを知った子供たちが釣りに来る。朝から夕方まで、 わめいたり歓声を上げたりと…そのうるさいこと。

子供が帰って一息ついたと思う間もなく、夜になると男たちが夜釣りにやってくるが、これも黙って釣るわけではない。酒を飲んだり、 女にもてた自慢話をしたりと、うんざりするほどだが、やがて舟を出す連中まで現れた。
投網で魚をごっそり獲ろうというのである。

櫓を漕ぐ音がギイギイとうるさいし、網を投げれば大きな音がする。
しかも、「舟をあっちィまわせ」だの、「揺らすと網が打てねえじゃないか」などと大騒ぎし、その挙句が「なにが釣れたい?」 「わらじが釣れた」「冗談じゃねえぜ」と馬鹿笑い。
こううるさくてはとてもたまらないと、頭の池に自分で身を投げてしまった…。

野口 卓著「古典落語の名作」より

2009年05月08日

落語・道具屋

■「ラ・フォル・ジュルネ」

連休の4日間、四国・柏島へスキューバーダイビングに出かける予定でしたが、黄砂で目を患い、やむなくキャンセル…。
その代わり5月3日、’09ラ・フォル・ジュルネ金沢音楽祭の指定席を求めて、県立音楽堂コンサートホールへ…。
モーツアルトの交響曲や歌劇の序曲、ミサ曲など、オーケストラ演奏を堪能した。
「ラ・フォル・ジュルネ金沢」は、昨年に続き、金沢では二回目の開催になる。
今年のテーマは「熱狂の日~モーツアルトと仲間たち~」
会場周辺は、県内外から音楽を楽しむ大勢の人たちで溢れた…。

1995年…「誰でもが楽しめるクラシックの音楽祭を作ろう」と、フランスのナント市で「ラ・フォル・ジュルネ」が誕生した。以後、 フランス国外に広がり、日本では、歴史と現代が融合した文化都市"金沢"が、東京に続いて、世界で五番目の開催都市になった。


【吉村外喜雄のなんだかんだ - 662】
~ことば遊び~  「落語・道具屋」

今日は、バカバカしいお笑いを一席…橘家圓蔵師匠(元・月の家圓鏡)の十八番「道具屋」。
落語の舞台は、江戸庶民が住む長屋。大家と店子が繰りなす…人のいい、少々間の抜けた熊さんや八っつあん、与太郎が、 ばかばかしい失敗を繰り返す…。
そのバカさかげんを語る圓蔵師匠の芸の深さが、大爆笑をさそうのです。

♪いい大人になっても、定職に就かない与太郎。
心配する叔父さんが、露天の道具屋をやらせようと、荷物を持たせる。

しかし、首がすぐ抜けるお雛様とか、ヒョロッとよろけると、ビリッと破れる"ヒョロビリのももひき"とか、 叔父さんが火事で拾ってきたのこぎりとか、本物の短刀そっくりの木刀とか、俗に「クズ」と呼ばれている、陳腐な代物ばかり。

まあ、それでも最初はこんなものだと、路上に店を出した。
「さあさあ、寄ってらっしゃい見てらっしゃい。道具屋ができたよ…。
できたての道具屋、あったかい道具屋だ…ホカホカの道具屋だよ!」

まるで饅頭でも売っているような口調で、呼び込みをしていると、徐々に客が集まる。
『おい、そこにある"ノコ"を見せな』
「へ? ノコ? のこにあります?」
『くだらねえシャレを言うな、のこぎりだよ。むむ…、こりゃ少し甘いな』
「え~っ? 甘い? ちょっと貸してください…うわっ、こりゃ渋いよ!」
『バカ、味じゃないよ、刃の焼きが甘いんだよォ』
「あ、焼きのことですか。それなら甘くありませんよ。叔父さんが火事場で拾ったんだから」
『ひどいもん売るんじゃない、バカ!』

怒って帰る客。このような買わない客を、業界用語で"しょん便する"という。
そう教えられた与太郎は、もう二度と"小便"させないと、心に誓うが…

『おい、そのももひき見せてくれ。ほう…なかなかあったかそうだな…気に入ったよ、いくらだい?』
「値段を聞いているけど、買うのかしら…あのね、これは"小便"できないよ」
『え? だって前はちゃんと開いてるよ。小便なんか簡単にできそうだけどねえ」
「ほら、やっぱし小便しようとしてやがる。この野郎、絶対にさせないぞ!」

『そうなの? 小便もできないんじゃ仕方ないや。じゃ買わねえや、あばよ』
「オイ待て! 小便できないって言っているのに…」
「あっ違う! その小便ならできるよ! こりゃ小便違いだ…悔しいね」

次の客は短刀を見せろと言って、抜きにかかるが、なかなか抜けない。
与太郎にも手伝わせて、思い切り引っ張っているが…
『う~ん、よいしょ、なかなか抜けんな』
「う~ん、こらしょ、そりゃ抜けませんよ」
『う~ん、よいしょ、何でじゃ』
「う~ん、こらしょ、木刀ですから…」

『早く言わんか、この大バカもの! 手間どらせおって…ちゃんと抜けるやつはないのか』
「へぇ、お雛様の首が抜けます…」

2009年04月03日

落語・痴楽つづり方狂室

■国民性「3匹のハエ」

アメリカ人、オランダ人、アフリカ人、日本人が戸外で食事をしていました。
するとハエが一匹飛んできて、アメリカ人の皿に止まりました。
と、アメリカ人はバッシーンと、本で叩いて殺してしまいました。

するとまた一匹、今度はアフリカ人の皿に…
するとアフリカ人は、パッとつかんで、食べてしまいました。

また一匹、今度はオランダ人の皿へ…
オランダ人は、静かに手を伸ばして、そっと捕まえると、
アフリカ人に差し出して言いました…「さあ、いくらで買いますか?」

その状況を見ていた日本人…携帯を持って席をはずした。
東京へ国際電話をかけるためである。
「モシモシ、アフリカにおける食料としてのハエの需要を調べてくれませんか?
有望な輸出商品になるかもしれません…」


【吉村外喜雄のなんだかんだ - 653】
~ことば遊び~ 「落語・痴楽つづり方狂室」

前回のことば遊び645号は、 四代目柳亭痴楽(~1993)の「だくだく」でした。
故・痴楽師匠は、私の好きな落語家の1人で、生まれはお隣の富山県です。
「破壊し尽くされた顔」をネタに、「柳亭痴楽はいい男…」のフレーズで、ラジオ・TVの人気者になった…ご記憶の方も多いことでしょう。

十八番は、新作落語「痴楽つづり方狂室」「恋の山手線」。
顔をくしゃくしゃにして、独特の節回しで演ずる…
そこで今日は、「恋の山手線」のさわりを一席。

♪柳亭痴楽は良い男、鶴田浩二や錦ノ助、それよりもっといい男…
上野を後に池袋、走る電車は内回り、私は近頃外回り…
痴楽つづり方狂室の始まり…

彼女は綺麗なうぐいす芸者(鶯谷)、にっぽり(日暮里)笑ったそのえくぼ…
田畑(田端)を売っても命がけ…我が胸の内、細々と(駒込)、
愛のすがもへ(巣鴨)伝えたい…おおつかな(大塚)ビックリ、故郷を訪ね、
彼女に会いに行けぶくろ(池袋)、いけば男がめじろ押し(目白)…

たかたの婆や(高田馬場)新大久保のおじさん達の意見でも、
しんじゅく(新宿)聞いてはいられない…
夜よぎ(代々木)なったら家を出て、腹じゅく(原宿)減ったと、渋や顔(渋谷)
彼女に会えればエビス顔(恵比寿)…
親父が生きて目黒い内は(目黒)、私もいくらか豪胆だ(五反田)…

おお先(大崎)真っ暗恋の鳥、彼女に贈るプレゼント…
どんな品がわ(品川)良いのやら、魂ちいも(田町)驚くような、
色よい返事をはま待つちょう(浜松町)…
そんな事ばかりが心ばしで(新橋)、誰に悩みを言うらくちょう(有楽町)…
思った私が素っ頓狂(東京)…
何だかんだ(神田)の行き違い、彼女はとうに飽きはばら(秋葉原)…
ホントにおかちな(御徒町)事ばかり…やまては(山手)は消えゆく恋でした。

痴楽つづり方狂室終わり…♪

2009年03月03日

落語・だくだく

■"柳屋小三治"師匠が考える"笑い"とは

「人を笑わせるのではない 笑ってしまうのが芸」

小三治の落語は"奇"をてらわない。無駄を削ぎ落とし、ただタンタンと語る…。
落語界を背負う、当代屈指の古典落語の最高峰と評される柳屋小三治師匠。

人を笑わせたくて噺家になる人が多い。修行を積んでいくうちに、人を笑わせることが、たいしたことではないことに気づく… 分かってくる。
今人気の若手漫才師のように、「ガハハ…」と笑わせようとしている間は、まだ一人前ではない。

笑わせようとして、笑わせるのは、同じことをやっていると、いずれ客がついて来なくなる…限りがある…飽きがくる。自分も飽きるし、 聞いている客も飽きる。
次々と新しい笑いを、客に提供しなければならない。

柳屋小三治師匠が考える"笑い"とは、面白い日常の話をそのまんま話して、笑わせる。
落語は、笑わせるためにやっているのではない。
聞き手が語りに引き込まれて、そこから自然に湧きあがってくる"笑い"…それが素晴らしい芸になる。

笑わせるのではなく、お客が"つい笑ってしまう芸"は、新しいネタを考えなくていい…プッシュがいらない… ひたすら落語の世界を演じていればいい。
面白く出来ている落語は、笑いが多い少ないではなく、「ヘェ~ヘェ~」と、お客が笑いに引きこまれ、お客の目付きが変わってくる… 輝いてくる。


【吉村外喜雄のなんだかんだ - 645】
~ことば遊び~  「落語・だくだく」

落語家は「想像力を生み出す芸人」…観客のイマジネーションのために、扇子や手ぬぐいを駆使して、どれだけ演じられるか… 想像力を喚起する落語という芸能…無限の可能性を秘めている。

想像力を喚起させてくれる落語といえば、「だくだく」がある…
狂言「棒しばり」などにも相通ずる、落語ならではのネタ噺です。
八五郎と泥棒が、常識では考えられない状況の中で、とぼけた洒落っ気を演じるのを、寄席のお客様に想像力を働かせていただき、 楽しんでもらおうというもの。

「だくだく」は、客席から笑いが取れないと、悲惨な結果になってしまう…
そんなこ難しい落語ですが、故・柳亭痴楽が得意ネタにしていた。
痴楽といえば、「痴楽つづり方狂室」や「恋の山手線」が有名。
顔をくしゃくしゃにして、独特の節回しで噺す、個性溢れる落語家だった…。

♪貧乏人の八五郎、長屋へ引っ越したはいいが、かついでいくのが面倒くさいと、家財一切、古道具屋に売っぱらってしまった。
家財道具が何もないから、新居はからっぽ。そこで、絵描きの先生に頼んで、壁一面に張った紙の上に、家具の絵を描いてもらって、 気分だけでも"ある"つもりになろう…と考えた。

床の間、箪笥、金庫、長火鉢など、長年欲しかったものを、次々と注文。
金庫はちょっと開いていて、銭がちらっと見えるように…だとか、
鉄瓶がチンチン煮立って、湯気を出しているところとか、猫があくびをしているところとか、なげしに先祖伝来の槍を架けるとか… やたら変な注文が飛び出す。

出来上がって、八五郎、すっかり新世帯にいるような気分になって…床につく。
その晩泥棒が忍び込んだ。その泥棒そそっかしくて、その上…近眼。
盛り沢山の家財道具に歓喜したのもつかの間…盗もうとして手に触れると、すべて絵に描いたものばかり。びっくりするやら、感心するやら… 。

このまま帰ったのでは面白くないと、家の主(あるじ)がそういうつもりなら、こっちも"つもり"でいこうと…仕事を始めた。
まず、「金庫を開けたつもり…拾両ばかり盗んだつもり」
「箪笥の引き出しを開けたつもり」と、声を出しながら、絵に描いてある箪笥の引き出しを開ける仕草をする。

「大きな風呂敷を取り出して、十分に広げたつもり」
「箪笥の中から、結城紬の小袖を一枚盗ったつもり」などと、
次々と品物を風呂敷に入れる仕草を繰り返す。
「目ぼしい物は盗んだつもり」
「大きくふくらんだ風呂敷包みを、背負ったつもり」と…逃げ出そうとする。

さっきから目を覚まして、泥棒の様子を見ていた八五郎…
そのまま見逃すわけにはいかないと、跳ね起きる。

「なげしに架けた槍をおっ取って、リュウリュウとしごいたつもり」と、
今しがた泥棒がやっていたように、声を出して捕まえる仕草を始めた。
とどめとして、「泥棒目がけて脇腹をブスッと突いたつもり」…と、
泥棒、脇腹を押さえて…「う~ン、いタタタタ…だくだくッと、血が出たつもり」

※新宿末広亭で、柳亭痴楽がこの噺を演じて、高座から下がりかけた時、
1人の客が、「ア~ア、面白かった…つもり」と言った。
痴楽、そちらを振り向き、「いやな客…のつもり。ポカッと横っ面を殴り倒した…つもり」と言い返した。場内、笑いの渦に包まれた。

2009年02月03日

落語・牛ほめ

■回文
たけやぶやけた」のように、後ろから読んでも、前から読んでも、同じ文や語句を「回文」といいます。
最近のコンテスト入賞作では、「いかした歯科医」「お帰り!笑顔」 がある。

長き世のとおの眠りのみな目覚め波乗り舟の音の良きかな
江戸時代、宝船に乗った七福神の絵に、この回文を書き添え、枕の下に敷くと、
良い初夢を見ることができ、縁起が良いとされた。

丑年にちなむ回文に、「さあ清水走れ丑年嬉し弾みし朝」がある。
のどかに牛が草を食む田舎…いいですね…「いなかいかない

粟津温泉近く、旧8号線沿いのモーテルの看板に、「AKASAKA」があった。
前から読んでも、後ろから読んでも"赤坂"


【吉村外喜雄のなんだかんだ - 637】
~ことば遊び~  「落語・牛ほめ」

丑年にちなんで、前座噺の演目として寄席によくかかる、「牛ほめ」を一席。
バカ息子の顔を立てようと、父親が秘策をさずけるが…最後のオチ…フッフッ

♪いつもボーッとしている息子の与太郎に、新築祝いの挨拶の口上を
覚えさせようとする父親。
「ロクに挨拶もできない」と、いつも小言ばかり言っている、叔父の左兵衛を見返すには、
絶好の機会である…。
首尾よく家を褒めて、叔父をいい気持ちにさせれば、小遣いが貰えるからと、
懸命に、与太郎をその気にさせようとする父だが…。

「結構なご普請でございます。天井は薩摩の鶉木理(うずらもく)。
畳は備後の五分縁(べり)で、左右の壁は砂摺(ず)りでございますな。
庭は御影づくりでございますね…」
という簡単な褒め口上を、なかなか覚えられない与太郎。
結局、口上を紙に書いてもらって、叔父の家へ向かう。

さて、しどろもどろになりながらも、なんとか口上を言い終えた与太郎。
何かを読みながら喋っているんじゃないかと、疑う叔父を尻目に、そそくさと台所へ…。

台所の柱に大きな節穴があり、悩みどころになっている叔父。
じつは、この節穴に、父が息子に授けた秘策があった。
竣工前、家を見に行った時に思いついた、とっておきの考えを息子に言わせ、叔父に一泡吹かせようという魂胆である。

『叔父さん、ここに大きな穴があいているけど、気にならないの?』
「ボーッとしているお前でも気付いたか…いや、気にはなっていたが、なかなかいい考えが浮かばず、どうしたものかと悩んでいるんだよ」

『心配ないよ叔父さん、秋葉様(防火の神様)のお札貼ったら…
穴が隠れて火の用心になるよ』

この言葉に感心した叔父は、「お小遣いをやる」と約束…
めでたし、めでたしとなるはずだったが…
調子に乗った与太郎は、叔父が大切に飼っていた、牛まで褒めると言い出す…。

『あれ、叔父さん、この牛の後を見て…大きな穴があいているよ、気にならないの?』
「それは尻の穴だよ。そんなもの気にならないよ」
『いやいや、心配ありません。秋葉様のお札をお貼んなさい』
「おいおい、バチがあたるぞ…そんな所に張って…どうするんだ」

『穴が隠れて"屁の用心"になります』

金原亭馬生「落語名作100選」より

2008年12月19日

江戸小噺・酒百態

■おじん駄じゃれ

毎・日曜夕方5時半から、欠かさず見ている「笑点・大喜利」。
のど自慢、水戸黄門に並ぶ、長期放映番組・御三家です。
師匠たちが笑いを競い合う中で、とりわけ異彩を放つ"林家木久扇"
「雨が漏るよ…ヤーネー」など、毎回おなじみの"駄じゃれ"を連発…。
そこで、"木久扇おじん駄じゃれ"あれこれ…

「九州の山へ登ったよ…あッそー」
「台所、ここにしようと思うんだけど…勝手にしろ!」
「隣の空き地に囲いが出来たよ…へぇー」
「お隣さんに塀が出来たよ…かっこい~」

「おい、あそこへ坊さんが通るよ…そうかい」
「この帽子、ドイツんだ?…オランダ…でもイラン」
「灰皿がこぼれたよ…はい、拭きましょう」
「土瓶が漏るよ…そこまで気づかなかったよ」

「この暦は誰んだ?…彼んだ~」
「カラスがお前の頭に、なんかおっことしたよ…フ~ン…(さわって)クソー」
「これはタコですか?…イカにも」
「美味しいね、この肉、鴨かい?…かもね」

"駄じゃれ"が大受けした時の、木久扇師匠の満面の笑顔が浮かんでくる…。


【吉村外喜雄のなんだかんだ - 627】
~ことば遊び~ 「江戸小噺・酒百態」

落語には、酒にからむ噺がたくさんあります。
酔っ払いの、へりくつ亭主の本音がポロっと…「替わり目」
酒に酔った久六が豹変して、笑いを誘う…「らくだ」
貧乏長屋の大家と店子が、連れ立って花見に行く…「長屋の花見
                             (‘07.4.6配信)
のんべえの似た者親子の、ほのぼのと心温まる噺…「親子酒
                             (‘08.1.8配信)
その他「試し酒」「花見の仇討」「青菜 (‘08.8.29配信)」など、
江戸庶民の人情噺が、おかしくも楽しく伝わってくる。

「一杯は、人…酒を呑み、二杯は、酒…酒を呑み、三杯は、酒…人を呑む」
"お酒でしくじった"苦い思い出の一つや二つ、誰にも思い当たるものがあります。
私は下戸なので、直ぐにお酒に飲まれてしまいます。

♪「お酒呑む人花ならつぼみ、今日もさけさけ、明日もさけ」なんてぇます。
また、「酒呑みは やっこ豆腐にさも似たり 初め四角で あとがぐずぐず」
なんてんで、お酒呑みにも、いろんな上戸がございますようで…

「怒り上戸」「泣き上戸」なんてんで、一番罪がないのが「寝上戸」…
酔っ払うとたわいなく寝ちまうなんてんで、罪がありません。
「笑い上戸」なんてのが一番うらやましい…本人も一座も陽気に盛り上がるようで…

「わっはっははは…ま…ね…君ね…今日はゆっくり…ゆっくり呑もうじゃないか。
ええ…帰るぅ…はっはっはっは…バカを言うな…ええ…うちから電話があったぁ
…わっはっは、何だってぇ?…うぅん?隣が火事…あっはっはっはっは、そりゃ面白い…」
なんてんで…呑めない私には、面白くもなんともありません。

ま、中には、泣き上戸なんてんで…
「まぁね…今日は、君とゆっくり…ゆっくり呑もうと思ってさ…あ…ありがとう…グスッ、 君なら分かってくれると思うんだよ。えッ、何がって…部長だよォ…何もあすこまで言う ことはないと思うんだよ。僕だって、怠けている訳じゃないんだから…それをだよ… みんなの前で…あすこまで言うなんて…僕、立つ瀬が無いじゃないか…トホホホホホ」
泣きながら酒を呑んでおりまして…

見ていて面白くないのが「薬上戸」…(呑みそうで呑まない、嫌そうな顔をして、ようやくの思いで呑み込む)…「ッくは~、 もう一杯」なんてんで。

見ていて面白いのが「壁塗り上戸」。むやみに壁を塗りたがる人がおりまして…
「ええ…もう呑めない…もう…今日はね…本当に呑めない…もう…たくさん…
もう入らない…もう呑めない…いいいいい」
(さかんに壁を塗るように、手を左右に振る)なんてんで、四隅を塗り固めたりいたしまして…。
中には「鶏上戸」なんてんで、にぎやかなのがございまして…
「おッとととととととと、ッくぴ…けっこう」

12月と新年は、お酒を呑む機会が多い…呑み過ぎ、飲酒運転には、くれぐれもご注意を…。

2008年11月21日

江戸小噺

■ことば遊び 「わらべ・まじないことば」

 『くわばらくわばら  つるかめつるかめ
  夢になれ夢になれ  とっちゃすて とっちゃすて
  ちちんぷいぷい  ごようのおんたから
  モシャシャのシャモシャ  シャシャモ シャシャ
  モシャシャなければ  シャシャもシャもなし   』

<解 説>
・雷が鳴ったら、蚊帳を吊り、線香を焚いて「くわばらくわばら」と唱える。
・縁起の悪いことをしたり、言ったとき、「つるかめつるかめ」と唱える。
・災難を夢にとりなして、「夢になれ夢になれ」と唱えて、払い除ける。

・「とっちゃすて とっちゃすて」と三度唱えると、しもやけにならない。
・子どもが擦り傷などをこしらえたときに、「ちちんぷいぷい…」と唱える。
・糸かこんがらがったときに、「モシャシャの…」と唱えると、ほぐれてくる。


【吉村外喜雄のなんだかんだ - 619】
~ことば遊び~ 「江戸小噺」

落語は最後の"落ち"で…笑いを締めくくる。聴き手は"落ち"に込められた話芸に、りゅう飲を下げる。
"落ち"にはいろいろあって、ひねった表現の「考え落ち」、最後の一言でスッキリと決まる「途端落ち」、噺の途中に伏線が張ってある 「仕込み落ち」など、様々な手法があって、落語を楽しませてくれる。

一口小噺にも"落ち"がある。落語は噺が長くて、「ジョークのネタに…」ちょいと…なんていうわけにはいきませんが、小噺は、 覚えておけば、"かくし芸"になったりします…

■小噺-1
鼠が4匹ばかり、台所の梁(はり)の上を、つながって歩いております。
それを見た男、「おい、あの鼠を止めてみせようか!?」
『へえェ、そんなことができるのかい?』
「俺様の自慢は猫の声色(こわいろ)よ…ニャゴ、ニャゴ、ニャーゴー!」

鼠がピタッと止まって、こちらをうかがっている…。
「どうだい!? うめェもんだろう!」と、鼻高々な男。
それを見ていた鼠たち…
『親分、もう行きやしょうぜ! あんな下手くそな音色に、
 どうして立ち止まるンで…?』
「あれでも一所懸命やっているんだ。たまには聞いてやらなくちゃ、
 励みになるまい…」

■小噺-2
こちらは年頃の娘と、親父でございます。
真夜中に、表で犬がやかましく吠え立てております。
眼を覚ました親父が、隣に寝ている娘を起こしまして、
「おい、犬がバカに騒いでいる。何かあったんじゃないか…、
 お父っあん、腰が痛いんだ。お前、ちょっと起きて、外ォ見ておくれ…」

娘が、雨戸のすき間から見ますてェと、野犬の群れが乱交パーティーの真っ最中…。
「キャンキャン、キャイン」…鳴きながら、雄雌つながっております。
顔を赤らめた娘は、慌てて雨戸を閉めましたな…。
「どうだったい?」
『別に何でもないわ…』
「おいおい、こんなに犬が騒いでいるんだ。何でもないことはないだろう。
 よく見なくちゃいけませんよ…」

小言を言いながら起き上がった親父…
雨戸を開けて外を見るてェと、「え、へへん!」と咳払いを一つして、「なるほど、別に何でもないわいな…」

提供「風亭弥次郎」

2008年10月24日

江戸小噺・おなら

■ことば遊び「屁の河童」

「語源」を探って、「へェ~」と納得するのも、ことば遊びの面白さです。
今日は「屁の河童」 の語源をたどってみます。

"たやすい"ことを「屁の河童」という。何とも可笑しな言葉です。
語源をたどっていくと、「木っ端の火」になる。

七輪で火をおこすとき、火種に木屑を入れ、燃え上がったところへ炭を入れる。
この木っ端は、ぱっと燃え上がるが、すぐ燃え尽きてしまうので、手早くしなければ間に合わない。そこで江戸時代、 "はかないもの"を「木っ端の火」と言った。

しかし、このままでは面白くないので、江戸っ子特有の洒落で、「河童の屁」と言うようになったのです。
いつのころからか、それがひっくり返って「屁の河童」となり、言葉の意味もひっくり返って、 "たやすく出来る"の意味に使われるようになった。
これこそ「へぇ~」ですね…。


【吉村外喜雄のなんだかんだ - 611】
~ことば遊び~ 「江戸小噺・おなら」

出張先での朝食…和食か洋食かと問われれば、惑わず洋食コースを選ぶ私…。
家でも、パン2枚にバターを塗り、目玉焼きソーセージに牛乳を添えるのが、長年の定番…。
昨年から、メタボを改善しようと、キャベツを刻んで皿に盛り、リンゴ半分と、五郎島の"蒸かし芋"2切れを添えて朝食にしている… 食生活を改善しようと始めたのはいいが、日に一度、所構わずオナラが出るのは問題です。

落語や小噺の下ネタには、「おなら」を題材にしたものがいろいろあります。
緊張した時に限って出るのが「おなら」。「場所柄をわきまえず…」と、怒るわけにもいかない…当の本人は、もっとバツが悪いのだから…。

■江戸小噺その一 「ただの風」
あるところに、大変けちな男がおりまして、くれるものなら、なんでももらうと言う。
「おおう、おめェかい…くれるもんならなんでももらうっ、てェやつは」
『へェ、左様でございます』
「じゃ、俺はお前にやりたいものがあるんだが、貰うかい?」
『ええ、いただけるもんなら、なんでも…』
「そうかい、実はな、俺はさっきから、腹が張ってしょうがねェんだ。
屁をお前にやるから、後ろへ回んな、いいか…」

なんてんで、男が後ろへ回りますと、大きなのを一発「ブー」。
と、男はそのおならを、両手で、ぱっとつかみまして、バーと駆け出しまして、どうするのかと思うと、自分の畑へ参りますと、 この手をパーッと広げまして、「ただの風よりましだろう…」

■江戸小噺その二 「仁王様」
あるとき、浅草の観音様に泥棒が入った。
賽銭箱を風呂敷でくるみますと、これをしょいまして、野郎、裏から逃げればいいものを、表から堂々と逃げようとしまして…。
ところが、表には門番の仁王様がいらっしゃいますから、逃がす訳はございません。
「この野郎ふてェ野郎だ!」なんてんで、泥棒の襟首をつかまえまして、目よりも高く吊り上げると、そのまま地面へ叩きつけまして…、

泥棒が四つん這いになると、上から、あの、何文あるか分からない大きな足で、ぐぐぐぐぐっと、踏みつけます。
ってェと、かの泥棒、下腹へ力を入れて力みましたから…たまりません。
さっそく大きな"おなら"を「ブゥ~ッ!」。

仁王様「む、むむむむ、臭せェ~もの…」(曲ェ者~)
泥  棒「ハ~ア~、臭うかあ~」(仁王かぁ~)

2008年08月29日

落語・青菜

■ひょっとこ」「おかめ」の語源

「語源」を探って、「へェ~」と納得するのは、ことば遊びの楽しみの一つです。
今日は、「ひょっとこ、おかめ」の語源をたどってみます。

日本に古くからある「ひょっとこ」のお面。
醜男を代表する「ひょっとこ」は、「火男」からきたもので、火をおこすのに、口をつぼめて突き出し、息を吹きかけながら、 煙たいので片目を細めている顔つきを、お面にしたものです。

一方の「おかめ」。器量の悪い、下働きの女性のように見えますが、昔は、しもぶくれのした「おかめ顔」が美人だったのです。
熱田神宮の巫女であった「亀女」の顔が、こぼれんばかりの愛きょう顔をしていたため、人々がその顔をかたどったお面を作って親しんだ。
それが、現在に受け継がれているのです。


【吉村外喜雄のなんだかんだ - 596】
~ことば遊び~ 「落語・青菜」

落語には、殿様と職人、あるいは極端に気の短い男と、気の長い男というふうに、身分や性癖のまったく違った人物の、 ちぐはぐなやりとりと、間の抜けたやりとりで、笑わせる噺が多い。「青菜」もそうした噺の一つです…。

♪さるお屋敷で、旦那様が植木屋をねぎらい、
縁側で一休みするようにと勧めた。
「酒を飲むか」と尋ねると、『大好きだ』と答えたので、
「奥や、植木屋さんにな、ご酒を持ってきてあげてください」
と言って、肴に鯉のあらいを出して、雑談を始めた。

「ときに、植木屋さん、あなた、菜をおあがりかな」
と問うと、大好物だとのことなので、出してあげるようにと言う。
すると、「旦那様」と言って、奥様が打ち明けた。
「鞍馬から牛若丸がいでまして、その名を九郎判官」
「では、義経にしておきなさい」
と答えてから植木屋に、まだ菜があると思っていたら、
食べてしまってもうないんだそうだと、謝った。

ところが植木屋が、鞍馬とか義経とかのやりとりを、
来客だと勘違いしたので、夫婦の間の隠し言葉だと打ち明けて、
来客の折り、言ったものがなければ、お客様に対して失礼にあたる。

そこで、「鞍馬から牛若丸がいでまして、その名を九郎判官」
菜は食べてしまってないから、"菜を食ろう"というシャレで、
「その名を九郎判官」
そこで私が"よしとけ"と言うところを、「義経にしておけ」と、
こうしゃれたわけだ。

これを聞いた植木屋、さすがお屋敷は違うと、感心することしきり…。
自分も真似がしたくなった…。
長屋に戻ると早速、がさつな女房に「これこれしかじか」と、話して聞かせた。

「こういうことは、てめえにゃ言えめえ」 『言えるわよ、それくらいは』
「言えるなら言ってみろ」 『鯉のあらいを買ってごらんよ』
「あれッ、ちくしょうめ、人の急所を突いてきやがる」
と、言い合っているところに、大工の熊公がやって来たので、
女房を押入れに隠れさせて、早速、お屋敷の真似を始めた。

ところが酒は安物だし、鯉のあらいだと言って出したのが、鰯の塩焼き
という有様。
では、奥の手をと…「ときに、植木屋さん、あなた、菜をおあがりかな?」
『なに言ってんだ、植木屋はおめェじゃねえか…おらァ、大工だよ!』
「あなた、菜をおあがりか?」 『嫌れェだ!』

がきのころから菜は大嫌いだと言うのを、なんとかなだめて、
菜を食べさせることにし、ポンポンと手を叩いて命じると、
押入れから、汗びっしょりになった女房が出てきた。

『旦那様、鞍馬から牛若丸がいでまして、その名を九郎判官義経…』
全部言われてしまった植木屋、
「えッ、義経?…う~ん、じゃあ、"弁慶"にしておけ」

2008年07月22日

土用の丑の日

■小噺「うなぎ その1」

土用の丑の日、うなぎ屋は大忙しでうなぎを焼いています。
そこへ外国人がやってきて、
「おお~いい匂い。このウナギの蒲焼…セイヨウ料理デスカ?
ソレトモ日本リョウリデスカ?」
うなぎ屋、「えッエ~と、これは…洋食(養殖)です!」

■小噺「うなぎ その2」

熊公 「ご隠居に尋ねるが、ウナギは、なんでウナギと言うんだい…」
ご隠居 「鵜がウナギを飲み込もうしたが、長くて難儀した。
鵜が難儀したので、鵜が難儀した…鵜難儀…ウナギになったんじゃよ」
熊公 「ふ~ん、じゃ何だって蒲焼って言うんだい?」
ご隠居 「鵜に飲み込まれるようなバカな魚だからよ。
バカ焼き、バカ焼きって言っているうちに、カバ焼きになったのよ…」
熊公 「じゃあ、バカ焼きって言えばいいのに、なんだってカバ焼きってひっくり
返ったんだい?」
ご隠居 「よ~う考えてみな! ひっくり返さないと、うまく焼けないねェ!」



【吉村外喜雄のなんだかんだ - 586】
~ことば遊び~ 「土用の丑の日」

7月24日は「土用の丑の日」。土用・鰻の日にちなんで、ウナギにからむ話を、あれこれ集めてみました。読んだ後、 よろずウナギ物知り博士になっています…。
丑の日に「う」の付く物、「うどん・うり・梅干」などを食べると体に良い、という言い伝えが以前からあった。江戸時代の中期、 売上不振に悩んだウナギ屋が、"平賀源内"に相談を持ちかけた。ならばと、「鰻は土用の丑の日に」と書いた張り紙を出して、宣伝した。 それがきっかけで、ウナギを食べるようになった。

ウナギ料理は、好きな人が多い反面、形がニョロニョロしているからと、食わず嫌いの人も多い。そのウナギ料理、「くし打ち3年、 焼き一生」と言われ 、日本人が大切に守ってきた伝統の味、伝統の料理なのです。

「"くし"を"刺す"」のが、正しい言い方ですが、縁起が悪いからと、「打つ」と言う。
同じように"するめ"を「あたりめ」、すり鉢を「あたり鉢」、"箸"は「おてもと」と言ったりする。いずれも、古くからある、 縁起をかつぐ言葉づかいです。

ウナギのさばき方では、商人の町・関西では、「腹を割って…」というので"腹開き"。
一方、関東は武家の町。「腹を割く」は「切腹」をイメージして、縁起でもないと、
"背開き"になった。
ところで何故"蒲焼"というのか?昔、丸のまま竹に刺して、蒲(がま)の穂の形で焼いていたからなのか?
関東は、竹串に刺して素焼きにした後、一度蒸してからタレ焼きにします。
あっさりと淡白で柔らかな仕上がりになります。
関西の焼き方は、直に焼いた後、タレを付け焼きし、蒲焼に仕上げます。
芳ばしさと、パリパリ感があって、美味しい。

「うな丼」と「うな重」の違いは、江戸末期には、素焼きの丼に「うな丼」として出されていたが、大正時代になって、高価な 「漆塗り丼」が出て、昭和になって、東京の店が重箱に入れて出すようになった。
中身は同じなのに、重箱に入れて値段を高くする店が出始めたのです。

ウナギの名前の由来は、天然ウナギの胸が黄色いところから、奈良時代までは「胸黄(ムナギ)」と呼んでいた。 それがウナギと呼ばれるようになった。
ウナギを使った言葉に「ウナギの寝床」があり、「ウナギ登り」がある。ウナギが水中を真っ直ぐに登っていくことから、「物価が…」 などに使われます。

ウナギの赤ちゃんは、日本から南に二千キロ離れた、赤道直下のマリアナ諸島付近で誕生するそうです。
半年近く海流に乗り、アジア諸国沿岸に来ますが、大半は養殖用に捕獲されます。
「シラス」といって、「海のダイヤ」とも言われ、年々漁獲量が減少しています。

2008年06月24日

かなざわなまり

■石川県にしかない食べ方

[その1 めった汁
暖まる「めった汁」はお袋の味。
大鍋には、豚肉、ジャガイモ、タマネギ、ニンジン、こんにゃく…
県外から来た人、「めった汁」って何?これって、石川県にしかない家庭料理なの?
そもそも、めった汁の「めった」って…何だ?
そりゃあ、「やったらめったら具を入れるからやろ」
違う、「具をめっためったに切るからや」、いや、「めったに食べないからや」
答えは、やったらめったら具を入れるの"めった"が語源のようです。

「豚汁」の方が世間に知られているが、違いは"さつま芋"が入っているのが「めった汁」。
金沢のお袋の味…その秘密は、さつま芋だったのです。

[その2 冷ヤッコに練りカラシ
暑くなってくると、やっこ豆腐が美味しい。食べる時に、練りカラシを付けて食べる。
練りカラシを付けるのは、石川県人だけだって…「エッ!そうなの?」
生姜を擂って添えるのが、全国共通の食べ方なんだと…。
でも、練りカラシの方が、絶対美味しいんだから…嘘だと思うなら試してみては…


【吉村外喜雄のなんだかんだ - 578】
~ことば遊び~ 「かなざわなまり」

「はがいしい」「あ~はんげ~」「…がいてね」
「…げんて~」「あのォんねェ~」「…がいね」

前号で、上手な話し方をするには、「普段のままの話し方」で話すと良い…と言いましたが、金沢弁丸出しの人と接すると、 とりわけ親しみを覚えます。
金沢に生まれ育ち、日頃無意識に喋っている"かなざわことば(なまり)"。
よそから来た人には、意味不明の言葉がいろいろあるようです。
改めて、その言葉の一つひとつを取り上げててみると…結構面白いのです。

5月31日。バレーボール男子五輪予選。日本がイタリアに惜敗した。
第四セット…あと一点のマッチポイントを迎えながら、まさかの7連続失点。
テレビを見ていて、「あ~、はんげ~」
この言葉、私のような頭の薄い人のことを言っているのではない…。
金沢の代表的な方言、「はがいしい」 を、若い人が使うとこうなる。
この言葉の語源は、「歯がゆい」「もどかしい」

かなざわなまりの特長は、語尾が"柔らかい"こと。締りがなく、空気が抜けていくような話し方をする。
「あのォんねェ~、知っとるゥ~、○○さん結婚するげんてェ~」
こんな言い方をするのです。
この「あのォんねェ~」 から、かなざわなまりの、のんびりした言い回しが伝わってくる。
そのほか、「そやけどォ~、○○げんて~」といった、会話の途中や終りによく出てくるこのイントネーションには、 かなざわなまり独特の"うねり"が感じられる。
「げんて~」は、 「結婚しまさるがいてね~」という年寄りことばが、若い人達に変形して使われているのです。
「はよ帰るげんろ」「泊まったほうがいいげんよ」など、よく使われる言い回しです。それを聞いて、「ほんながかいね、よかったがいね」 と言う。
「…がいね」 もよく使われる言い回しです。

自分のことばをテープに録って、改めて聴くと、何とも気恥ずかしい…。
何気なく使っている方言が、思っている以上にダサく、田舎くさく感じるのです。
近所の人や、幼友達と話すときは、方言丸出しの私でも、ビジネスで県外の人と話す時は、標準語に近い喋り方をしている。
"ふだん着"と"よそいきの"使い分けをしているのです。

2008年06月10日

なぞかけユーモア

■’08サラリーマン川柳 ベスト10

(一位) 「空気読め!」 それより部下の気持ち読め! 
(二位) 「今帰る」 妻から返信 「まだいいよ」 

(三位) 減っていく…ボーナス・年金 髪・愛情
(四位) 円満は 見ざる 言わざる 逆らわず

(五位) ゴミ出し日 捨てにいかねば 捨てられる
(六位) 「好きです」と アドレス間違え 母さんに

(七位) 国民の 年金 損なの 関係ねえ
(八位) 社長より 現場を良く知る アルバイト

(九位) 赤字だぞ あんたが辞めれば すぐ黒字
(十位) 「いつ買った?」 返事はいつも 「安かった」 

どれも、日頃思っていることであり、心掛けなければならないことばかりです。
男性は益々頼りなく…女性は益々しっかりして見える。
「21世紀は女性の時代」と、某評論家が言っていたのを思い出す…。


【吉村外喜雄のなんだかんだ - 574】
~ことば遊び~ 「なぞかけユーモア」

良い川柳には、「クスッ」と笑わせる、ユーモアのセンスが溢れています。
そこで、今日のことば遊び、「なぞかけユーモア」 とまいりましょうか…

最初に、「朝は四本足、昼二本足、夕べは三本足、これなァに!」
皆さまよくご存知、スフィンクスが、前を通る旅人にかけたなぞなぞです。
解けなかったら、食べてしまうという伝説です。答えは"人間"。
生まれてしばらくは這い這いし、二本足で歩くようになり、歳をとると杖を突いて歩く…。

日本のなぞかけの起源は、「日本書記」に天武天皇が「無端事(あとなしごと)」で以って問いたもうた…と言われている。
なぞかけは、落語のネタにも使われていて、落語「三十石」の中で、乗り合い船の客同士が、こんななぞかけをやっている。

♪「"数の一の字"とかけて、"感心な寺の小坊主"ととく…」
「 その心は、心棒(縦に一本心棒)、すると十字"住持"になる…と、どうだす」
(※十字→住持…住職のこと)

『ふッなんだ、くだらねえや、そんなもの。じゃ、俺がやってみようじゃねえか』
数の"二"の字とかけて、 "道楽者の寺の小坊主"ときた…』
「ほう、こらおもろい。で、その心は?」
『辛抱しても、住持にならない…』
(※一にニをたすと、"サ"の字、あるいは"三"の字になるが、偉くはなれない)

「そりゃ…むちゃくちゃや」
「ほんなら題を変えて、"いろはのいの字"をかけて、 "茶の湯の釜"ととく」
「その心は…"ろ(炉)の上にある"…どうでえ!」

『では、私はその、"ろ"の字をもらいましょう』
「はあ、あげましょう」
『これをもろうて、"上唇"ととく…その心は、"は"(歯)の上にある』
「なるほど…」
「こんどは、"いろはにほへと"とかけましょうかな。これを貰って"花盛り"ととく」
『その心は…』
「ちりぬる前」
『うまいッ!こりゃァきれいだ。
 ナゾッてえもんは、こういうふうにいかなくちゃ…いけねえョ』

2008年05月13日

落語・味噌蔵■ことば遊び 「尻取り歌」

■ことば遊び 「尻取り歌」

『いろはに こんぺいとう こんぺいとうは甘い 甘いは砂糖
砂糖は白い 白いはうさぎ うさぎははねる はねるはカエル
カエルは青い 青いは柳 柳はゆれる ゆれるは幽霊
幽霊は消える 消えるは電気 電気は光る 光るはおやじのはげ頭』

『ミカン キンカン わしゃすかん  親はせっかん 子はきかん
子ども羊かん やりゃ泣かん    ミカン キンカン 酒のかん
主の言うこと わしゃきかん    隣のねえさん 気がきかん
ミカン キンカン そりゃあかん  角力取り裸で 風邪ひかん』

※くちずさむほどに、忘れていた子どもの頃が思い起こされる。


566 【吉村外喜雄のなんだかんだ】 
~ことば遊び~  「落語・味噌蔵」

落語ネタに欠かせないのが、そそっかしい男に間抜け男、放蕩息子にドケチ親父…。
「落語・味噌蔵」も、私の好きなネタ噺の一つです。

♪赤螺屋(あかにしや)の主(あるじ)ほどケチな旦那はいない!
もう四十に手が届こうというのに、
「世の中に女房くらい無駄なものはない。一日三度も食べるし、その上子供でもできたら、 大変なもの入りだ」とおっしゃる。

そうは言っても、老舗の味噌屋の主人である。いつまでも独り身では世間体が悪い。
親類が集まって、おかみさんを持たないなら、親類一同お付き合いをお断りしたいと、談判。
仕方なく、身体が丈夫で食の細い女なら…と、嫁をもらう。

婚礼が済むと、お嫁さんは二階で寝てもらい、自分は階下で寝ることにした。
ひどく寒い晩があって、煎餅布団だから眠れない。
女房が、婚礼に綿がたっぷり詰まった布団を持ってきたのを思い出して、二階へ…。
しばらく寒い晩が続いたので、二階に通ったが、間もなく嫁が身ごもったことがわかり、うろたえてしまった。
だが、女手がないと理由をつけて、お里に預けることに。
出産の費用や、親類を呼んでのご馳走は、里が引き受けてくれる。
月満ちて…男の子が生まれた。

お祝いに招待された味噌屋の主人は、定吉を供に渋々お里へ行くことになった。
定吉には大きなお重を持たせる。ご馳走をたっぷり持ち帰るためである。

出がけ、留守番の店の者に釘をさす。
「くれぐれも火の用心を…」
「近所から火事が出たら、商売物の味噌で味噌蔵に目塗りをするように」
焼けた味噌は、はがしてご飯のおかずにすれば、無駄がない。

旦那が出かけると、この時とばかりに、店の者が羽を伸ばすのは…世の常。
なにしろ毎日の食事は、具のない味噌汁だけで、お菜が出たことは一度もない。

「どうせ今晩、旦那は帰らないのだから、みんなで美味しいものをいただこう。
お金の方は番頭さんが帳面をごまかして…」と、店の皆がそそのかすと、
番頭も乗り気で「食べたいものを言いなさい!」

皆は大喜びで、刺身、酢の物、天ぷら、鯛の塩焼き、ブリの照り焼き、
玉子焼き、鰻、田楽!
「さあさあ、みんなひとっ走り頼んできておくれ。それから田楽は豆腐屋に、
冷めてしまうとうまくないから、二、三丁ずつ焼いて、持ってきてもらうように…」
その夜、店の中は酒盛りのどんちゃん騒ぎ…。
そこへ、泊まるはずの旦那が帰ってきてしまった…さぁ大変。
旦那様、店内の有様を見て激怒していると、表の戸を叩く声がする。
「今晩は、今晩は、焼けてまいりました」との声。
どこからだと聞くと、横丁の豆腐屋からだと言う。

「二、三丁焼けてまいりました。あとからどんどん焼けてきます」
これを聞いた旦那様、「火元は近い!」と、慌てて表の戸を開けたとたん、
田楽のにおいがプ~ン。
「あッあ~ッ、いけない! 味噌蔵に火が入った」

学習研究社「落語ギャラリー60」

2008年04月01日

江戸小噺・鯛の塩焼き

■ビックコミック・時事川柳

   「ガソリンが 高騰したら 減った事故」
   「AVを 見るには不向きな 大画面」
   「歩道橋 一日誰も 渡ってない」

<テーマ"明日">
   「さて明日は 誰がテレビで 謝るか」
   「ブロイラー 野に放したら 明日地鶏」
   「父さんは 明日明日詐欺の 常習犯」

■2008年・サラリーマン川柳・入選作から

   「箸つけた オレを見てから 食べる妻」
   「張り替えは 昔障子で 今日付」
   「安い値の ガソリン探し 遠出する」
   「官僚が 言えなくなった 趣味ゴルフ」


【吉村外喜雄のなんだかんだ - 218】
~ことば遊び~ 「江戸小噺・鯛の塩焼き」

3/16、米男子ゴルフツアーがスタートした。
そのしょっぱな、タイガー・ウッズが最終18番で、8メートルのバーディパットをねじ込み、劇的な勝利を手にした。
早朝、テレビで観戦していた私…その瞬間、我がごとのように「やった~」

大相撲春場所は朝青龍が優勝し、ホッと一息。
サッカー、選抜、プロ野球開幕と、新聞のスポーツ覧は満開です。
兼六園の桜もほころび始めたようで…

今日の江戸小噺は「鯛の塩焼き」。桜花爛漫、春酣の頃のお話でございます。

♪お殿様が、お側付きの三太夫をお側に、お昼を召し上がっていらっしゃいます。
お昼ったって、我々下々のように、沢庵にお茶漬っていうわけにはいきません。

いくらご倹約中のお屋敷とはいえ、お殿様のお膳には、必ず鯛の塩焼きがついています。
もっとも鯛のお頭といっても、毎回付いてくるのですから、もう…お殿様も飽きあきなさって、お箸をお付けになることは…まずない。
ま、お飾りてェところでございましょうな。

ところがその日、どういう風の吹き回しか、殿様がこの鯛に一箸お付けになった。
「うむ、美味である。代わりをもて!」
『はッ』とお答えしたが、三太夫さん困りましたな…。
いつも召し上がらないから、お代わりの鯛のご用意がない。

『恐れながら、お庭をご覧遊ばせ。池畔の桜が見事に咲き揃いましてございます』
「おお、満開であるな」
と、お殿様が桜をご覧になっている間に、皿の上の鯛をクルッとひっくり返した…。
『お代わりをお持ちいたしました』
「む、大義である」…と、お殿様、また一箸お付けになった。
「美味である。代わりをもて!」

さすがの三太夫も、今度こそ、やりようがない。
またひっくり返せば、先ほどのお箸の跡が出てしまいますからな…。
『は、は~』と、平伏したまま固まっておりますと…お殿様
「これ、いかがいたした!? もう一度桜を見ようか?」

提供「風亭弥次郎」

2008年03月04日

江戸小噺・四宿の屁

■三遊亭歌奴 「下ネタ艶笑落語」

私がY社に勤めていた19歳の頃、お客様招待会をやることになり、東京から演劇一座がやってきた。
受け入れ側の一員として、一座に1ヶ月間同行することになった。
鶴来の体育館、根上の公民館と、県内をドサ廻り…
マン幕を張ったり、ゴザを敷いたり…雑務が私の仕事でした。

その一座に、真打になったばかりの「三遊亭歌奴(三遊亭園歌)」がいた。
ご存知「山の穴々…」の新作落語が大受けして、人気が出始めた頃です。
夜、高座が引けて、楽屋でくつろいでいる時、お手伝いをしている私達へのサービスだと、「下ネタ艶笑落語」を披露した。

♪「お風呂の中でオナラをしたら、鼻のまん前でブクブクパッチン…。
男のオナラは…、女は… 」と、 顔を見ているだけでフキ出したくなる歌奴の熱演に、お腹を抱えて笑ったものです…。
50年も前のことが、昨日のことのよううに思い起こされます。



【吉村外喜雄のなんだかんだ - 214】
~ことば遊び~ 「江戸小噺・四宿の屁」

毎年10月に、「 五郎島金時芋 」を箱入りで買ってきて、お世話になった人たちにお配りしている。
さて、芋といえばオナラ…川柳に、「コタツから 猫もあきれて 首を出し」というのがある。
被害にあったからといって、本気になって怒るわけにもいかず、当の本人はバツが悪い… それが"オナラ"である。
そこで今日は息抜きに、"オナラ"を題材にした下ネタ小噺を一席…。

♪江戸っ子のだじゃれ好き、遊び心は、"屁"のこき方にまで及びまして…
"江戸四宿"といえば「品川、千住、板橋、新宿」。
それぞれの宿場女郎の特徴を"オナラ"でもって表現しようというのです…。

■品川 「いま行ったのは…」
海に面した女郎屋で、 客が昼遊びしていると、 床の中で花魁(おいらん)が一発いたしてしまった…。 音のしないやつだが、このほうが臭いが強い。
客に嗅(か)がれては大変だから、花魁は夜着を手でしっかりと押さえて、足のほうからバタバタと空気抜きをはじめた。

「おい、なにをしているんだ?」
『沖を帆かけ船が通るから、その真似を…』
「くだらねえことをするなよ…」
もう臭わないだろうと、手を放したとたんに、客が「フッ」と笑って、
「いま行ったのは、肥船(こいぶね)じゃねえかァ…」

■新宿 「半分お出し!」
花魁と客が差し向かいで飲んでいるところに、 若い衆が挨拶にやって来たので、客が盃をすすめた。
花魁が酌をしようと、徳利を持って腰を浮かす…と同時に「ぷう~」とやってしまった。
売り物の花魁にキズをつけてはと思った若い衆、「あいすみません、お昼のおかずがゴボウだったので、お腹が張ってとんだ粗相を… ご勘弁を願います」

なにもかも承知の客は、『色気を売る稼業は、そうでなくちゃ』と、若い衆に祝儀を与えた。
「ありがとう存じます。過ちの巧妙で…では、どうぞこゆるりと」
部屋を出た若い衆を、花魁が追いかけて、
『ちょいと、喜助どん。半分お出し…いまのはあたしの働きだよ!』

■板橋 「あたしも一緒に…」
芸者をあげて大一座で騒いでいると、やり手の婆さんが酌をするようにと、小職(こじょく)に命じた。言われた女の子が、 徳利を持ってお酌をしようとすると、「ぷう」。
『あきれたよ、この子は。お座敷でおならをするなんて、おまえは本当に行儀が悪い。
 階下(した)へお行き!』
叱言(こごと)を言うと同時に、自分が「ぷう」
『お待ち、あたしも一緒に行くから…』

■千住 「前か後か?」
待ちくたびれた客のところに、ようやく女がやって来た。
しゃくだからと狸寝をしていると、
「ちょいと、おまいさん、寝たの? いびきをかいているわね。お起きよ、ちょいとォ!」
布団の上から客を叩くと、拍子で「ぶう~」

気づかなかっただろう…とは思ったが、揺り起こし、
「ねェ~知ってるんだろ、いまの大きなの…」と聞いた。
『なんだい、いまの大きなのって?』
「いまの大きな…地震さァ~!」
『地震…? 屁の前か? それとも後…?』

2008年02月05日

落語・こんにゃく問答

■勘違い「変換ミス」 日本漢字能力検定協会提供

正 「それは会社の方針とのこと、正しいようです」
誤 「それは会社の方針とのこと、但し異様です」

正 「常識力検定を導入し…」
誤 「上司、気力検定を導入し…」

正 「今日居ないもんね、ゴメンネ!」
誤 「胸囲ないもんね、ゴメンネ!」

正 「今日は、見に来てくれてありがとう」
誤 「今日は、ミニ着てくれてありがとう」

正 「規制中で渋滞だ」
誤 「寄生虫で重体だ」

正 「逢いたいの もう一度」
誤 「会いたい 飲もう 一度」

正 「同棲しよう! でも言えなかった」
誤 「同棲しよう! でも家なかった」

正 「誰か、ビデオとってるやつ いないか?」
誤 「誰か、美で劣ってるやつ いないか?」


【吉村外喜雄のなんだかんだ - 210】
~ことば遊び~  「落語・こんにゃく問答」

「ことば遊び」を趣味にする、私にもってこいの、トンチに溢れ、お腹を抱えて笑える、勘違い「こんにゃく問答」の一席…。

♪上州は安中(あんなか)の古寺。長年住職が不在で、寺は荒れ果てている。
そこで、こんにゃく屋を営む六兵衛は、居候の八五郎に、坊主になってはどうかと勧める。
ある日、寺に一人の旅僧が訪れる。
越前永平寺の沙彌托善(しゃみたくぜん)と名乗り、住職と問答をしたいという。問答に負けたら、寺を追い払われる…。
今日は住職は留守だと言うと、托善は「命の限りお待ち申す」と言い残し、その場を引きあげていった。

八五郎は慌てて六兵衛のもとへ…六兵衛はこんな時でも頼もしい。
「おれがその坊主をなんとか退散させてやる。いざとなったら、ふん捕まえてぶち殺せ」
翌日、托善がやって来ると、本堂には大和尚になりすました六兵衛が、座ったまま一切口を開かず、押し黙って目を爛々と光らせている。
それを見た旅僧、住職が無言の行の最中だと思い込み、身振り手振りで問答を仕掛けてきた。

(以下は仕草だけ)
托善が手で小さな丸を作ると、六兵衛は両手で大きな丸を作る。
手を広げて10本の指を見せると、六兵衛は片手で5本指を出す。
しからばと、3本の指を出せば、 六兵衛、アッカンベ~

すると托善は逃げ出した!八五郎が追いかけてわけを聞いた。
ご住職は、無言の行をされているとお見受けし、そこで拙僧、まず胸の前に小さな輪を作り、ご住職のお胸の内はと尋ねますと、 大きな輪を作られ、大海のごとしとのこと…。
次に10本の指を立てて、「*十方(じつほう)世界は」と尋ねますと、5本の指を出され、「*5戒で保つ」と申された。
最後に3本の指を出して、「*三尊の弥陀は」と尋ねますと、「目の下にあり」と申されました。
とても拙僧の及ぶところではござらん。

一方、六兵衛はというと、あいつは、おれがこんにゃく屋だと知っていやがる。
まず小さい丸を作って、おめえのところのこんにゃくは、こんなに小さいってバカにしやがるから、こんなに大きいって、言ってやったんだ。
10丁でいくらだと聞くから、少し高いが五百文だというと、三百文に負けろ、とぬかしやがったから、アッカンベ~

*[十方世界]    あまねく広い世界
*[五 戒]      人間が守るべき五つの戒律
*[三尊の阿弥陀] 阿弥陀、観音、勢至

2008年01月08日

落語・親子酒

正月休みの一週間、バリ島のリッツ・カールトンなどの高級リゾートホテルが集まる、
ビーチ・ジンバラに宿泊。スキューバーダイビングと観光を楽しみました。

スキューバダイビング
ヒンズー教の寺院



【吉村外喜雄 - 206】
~ことば遊び~「落語・親子酒」

あけましておめでとうございます。
昨年の暮れ、身近にお付き合いしている友人…公の場で突然、禁酒を宣言した。
お酒を呑む機会が最も多い年末年始に、あれだけ好きだったお酒を絶ったのです。
心に期するものがあってのことでしょうが…驚きました。
そこで、年初め最初のメルマガということで、お酒に絡んだ落語小噺を一席…

♪親父と息子、二人そろっての大の酒好き。
ところが息子は酒で失敗をしてばかり。親父は、息子に酒をやめるように言う。
その代わり自分もやらないと、親子で禁酒の約束をした。
しかし、我慢できるのも二、三日まで…。

息子が年始まわりで出かけたある寒い日の晩…
「おい婆さんや、何か身体が温まるようなものはないかいな…」
『くず湯でも飲みますか?』。優しい女房は心を鬼にしてとぼける。
「もっとほかにあるだろう。なんか、ピリっとして温かくなるもんが…」
『唐辛子ですか?おじやかなんか?』

猪口を口に運ぶ真似をしても、知らんぷりをするので、
「頼むから一杯だけ。なに…倅がまだ帰って来ない」
とうとう根負けした女房は、お銚子一本差し出す。
こうなると、一杯で済むわけがない。あと一本、もう一本。
しまいには「持ってこ~いてんだ!」
やがて、べろんべろんに酔っ払ったところへ、息子が帰宅

『お父さん、ただいま帰りました』あろうことか、息子も泥酔状態。
乱暴に襖を開けると、中へ倒れ込んだ。
『山田さんの家(うち)に行きましたら、丁度いいところに来た、正月だから一杯やって行けと言われまして…。
親父と約束をしているのでと断ったら、以後出入りを止めると言われました。
あたし、怒っちゃいましたよ。たとえ出入りを止められても、男と男の約束を破ることはできません、と言ったら、「えらい! その心意気が気に入った。その意気でもって一献いこう!」となりまして、結局二人で二升五合あけちゃいました。
やはり好きなものは、なかなか止められませんね…お父っあん』

ろれつの回らない息子に、ろれつの回らない親父が言葉を返す。
「何という情けない男だ、酒を飲むなと言うのは、お前の身を思えばこそ。
この身代をそっくりお前に譲っていこうと思うから、お前に口うるさく言うのだ。
そこをよ~く考えて…」

親父は酔った目で息子をじ~っと見て、「おい婆さんや、倅の顔を見なさい。七つにも八つにも見えるよ。こりゃ化けもんだ。 こんな化けもんには、とても身代は譲れない」
『冗談言っちゃいけません。あたしだって、こんなグルグル回る家は、貰ってもしょうがない…』

学習研究社「落語ギャラリー60」

2007年12月07日

江戸小噺・大晦日のツケ払い

■ことば遊び 「中村メイコ」名前の由来

9月まで、NHK・BSの朝のテレビ小説で再放送していた「さくら」。
ハワイ生まれの日系三世の"さくら"が、高山の中学の臨時教員になり、文化・習慣の違いから騒動を繰り返す、とても面白い番組だった。 東京で叔父(小林亜星)が金魚屋を営み、その奥さんが"中村メイコ"。何とも素敵な脇役を演じていた。

中村メイコの父親は、昭和初期の日本では育ちにくい、面白おかしいものを書くユーモア作家。それがよく売れて、人気作家になった。

メイコは、昭和9年5月15日、東京杉並の洋館建ての自宅で産声を上げた。
父は白い紙に「五月」と書いて言った。

  「役所には五月(ごがつ)とだけ届けましょう。
  その名前を見て、漢字好みの人は"さつき"、
  西洋好みの人なら"メイ"と呼ぶかも しれません…」

読売新聞「時代の証言者」より



【吉村外喜雄のなんだかんだ - 202】
~ことば遊び~
「江戸小噺・大晦日のツケ払い」

12月に入り、年賀状の手配も終り、何となく気ぜわしい思いをしている毎日です。
江戸の昔は、普段はツケで買い物をして、支払いは盆暮れにまとめて支払うのが習慣でした。大晦日ともなりますと、このツケの支払い、 カケの受け取りで、大変でございますな…。
そりゃ金がありゃあいいですよ。その日暮らしの貧乏人の中には、どうしても金の工面がつかないという者が出てまいります。 そうかといって、商人の方だって、夜明けまでに取り損なえば、また半年待たなくっちゃいけないんでございますからな…。

♪この暮れは、どうにもこうにもやり繰りがつかないという男。
どこからか都合してきた棺桶の中に入って、女房に申しましたですな…。
「俺を死んだことにして、何とか今夜をやり過ごしてくれ」
『そんなバカなことをして、後をどうしなさる?』
「なぁに、元日に生き返ったと言えばよい」

無責任なヤツがあったもので…。そこへ米屋が掛取りにまいりましたな。
女房は、あまりの情けなさに涙を零しながら、しどろもどろの言い訳をいたしますてぇと、気のいい米屋、
『この暮れへきて、急に亡くなったとはお気の毒。せめてこれでも…』
と、いくらかの銭を置こうとする。
「とんでもないことで、お借りしたものをお返しも出来ないのに、これはいただけませぬ」
『そう言わずに取ってくだされ』
押し問答をしておりますと、棺桶から手が出て、
「呉れるというものは、もらっておけ!」

そんな気のいい米屋ばかりではありませんな。
♪大晦日、みすぼらしい姿の浪人が、米屋にまいりまして、
「お主のところの借財が払えぬ。拙者も侍の端くれ、申し訳のため、この店先にて腹を切り申すが、どうじゃ…?」
米屋の亭主はせせら笑って、
『お前様方のお決まりの脅し文句…。その手には乗らぬ』

進退窮まった浪人、肌脱ぎになりますてぇと、脇差を腹へ突き立て、へその際まで切りましたですな。
「うぅ…どうじゃ、かくの如くだ…!」
『どうせ切るなら、なぜみなお切りなさいませぬ?』
「うむ…、残りの半分は酒屋で切る」

掛取りに回る手代の方にも、泣き落としの決まり文句がございましたそうで、
「今日は大晦日、たとえ半金でも払ってくだされ。手ぶらで帰っては、主人の手前、わたしが首をくくらねばならぬ」
『すまぬが、今夜のところは、そうしておいておくれ』

こちらは橋の下を住まいとする、乞食夫婦でございます。
「ねえお前さん、町中では、払え、払えぬで大騒ぎしているようだけど、こっちは気楽でいいねぇ…」
『これ!大きな声で言うんじゃない』
「あれ、どうしてだい?」
『みんなが乞食になりたがる…』

2007年11月02日

江戸小噺・石川五右衛門

■言葉の語源。今日は「女」のいる漢字から…

女性を呼ぶ言葉は、日本語を知るうえで大変面白い。
組み合わせによって、様々に使い分けられ、感情が込められたものもあります。
女三人寄れば「姦(かま)しい」、古い女と書いて「姑(しゅうとめ)」など、"ことば遊び"から生まれたような面白さがあります。
「娘」は、「む(産)す女」が「むすめ」になったと言われている。
親にとって娘は可愛くてしかたがない。そこで「愛」に「娘」で、「愛娘(まなむすめ)」が生まれた。しかし、 "まなむすこ"という漢字はない。

好きの「好」は、女の子は可愛くて愛らしい。転じて「女」と「子」をくっつけて「好」になった。「女」に「弱」で「嫋(たお)やか」。 しなやかで優美な女性の姿になります。
「嬶(かかあ)」は、鼻息のあらい妻という意味の、日本で生まれた国字です。

「女」に「老」又は「波」で「ばばぁ」。「眉」を付ければ「こびる」。女に「母」は「うば」。
「家」をくっつければ「よめ」。女に「喜」で「うれしい」と、昔の人のユーモア感覚がうかがえ、楽しくなってくる。
このように、辞書で「女扁」や「魚扁」を繰って、その言葉の意味を楽しむのも、いいものです。



【吉村外喜雄のなんだかんだ - 198】
~ことば遊び~
「江戸小噺・石川五右衛門」

今年も、早いもので11月。今席はひとつ泥棒の小噺を申し上げましょう。
11月と泥棒がどうしてくっつくのかって?実は、ほら、柴又の寅さんが言うじゃないですか…。「泥棒の始まりは石川県…じゃなくて、 石川五右衛門」って。

あの五右衛門が生まれたのが、永禄元年(1558)の11月15日なんでございます。今年は奇しくも、 五右衛門誕生450年って訳でしてな。
日本各地で泥棒どもが集まって、「大盗祭」という盛大な祝賀式典を開いているのだそうでございますよ。
またまたいい加減ななことを…ウソでしょうって? いやいや、これはウチの親戚に泥棒がいて、そこから聞いた話ですから、 間違いありませんよ!
という訳で、泥棒の小噺を一席。

♪石川五右衛門が捕らえられて、京都三条川原で釜茹での刑に処せられたのは、文禄3年(1594)8月24日のことでございます。 ただでさえ暑い真夏でございますから、さぞや暑かったことだろうと、お悔やをみ申し上げます。

この日はまた、泥棒稼業では「浜の真砂忌」と申しまして、旗日、つまり其の日一日、 泥棒はお休みすることになっておりますんですよ…(大ウソ)。
悪人とは申せ、五右衛門はさすが大物でございます。グラグラと油の煮えたぎる釜を前にしても、眉一つ動かさず、 立会いの役人に申しましたな。

「しばらくお待ちくだされ。この世の名残に、時世の一首を詠みとうござる」
『おお、奇特なことよ…早う詠め!』
「されば…かかる時 さこそ命の惜しからめ かねてなき身の 思ひ知らずば」
『な、なんと、それは太田道灌公のお歌ではないか!?』
「ふふン、これが本当の盗み納めじゃ…」

~提供「風亭弥次郎」~

ちなみに、石川五右衛門の辞世の句は、
「石川や 浜の真砂は尽きるとも 世に罪人の 種は尽きまじ」
また、太田道灌は室町中期の武将で、歌人。江戸城を造ったことで知られる。

2007年10月05日

落語・火炎太鼓

■ことば遊び。

今日は、私が言うとバカにされる「おじん駄じゃれ」あれこれ。

「かけっこするから運動場貸して…」 『うん、どうじょ!』
「坊さんが通っていくよ…」 『アッ僧!』
「この帽子はどいつんだ…」 『オランダ!』
「何つくってんの? 生垣かい…」 『へい!』

・私が幼かった頃、祖母が私を膝の上に抱きながら、「長いなが~い」
 お話をしてくれました。
 「昔むかし、天から長いなが~い縄が降りてきた。
 長いなが~い、とても長~い長縄だったそうな。
 それを登っていったんだそうな。
 登っても登っても、登っても登っても、終りがなかったそうな…。
 おしまい」

くだらないって……だから私はバカにされるのです。

・今度は、孫を相手に「ほんとのお話」。
 「昔々或るところに、男の人がいました。
 その人の口の中には歯が一本もありませんでした…。
 これがほんとの"歯無し(話)"です」



【吉村外喜雄のなんだかんだ - 194】
~ことば遊び~  「落語・火炎太鼓」

たとえ、おじん駄じゃれと笑われようと、咄嗟(とっさ)にだじゃれが出るようなら、それは最高。
会話が弾み、笑いに包まれた時、自然と湧いてくるのが駄じゃれ。
落語は、最後の絶妙の"落ち"が、すべてを決める。
日ごろの何気ない会話で、ひょいと出る「おじん駄じゃれ」。
これも、会話を盛り上げ、会話を楽しむ心がなければ出来ない芸当です。

♪おまえさんほど商いの下手な人はいない。とべつ女房に愚痴を言われる道具屋の甚兵衛。
市で太鼓を買ってきたと言って、またしてもあきれさせた。

「太鼓はお祭り前とか、初午(はつうま)にしか売れない際物だから、また損をしちまうよ」
と言って、女房は馬鹿にしたが、汚い太鼓が一分(一両の四分の一)だと知って、まる損だと吐き捨てた。甚兵衛は気にもとめない。

小僧の定吉に、ほこりまみれの太鼓をはたかせると、「ドンドンド~ン」いい音がする。
「今、太鼓を叩いたのはその方の店か?」と、侍が訪ねてきた。
駕籠(かご)で通り合わせたとき、太鼓の音を耳にした殿様が、「どんな太鼓か見たい、屋敷に持参せよ」と言うのだ。
甚兵衛は喜んだが、駕籠の中で聞いた音だけではわからないと、女房は半信半疑である。
金蒔絵(きんまきえ)でも施した立派な太鼓だと思っているところに、ススの塊りのようなものを持っていけば、 どんなお叱りを受けるかしれない。
「欲を出さないで、仕入れた値で売ったら、逃げておいで」と言って、送り出した。

さて、太鼓を担いで甚兵衛はお屋敷へ。
『汚い太鼓です』と念を押し、恐る恐る差し出した。
ところが殿様は大変な気に入りようで、お買上になるという。
値を聞かれて『一分』と答えようとしたが、舌がもつれ『え…いち…』と言いかけると、「かまわん、手いっぱい申してみよ」と言われ、 『十万両…』。
「それは高すぎる」
『手一杯ですから、いくらでもおまけしますよ。値切ってください。いくらでもまけますから…』
結局、三百両で話がついた。
三百両、小判五十両包み6つだよ。
「よいか、まず五十両」 『へい、五十両』
「百両…、百五十両…、二百両だ」 『すいません、水ぅ一杯ください』
なぜあんなに汚い太鼓が三百両もするのか?
実は、あれは"火炎太鼓"という大変な銘器だったのです。

『いま、帰ったぞ』
甚兵衛は三百両を懐に、喜び勇んで店に戻ると、女房に報告した。
が、女房は信じない。
「追っかけられてきたんだろう?早く、天井裏に隠れておしまい」

甚兵衛は、懐から小判を出した。
信じられない面もちの女房を前に、金包みを広げる甚兵衛。
五十両…百両…百五十両までいったところで、女房が「水一杯おくれ」
『おれは二百両のところで飲んだ…どうだ、全部で三百両だぞ』
「お前さんは商売上手だねえ」と、女房も大喜び。

「お前さん、これからは音のするものに限るねえ…」
『そうだとも、今度は半鐘(はんしょう)を仕入れて、叩くよ』
「半鐘…半鐘はいけないよ、おジャンになるから…

2007年09月07日

江戸小噺・弘法大師さま

"なんだかんだ"とメルマガを配信して丸5年、今日は区切りの500回!
引き続き10年、1000回(1000本安打達成を目指す心境)を目指します。

■ことば遊び「言葉の語源」
 言葉の語源の意味を知るのは楽しいものです。

 

まずは、「くだらない」 の語源。
お酒は昔から灘。上方が本場とされてきた。
江戸へは、東海道を下って運ばれてくる。
そこで、上方の酒を「下り酒」と呼んだ。

それに対して関東の酒は、原料の米、水質ともに悪いせいか、
上方へ下ることがなかった。
そこから「くだらない」が生まれた。
「価値がない」「つまらない」の意味の言葉を「くだらない」と言うようになった。
 
面白いのは、「ごまかす」 の語源です。
語源には諸説があるようですが、「胡麻菓子(ごまかし)」説が面白い。
見かけはゴマがついて、いかにも美味しそうだが、実は焼いてふくらませただけの、
まずい菓子のことを「胡麻菓子」と言ったことから、「だます」ことを「ごまかす」と言う
ようになった。


 


【吉村外喜雄のなんだかんだ - 190】
~ことば遊び~ 「江戸小噺・弘法大師さま」

暑さも彼岸までとはよく申したもので、9月に入り、朝晩少しずつ、しのぎやすくなってまいりました。
今日はお彼岸にちなんで、坊さんの小話を一つ。
お坊さんの代表といえば、なんたって弘法大師様でございましょう。
この方は単に偉いお坊さんというだけでなく、文学にも博物学にも、天文学にも医学にも、経営学にも通じていたという。
今で言えば正にスーパーエリートだったのでこざいます。

それだけに弘法大師伝説は、日本全国いたるところに残っております。
弘法様が独鈷(とっこ)で地面を突いたら、たちまち温泉が湧き出したとか、門付けをしていた大師様に、喜捨(きしゃ) を惜しんで小石を芋と偽ったら、畑の芋まですべて石ころになっちゃったとか。

♪汚い身なりの坊さんが、門口に立って読経を始めましてな…。
その家(や)の子どもが出てきて、「乞食坊主!あっちへ行け!」とののしる。
母親慌てて、
「これ、何ということをお言いだい!こんなナリをなさってはいるが、もしかしたら弘法大師様かもしれないよ」
坊さん、俄かに修(おさ)まって、
「むむむ…、隠そう隠そうと思いしに、ついに露見をいたせしか…」
と見得を切れば、奥から出てきた親父、
「つがもねぇ、こいつはそこの橋の下に住む、本物の乞食坊主よ」
坊さん頭を掻いて、
「ほい、また露見したわい」

さてこちらは、本物の弘法大師様が、無礼を働いた男を懲らしめるために、馬にしてしまったというお話でございます。
そのまま立ち去ろうとする大師様の衣の袖を掴んで、男の女房が必死に詫びを入れましたですよ…。
「お大師様、どうぞお許し下さいまし!この後は、見知らぬ他人にも必ず親切に致させます故、お情けでございます! 何卒元の人間の姿にお戻し下さいまし!」

 

馬にされちゃった亭主も、目に涙を浮かべ、たてがみを上下に振って、詫びている様子…。
さすがに気の毒に思ったのか、一つうなずいた大師様。
手にした錫杖(しゃくじょう)で馬の頭を指しますと、たちまち元の男の首に戻りました。
続いて肩、胸、腹、両手と戻した大師様が、錫杖を今まさに股間に向けようとしたその瞬間、女房思わず、「あっ!そこだけはそのままに…」

提供「風亭弥次郎」

■弘法大師(774~835)

真言宗の開祖"空海"の別名。弘法大師という名は、醍醐天皇がつけた。
18歳の時、京都の大学で儒学を学ぶ。20歳で出家。
31歳の時、遣唐使の一員として入唐。その時、空海伝説が生まれる。

一行はものすごい暴風雨に遭って、目的地の揚子江とは遠く離れた福建省に漂着。
言葉が通じず困っていたところ、空海が一筆書いた。
検問の役人は、その書と文章に感動して、通行許可証を下ろしたという。

空海は、清龍寺の恵果和尚の下で真言密教の奥義を受け、2年後に帰国。
帰国後、京都高野山金剛峰寺に入り、ここで真言宗の開祖となり、東寺を開く。
中国留学時書を習い、日本に持ち帰った。
書道家として能筆で、三筆の一人に数えられ、多くの書家に影響を与えた。

2007年07月13日

落語・風呂敷

■前座

日本の古典芸能は上下関係がとても厳しい。
落語の世界も初めは"見習い"。 この間無給で、師匠の身の回りの雑務に明け暮れる。
その代わり、食事は一切師匠がみる。
見習いを終えると名前を貰い"前座"として楽屋入りを許される。
一番に楽屋に入り、めくりをその日の出し物順に揃えたり、お茶の準備をしたりする。
三味線以外の鳴り物はすべて前座の担当。
落語もさることながら、太鼓の修行もやらなければならない。

高座で芸人さんが入れ替わるたびに座布団を返し、メクリをめくる。
師匠にお茶を出し、ネタ帳を見せて今まで出た噺を示す。
よく似たネタが重ならないようにするためである。
師匠が高座から降りてきたら、脱いだ着物をたたむ。
こうした裏方をこなしながら、高座に耳を傾け、合間を縫って、稽古をつけてもらう。

前座の仕事は山ほどあるが、お手当ては微々たるもの。
数年間前座を務めると、辛い辛い修行時代が終る。
"二つ目"となり、 寄席に出られる身分になる。
更に精進を重ねること十年…実力も相応と認められると、晴れて"真打"に昇進。
「○○師匠」と呼ばれるようになる。



【吉村外喜雄のなんだかんだ - 182】
~ことば遊び~  「落語・風呂敷」

・開場を知らせる入れ込み太鼓がが「ドンドンドントコイ!…」と鳴る。
 一番太鼓です。
・開演5分前に二番太鼓が叩かれる。
 「お多福コイコイ、ステツクテンテン」と聞こえる。
・開口一番は"前座"が務める。
 続いて"二ツ目"が演目を演じ、最後に"真打"の登場となる。
・芸人さんが入れ替わるたびに聞こえてくるのが「出囃子」。
 二ツ目になると、自分のオリジナル出囃子を決めることができる。
・終演…ハネ太鼓が叩かれる。「デテケデテケ、テンデンバラバラ…」と聞こえてくる。

「落語ギャラリー60」より

貧乏長屋の住人を題材にした人情噺は、話題に事欠かない。
♪『今日は帰れないかもしれない』
そう言って出かけた亭主の留守中、新公がやってきた。
女房は、新公を上らせてお茶を出すと、そこに"帰れない"はずの亭主が帰宅。
それもへべれけ。実は、亭主は大変なやきもち焼き。
酔っ払っているうえに、新公と鉢合わせなんてしたら、どうなることやら…。

慌てた女房は、とりあえず新公を押入れに隠してしまう。
亭主が寝たら、こっそり帰せばいい。
ところが、この日に限って亭主は寝ないし、押入れの前から動こうとしない。
困り果てた女房は、お酒を買いに出てくると言って、鳶頭(とびかしら)のもとに飛び込んできた。

状況を聞かされた鳶頭は、何を思ったか、風呂敷を持って出かけて行った。
見ると、女房の言う通り、亭主は押入れの前にでんと構えて、動く気配もない。
鳶頭は、家に入って来るなり亭主に、
「ちょっと脇でごたごたを収めての帰りでね」と、思わせぶりに言う。
すると亭主は、そのもめごとの顛末を聞きたがった。よしよし、思惑どおり。
鳶頭は話始める。

***「亭主の留守中に、若いのが尋ねて来た。
そこへ亭主が急に帰ってきたので、女房は焦った。
この亭主がものすごく嫉妬深いんだ。ひとまず押し入れに…。
そう、ちょうどお前の後ろにあるような、三尺の押入れにそいつを隠したのだが、
亭主は前で頑張ってなかなか寝ない。ちょうど、今のお前みたいにな…。
その若いやつ、押入れで歳とっちゃかわいそうだろ。
仕方ないから、この風呂敷を、こういうふうにかぶせたんだ」***

と、亭主の頭から風呂敷をすっぽり。
「お前がそいつとするね…見えるか? 見えねえだろ」
鳶頭が押入れをすーっと開ける。と、そこには新公が。

「声を落として押入れに『早く出ろよっ』…て、そいつに言ってやったんだよ。
そうしたら若い男は出てきた…。
押入れを出て、玄関へそっと出て行くのを見送りながら、『忘れもんするんじゃないよ』…と、そいつに言ってやったんだよ。
ついでに『下駄間違えんなよ』とも言ってやったから、そいつは下駄も間違えず、そそくさと去って行った。」

『あぁそうか、そいつは上手く逃がしやがった』

2007年06月15日

落語・饅頭こわい

■ことば遊び 「お釈迦になった」の由来

パソコンで時間をかけて作った文章、ちょっとした操作ミスですべて消滅…。
こんな経験を何度かしている。
そのとき、あァ~「お釈迦になった」と悔やむ。
何で、こんな言いかたをするのか?不思議です。そこで、この言葉の由来を調べてみた。
細工職人が火を強くしすぎて溶接に失敗し、「火が強かった…」と、思わず発した言葉
から来ているという。
下町では「ヒ」を「シ」と発音したので、「シガツヨウカッダ…4月8日だ」と聞こえる。
4月8日はお釈迦様の誕生日。
そこから「お釈迦になった」と言うようになった。
何となく落語の落ちに似ていて、「クスッ」と笑いを誘う。

422号で題材にした 「猫も杓子も」もそう…。「女子も若子も」が語源です。
「女も子供も…めこもじゃくしも」と呼ぶ。
江戸っ子のだじゃれ・遊び心から、「猫も杓子も」と言うようになった。

【吉村外喜雄のなんだかんだ - 178】
~ことば遊び~ 「落語・饅頭こわい」

落語には、町内の若い衆が集まってよからぬ相談をしたり、皆で遊びに行って失敗すると
いった、下町情緒に溢れた噺がたくさんある。

今日は、ご存知「饅頭こわい」から、そのさわりを一席…

♪江戸時代の職人は朝が早かったが、仕事さえちゃんとすれば、働く時間は短かった。
仕事が終わり、湯に入ってさっぱりすると、仲間の家や髪結床、湯屋の二階などに集まり、
銭があれば酒を飲むが、無ければ、無駄話で時間をつぶした。
「そろったかい? 留のやろうが来ない?
しょうがねぇなあ、いつだってぐずなんだから」
『ああ、驚いた。うしろから追っかけてきやしないか…』
留が大声を上げながら駆け込んできた。
来る途中で青大将ににらまれたと、震えている。
これがきっかけで、みんなで怖いものを言い合うことになった。
長いものはウナギ、みみず、どじょうから、ソバやうどんも駄目で、だから褌も締めない、
というやつから、なめくじ、蛙、蜘蛛、おけら、蟻、馬と…いくらでも出てくる。

順々に自分の怖いものをあげる中、離れたところで白けている男が1人。
お前の怖いものは…と尋ねられると、
『なに言ってやんでぇ。黙って聞いてりゃいい若えもんが、あれが怖ぇのこれが怖ぇの…
人間は万物の霊長と言ってな、人間ほど強ぇものはねえんだ』と、強気に突っぱねる。

「そうは言っても、お前にだって何かはあるだろう」と、しつこく追求され、ついに男は口を割った。
『せっかく俺が思い出すまいと思っている時に…。
恥を忍んで正直に言うと…』弱々しい声になって、『饅頭…』

今までの威勢とは打って変わって、みるみる顔は青ざめてゆく。
しまいには、『気分が悪くなってきた。ちょいと隣の部屋で休ませてくれ』と言うので、
しばらく寝かすことに…。

本人がいなくなると、皆、この時とばかりに陰口を叩き始める。
「あの野郎ほど、普段からしゃくにさわるやつはねえ。
1人で強がりやがって、兄貴風を吹かせて…」
こうなったら饅頭を山ほど枕元に並べて、懲らしめてやろう…てんで、皆は饅頭を買いに
駆け出して行った。

やがて銘々が饅頭を手に戻ってくると、早速それを枕元に並べ、障子の向こうに隠れた。
いざ作戦決行! 
寝ている男に向かって、「おい、起きてこっち見ろや!」
ざわつく様子に目を覚ました男。
『なんだい、気分が悪いんだから静かに!』と言いかけ、枕元にある饅頭の山に目をとめ…絶句。
が、次の瞬間『あ~っ、饅頭怖い』と、顔をしかめながらも、旨そうにパクつき始めた。
『いいアンコだねぇ。栗まんじゅうも怖い。ソバ饅頭も怖い。おお~怖い怖い』

冗談じゃない、なにが饅頭怖いだ。
一杯食わされ…いや、食われた。
悔しくて仕方ない若い衆、「てめえが本当に怖いのは一体何なんだい!」
『ここいらで、渋いお茶が一杯怖い…』

2007年05月11日

江戸小噺 どけち

■沈没米駆逐艦 エモンズ号

連休中沖縄に出かけ、太平洋戦争で沈没したアメリカの戦艦を見てきた。
場所は、名護市から北30分の、周囲5キロの小さな島の沖合い、深さ50メートルの海底に横たわり、船名はエモンズ号。
船体は約100メートル、大き過ぎるうえ、太陽光線もわずかしか届かず、カメラには入りきらなかった。

船体の一部…砲塔
浮上時、減圧のため水面下で数分間停止



【吉村外喜雄のなんだかんだ - 173】
~ことば遊び~  「江戸小噺 どけち」

私たちの周りには、ケチなお方の一人や二人、必ずおられるようで…。
お陰で小噺の材料には苦労しません…てんで、三っつばかし、超どけちのお方を紹介します…。

■「かなづち」
旦那「おおい!定、定吉、いるかあ…、あ、ここの廊下に釘が出ていますよ、
   着物でも引っ掛けて、かぎ裂きでもすると、えらい損をしちまうから、
   あの、お隣へ行って、かなづちを借りてきなさい」

定吉『へーい、行って来ました』
旦那「どうした?」
定吉『貸さないんです』
旦那「どうして?」
定吉『お隣へまいりますと、鉄の釘打つのか? 竹の釘打つのか?
   ってぇますから、鉄の釘打ちますってぇと、鉄と鉄がぶつかると、
   かなづちが減るから、もったいなくて、貸せないってんです!』
旦那「なんてぇしみったれな事を言うんだ。釘一本打ったからって、
   かなづちがどれくらい減るんだよ、しみったれだな…。
   じゃ、しょうがない、うちのを出して使え…」


■「けちの秘訣」
男 「ええ、あなたは大変にけちで、お金を残しているということを
   伺いましたが…。
   私も、お金を残したいと思いまして、ぜひ、けちの秘訣を教えて
   いただきたいのですが?」
けち『けちの秘訣ですか…わかりました。では、庭へ出てください。
   庭にね、松ノ木がありますから、そこへはしごをかけて、登りなさい」

男 「枝にですか? はい、ぶら下がりました」
けち『では、はしごを片付けます』
男 「ああ、あぶない!」
けち『大丈夫、そうしたらね、ぶら下がったら、左手を離しなさい』
男 「左手をですか? はい、離しました」
けち『そうしたら、薬指も離しなさい』
男 「ええ! 薬指もですか? はい、離しました」
けち『中指も離しなさい』
男 「ええ! 中指も? はい、離しました」
けち『そうしたら、人差し指も離しなさい』
男 「ええ! 冗談じゃありませんよ、落っこっちゃいますよ、
   人差し指だけは死んでも離せませんよ!」
けち「そうだろう、これだけは(人差し指と親指で輪を作って)、
   離すんじゃあないよ!」


■「せんす」
八「熊公、なんだね、扇子一本あったら、何年使う?」
熊『自慢じゃありませんが、あたしは、扇子一本あったら、十年は使いますよ』
八「自慢しちゃあいけないよ、一本の扇子を十年なんて、そりゃ使い方が荒い、
  乱暴だよ」
熊『乱暴だって? 一本の扇子を十年使えば、こりゃ十分だと思うけれども…。
  じゃあ、八公は何年使うね!』
八「あたしは、自分の代では使いきれません。
  あたしと同じように使えば、孫の代まで持たせますよ。
  熊公は十年って、どうやって使うの?」
熊『ま、いろいろ考えたんだけどもね、これ、いっぺんに広げれば、
  いっぺんに痛んじゃうから、まず、こっち半分広げて、これで五年
  持たせるんだね。
  で、こっちが痛んできたら、もう半分の方を広げて、これで五年持たせて、
  しめて十年持たせようと思っているんですけど…。
  八公は孫の代まで使わせるって、どうやるんだい…』
八「あたしは、熊みたいに、半分広げるなんて、しみったれた事はしませんよ。
  あたしは、こう扇子をいっぱいに広げてね、アゴの下へ持ってくる…。
  で、よく考えてみれば、これ、扇子を動かすから痛むんだから、
  顔の方を動かす…」。 

これじゃ、風もなにも来ゃあしません。

2007年04月06日

落語・長屋の花見

 

満開になった近所の公園の桜

■「落語・長屋の花見」

この噺は大坂の「貧乏花見」を、明治の末に、三代目"蝶花楼馬楽"が改作したもので、当時の題名は「隅田の花見」であった。

その後、四代目"柳家小"さんが更に手を加え、今日の「長屋の花見」になった。
如何なる噺も、幾多の名人上手、はた又、奇人変人を経て、名作落語へと練りあげられたのである。
名だたる落語のほとんどが作者不明なところが、落語の良さなのです。

楽書館「あらすじで読む古典落語」


【吉村外喜雄のなんだかんだ - 169】
~ことば遊び~  「落語・長屋の花見」

「桜咲く 桜の山の桜花 咲く桜あり 散る桜あり」
「一杯は人・酒を飲み 二杯は酒・酒を飲み 三杯は酒・人を飲む」
なんて申しまして、
♪「花見に行ったかい」
『行ってきた』
「どこだ」
『飛鳥山』
「どうだった」
『大変な人だぜ、おめえ…、娘っ子は唄いだす、お婆さんは踊りだすね、いやあ、面白かったなぁ~』
「おれも行ってみるか…、で、花はどうだったッ」
『花ッ…? さあ、咲いていたかなあ』

春爛漫、江戸っ子にとって、春の花見は心浮き立つ一大行事…。
お金に飽かして贅(ぜい)を尽くし、料亭おあつらえの花見弁当に、灘の生一本があれば言うことなし…なのだが、あいにくここは、 近所でも評判の貧乏長屋。
それでも花見に参加しようと、太っ腹の大家さんが、花見の酒と肴を用意した。

ところが出てきたのは、灘ならぬ宇治の生一本の"お茶け"。
重箱には、カマボコに見立てた大根の香々、卵焼きに見立てた沢庵がぎっしり。
酒、肴の運搬役は今月の長屋の月番さん。
大家さん、毛せんがわりのむしろを持たせ、長屋の衆を引き連れて、飛鳥山へ。

さて、花は満開、申し分なしなのだが、お茶に大根の香々、それに沢庵では、盛り上がろうにも盛り上がれない。
耐えかねた大家さんが、月番にお酒を注いでまわるよう命じる。が、中身はお茶け。

「おい、あんまり注ぐな。恨みでもあんのか」
なみなみ注がれて怒る者もあれば、「あたし下戸です」と言って拒否する者も。
「甘口、辛口ってのはあるけど、渋口だね、こりゃ」

続いて大家さんは『肴を食べなさい』と、これもまた月番に…。
しぶしぶ大根の香々をつまみ上げ、
「あたし歯が悪いんで、この頃はカマボコもよくきざまないと…」
「これはいいですね。胃の調子が悪いときには、カマボコおろしにして…」
「このカマボコは美味しいですが、やはり練馬の方のもんですか?」
「わたし、卵焼きは…尻尾(しっぽ)でないところを…」
と、長屋の衆は言いたい放題。

一同やけくそながらも、盛り上がってきたところで、再び大家さん、
『これだけいて一人も酔っていないね。月番さん、酔いなさい』
「では大家さん、つきましては…酔いました」
『やけに早いね』
などと言いながらも、大家さんは上機嫌。
「いやぁ、こりゃいい酒だ。いくら飲んでも頭に来ない」

花見も宴たけなわ。すると、長屋の一人が「大家さん!」と叫んだ。
「近々長屋にいいことがありますよ。"酒柱"が立ってますゥ…」

学習研究社「落語ギャラリー60」

2007年03月09日

落語・胴斬り

■ミイラと古代エジプト展

古代エジプトコレクション

先月東京へ出張した折、国立新美術館を見学したが、更にもう一ケ所、感動した所があった。
一昨年まで大英博物館で人気を博していた「ミイラと古代エジプトコレクション」が、初めて国外に持ち出され、日本で公開されたのです。
美しく彩色された木棺とミイラ、装飾品、ミイラマスクなど、130点あまり展示。

大英博物館秘蔵の、3千年前のエジプト王朝のコレクションの数々を、日本に居ながらにして見ることができるという、 又とない機会を得たのです。

古代エジプト人は、死後、肉体をミイラにすることで、魂が永遠に生きると信じていた。ミイラを作る過程と、 保存ために秘術を尽くした謎を解き明かしてくれると共に、3千数百年前栄誉栄華を極めた、王朝文化を垣間見た。


【吉村外喜雄のなんだかんだ - 165】
~ことば遊び~  「落語・胴斬り」

「笑点」の司会でおなじみの、円楽師匠が引退表明した。
05年に脳梗塞で倒れ、その後復帰を目指してリハビリに努めたが、ろれつが回らず、「こんな状態で落語を語るのは情けない」と、 引退を決意したのです。
落語フアンにとっては寂しいかぎりです。

さて今日は、おかしみたっぷりの「胴斬り」を一席…
♪身分の違いもあるが、うっかり粗相でもすれば、無礼打ちにされても文句が言えない町人。剣の達人に斬られると、痛みを感じず、 気づかないことさえあるという。そこで、なんともユーモラスなのが「胴斬り」を紹介します。

♪脳天から唐竹割、左右対称に真二つにされたのに、腕前がいいので、斬られたほうは気づかない。 平気で鼻歌を歌いながら路地を曲がろうとして、左右がずれて離れてしまう…。
実にすごい斬りようがあったもんです。

ヘソの辺りで、横なぎに胴斬りにされた上半身と下半身が、別々に奉公に行った。ヘソから上は湯屋の番台に住み込み、ヘソから下は、 コンニャク屋に雇われ、桶の中で足踏みをして、コンニャク作りに励んでいる。
よそ見をしないので、仕事がはかどって好評だというから、なにが幸いするかわからない…。一方のヘソから上も、 珍しいもの見たさに客が押しかけて、なかなか繁盛している。

『おめえ、斬られちゃったんだってなあ、足のほうはどうだい?』
「あいつもね、遊んでいられねえって、コンニャク屋に奉公してるんだが、ここんとこしばらく会わねェんだよ。あっちへ行ったら、 様子見てもらいてェんだがなァ」

『いいとも、なんか言づてあるかい?』

「湯屋の番台で元気にやってるって、安心させておくんねェ。
ついちゃァ、ここんとこの陽気のせいか、のぼせてしょうがねえんだよ。膝ッ小僧の下の壷に、のぼせ除けのお灸をすえるよう、 頼んでみてくんねえか?」
『お灸は相方へすえなきゃ、効かないのかい。いいとも、行ってくるよ』

『お宅に、胴斬りになったヘソ下さんが、奉公に来てましょう?』
「はいはい、そこの三つ目の桶ですが、背ェが低いんで、覗かねえとわかりませんよ。いい職人でね、食うものも食わずに働いてます」
奉公人は、食べさせなければならないが、食べさせなくて済むとなると、店にとっては好都合。

友達だから、会わせてもらいたいと頼むと、どうぞごゆっくりと、愛想がいい。
『おう、いるかい』 
「やあ、いらっしゃい」。覗き込むと確かにいる。
『威勢がいいねえ、鉢巻をして、…え? 鉢巻じゃねえ? ふんどしかよ…。
あのねえ、湯屋の番台のヘソ上さんに、伝言されてね。元気にやってるから、安心してくれって。それから、のぼせてしょうがないから、 ヘソ下さんの膝ッ小僧に灸をすえてもらいてえって、そう言ってたぜ…』

「わかりましたが、お帰りンなりましたら、膝ッ小僧に灸はすえるけど、あまり茶をがぶ飲みしねえようにと、 ヘソ上の野郎に言ってもらえませんか。ここんとこ、はばかりが近くて困ってるんですよ…」

2007年02月09日

落語・粗忽(そこつ)の使者

■ことば遊び 「風が吹けば桶屋が儲かる」

『強風で土埃が目に入ると、目を悪くする人が増える。
目を悪くすると、角付けでもしようということになるから、三味線が売れる。
三味線の胴は猫皮だから、猫が減ってネズミが増える。
ネズミが増えれば、桶をかじって穴を開ける。すると桶屋が儲かる…』

この話、大嘘であることは、誰の目にも明らか。江戸庶民の駄洒落(ユーモア)である。狂言や落語をこよなく愛する江戸庶民。 "おかしみ"が伝わってくる。
「猫も杓子も」などの、洒落ッ気あふれる言葉文化の花が咲いた江戸時代。その遊び心は、今も脈々と生きている。

【吉村外喜雄のなんだかんだ - 161】
~ことば遊び~  「落語・粗忽(そこつ)の使者」

少しおつむの弱い主人公や、そそっかしい八っあん、熊さんを題材に、笑いを誘うのが落語。時には、極端な言い回しをしたり、 徹底して歪曲した噺ネタで客を笑わす。そのネタ噺の一つが、「粗忽の使者」だろう。

♪大名、杉平柾目正(すぎだいら まさめのじょう)の家来に、地武太冶衛門という人がいた。これが度を越した粗忽者であった。

ある日使者の大役をおおせつかり、さっそく馬を曳(ひ)かせて飛び乗ったが、
驚いて、「別当! この馬には首がない!」
『後ろ前反対で、首は後ろについております』
「おお、粗忽な馬であるな、その首切って、こちらへ付けよ…」

万事がこんな調子だが、なんとか乗馬して、本郷の赤井御門守のお屋敷に到着した。用人の田中三太夫が出迎え、 挨拶を交わすとさっそく、
『して、お使者の御口上は?』

問われた冶衛門、「暫時お待ちくだされ、使者の口上は…」と言ったきり絶句し、自分の尻をつねり始めたのである。
いぶかしんだ三太夫に、『いかがなされた』と言われ、
使者の口上を失念したと白状した。

使者に参って口上を忘れては、武士の面目が立ち申さぬ。
拙者、この場を借りて一服いたす」 
『では煙草盆を…』
「いや、そうではない、セ、切腹をいたす」
そんなことをされては迷惑である。なんとか思い出す工夫はないかと訊くと、「お力添えがあれば…」と打ち明けた。

治衛門は、幼少の頃から物忘れが激しく、そのたびに父にでん部をつねられた。「痛い!」と思うと、忘れたことを思い出すのが、 習わしになったと言うのだ。だから今もつねっているが、自分でやったのでは効果がない。

「ご貴殿、手前のでん部をつねりくれまいか」
快諾した三太夫に、「初めてお目にかかりながら、面目しだいもござらんが…」と、尻をまくって前屈みになった。
三太夫は老臣、力も弱く一向に効かない。
ついには音をあげ、当家に誰かふさわしいものを探してみようと言ったが、若者は笑い、年寄は苦い顔をするばかり。

この窮状を救わなければと名乗り出たのが、大工の留公である。
"閻魔(えんま)"と呼んでいる、ペンチの親玉のような釘抜きを使おうというのである。
職人であることが知れるといけないので、侍の身なりをこしらえ、三太夫の苗字田中をひっくり返して、中田。
留と太夫をくっつけて、中田留太夫と名乗らせた。

見られていては出来ないからと、三太夫を隣室に退出してもらった留公、いや、留太夫は、作業に取り掛かった。
『これが尻かい、かかとみたいになっちゃってんねェ。
さあ!いくぜ、おい、どうだ!』
「おお、効き申す。…が、もそっと手荒に…。うーん、…あッ、思い出してござる」
襖(ふすま)を開けた三太夫、『して、お使者の口上は…? 』
「聞かずに参った…」



 

2007年01月12日

落語・松竹梅/つづき

■ことば遊び 小話「文鳥」

お城へ出入りの商人が、隣国中国の文鳥を手に入れました。全部で6羽。
大変珍しいので、お殿様に献上することになりました。ところがお殿様、とても縁起をかつぐお方。めでたい数でないと、お喜びになられません。

「まずいな。七・五・三のどれかでないと、まずい…」。いくら数えても、6羽しかいません。商人は思案の末、「ええ、ままよ!」と、 日本の文鳥を一羽まぜ、七羽にして殿様に献上しました。

「おお、これは珍しい」。殿様は大変ごきげんで、一羽一羽大変な可愛がりよう。
数週間後に呼び出され、「はて、中国の文鳥と申しながら、日本の文鳥が混じっておるぞ。どうしたことじゃ…」。商人は返事ができず、 震えておりました。

すると、日本の文鳥が小さな口を開けて申しました。
「お殿様、私は通訳にございます…」


【吉村外喜雄のなんだかんだ - 157】
~ことば遊び~
「落語・松竹梅/つづき」

毎年正月は、おめでたい噺を取り上げている。今年は「松竹梅」という、名前だけめでたい?落語のさわりを一席。今日は、 その続きです。

♪ …で、明日の結婚式に備えて、泊り込みで練習を始めた。
念には念を入れて…ってなわけで、とにかく3人は、何度も何度も繰り返し練習して…もう、寝言に出るほど練習した。  烏カァで夜が明けて…

「本日はお日柄もよく、皆様お集まりいただき、誠にありがとうございました」
当たり障りのない祝辞のほうは、松さんの力で、なんとか無事に終わりやして…
式次第もつつがなく、行なわれたまではいいんですがな…。

ところが梅三郎、ものすごい上がり症でしてな。これがただの上がり症じゃねェ… 
さんざん練習したというのに、本番になると、パンとセリフがわかんなくなってしまいやして…。
どうしよう、どうしようと考えれば考えるほど、ドッポにはまるんですな…。
それでも、ご祝儀の時間は刻々と迫って来やすから、ますます錯乱状態に陥りやして…。

松「え~、最後にご祝儀を行います。なったなった蛇になった…当家の婿殿、
   蛇になった」 
竹「何蛇にな~られた?」 
梅「大蛇にな~られた」
松太郎、耳打ちして、「おいおい…、そうじゃないでしょう…」
梅「あッ 間違えてたか…あ~あ~、間違えてた…もう一回やってくれ…」

松「では、もう一度…。なったなった蛇になった…当家の婿殿、蛇になった」
竹「何蛇にな~られた?」 
梅「亡者にな~られた…?」

もう収拾がつきませんな…。これ以上やったらどんな悪いことになるか、ってェんで、松も竹吉も「…はい、ここでお開きで~す」 って、言わざるを得なくなりやして…。言うか言わないうちに、身支度を整えるのもそこそこに、そそくさと、2人は帰ってしまいやした。

こうして、最悪のところでお開きになってしまったんですが、式も終わっているのに、気づかない梅三郎。ブツブツと続けやす…。
「え? これで違うのか?…待てよ…なったなった蛇になった…当家の婿殿、蛇になった…だろ?…で、何蛇にな~られた?… 炊飯ジャーにな~られた…なんか違うな…」

最初のうちは、こんなのはまだ奥ゆかしかったのですが…。
「あれ? 変だな…なったなった蛇になった…当家の婿殿、蛇になった…
何蛇にな~られた?…カルト教の信者にな~られた…
あれ? これもおかしいなァ」

「あ、わかった! なったなった蛇になった…当家の婿殿、蛇になった…
何蛇にな~られた?…重傷患者にな~られた…? 
これじゃ来られなくなった仲人と同じようなものだし…」

式が終わったというのに、独り言をブツブツ言ってやして、
こんなこと、式の最中に言ってたら、それこそ袋叩きに合いかねませんですな。
「なったなった蛇になった…当家の婿殿、蛇になった… 何蛇にな~られた?…
長者にな~られた…」

やっとのことで正解が出た頃には、あたりはもう真っ暗で…」
「え? 誰も聞いていないの?」と、そこへやって来た警備員さんが一言、
「あの…もう、式場、閉めたいんだけど…」

2007年01月05日

落語・松竹梅

【吉村外喜雄のなんだかんだ - 155】
~ことば遊び~
「落語・松竹梅」

正月最初のメルマガは、「ガマの油売り」「おそろしく長い口上」「寿限無」など、落語ネタを題材にしてきました。
今年は「松竹梅」という、名前だけ?めでたい、落語のさわりを一席…。

♪長屋に、松太郎、竹吉、梅三郎なんてのがいたら、これはこれでめでてェんですが、彼らすべて器用でないのは、 しょうがねェところでして…
松さんが大家さんのところに、ある相談に行きやしてな…。

「大家さん…。あの、実はですね…。明日、うちの町内の自治会長さんとこの息子さんが結婚することになったんですがね…、 急に仲人夫婦の都合が悪くなりまして…それで突然、大役がうちらに回ってきましてね…。
大家さん、それで…、相談に乗っていただきたくて…」

『ほう、そうかい。松さん、それは大変だねェ』

「で、うちの長屋の竹吉、梅三郎も一緒に大役を仰せつかったんですけどね、この3人で何か出来ることはないかと、 話し合ったんですが…、今の今まで、あ~でもない、こ~でもないと、結論が出ないまんまでして…。
結婚式は明日なんで、いよいよ弱っちまって…。
で、大家さんは物を知ってるから、何かの足しになるだろうから、ご伝授いただいたらどうだろう…ってわけで、 あっしが代表で来たわけなんですが…」

『松さん、そうかい、それはありがたいねェ…。そういえば、あなた方は3人合わせるとちょうど"松竹梅"になって縁起がいい…。
じゃ、どうだろう、これは簡単だよ、そして縁起がいい…。
すぐに覚えられるよ。その面白いご祝儀を授けましょうか』

「すぐに覚えられる? そいつはありがたい…」

『これは、お開きの前にやっていただきたい…。いいご祝儀で、パッと盛り上がってお開きとなると、 あなた達の印象もグッと良くなるでしょう』 

『まず松さん、あなたが、「え~、最後にご祝儀を行います」と言ってから、
「なったなった蛇(じゃ)になった…当家の婿殿、蛇になった」 って、 あなたが先導を切って言うんですよ! めでたい席の最後の最後に、 「蛇なつた」 だなんて、なんて嫌なことを…って、皆さんが思うでしょう?』

『で、次に竹さんが、 「何蛇(なにじゃ)にな~られた?」 って、すかさず聞くんです。 で、ここが一番大切なんですよ。

最後に梅さんが、 「長者にな~られた…」って 言えば、どうです? 
皆さんは感心するでしょう。松さん達に大役を果たしてもらってよかった、今後もお願いしたい…って、信頼もつくってもんですよ』

「そうですか…? 早速、帰って練習します。大家さん、どうもありがとうございました」てんで…、明日の結婚式に備えて、 泊り込みで練習を始めた。
念には念を入れて… ってなわけで、とにかく3人は、何度も何度も繰り返し練習して…もう、寝言に 出るほど練習した…。

お後の噺は…12日金曜日につづく

2006年12月22日

江戸川柳

■流行語大賞
2006年度流行語大賞は「イナバウアー」
荒川静香さんの、天女のような美しい滑りが、まぶたに焼き付いている。

トップ10に選ばれた流行語は、「品格」「えろかっこいい」「格差社会」「たらこ・たらこ・たらこ」「脳トレ」「ミクシィ」 「メタボリックシンドローム」

特に印象に残ったのは、日ハム・ヒルマン監督の「信じられな~い」と、早稲田実業・斉藤投手の「ハンカチ王子」でした。


【吉村外喜雄のなんだかんだ - 154】
~ことば遊び~ 
「江戸川柳」

毎年2月、応募作品の中から発表される、第一生命のサラリーマン川柳は、世相がみごとにおり込まれ、ユーモアに溢れ、面白い。
それにも増して面白いのが「江戸川柳」。親子・夫婦の間の人情、恋模様など、 ちょっと卑猥で滑稽で、日常生活を風刺しているのがいい。庶民の暮らしの泣き笑いが伝わってくる。

よく知られているものに…        
「雷を まねて腹かけ ヤッとさせ」 「大晦日 よく廻るのは 口ばかり」
「役人の 子はにぎにぎを よく覚え」 「弘法も 一度は筆で 恥をかき」
「清盛の 医者は裸で 脈をとり」

お嫁さんを詠む
「形見分け 初めて嫁の 欲が知れ」 「叱らずに 隣の嫁を ほめておき」
「なりったけ 嫁小便を 細くする」   「屁をひって 嫁は雪隠 出にくがり」
  
昼寝をするとき、夫婦、昼間から並んで寝るのは、いやらしいと…
「夫とは 向きを違えて 昼寝する」 

普段優しい姑が、時折嫁に見せる鋭い視線
「猫なでの 姑時々 目が光り」

親子関係を詠んだものでは…      
「寝かす子を あやして亭主 叱られる」 「母親は 息子の嘘を 足してやり」 
「腹の立つ 晩真ん中へ 子を寝かし」 「子だくさん 州の字なりに寝る夫婦」

「父親に 似ぬを知ったは 母ばかり」
この子誰の子?そんな疑い、したくないよね!

「よく歩く 子にくたびれる 親の口」 
わが家の孫、そっち行っちゃダメ! 走っちゃ危ない…くたびれること

恋をした男女をよんだものに…
「気があれば 目も口ほどに物を言い」 「まず目と目 それから手と手 口と口」
「手がさわり 足がさわって 仲直り」 「その手代 その下女昼は もの言わず」 

江戸川柳、下ネタの妙。"クスッ"とくる面白さ。
「おかしさは 昼寝のへのこ動き出し」 「足を出す 息子は親の 手にあまり」 
「寝てとけば 帯ほど長いものはなし」 「みんな留守 猫の交尾を よく見られ」 
「大仏の へのこの寸は 書いてなし」
「つらいこと 目も歯もよくて いまひとつ」 「赤貝の 味わい蛸の 味がする」

2006年11月24日

「落語・六尺棒」

■言葉あそび 「ことばの意味を問う」

今日は「猫も杓子も」 の語源をたどってみます。

日頃なにげなく使っている「猫も杓子も」、何ともおかしな言葉です。
外国人が日本語を学ぼうとするとき、何故そう言うのか知りたいと思うでしょう。

「だれもかれもみな」と言う意味の言葉ですが、この言葉のルーツは
「女子も若子も」である。"めこもじゃくしも"と呼ぶ。
「女も子供も…」という意味です。

江戸っ子のだじゃれ、遊び心が、「猫も杓子も」となったのです。


【吉村外喜雄のなんだかんだ  - 150】
~ことば遊び~
「落語・六尺棒」

日本の総理大臣などが、西洋諸国を訪れて悩むことの一つに、場を和ませるとっさのジョークが言えないことがある。真面目で、 喜怒哀楽を表に出さない日本人を見て、お金儲けのことしか頭にない、エコノミックアニマルと、西欧人はさげすむのです。
事実は、日本人ほど多彩な笑いの文化を持った国はない。
落語、漫才、狂言、川柳など、多彩な笑いが庶民の中に根付いているのです。

落語で、馬鹿息子を題材にしたものが多いが、中でも「六尺棒」は面白い。
「親のすねかじる息子の歯の白さ」という川柳があるが、こういう息子には父親の意見も「馬の耳に念仏」で、 しばらく頭を下げていれば"こごと"は上を通り過ぎていくと、しぁしぁと聞き流してしまう…。

♪廓(くるわ)の女に引っかかって、三日も四日も家を空け、帰ると戸が閉まっているので、叩いて、「番頭、番頭…左兵衛、金蔵、 寅吉ッ…」 
『ええ…、夜分遅く、表をドンドンお叩きになるのは、どなたですな?』

父親の白ばっくれた声にギクリとなり、
「あたくしですが…、ちょいと開けてください」
『商人(あきんど)の店は十時限り、お買物は明朝に願います。
はい、毎度ありがとう…』 
「買物じゃない、あたしですよォ…」

あたしじゃわからないので、名前をはっきり言ってもらいたいと言われ、
息子の孝太郎だと告げたが、父親はとぼけて、
『ははぁ、孝太郎のお友達ですか…、手前どもにも孝太郎というせがれが
  おりますが、商人の家に生まれながら、とんでもない遊び人でして、
親類協議のうえ勘当しましたから、そうお伝えを願います… 』

勘当という言葉にあわてて、明日からちゃんとすると謝ったが、
『明日からってのは、もう聞き飽きた、と、おことづけを願います』
どう言っても父親がとぼけ通すので、製造元はそっちじゃないか、
ものが良けりゃ自分のものにし、悪けりゃ捨てようってのは、
あまりにも勝手すぎると言ったために、父親が怒った。

『やかましい!黙ってりゃいい気になりやがって、ちったァ世間のせがれを
  見習え。朝早くから起きて一日働き、夜んなりゃ親の肩を叩いたり、
腰をさすったり…。そばで見ていて涙が出らァ 』

勘当は解かない、跡は養子を取って継がせると、断固と言い切るので、
息子も頭にきた。
「自分の生まれた家を他人に取られるのは悔しいから、この家ィ火ィつけます…」
あわてた父親が六尺棒を片手に飛び出したが、息子の足にはかなわない。
見失って戻ると戸が閉まっている。叩きながら番頭の名を呼ぶと、
「表をドンドンお叩きになるのは、どなたでございましょう」
と、先に入っていた息子がからかう。
俺だと言っても、
「俺ではわかりません。商人の店は十時限り、お買物は明朝に願います…」
すっかり裏返しである。

名前を聞かれて、おまえの父親の幸右衛門だと答えると、
「ああ、右衛門のお友達ですか、手前どもにも右衛門という父親がありますが、
  朝から晩まで働いて、金の勘定ばかりしています。親類相談のうえ、
  あの右衛門は勘当…」 
『親を勘当するやつがあるか!』

「やかましい!黙ってりゃいい気になりやがって、ちったァ世間の親を見習え。
  風邪でも引いたとなると、小遣いやって女の所へ遊びに行けと言う。
  そばで見ていて涙が出らァ」

『なにを云いやがる、父親の真似ばかりしやがって…。
そんなに真似がしたかったら、六尺棒持って、もう一編追いかけてこい!』

2006年10月20日

「落語 時そば」

■ことば遊び イソップ物語 「井の中の蛙 大界(大海)を知らず…」

狐が井戸の底を覗きこみ、「蛙さん、可哀そうに、井戸の底から見える世界は、
丸く小さなお空だけ。それに引き換え僕なんか、春・夏・秋・冬、野山を駆け巡
り、小川で遊び、楽しいことだらけ…、君には想像できないような世界を沢山
知っているよ…」。
そんなやりとりから、「自分の狭い了見に囚われ、他に広い世界があることを
知らないで、得々と振舞っている様」を例えて、言うようになった…。

この狐の哀れみの言葉を耳にした蛙、何て返答しただろうか? 
「井の中の蛙 大界を知らず」と哀れんだ狐さんに、蛙は「されど……」と、
胸を張って言い返した。

答えは、このメルマガの最後に…

【吉村外喜雄のなんだかんだ  - 146】
~ことば遊び~
「落語・時そば」

今日は、落語家柳家小さんの得意ねた、「時ソバ」のさわり。
「笑い」をくすぐる…、私の好きな落語の一つです。

町を流し歩くソバ屋を呼び止めた男が、客のくせに調子のいいことを並べて
ほめちぎる。
「おめえんとこの行灯、変わってるねェ~。的に矢が当たってるじゃねえか」
『へえ、手前どもの屋号は"当たり矢"と申します』
「当たり矢なんざうれしいねェ。おめえんとこの行灯見たら、呼び止めるからな」

『よろしくごひいきに。……へい、親方、お待ちどうさまでございます』
「おう、早いねえ…」
「ちょっと無駄話ししているうちに『親方、お待ちどうさま』はうれしいな。
こちとら江戸っ子だよ。催促してやっと持って来るなんてのは、
うまいものも、まずくなっちゃうぜ。いや、本当だよ。うれしいねェ」

こんな調子で、丸箸でなく、割箸を使っているのは清潔でいい。
ものは器で食わせるというが、いい丼を使っている。匂いがいい。
鰹節をおごってるな。出汁がきいてるぜ。しかも、ソバが細いのがうれしい。

なかには、うどんみたいに太いソバがあるが、あんなものは江戸っ子の食う
もんじゃないよ。腰があっていいね。
たいがい、まがいの竹輪麩(ちくわぶ)を使っているが、本物の竹輪で、
しかも厚く切ってある。夜鷹ソバにしちゃ出来すぎだ。
などとほめちぎって、「いくらだい」
『十六文ちょうだいします』

「銭は細かいんだ、手ェ出してくれ。いいかい? ほらいくよ。ひい、ふう、
みい、よ、いつ、む、なな、や、いま何時だい?」 
『へえ、九つです』
「十、十一、十二…」
と数えて、十六文払うと…、ぷいと行ってしまった。

これを見ていたのが、ちょっと抜けた男。ぺらぺら喋りすぎるし、ソバ屋を
持ち上げるので、食い逃げするのかと思ったら、銭を払って行ったので、
ますます気に入らない。

二人のやり取りをなぞっていたが、十六文と決まっているソバの値を、
わざわざ聞いたり、ていねいに勘定していたのを思い出した。
八文まで数えて「いま何刻だい?」 『へえ、九つです』
「十、十一、十二」と、一文かすめ取ったのに気づいた。
「あれじゃ、ソバ屋は生涯気がつかねえや。面白ぇな。おれもやってみよう…」

あいにく細かい銭を持っていないので、あくる晩、細かいのをそろえると、
待ちかねて飛び出した。
ところが、前夜のソバ屋とは雲泥の差で、もたもたして時間がかかるし、
割箸でなく丸箸を使っている。
丼は縁が欠けてノコギリのようで、口を切りそうになるありさま。
出汁は濃いし、ソバはうどんのように太くて、ねちゃねちゃと腰がない。
その上カンナで削ったように、薄い竹輪麩で情けなくなってしまう。

さて、金を払う段になって、
「銭、細かいんだ。ちょいと手ェ出してくれ。それいくよ…
ひい、ふう、みい、 よ、いつ、む、なな、や、いま何時だい?」 
『へえ、四ツです』 
「いつ、むう、なな、や……」

 

■「井の中の蛙 大界を知らず」の下の句…
 「されど、 天の心(深さ)を知れり」

毎日飽きもせず、天空の一点を見上げているカエル。日々季節に合わせ姿を
変えていく天空…、そこに輝くお星さま…。何と奥が深く、素晴らしいことか…。
狐さんには、とても分からないだろう。だから、ちっとも寂しくなんかないし、
狐さんをうらやましいと思ったことはない。

狐の生き方は「広く浅く」。蛙は「一つことを、とことん深め・極める」人生。

2006年09月22日

「落語・疝気(せんき)の虫」

■ことば遊び「変換ミス…その2」

パソコンや携帯メールの変漢ミス、本人は意外と気づかないものです。
2005年度・日本漢字能力検定協会が発表した「変換ミス年間賞」です。 

「今年から 海外に住み始めました」と、メールしたつもりが…。
『今年から 貝が胃に棲み始めました』と、間違って送られた。
メールを貰った人、さぞや驚いたことでしょう。

・最近エントリーされた作品
「八日以後」が、『要介護』    「耳下腺炎」が、『時価千円』
「リスト表を送ります」が、『リスとヒョウを送ります』
「運転席側に置きっぱなし…」が、『運転席がワニ置きっぱなし…』

・私の作品
役人が職場で「職権乱用」が、『食券乱用』

【吉村外喜雄のなんだかんだ  - 142】
~ことば遊び~ 
「落語・疝気(せんき)の虫」

落語の下ネタ、艶笑落語の面白さは、三遊亭歌奴(現在の円歌)が教えてくれた。
「山のあなあな…」で一躍有名になった、あの落語家です。
当時、歌奴はまだ真打。歌奴を含む芸人一座が、県内各地をどさ回りして歩いていた。私は、社命でその一座に加わり、一月余り、幔幕張りやゴザ敷きなどの、下働きをさせられた。
一日の出し物を終え、座員がくつろいでいる頃、歌奴はみんなを労おうと、艶笑小話を披露した。「お風呂の中でオナラをしたら、男のオナラ、元気よく飛び出してきたのはいいが、前にある邪魔なもの?に引っかかって……、女は…」、
みんな、お腹を抱えて笑いこけた。

寄席では、艶笑落語のたぐいのシモネタはやらない。年頃の娘さんがポッと頬を染める程度の噺に止める。ところが最近では、娘さんがケラケラ笑い、五十・六十のいい年をしたおじさんが頬をそめる…というのが一般的なようで…

♪江戸時代、冷えからくる腰や腹の痛みを、"疝気"と呼んだが、病気といえる病気ではないので、医者も手を焼き、効きもしない薬を与えたり、冷やさぬよう にと、注意するくらいであった。
昔から、蕎麦(そば)は、体を冷やす食べ物で、「蕎麦は疝気に大毒」と言われ ている。
見たこともない虫が現れたので、医者は首を傾けていたが、刺されたりしては かなわないから、潰してしまおうとした。
すると、虫が命乞いをした…「なに、助けてくれ? お前はなんの虫だ?」
『へへへ、疝気の虫なんでこざんすよ…』

疝気の患者を治そうとしても、うまくいかず悩んでいた医者、いい機会だと、
「お前はどうして人の体に入って、人を苦しめるんだい?」
虫が言うには、人を苦しめる気はないが、蕎麦が好物なので、 人が食べたのを頂く。すると、威勢がよくなって運動せずにはいられなくなり、 筋を引っ張ったりするので、人が苦しむのだと言う。

いいことを聞いたと思った医者。さり気なく、嫌いな物を尋ねると、 "唐辛子"だという。『体ィついたら、そこが腐っちゃうんです』
「唐辛子と蕎麦が同時に入ってきたらどうするのだ? 」
と、さらに突っ込むと、恐いから、みんな別荘に逃げ込んでしまうらしい。

別荘とは"睾丸(ふぐり)の袋"だが、そこに非難するのである。
安全だと判断したら出てきて蕎麦を食べ、運動のため筋を引っ張るとのこと。
「人の体は、お前にとっては大家さんみたいなもんじゃないか…。   なぜ苦しめるのだ…」

意見していて、気がついたら夢であった。
そこへ往診の依頼があって、疝気で苦しんでいる患者がいるという。
患者の妻に問うと、お昼に蕎麦を少し食したとのこと。
「蕎麦!蕎麦はいけませんよ!」

治療の方法を教えるからと、奥さんに「盛りそばを注文するように」言うと、
けげんな顔になった。「それから、唐辛子水を丼に一杯こしらえて…」
蕎麦が届いた。食べるのは奥さんで、亭主は匂いをかぐだけ…。

別荘に潜んでいた疝気の虫が、匂いに気づき、次第に上がってきた。
口まで上ってみると、蕎麦は前の口に入っているので、 疝気の虫は、奥さんの口に飛び込んだ。たちまち暴れ出したので、 奥さんに唐辛子水を飲ませると、疝気の虫はパニックになって、
『大変だ、別荘へ…別荘、アレッ!別荘がない!』

ここで高座の古今亭志ん生、きょろきょろ見回し、困惑顔で立ち上がると、 しきりに首をひねりながら退場…。会場大爆笑

2006年08月25日

「落語 桃太郎」

■ホールインワンしちゃいました!
今週の火曜日、金沢セントラルゴルフ、I Nの8番151ヤードで、ホールインワン
しました。
先週、大阪の川人さんの会社の研修に参加し、「運を呼び込むには…」と題し、
運にからむ話をしたばかり。それが呼び水になったのでしょうか?
思いがけない出来事に、ビックリ仰天!

幸運だったのは、キャディさん付のコンペだったこと…。普段はセルフで廻る、
プライベートゴルフがほとんど。キャディさんがいなければ、ホールインワンして
も、ゴルフ場は認定しない。一方、不運だったのは、コンペで、人数が多かった
こと…。ちなみに、ホールインワン賞は、キリンビール1年分でした。

ホールインワンなど、今の私には無縁と思っていた。だから、ゴルフ保険に入っ
ていない。幸運の女神は突然やってくる。人生に於いて、何事であれ、わずかな
チャンスを逃さないためには…、「幸運の前髪」を掴むには…、明確な目的意識を
もって日々努力を怠らず、心の準備をしておくことが大切と思うのです。

【吉村外喜雄のなんだかんだ  - 138】
~ことば遊び~ 
「落語 桃太郎」

落語の演目には、親子のやりとりを扱ったものが少なくありません。
「桃太郎」もその一つ。子守歌代わりにおとぎ話を聞かせようとする父親と、
子の掛け合いが面白い。
とくに、桂三四の創作落語の語り口が好きで、たまらなく可笑しい…。

父「健一! 寝んかい」  子『なんで?』
父「なんでちゅうやつがあるかい、子どもが日が暮れたら寝んの、
   当たり前やないかい」        
子『寝むたないねん』
父「子どもがそない遅うまで起きてたら、恐~いお化けや幽霊がでてきよるぞ」
子『お化けや幽霊やて、今は火星まで探査に行く時代やで、おとうはん!
   云うことが相変わらず可愛らしい…』

父「さあさあ、お父はんが面白い話を聞かしてやるさかい、
   聞きながらねんねするんや。 "昔々…"」  
子『何年ほど?』
父「何年ほど、て…、ずっと前から、ここは"昔々"ちゅうのやがな…」
子『なんぼ昔でも、年号というのがあるやろ』 
父「年号もなにも無いくらいに昔や」
子『年号も無いとは、よっぽどの昔やな』  
父「そうや、よっぽどの昔や」

父「"あるところに…"」    
子『どこや?』
父「どこでもええやないかい。親が"あるところ"ちゅうてんねや、
   あるところやなあと、思うとかんかい!」
子『頼りない話しやなあ、そんなことでは、現実感も何もあらへんで』
父「国の名ァも無いくらい昔や…」
子『国の名ァ無いんの? そら、縄文時代やな?』

父「じょ…、知らん知らん、とにかくあるところに…お爺さんとお婆さんが
   住んでいたんや」  
子『お爺さんの名前は?』
父「名前もないッ。それくらい昔や」         
子『歳は?』
父「どつくで!歳も無い。もうええかげんにせェよ、おまえなァ、そないに次々と
   ひっかかってたら…、ファ~… 寝る間もあらへんやないかい…」

何とか、桃太郎の話を子どもに聞かせているうちに…
子『これ、お父うはん…。ああ…寝てしもたがな。今どきの親は罪がないわい』

■桃太郎の話 [その二]
近ごろは生意気な子どもが増えておりまして、うかうかしていると、
大人でもやり込められてしまいまして…

子「お父っつぁん、桃太郎知ってるかい?」   
父『知らいでかいな…』
子「じゃ、こんなの知ってるかい。昔々、お爺さんは川へ洗濯に…」
親『へえ、じゃ昔のおとぎ話と逆やないか…、お爺さんは川へ洗濯なら、
   お婆さんは山へ芝刈りですか…』
子「そうじゃないんだ、お婆さんも川へ洗濯に行って、二人でじゃぶじゃぶ、
   じゃぶじゃぶ、洗ってたんだ…」
親『へえへえ、それから…』   
子「これでお終い」
親『お終いってね、せがれ、小噺ってのは落ちが肝心なんだよ、
その噺じゃ、落ちがないじゃありませんか…』
子「落ちないから、洗ってんだい!」

2006年07月21日

「なぞかけユーモア携帯用語」

■ことば遊び「無理問答」

「○○とはこれいかに。△△と言うがごとし」 といった題で、
笑点の「大喜利」のネタにもよく使われます。

「一羽でも ニワトリとはこれいかに」
「一羽でも 千鳥というがごとし」 というふうに、言葉遊びをする。

「赤い花でも 葵(青い)とはこれいかに」 
「見るものでも 菊(聞く)というがごとし」

「朝届いても 郵便(夕便)とはこれいかに」
「走って配っても 配達(這い立つ)というがごとし」

「一度打っても 碁(五)とはこれいかに」
「一篇でも 詩(四)というがごとし」

「何個あっても 荷(二)とはこれいかに」
「一回でも お産(三)というがごとし」

「一枚でもせんべいとはこれいかに」
「一つでも饅頭というがごとし」


【吉村外喜雄のなんだかんだ  - 133】
~ことば遊び~
「なぞかけユーモア携帯用語」

携帯メールが若者の間でひんぱんに交わされるようになって、打ち込む字数が
極端に少ない「携帯用語」が氾濫している。それが若者文化になろうとしている。

ケショり過ぎてパンダ。しかもプリン」。何のことやら、さっぱり解らない。
翻訳?すると、「化粧をしすぎて目の周りが真っ黒。しかも、染めていない
髪の毛が伸びて、みっともない(黄色いプリンの、底の茶色の部分)」

これって、"なぞかけユーモア"そのものじゃない…! 
携帯が普及する以前、十年ほど前に「チョベリバ」が流行った。
これは「最悪」という意味に使われ、"超ベリーバッド"の略です。

「いけめん → かっこいい男」  「うざい → うっとうしい」 
この二つはわかる。  
「オケる → カラオケをする」  「グロい → グロテスク」 
となるともう解らない。
「お持ち帰り → 合コンの後、男性が知り合った女性を連れ帰ること」
逆の場合もある。これはもうユーモア大賞ものです。

「ジモ → 地元」  「写メ → 写真付きメール」 「ナビる → 道案内する」  
「ひじき → マスカラを塗りすぎたまつげ」 「ぶっち → 約束を破ること」 
「オール → オールナイト。夜通し遊ぶ」  「イミプー → 意味不明」 

文章にしてみたら、「いけめんとオケの後、お持ち帰りでオール」となった。
これ、通用するかな? ダメ…? 日本語に翻訳?すると、
「かっこいい男の子たちとカラオケを楽しんだ後、そのうちの一人をデートに
  誘って、夜通し遊んだ」となりました…。

2006年06月23日

社名の由来

■言葉あそび 「ことばの意味を問う」
「語源」を探って、「へェ~」と納得するのも、ことば遊びの一つです。
今日は「ゴキブリ」の語源をたどってみます。

人間がこの世に生まれてくる遥か以前から生息し、現在もその姿を変えていな
いゴキブリ。これほど嫌われる動物も稀である。そんな「ゴキブリ」も、その語源
となると面白い。

「御器かぶり」が語源。「御器かぶり」が「ゴキブリ」と呼ばれるようになった。
「御器」とは食器のこと、「かぶり」とは、物を"かじる"の意味。
ゴキブリは"食器をかじる"の意味なのです。


【吉村外喜雄のなんだかんだ  - 129】
~ことば遊び~
「社名の由来」

社名の由来を知るのも、意外と楽しいものです。
キャノン
キャノンの社名は観音様から取ったという… 。前身「精機光学研究所」の
創立者が観音様を信仰し、試作したカメラを「カンノン」と名づけたことに
始まる。
火災をあしらった千手観音の像を、会社のマークにしたこともあるという。

「キャノン」が商標登録されたのは昭和10年。
観音様⇒Kwanon⇒CANON
ギリシャ語の「カノン(規範)」の意味も重ねている。

ミノルタ
ミノルタの社名は、前身 「田嶋光学機器」の創業者・田嶋一雄の英語読みから
(M)achinery and (IN)strumente (O)ptica(L) by (TA) shima
「実る田」のカナ表記の意味も…

SONY  
この命名は、皆さんもよくご存知です。
ソニーは、Sonus(音)とSonny(坊や)の合成語

ブリジストン
ブリジストンは、創業者・ 石橋正三郎さんの名前を英語読みしたもの。
ブリッジ(橋)ストーン(石)

ノエビア
社名からか? よく 「外国の化粧品メーカー?」と尋ねられる。
現社長"大倉 昊"が、1964年航空機部品及びヨーロッパ雑貨の輸入商社
「J.OKURA&Co」を創業。1978年ノエビアに社名変更。
ノエビアは、スペイン語の「ノビオ(男の子)」と「ノビア(女の子)」の合成語で、
「恋人達」の意味。発想が、どこのネーミングより素敵です…

グリコ 
柿の煮汁から発見された「グリコーゲン」から…。

キッコーマン 
亀甲万=亀は万年から

サントリー 
  日の出ラベル「サン」に、創業者・鳥井伸治郎の名前を合体

パイロット万年筆
  セーラー万年筆の「水夫」 に対抗して、パイロット「水先案内人」と命名

シチズン
世界の市民(CITIZEN)に、 よい製品とサービスを提供したいというのが由来

ヤンマー
創業者オーナーである山岡氏は、 学生の頃「ヤンマー」というあだ名だった。


2006年05月26日

落語・しわい屋

■「ケチ」と「倹約」は混同されやすい
必要以上に金銭や品物を惜しむことを、「ケチ」という。
無駄使いをせず、お金を生かして、大切に使うことを「倹約」という。

昔、私の父親、同じ町内の商店主とちょくちょく、喫茶店でお茶を飲んだ。
ところが、ただの一度も連れは「今日は、私が…」と言って、財布を出した
ことがない。レジで払うのはいつも父。連れは「ごっつォさん」と言うだけで、
お金を払ったことがないという。
「あんなドケチな男はいない…」と、父が愚痴っていたのを思い出す。

このような人は心が貧しい…? だから誰も付き合おうとしない。
人間関係も乏しくなる。結果、世間にうとくなり、ご縁も遠ざかり、
運にも見放され、お金が回ってこなくなる…。
いくらケチって、財布の紐を堅くしても、倹約にはならない!
「風が吹けば、桶屋が儲かる」。ならば「ドケチ男は、お金が貯まらない」


【吉村外喜雄のなんだかんだ  - 125】
~ことば遊び~
「落語 しわい屋」

今日は、古典落語の名作、どケチ噺「しわい屋」の一コマ。
♪「しわい屋は 七十五日 早く死ぬ…」、なんてェ川柳がございますが、
居るんですねェ、大変ケチなお方が…。

あるけちな男、うなぎ屋の隣へ引っ越してまいりますと、毎日毎日、
うなぎを焼く匂いを嗅ぎまして、「クンクン、ああ~いい匂いだ」なんてんで、
この匂いをおかずに、ご飯を食べておりますと、月末になりまして、
うなぎ屋の主人が、隣に住んでいる男に勘定書を付き付けた…。

「毎日においをかがせてやっているんだから、さあ代金を払ってもらおうか」
『えエッ、勘定を取りに来たって…、あたしは匂いを嗅いでいるだけだよ、
  なんだい、この勘定書は…』
なんてんで、勘定書きを見ますと、「うなぎの嗅ぎ代、六百文」とあります。

隣の男、突然の無理難題に慌てず騒がず、懐から銭を取り出して、
手の中で、ジャラジャラ音を立てました。
「ほれ、においのかぎ賃だ。この銭の音を受け取って、とっとと帰りやがれ!」

翌日往来で薪を一本見つけまして、手を出して拾うのが面倒ってんで、
この…薪をけっとばしまして、ポンスコ、ポンスコ、自分のうちの前までまいり
ましたので、あとひとけり、ポーンとけとばしたら、見当が外れまして、
隣のうなぎ屋のガラス戸にぶつかり、ガラスが二枚ほど割れまして…。

それを見ていたうなぎ屋の主人、「あれ、あの薪一本のために、
ガラスを二枚…」、そのまま「う~ん」なんて、目を回してしまいまして…。
近所の人が驚いて、水を飲ませたり、薬を飲ませたりしましたが、
なかなか息を吹き返しません。するとそこへ、倅が帰ってまいりまして…。

倅の方は、わりかしと落ち着いているんですなァ…。
どうするのかと思って見ていますと、台所へまいりまして、口に水を含みます
と、おとっつぁんの顔めがけて、「ぷっぷっ~っ」と、水をかけまして…。
倅「おとっつぁん、しっかりおし、今の薬はただだよ!」つたら、
「う~ん」と目をさました。

ある日、うなぎ屋が親子で町を歩いておりましたら、
親父の方が足を滑らせまして、川へ落ちてしまいました。
泳げませんので、溺れております。
倅の方は助けたいんですが、これも泳ぎを知りません。通りすがりの人に、

倅「すいません、親父があすこで溺れているんですけど、助けてくれませんか」
男「はあ…、助けないことはありませんけど、助けたらいくらくれます?」
倅「ええ!お金取るんですか…、じゃ二百文だしますよ」

男「たった二百文ですか、三百文だしなさいよ」
倅「いや、いま親父の相場は安いんだ、二百文でお願いしますよ」
男「親父の相場なんて知るか! 三百文出しなよ!」ってぇと、
親父が川の中から、
「倅、二百文で頑張れ、三百出すなら、もぐっちまう…」

2006年04月21日

勘違い

香林坊東急109の向かいに、"菊一"という老舗のおでん屋がある。
片町にハンドバック&アクセサリーの店を出していた、20代の頃、ちょく
ちょく暖簾をくぐった、思い出の店です…。

■言葉遊び 「字謎あそび

その店の欄間に色紙が飾られていて、「春夏冬二升五合」とある。
このまま読んでも意味が通じない。トンチを効かさなければ読めません。

まず「春夏冬」、これには秋が抜けている。「秋がない」から「商い」と読みます。
「二升」は、「升+升」ですから「ますます」と読む。
「五合」は、一升の半分ですから「半升」、すなわち「繁盛」と読む。
これらを合わせて、「商い益々繁盛」になる。

・では、「一斗二升五合」は、どう読むのでしょうか?
一斗は五升の倍なので「五升倍」、つまり「ご商売」と読む。
「ご商売益々繁盛」というわけです。 


【吉村外喜雄のなんだかんだ  - 121】
~ことば遊び~
「勘違い」

前回の下ネタ艶笑落語は"勘違い"。そこで、今回も勘違いの続きを…

■「聞き違い・勘違い」   
パソコンもファックスもなかった昔、新聞記者が急ぎの原稿を電話で送った。
記者の間で大笑いして、後々まで語り草になったという、聞き違い・勘違いの
傑作があります。

読売新聞奈良支局から原稿が送られてきた。
読むと、 「宮様が東大寺で大カメをご覧になった」とある。
東大寺に大亀がいるとは、本社の誰も聞いたことがない。
原稿を送ってきた支局に、確認のため問い合わせた…。

「モシモシ、大きなでいいですか?」  『はい、 大きなです』
ツル、 カメの亀ですね!」       『はい、釣り鐘の鐘です』
「確認ですが、動物の亀ですね!」    『はい、 大仏の鐘です』

●思い込みはこわい。ホテルの「スイートルーム」が、 新婚さんが泊まるという
  連想から、「SWEET(甘い)」と思い込んでいる人が多い。実際はそうではな
  く、「SUITE(次の間付き)」なんだそうです。

●手近に置いて愛用するから、愛玩物という意味で「ペットボトル」 と言うよう
  になったのかと思っていたら、何と、難しい英語三語の頭文字から取った
  「P.E.T」なのだそうです。

●もう一つ、私達が普段着ている「Yシャツ」。
  その語源、えりがYの字になっているからと思っていたら、そうではなく、
  「ホワイトシャツ」と言うのを聞き違えて、Yシャツと言うようになったのです。

■「変換ミス」
パソコンや携帯電話の変漢ミスは、しょっちゅう起きる。
日本漢字能力検定協会が発表した「2005年度・変換ミス年間賞」

「今年から 海外に住み始めました」と、メールしたはずが、
『今年から 貝が胃に棲み始めました』と、間違って送られた。

これは、念願の海外移住を果たした女性が、友人に送ったメールです。
読んだ友人は、「彼女の胃は大丈夫かしら…」と、心配したそうです。

・その他のエントリー作品
「地区陸上大会」が、『チクリ苦情、退会』
「規制中で渋滞だ」が、『寄生虫で重体だ』
「正解はお金です」が、『政界はお金です』
「五百円でおやつ買わないと…」が、『五百円で親使わないと』

「言わなくったっていいじゃん」が、『岩魚食ったっていいじゃん』
「深くお詫び申し上げます」が、『不覚お詫び申し上げます」
「今度のイブ、空いています」が、『今度のイブ、相手います』
「経済波及効果」が、『経済は急降下』

2006年03月17日

落語・クイ違い

私の若い頃、悪さをして、喜んでいる人がいたものです…。
金沢では、女性を隠語で「○○○」と言いますが、全国にはいろんな方言・
呼び方があるようで、関西では、この金沢言葉を知る人は少ない。

その昔、会社勤めをしていた頃、慰安旅行で白浜へ行った。
その時、悪さをする社員がいて、
「"さようなら"のことを、金沢では"○○○"と言うがや」と、ガイドさんに教えた
んです。
最後のお別れのとき、ガイドさんが、バスから降りてくるお客様一人ひとりに
手を振りながら、「○○○、○○○」と言って、頭を下げた。
してやったりと、男性社員はクスクス笑い。
ガイドさん気づいて、「何、これ!?」って、慌てて言うのを止めた…。

【吉村外喜雄のなんだかんだ  - 116】
~ことば遊び~
「落語・クイ違い」

今日は息抜きに、久方ぶりの落語の下ネタ話。

「酒を飲んで上がるものは血圧。ところで、飲めば下がるものナーニ」と、
なぞなぞ? 飲めば下がるものとは、言わずと知れた酒席の話題。
飲むにつれ、出るとはなしに、アッチの話が飛び出してくる。

このたぐいの下ネタ話を、落語では「艶笑落語」と称している。
寄席では聞けない、おなじみさんだけに語って聞かせる小噺です。

♪えー、落語家の仲間にも、いろいろと、この…、隠語がございます。
女のことを「タレ」と申しますナ。芸者を「シャダレ」なんて言ってみたり、
年増(としま)の女を「マダレ」と言ったりします。
おばアさんを「バーダレ」なんてェのは、ちょっと、申し訳ない言い方ですが…。

反対に、このォ~、男の持っている道具のことを、「ロセン」と申します。
舟を動かすのに、櫓を押す、あの櫓をひっかけてささえるところが、
舟からこう、グッと突き出しております…。
あれを櫓栓、櫓の栓というんだそうで、船頭仲間じゃ、別の名前で「櫓マラ」
なんて、言うそうですナ…。

あたしどもの仲間に、ちょいと小粋な顔だちの男がおりまして…、
若いころから女の子に人気があったんですが、
そいつが仲間と日暮れ方、寄席の裏かなんかで集まっておりましたが…、

男「おう、俺は、ちょいと、今日はこれで帰らしてもらうぜ…」
立ち上がったもんですから、悪いやつらばかりで、さっそくヤイヤイ言い出します。
甲「おうおう、まだ、宵の口だぜ。ええ若いもんが、こんなに早く家へひっこ
  もると、ロセンが夜泣きするぜ、エ!」
乙「夜中に、ひとりで淋しく、ロセンをなぜたり、サスったりしてるなァ、
  ほんとにヨ、みっともいいもんじゃねえぜ」。 

ワァワァ言って送り出したあとで、そばに落語ファンの、いいとこのお嬢さん
がひとり…おりましたんですがな…。

娘「あのォ~、ロセンってなンですか?」 
いや、モノがモノだけに、みんなギョッとしたんですが…、
中で気ィきかせたヤツが、
『 あア、あのネ、ロセンてのは、犬のことなんですよ…』 
娘「アラ、犬ですか」
『ええ、今、帰ったあいつはね、うちに、犬を一匹かわいがっていましてネ、
  だからまァ、あァ言ってからかったんです、ええ…』 
ゴマかしちゃったんですが…。

ところが、二、三日して、そのお嬢さんが、喫茶店でデートをしたんですナ。
いろいろと話題がはずんでいるうち…、
「ねえ、あなたのロセン、一度見せてくださらない?」
『えーッ、ぼ、ぼくのロッ、ロセンを??』
「ええ、見たいわァ! きっと、かわいらしいんでしょうねえ、そのロセン…」

『イッ、イヤ、カ、かわいいってもんじゃないんですけども…、
  あンた、そんなモノ見たいんですか?』 
「ええ、とっても! あたし、ロセン、だァい好き!」

『あ、あ、あ、あの…そ、そんなことを言っていいんですか?』
「どうして? あたし、毎晩、ロセンを抱いて寝るくらいなのヨ!」
『ロ、ロセンを抱いて…?  そ、そんなバカな、ま、まさか、そんな…』
「ほんとよ、あなた、知らないの? 私だってロセンを持ってるのよ!」

『ぎやァー…』ってんで、野郎は逃げ出しちゃったてんですが…、
まァ、ひどいことをしたもんでございます。

2006年02月17日

落語・酒の粕

■言葉遊び 「早口ことば」の続きです。
子ども達と上手に言えるようになるまで、大きな声で、何度も繰り返す…。
結構楽しいものです。

「新進シャンソン歌手総出演新春シャンソンショー」 
「高架橋橋脚」(コウカハシ・キョウキャク)
「肉挽く肉挽き機に肉詰まり ひっかかった肉引き抜くのに 
                 引き抜きにくい 肉挽き機で肉を引く」
「この釘はひきぬきにくい釘だ」 「買った肩たたき機高かった」
「長州しょっちゅう焼酎」  「コックのコップ」×3回  「僕のボブ」×5回

「服作る夫婦 靴作る夫婦 古服売る夫婦 古靴売る夫婦」
「規格価格か駆引き価格か」 「絵扇絵団扇」(エオウギ・エウチワ)


【吉村外喜雄のなんだかんだ  - 112】
~ことば遊び~
「落語・酒の粕」

新年会など、お酒が美味しい季節。お酒の席での取り返しのつかない失敗… 
誰にも一つや二つ、苦い思い出があります。「後悔先に立たず」である。
落語や小噺には、そんなお酒のしくじりを題材にしたものが多い。

そこで都々逸から一首。
♪「論語孟子を読んではみたが 酒を呑むなと書いてない」

■落語 「酒の粕」
♪ 「お酒呑む人 花ならつぼみ 今日もさけさけ 明日もさけ」なんてェます。
お酒呑みにも、いろいろ上戸がございます。
"笑い上戸"なんかは、一座が陽気になります。
ほかに、"怒り上戸"に"泣き上戸"なんて、いろいろですな…。

おでん屋などで多いのが"鶏上戸"、「おっとととととととと、っくぴ、けっこう」。
罪のないのが、からっきしお酒の弱い、私(吉村)のような下戸。
酔っ払うと、たわいなく寝ちまうんで"寝上戸"。面白くもなんともありません。

熊「おい、与太郎、なに赤い顔して、ふらふら歩いてやんでェ」
与太郎『ああ、あにぃかい、あたいね、今、大家さんとこの大掃除手伝ったら、
こ~んなに大きな"酒の粕"二つも、もらって、
  それ、焼いて食べたら、すっかりいい心持ちになっちゃって…』

熊「おい、よせやい、いい若いもんが、酒の粕食らったなんて、みっともねェ
や。そういう時はな、嘘でもいいから、酒呑んだって言ったほうが、
   威勢がいいじゃねぇかィ」
与太郎『ああ、そうか、じゃ、今度からそう言うよ…』
     『あ、向こうから、八のあにィが来たよ、八あにぃ!』
八「なんでェ」  
与太郎『あのさ、あたいの顔、おかしいでしょう』
八「うめェ事言うなぁ、俺は前から思ってたんだよ、この町内で、
   おめェくらいおかしな顔したやつはいねえってな!」
与太郎『そうじゃないよ、あのさ、あたいの顔、赤いでしょう…』
八「そういえば赤いな」
   「なんだ、怒ってるエビのしっぽでも食って、腹でも下 したか…」
与太郎『そうじゃあないよ、あたいね、お酒呑んじゃったの!』
八「なんだって、昼間っから豪勢な野郎だな、どのくらい呑んだんだ?」
与太郎『あのね、このくらいの塊、二つ』
八「この野郎、酒の粕、食らったな!」  
与太郎『あれェ、見てたァ…』
八「見てたァ、じゃねェや、どのくらい呑んだって聞かれて、このくらいの塊
  二つってェば、酒の粕食らったってのが、すぐわかっちまうじゃあねェか。
  そういう時はな、嘘でもいいから、このくらいの茶碗でもって、
  二杯キューっと呑んだってみろ! その方が、威勢がいいじゃあねェか…」

与太郎『ああ、そうか、じゃ、今度からそう言うよ…』
     『じゃ今度、誰の所へ行こうかな』
      『あッそうだ、おばさんのところへ行ってみよう。おばさ~ん…』
おば「あら、与太さん、どうかしたのかい」
与太郎『あたいね、お酒呑んじゃったの!』
おば「まあ、ついこの間まで、子供だ、子供だと思っていたら、
    お酒なんか呑むようになったんだねェ…、どのくらい呑んだんだい」
与太郎『このくらいの茶碗で、二杯、キューッと!』
おば「まあ~、ずいぶん呑むんだねェ、
   だけど与太さん、呑むな、じゃないけど、冷やは毒だよ!」

与太郎『ううん…、焼いて食べたよ』

2006年01月06日

ガマの油売りの口上

あけましておめでとうございます 
私が生まれ育った香林坊。東急ホテルと109が建つ前は、松竹座、スメル館など
4館の映画館が並び、お正月は沢山の人でにぎわった。ストリップ劇場、立花座
横の急な坂を下りた右奥にも、東映・日活など、4館の映画館が並んでいた。

映画館が建つ前は「香林坊大神宮」でした。香林坊交差点に面して大きな鳥居が
あって、境内には大きな銀杏の木があった。毎年春と秋にお祭りがあって、祭礼
の前日、商店街の子ども達に混じって、店の軒先にしめ縄を張って歩いた。

春と秋のお祭り、そして初詣には、大神宮・尾山神社・石浦神社の境内に、沢山の
露店が並んだ。何の娯楽も無かった時代。露店を一軒一軒見て歩くのが何よりの
楽しみだった。
境内には見世物小屋が立った。"ろくろっ首"や"人魚"、"蛇女"などを出し物にし
た呼び込みは、祭りを盛り上げた。
また、バナナの叩き売りや、ガマの油売りなどの大道芸人の周りは、人だかりで
一杯。人垣をかき分けて前にしゃがみ込み、飽きもせずに見ていたものです。


【吉村外喜雄のなんだかんだ  - 107】
~ことば遊び~
「ご存知 ガマの油売りの口上」

正月のBS2は、映画「男はつらいよ・寅次郎」特集を放映していた。ふーてん
の寅さんといえば大道商人。その口上では「バナナの叩き売り」「ガマの油売り」
が有名である。そのガマの油の口上、知名度が高い割には知られていない。
全部だと長過ぎるので、よく知られているさわりの部分を紹介します。

♪ さァ~さお立会い、御用とお急ぎでない方は、ゆっくり見ておいで!
-- 途中略--
…… だがしかしお立ち合い! ほうり銭や投げ銭はおよしなさい。
手前大道に未熟な渡世をいたすといえど、ほうり銭投げ銭は貰わぬ。
では何を稼業にいたすというに、手前持ちいだしたるは、これにある、
万金膏四六のガマの油だ。
そういうガマは、俺の家の縁の下や、流しの下にもいるというが、
それは俗にいう、おたま蛙、ひき蛙といって、薬効の効能の足しにはならん!

手前、持ちいだしたるは四六のガマ。四六、五六はどこでわかる。
前足の指が四本に、あと足の指が六本、これを名づけて四六のガマ。
このガマが棲めるところは、これよりはるゥ~か北にあたる、
筑波山のふもとにて、車前(おんばこ)という露草を食らう。
このガマの獲れるのは、五月に八月に十月。
これを名づけて五十八(ごはっそう)は四六のガマだ!

お立会い! 山中深く分けいって捕まえましたる、このガマ。
油を獲るには、四方に鏡を立て、下に鏡を敷き、その中にガマを追い込む。
ガマは己の姿が鏡に写るのを見て、ウウッ!おのれと驚き、
たらァりたらりと油汗を流す。
これを下の金網にすき取り、柳の小枝をもって三・七、二十一日の間、
とろォ~り、とろりと煮詰めたるが、この万金膏ガマの油。

赤いは、辰砂椰子油(しんしゃやしゆ)の、てれめんてえかにまんてえか、
金創には切り傷、効能は出痔・いぼ痔・はしり痔、ひびにあかぎれ、
しもやけの妙薬。そのほか腫れ物一切に効く…。
ま~だある。大の男が七転八倒する、虫歯の痛みもピタリと止まる。
いつもは一と貝で百文だが、今日は広めのため小貝を添え、二貝で百文だ!

いや、いや、ちょっと待て! ガマの油の効能はそればかりかというと、
まぁ~だある。刃物の切れ味を止めて見せようか…。
手前持ちいだしたるは、鈍刀たりといえども、先が斬れて元が斬れぬ、
なかばが斬れぬという、そんな代物ではない。

ご覧の通り、抜けば玉散る氷の刃(やいば)、目の前にて白紙を一枚切って
お目にかける。さッ!一枚の紙が二枚に切れる。二枚が四枚、四枚が八枚、
八枚が十六枚、十六枚が三十と二枚! 春は四月落花の形、比良の暮雪は、
ふうッと散らせば、雪降りの形だ、お立合い!

かほどに切れる業物(わざもの)でも、ひとたびガマの油を塗るときは、
たちまちなまくら、白紙一枚容易に斬れぬ。さ! この通り叩いても斬れぬ。
引いても斬れない。抜き取るときはどうかというと、鉄の一寸板もまっ二つ。
さわったばかりで、あッ痛! このくらいに斬れる。

だがお立合い、こんな傷はなんの造作もない。
ガマの油を一つけ、付けるときは、痛みが去って、血がぴたりと止まる。
いつもなら…一貝が百文だが、本日は出ばってのご披露、
小貝を添えて、二貝でたったの百文、さァ買った!買った! 
なんとお立合い……     --以下略--

※今は亡きふ~てんの寅さん。あの人懐こい親しみのある顔でタンカを切り、
  口上を述べている姿が浮かんでくる…。

2005年12月02日

流行語大賞

■言葉遊び。創作「早口ことば」
「金沢金大機械科今学期学科課目各教官協議の結果下記の
如く確定。化学幾何学機械学国語語学古文国家学絵画卒論」 
ちょっと長すぎたかな…

「ふかくさ ふかくさ ふかくさ すさくた ふたすさ ふかすか 
ふかすふか すかすかくさ」

これ、スラスラと言えて、スラスラと意味がわかったら、あなたは変人。
こんなもの読めっこありません。意味だってチンプンカンプン。
でも、デタラメを並べたわけではない。ちゃんとした意味のある言葉なのです。


【吉村外喜雄のなんだかんだ  - 104】
~ことば遊び~
「流行語大賞」

昨日、05年流行語大賞が発表された。パソコンのディスククリーンアップで、
ファイルデーターを圧縮するように、古い記憶がどんどん圧縮され、人生が
圧縮され、やたら人生が短く感じられるようになる。

そこで毎年、我が家の十大ニュースと流行語大賞を重ね合わせて、ファイル
しておくのはいかがでしょう。その時どきの世相が思い起こされ、貴重な思い
出コレクションになりそう…。

 

2005年(平成17年)
≪大 賞≫
「小泉劇場」 と、ライブドア堀江貴文「想定内・想定外」 が選ばれた。
≪ベスト10入り≫
・「クールビズ」 ・「刺客」 ・「ブログ」 ・「フオーー!」 ・「富裕層」
・「ちょいモテオヤジ」 ・ロッテ優勝「ボビーマジック」 ・「萌え~」

2004年(平成16年)
・アテネオリンピック水泳金メダリスト、北島康介の「チョー気持ちいい」
≪ベスト10に選ばれたもの≫
・アニマル浜口の「気合だ~」  ・自民党幹事長 武部 勤の「サプライズ」
・ライブドア社長 堀江貴文の「新規参入」  ・韓流ブーム「冬ソナ」
・浜田陽区の「△△って言うじゃない、○○切り! …残念!!」
・作家 片山恭一の「セカチュー」  ・「自己責任」 etc

[選に漏れたものにも、記憶に残るものが多い]
・巨人軍 渡辺恒雄の「たかが選手」  ・小泉首相の「人生いろいろ」
・皇太子さまの「人格否定」

2003年(平成15年)
・テツ&トモの「なんでだろう~」 ・衆議院議員 野中広務の「毒まんじゅう」
・衆議院選挙で初めて戦われた「マニフェスト」

その他、星野仙一の「勝ちたいんや~!」、肺炎による感染症「SARS」、
フジテレビの人気番組"トリビアの泉"の「ヘエ~」、「ネット心中」、
「オレオレ詐欺」などがある。

2002年(平成14年)
・「タマちゃん」 八月に多摩川に姿を現してから、全国のお茶の間の人気者に
  …今年は「なかちゃん」が可愛かった。
・「W杯」ワールドカップで日本中が沸いた。
その他上位には、ノーベル賞「ダブル受賞」、「ムネオハウス」、「拉致」
「ベッカム様」などが記憶に新しい。

2001年(平成13年)
・小泉内閣発足により、「米百表」「声域なき改革」「ワイドショー内閣」「骨太の
方針」など、小泉人気に集中。
その他上位は「狂牛病」、塩川正十郎の「塩じい」、「抵抗勢力」、
氷川きよしの「ヤダねったら、ヤダね…」などがある。

2000年(平成12年)
・「IT革命」 この夏パソコンが急速普及、テレビの年間出荷台数を追い抜く。
・スマップ香取慎吾が扮する"慎吾ママ"の「おっはー」
その他上位には、柔道田村亮子のオリンピック「最高でも金、最低でも金」、
長野県 田中康夫知事の「官対民」、自己中心的世評を反映した「ジコチュー」、
オリンピック水泳銀メダリスト 但馬寧子の「めッちゃ悔し~い」などがある。

2005年11月04日

落語・目黒のさんま

「五郎島の芋」を親戚・友人に配った。今年は出来がよく、栗のようにほこほこし
て美味しい。我が家の食卓、新米を炊いて、山で採ってきた"シバタケ"の吸い物…。
昨日はカナダ産の松茸ご飯。果物は柿にイチジク、みかん。我が家は今、秋の
味覚がいっぱい!

夏はウナギの蒲焼、秋はサンマの塩焼きが美味しい。脂ののった地のイワシを
湯にしたものを、酢醤油で戴くのもいい。冬は、寒ブリを三枚にさばいた残(骨)を、
近江町市場で仕入れてきて、粕汁にして、骨に付いた身をしゃぶる。これがなんとも
美味い! 季節折々、美味しいものを味わうときほど幸せを感じるときはない。
ところで、ウナギの蒲焼が庶民の口に入るようになったのは、江戸時代になって
から。そのウナギの調理法、関西では"腹開き"、関東は"背開き"なのはよく知
られている。
何故関東では"背開き"なのかというと、江戸は武家の町、"腹開き"は切腹を
イメージして縁起でもない。それで背開きが一般的になった…という、もっとも
らしい理由がある。

【吉村外喜雄のなんだかんだ  - 100】
~ことば遊び~
「落語 目黒のさんま」

サンマは「秋刀魚」と書く。この庶民の魚サンマをネタにした落語に、あの有名な
「目黒のさんま」がある。

日本晴れの上天気なので、紅葉狩りでもしようかと思った殿様、武芸鍛錬のため
遠乗りがよろしいでしょうと言われ、下屋敷から遠くない目黒に行くことになった。

「あとへ続け! 参れッ」。家来の支度のことなど考えもしないで飛び出したので、
家来はあわてて厩(うまや)へ走って馬を引き出す始末。しかし殿様は乗馬で鍛え
ていないので、目黒に着いた頃には、尻が痛くなり、下馬しているところへ、家来
が到着した。

空腹を覚えた殿様が、弁当を持てと命じたが、火急のことで誰も持参していない。
しかし殿様は文句を言えない。文句を言えば、家来の誰かが罪を負うことになる
ので、「持参していない」と家来が言えば、「おお、さようか」と言うしかないので
ある。
そこへ、近くの農家から香しい魚の匂いが漂ってきた。家来に尋ねると、
「百姓家で焼いている、秋刀魚と申すゲス魚でございます。下民の食するもので、
殿様のお口にはとても…」とのこと。
「黙れッ、戦場へ来て腹が減っては戦ができるか! 苦しゅうない、これへ持参
いたせ」。正論である…。
家来が農家から買ってきた、焼きたての、脂の乗った旬の秋刀魚。それも遠乗り
後の空腹で、しかも野外とくる…。まずいわけがない。またたく間に残らず平らげ
てしまった。

『お屋敷へお立ち帰りののち、ここで秋刀魚を食したことは、ご内分に願います。
ご重役の耳に入りましては、我らの落ち度に相成ります』
「その方の迷惑になることならば、口外はいたさん」
口止めされてしまったが、日常の食膳に出るのは、決まって冷たい鯛ばかり。
どうしても、秋刀魚の味が忘れられない。

その後、親戚に客として招かれた。お好みの料理をお申し付けくださいと言わ
れた。この時とばかり、「ならば秋刀魚を!」と所望した。
もちろん用意などしていないので、日本橋の魚河岸に早馬を飛ばした。
脂の強い魚ゆえ、体に障っては一大事と、料理番が開いて蒸し器にかけ、小骨
を一本一本毛抜きで抜いて、ツミレにして、椀に入れて出した。

かすかに匂いはするが、そんなものが美味しいわけがない。
「この秋刀魚、いずかたより取り寄せた?」 
『はい、日本橋の魚河岸にございます』
「それはいかん、秋刀魚は目黒にかぎる…」

2005年09月16日

落語・こんにゃく問答

■ことば遊び「無理問答」
「○○とはこれいかに。△△と言うがごとし」といった題で、
笑点の「大喜利」のネタにもよく使われます。

「一羽でも ニワトリとはこれいかに」
「一羽でも 千鳥というがごとし」 といった言葉遊びです。

「赤い花でも 葵(青い)とはこれいかに」
「見るものでも 菊(聞く)というがごとし」

「朝届いても 郵便(夕便)とはこれいかに」
「走って配っても 配達(這い立つ)というがごとし」

「一度打っても 碁(五)とはこれいかに」
「一篇でも 詩(四)というがごとし」

「何個あっても 荷(二)とはこれいかに」
「一回でも お産(三)というがごとし」

吉村外喜雄のなんだかんだ
~ことば遊び~
「落語・こんにゃく問答」

会話の中に、ひょいと出で来るジョークは、笑いを誘い、雰囲気を和ませ、
人間関係を親密なものにしてくれる。
名の知れた大学教授の講演を聴く機会が多い。共通しているのは、講義にあり
がちな堅苦しさはなく、聞き手を笑いに引き込み、時間を忘れさせてくれるこ
とだ。学生に人気がある教授ほど、その傾向が強い…。

「感性論哲学」の創始者、芳村思風先生。講義中、聴講生が散漫になりかけたの
を壇上から見ていて、フッと話を中断し、しばし沈黙してしまう…。
聴いている私たち、何だろう?次に話すことを忘れたのでは?と、みな先生に
意識が集中する…。 と、突然、「なんちゅうか、かんちゅうか、ほんちゅうか、
な~んちゃって…」の、お得意のジョークが飛び出してくる。

会場はドッと笑いの渦に包まれ、それまでの眠気もふっ飛んでしまう。先生は
笑いでもって、受講生を引き付ける"ネタ"を、幾つか隠し持っているのです。
何度か講義を受けているうちに、それが分ってくる。
そら!出るぞ、出るぞ…! 要望に応えて、先生の口からジョークが飛び出し
てくる。そのたんびに、会場は爆笑。講義が、何とも楽しいものになっていく。

受けを狙ったジョークや笑いは、言おうとして出てくるようなものではない。
日頃からユーモアを楽しむ心がないと、身に付かないもののようです。

さて今日は、洒落話しといきましょう。言葉遊びに「無理問答」というのがある。
落語のネタによく使われています。中でも有名なのが「こんにゃく問答」。
その中で交わす、八っつァん、熊さんの珍問答が面白い…。

「……、野郎、しからば一不審(いつぶしん)、もてまいろうか」
『なにをいってやんでえ畜生、高慢なことを言うな、 なんでも持ってこいっ
てんだ!』
「われ鉄眼の竜となって、汝(なんじ)を取り巻くときは、これいかにとくらァ
…! どうだ、驚いたかこの土手カボチャ」
『土手カボチャァ!? 畜生め! 汝、鉄眼の竜となれば、炎となって汝を
溶かす、とくらァ…、どうだ、おたんこなす』

「汝、火となるときは、われ、水となってこれを消す!と、どうだ!」
『水になれば、土手になってこれをふせぐ』
「土手になれば、猪になってこれをくづす」

『猪なら狩人になって、汝を撃つ』  「汝、狩人になれば、われ庄屋となる」
『汝、庄屋となるときは、代官となる』 「汝、代官となれば、われ奉行となる」
『奉行となれば、老中となる』     「老中となれば、将軍となる」
『将軍となれば、天子となる』     「太陽となる」

『高いもんになりやがったなこん畜生! 
  汝、太陽となれば、日蝕となって世界を暗くする』 
「汝、日蝕となれば、百万がけのろうそくの灯りになって、世界を照らす」
『ろうそくになれば、風となって、その灯りを消す』
「風になれば、壁となって、これをふせぐ」

『ネズミとなって、食い破る』 「猫となって、汝をとる」
『汝猫となれば、われおさんどんとなって、これをブチ殺す』
「おさんどんになれば、権助となって、われ汝をくどく」
『べらんめェ、お前ぇなんかにくどかれてたまるか…嬶ぁが化けて出ら!』
「嬶ぁが出てきたか…。おおクワバラ、クワバラ、嬶ぁには勝てない…」

落語の「無用問答」はここまでにして、「ああ言えばこう言う」。こんな会話の
ヤリトリを"尻取り遊び"のように、瞬時に応酬し合って、勝ち負けを楽しむの
も、ユーモアや、営業のセンスを磨くのには役立つたかも…。

難しい研修カラキュラムだけでは疲れてしまう。15分ばかり、こんな課題で
場をなごますのも、いいかもしれませんね?

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2005年07月15日

サラリーマン川柳

言葉遊び、今日は”江戸川柳”。 江戸川柳は、まず「七七」を出題し、それに
「五七五」を付けさせる遊びです。笑点「大喜利」のネタにもよく使われます。

下の句の出題 「斬りたくもあり 斬りたくもなし
答えた上の句 「盗人を 捕らえてみれば わが子なり

・秀吉か、家康が出題したと言われている下の句。
○く□て、しかも△」 (丸く四角て、しかも三角)

・誰が答えたか、見事な上の句。
蚊帳(かや)の手を 一つはずして 月を見る
四角に吊られた蚊帳。四隅の吊り手の一つをはずせば三角になり、
そこから見上げる月は満月という詠み歌である。

・私のお粗末な上の句。
「お豆腐(□)を 斜めに切って(△) 皿(○)に取る」 これでは面白くない。
日の丸の(○) 国旗(□) を立てる 三脚へ(△)」
これも面白くない… 
おでん鍋(○) 卵こんにゃく(○△)  がんもどき(□)」
もうひとひねり…  
折り紙(□)を  折ってカブト(△) を  かぶる子(○)」 
サイコロ(□)で 目(○) の数競う 三人(△)
おにぎりを 握る母さん 魔法の手
なんてのが次々浮かんできた… 皆さんも、何かよい句浮かびませんか? 

【吉村外喜雄のなんだかんだ85】
~ことば遊び~
「サラリーマン川柳」

五月中旬に、毎年恒例、第一生命の「サラリーマン川柳優秀10点」が発表され
た。川柳は、その時々の世相がみごとにおり込まれていて、奥が深く面白い。
俳句の「五七五」を基本にしつつも、面白ければ字余りも可とし、季語も不要で、
自由奔放、楽しく詠い込むことができる。

●今年は、振り込め詐欺を取り上げた作品が、三点も入選している。
一位 「オレオレに 亭主と知りつつ 電話切る」
三位 「振り込めと 言われたその額 持ってない」
六位 「オレオレは マツケンサンバ だけでいい」

●家庭内を描いた作品も、相変わらず人気を集めている。
五位 「有害だ 混ぜるな危険! 嫁姑」 
七位 「残念! 俺の給料 妻が斬り」
八位 「何食べる? 何があるのか 先に言え」
十位 「ケンカして わかった妻の 記憶力」

●昨年の韓流ブームを反映して…
二位 「ぺと言えば 母はヨンジュン 父加トちゃん」
四位 「ヨン様かあ オレは我が家で ヨソ様さ」

■昨年、平成十六年の入選作から…
「やめるのか 息子よその職 俺にくれ」 「小遣いが 欲しい父も チワワの目」
「オレオレと 帰るコールに どちら様」 「課長いる? 返った答えは いりません」
「『へえ~』じゃない おまえのことだ 『はい』と言え」
「着メロの 『乾杯』が鳴る 通夜の席」 「リストラで 辞めれるやつは できる奴」 
「無駄省け 言っていた上司 省かれる」 「ゴミ出しを 忘れて会議 上の空」

■平成十五年の入選作から…
「タバコより 体に悪い 妻のグチ」     「ついに来た 俺も週休 七日制」
「化粧取り プールに入った ママはどこ」 「年収は ゴジラ松井の 一打席」

■平成十四年の入選作から…
「ふろの順 おやじ最後で 掃除つき」 
「あかちょうちん 会議の時より 意見でる」
「気分よく 100円ショップで ムダ遣い」
「プロポーズ あの日にかえって 断りたい」
「誰の子か わからぬままに 十カ月」 
「死ぬ前に 使ってみたい 保険金」

●夫の悲哀
「ゴミの日と 丸つけられた 誕生日」 「おならにも 家長のしめし 付ける音」
「まだ寝てる 帰ってみれば もう寝てる」 「いい家内 十年たったら おっ家内」
「運動会 抜くなその子は 課長の子」 「冷戦の 妻が六法 読み始め」

●我が家の妻もオバタリアン…
「目は一重 アゴ二重に 腹は三重」 「スカートの ホックつかんで くしゃみする」 
「お父さん やさしく呼んで ゴミ渡す」 「髪染めて 出かける妻に 犬が吠え」
「オバタリアン 三人寄れば 暴力団」 「妻の後 入る湯船に お湯を足し」

●ゴルフ川柳…一向に上達しない私!
「ドライバー 今のは素振りか 空振りか」 「何故ここに 前のホールの OB球」
「スコアーに くよくよするな その腕で」 「池に谷 俺は自然が 大嫌い」

●ブラックユーモア
「親孝行 したい時には 職はなし」 「マザコンと 言われて母に 相談し」 
「俺粗大 ゴミならおまえ 危険物」 「涙する 苦労語るにゃ 太りすぎ」 

読んだ人が「クスッ!」と苦笑し、「そうそう…」と共感できるのが楽しい川柳。
憎まれ口を叩いたり、叩かれたり…。世相に対する軽い”批評”や”ヒニク”が
詠み込まれている。川柳を詠む人の”センス”がかかってくる。川柳を通して、
世間のおかしなところが浮き彫りになる。

2005年06月17日

三方一両の損

■ことば遊び 「先頭車両」
JR西日本の事故の後、
「心なしか電車の先頭車両に乗る人が減ったようね」
と、ある女子高生の会話。
「先頭車両ってチョー怖い! なくしてしまったらいいのに…」
って言うじゃなァ~い。
先頭車両をなくしたら、二両目が先頭になるんですからァ…、残念!

ラッシュアワー時、先頭車両が”女性専用車両”になる通勤電車。
おばさんが駅員にからんでいた。
「女をまとめて殺すつもりなのォ!!」って言ってるじゃなァ~い。
そんなおばさん、何があっても絶対に死んだりしないんだからァ…、残念!

吉村外喜雄のなんだかんだ 第83号
~ことば遊び~
「落語・三方一両の”損”」

前号で、芝寿し梶谷会長の「三方一両」の話をしました。
今日は、古典落語の名作「三方一両」から、大岡裁きのさわりを紹介します。
この噺(はなし)は、江戸つ子気質の典型を扱ったものとして面白い。

えー♪ 神田白壁町の左官金太郎が、柳原で拾った財布の中に、書付と印形。
それに三両の金が入っていた。
書付から、落とし主が神田竪大工町の大工吉五郎とわかったので、
届けに行くが、二人とも職人なので、口が乱暴だ。

「おう! おめえが大工の吉五郎ってぇのか?」 
『てめえはなんでえ』
「おれは左官の金太郎ってんだい」  
『金太郎にしちゃァ、赤くねえな』
「まだ、うでてねえんだ」 
『生で来やがったな、この野郎、なんか用があるのか』
「用がなくて、こんな小汚いところィ来るかい!」

こんな調子で、『印形と書付は貰っておくが、金はいらない。てめえにやる』
と、吉五郎が言えば、金太郎は、
「そんな金を貰うくらいだったら、最初から届けねえャ!」と、やり返す。

更に吉五郎が、『もとは俺の金だったが、いったん懐から飛び出したんだ。
二度と敷居をまたがせねえ。
てめえが拾ったんだから、褒美にくれてやらぁ~。帰りにでも一杯やれ!』
と言ったものだから、喧嘩になってしまった。

言い張っているうちに、双方こじれにこじれて、南町奉行大岡越前守さまに
訴えて出た。双方から願い出たものだから、すぐに奉行所から呼び出しが
かかった。
黙って言い分を聞いていた名奉行大岡越前守。 静かに口を開いて、
「左様か、両名とも、しからばこの三両の金子、いらぬと申すなら、越前、
  預かりおくが、どうじゃ…」

その金があるから喧嘩になると、二人が納得したので、奉行は続けた。
「では、そのほうたちの正直に愛で、越前が二両ずつ褒美としてつかわそう」
それを聞いた二人は、「へへェ~」と、ありがたく頂戴した。

奉行が一両出し、両人に二両ずつ褒美として与えたので、”三方が一両の損”で、無事に裁きは終り、 越前守のはからいで、食事まで馳走になった。
「これこれ両人、いかに空腹じゃと申して、あまり食すではないぞ!」
『へえ~、多かァ(大岡)食わねえ、たった一膳 (越前)』

2005年04月01日

落語・ここにも一合残ってら

■ことば遊び。
韓国に行って、二言か三言しか韓国語が話せなくても、「はんぐんまる ちゃるはしねよ」(韓国語お上手ですね)と言われます。

「はんぐんまる ちゃるはしねよ」
「はんぐんまる」は日本語で”ハングル語”。
「ちゃるはしねよ」は”お上手ですね”。 ”韓国語お上手ですね”となる。
「ちゃるはしねよ」は、”上手に入れが、箸ね”と覚える。
「うりまる ちゃるはしねよ」も同じ言い方。
「うり」は”我(われ)”、「まる」は”言葉、○○語”。
「うりまる」”我々の言葉”となる。

頭に「より」”料理”をくっ付けて、「より ちゃるはしねよ」” 料理がお上手ですね”。
「のれ」”歌”が付くと、「のれ ちゃるはしねよ」” 歌がお上手ですね”など、
いろいろ使える。 尚、韓国で”日本語お上手ですね”と韓国人に言うときは、
いるぽんまる ちゃるはしねよ」。”居るよ、日本丸”と覚える。

韓国には、日本語の上手な人が沢山います。ところが、日本で韓国語を話せる人
は少ない。それで、珍しがられるだけでなく、声をかけた途端に親切になって、
仲良くなってくれます。同じ文化圏なのに、これほど言葉が通じない隣国同士も、
世界では珍しい。

吉村外喜雄のなんだかんだ 第73号
~ことば遊び~
「ここにも一合残ってら!」

今日はちょっと息抜きに、落語の下ネタ話を一つ…

「酒を飲んで上がるものは血圧。ところで、飲めば下がるものナーニ」と、なぞなぞ? 飲めば下がるものとは、 言わずと知れた酒席の話題。飲むにつれ、出るとはなしに、アッチの話が飛び出してくる。
このたぐいの下ネタを、落語では「艶笑落語」と称している。
寄席では聞けない、おなじみさんだけに語って聞かせる、艶話である。

私が日立に勤めていた頃、日立チェーンストールのお客様招待会で、東京から演劇一座がやってきた。 受け入れ側スタッフとして、一ケ月ほど一座に同行したことがある。鶴来の体育館、根上の公民館と、県内をドサ廻り。 マン幕を張ったり、ゴザを敷いたりするのが私の仕事でした。

その一座に、真打になったばかりの「三遊亭歌奴(三遊亭園歌)」がいた。ご存知「山の穴々」 の出し物が大受けしていた。高座が引けて楽屋でくつろいでいるとき、お手伝いしている私達へのサービスだと、 下ネタ艶笑落語を披露してくれた。

「風呂の中でオナラをしたら、鼻のまん前にブクブクパッチン…。男のオナラは…、女は…」と、 顔を見ているだけでフキ出しそうな歌奴の熱演に、腹を抱えて笑ったものです。 
で、とって置きの「艶笑落語」の小話を一席。「こんな下ネタを流すなんて不謹慎」と思われる向きには、 これから先は読まないほうがよろしいようで…。

「おい、酒を出せ」
『おまえさんねえ、酒なんかありゃしないよ』
「買ってこいよ!」
『お金がないんだよォ』
「金がなきゃ、何か質に入れてこさえろやい」
『質に入れるったって、タンスはからっぽだよ』
「からっぽだっていったって、そこを何とかするのが世話女房じゃねぇか。何とかしろ!」
『しょうがないねえ、おまえさんは、言い出すと後へ引かないんだから…。
  じゃ、ちょっと待ってておくれ』
てんで、おかみさん、裏口から出て行くと、一升ぶらさげてアネさんかぶりをして帰ってきた。
「それみやがれ、何とかすりゃ、何とかなるじゃねえか」
『おまえさんねえ、この一升飲んだら、あしたっから仕事をしておくれよ。
もう何にも売るもんはないんだから』
「ないんだからって、おめえ…、なにを売ってきた?」
『おまえさん、これだよ』と、アネさんかぶりを取るとザンギリ頭。
「なんだい、おめえ、その頭は…。すまねえ、おめえの髪の毛まで売らせちゃって…。よし!おれは、あしたっから働くから…」

なァんてんで、すっかり仲よくなっちまって、二人で床に入って、亭主の手がスーッとすべっていったかと思うと、 「おッ!おめえ、ここにも一合残ってら!」
『 …… 』

2005年01月14日

おそろしく長い口上

私が最初に勤めた会社が日立の代理店。翌年、東京オリンピックが開かれ、家電の全盛期に入った。まだ娯楽の少ない時代。 会社の慰安旅行、温泉での新年会など、皆、楽しみにしていた。
当時はまだカラオケがなかった。宴会では、一芸を持った人が次々と隠し芸をやった。
まず社長(先祖は前田家の家老)が席に座ったまま、コインを使った手品を披露。
次いで総務部長が舞台に上がり、本格的奇術を披露。日本舞踊を踊る女子社員、ギターを肩にラテン】を奏でる若手。
宴もたけなわになると、恒例の裸踊り。営業部長が両手にお盆を持って、素っ裸になって、舞台袖から飛び出してくる…。

中締めの後は、お定まりの下ネタ数え歌。「一つとせ、二階の女とヤルときにゃ
よいよい…♪」と、人の塊ができて、大合唱。皆、何か一芸を身につけようと、密かに努力したものです。その頃収集したのが 「下ネタ艶話」や「寿限無」。
カラオケ一辺倒の今の宴会風景とは、一味違った楽しさがあった。

【吉村外喜雄のなんだかんだ 第63号】
~ことば遊び~
「おそろしく長い口上・続き」

前号で紹介した「ういろう売り」の続きです。痰を切る薬ういろうを飲むと、やた
らと舌がなめらかになって、早口ことばがいっぱい出てきます。
チンプンカンプンですが、読むほどに可笑しみが増してきます。一文字一文字
意味を噛みしめながら、ゆっくり声を出して読むことから始めます。

……♪一ッぺぎへぎにへぎほし、はじかみ盆まめ盆米盆ごぼう。
摘み蓼(たで)つみ豆つみ山椒。書写山の写僧正。
こごめのなまごめ、小米のなまがみこみ、小米のこなまがみ。
繻子(しゅす)ひじゅす、繻子しゅちん。
親も嘉兵衛子も嘉兵衛、親かへい子かへい、子嘉兵衛親かへい。

古栗の木のふる切口。雨がっぱが番合羽か。
貴様のきゃはんも皮きゃ絆、我等がきゃはんも皮きゃ絆。
しっかわ袴のしっぽころびを、三針はりなかにちょと縫うて、
縫うてちょっと分出せ。
かいら撫子野石竹。のら如来のら如来、三のら如来に、むのら如来。
一寸のお小仏に、おけつまづきゃるな。細溝にどじょうにょろり。
京のなま鱈(たら)奈良なままな鰹、ちょっと四・五貫目。
お茶たちょ茶たちょ、ちゃっとたちょ茶たちゃ、青竹茶籠でお茶ちゃとたちゃ。
来るは来るは何が来る。高野の山のおこけら小僧。たぬき百疋、箸百ぜん、
天目百ぱい、棒八百本。

武具馬具ぶぐばぐ三ぶぐばぐ、合わせて武具馬具六ぶぐばぐ。
菊栗きくくり三きくくり、合わせてむきこみ、むむきごみ。
あのなげしの長なぎなたは、誰が長長刀ぞ。
向こうのごまがらは、えの胡麻からか真(ま)ごまからか、あれこそほんとの
ま胡麻殻。がらぴいぴい風車。

おきゃがれこぼし、おきゃがれこぼし、ゆんべもこぼして又こぼした。
たあぷぽぽ、たあぷぽぽ、ちりからからつつたっぽ。
たぽたぽ一丁だこ落したら煮てくお、煮ても焼いても食えれぬ物は、
五徳鉄きうかな熊。
どうじに石熊石持虎熊虎きす中にも、とうじの羅生門には、茨木童子が、
うで栗五合つかんでおむしゃるかの頼光のひざ元吉ず。

鮒きんかん椎茸定めてごたんなそば切りそうめん、うどんかぐどんな。
こしばち小棚のこ下に小桶にこ味噌がこ有るぞ、こ杓子こもって、こすくて
こよこせ。
おっとがってんだ、心得たんぽの川崎、神奈川保土ヶ谷、戸塚はしって
行かばゆいとを摺むく三里ばかりか、藤沢平塚大磯がしゃ小磯の宿を
七ツおきして早天さうさう相州小田原。

とうちん香、隠れござらぬ貴賤群集の、花のお江戸の花ういろう。
あれあの花を見て、お心をおやはらぎやっという、産子這子(うぶこはうこ)に
至るまで、このういろうのご評判、ご存知ないとは申されまい。

まいまいつぶり角出せ棒出せ、ぼうぼうまゆに、うす杵(きね)すりばち、
ばちばちぐわらぐわらぐわらと、はめをはづして今日おいでの何も様に、
上げねば成らぬ売らねばならぬと、息せい引っ張り東方世界の薬の元締め、
薬師如来も上覧あれと、ホホ敬うて、ういろうはいらっしゃりませぬかァ…♪

いかがでしたでしょうか? このような難しい長口上を、市川団十郎が舌も軽やかに演ずるのです。 一度見てみたいものです。何度も何度も繰り返していると、だんだん早口が板についてくる。 こんなバカバカしくも無駄なことが面白い!

2005年01月07日

おそろしく長い口上

明けましておめでとうございます
メルマガを始めて早や三回目のお正月を迎えました。
今年も一年お付き合いのほど、よろしくお願いします。

さて、今年最初のメルマガは、私の趣味「ことば遊び」の中から、メルマガ作成には
もっともやっかいな、「大道芸人の口上」を入力しました。暇のあるときにでも読んで
見てください。

 


【吉村外喜雄のなんだかんだ 第62号】
~ことば遊び~
「おそろしく長い口上」

一年前のお正月は、幼稚園児の間で流行った、日本一長い名前「寿限無」を紹介しました。今年は、 おそろしく長い口上で人気を博した「ういろう売り」を紹介します。
一息に言い立てると、聴く人にある種の爽快感を与え、芸としての面白味があるのです。
痰を切る薬「ういろう」を行商する際に、これを服用すれば、”こんなに痰が切れ、口がよくまわりますよ” という動かぬ証拠に、行商人が舌の軽業のような芸を見せたのが始まりです。これを芝居に取り入れたのが、 二代目市川団十郎。
当たり芸として現在に受け継がれている。

よほど我慢しないと、最後まで読みきるのは難しい。後半は次号で紹介しますが、山本さんがご存知の”早口ことば” が随所に出てきて、繰り返し読むほどに、面白くなってきます。

♪拙者親方と申すは、お立合いのうちに、ご存知の方もござりましょうが、
江戸を立って二十里上方、相州小田原一色町をお過ぎなされて、
青物町へお出なさるれば、欄干橋虎屋藤右衛門、ただいまは剃髪いたして、
円斎と名のりまする。

元旦より大晦日まで、お手にいれまするこの薬は、昔、ちんの国の唐人、
ういろうという人、わが国へ来たり、帝へ参内の折から、この薬を深く愛用し、
用いる時は一粒づつ冠のすき間より取り出す、
よって、その名を帝より”とうちん香”とたまわる。
今ではこの薬、ことのほか評判となり広がり、方々に似たような看板を出し、
手前どもの薬はどうのこうのと、いろいろに申せども、
ひら仮名をもって「ういろう」と致したは、手前ども親方円斎ばかりなり。

もしやお立合いの内に、熱海へ湯治に出かけるか、
あるいは伊勢へご参宮の折には、必ず門ちがいなされまするな。
江戸へ登るならば右の方、お下りならば、
左側八方か八棟おもてが、三っつ棟玉堂造。
正面には菊に相当するご紋をご赦免ありて、系図正しき薬でござる。

イヤ最前より家名の自慢ばかり申しても、ご存知ない方には、
正身のこしょうの丸呑み、白川夜船、さらば一粒食べかけて、
そのききめをばお目にかけましょう。
まずは薬をかように一粒舌の上へ乗せまして、腹の中へ納めたところ、
イヤなんと申しましょうか、五臓六腑すこやかになりて、
薫風、咽(のんど)上がってきて、口中びりょうを生ずるがごとし。

魚鳥木の子、麺類の食合せ、そのほか万病速効あること、神のごとし。
ただこの薬、いかにも奇妙なのは、舌がまいってしまい、
銭ごまがはだせしで逃げる。
ひょっと舌が廻りだすと、矢も楯もたまらぬようになる。

♪そりゃそりゃそりゃそりゃそりゃ、まいって来たわ、まわってくるは、
あわや咽、さたらな舌にかげさしおん、はまの二ツは唇も軽やかに、
あかさたなはまやらわ、をこそとのほもよろお…♪

ここまでが舌ならしの前口上で、このあとが聞かせどころの本番となります。
来週をお楽しみに!

2004年10月08日

さようならの語源

秋の味覚の王様松茸が市場に出回り始めた。石川県の主産地は能登半島の先端
珠洲。今年は豊作だという。
ところで、一本二千円もする松茸を前にして目を細め、舌鼓を打っているのは日本人
だけ。外国人にはその味覚がわからない。
中国では刻んで油で炒める食材にする。素材そのまま、香りや歯ざわりを楽しむ
のは、日本人だけである。
欧米人がマズイといって吐き出してしまうのは何故だろうか? その答えは、味噌・
醤油文化に慣れ親しんだ日本人だけの味覚感覚にあった。
松茸の味や香りを分析すると、その成分は、味噌・醤油の成分にそっくりなのです。


吉村外喜雄のなんだかんだ 第50号
~ことば遊び~
「さようならの意味」

言葉の語源の意味を知るのも、言葉遊びの一つ。語源を知って、「へぇ~」と、
結構楽しいものです。

昨日、「老荘思想」「禅のこころ」「菜根譚」など、東洋思想家としてその名を知られている”境野勝悟” 先生の講演を聴く機会を得た。

どんなむずかしい話をされるのかと思っていたら、講演の二時間、会場は笑いの渦。メインテーマは、 日頃なにげなく交わしている「さようなら」の語源と、意味についてでした。
先生は大学を卒業後、私立の学校で国語の教師として教鞭を執っていた。その時の校長は西欧人。校長から「さようなら」 の意味を職員に尋ねられた。が、誰も答えられなかった。その後、調べてみても意味が解からず、 ようやく言葉の意味が解ったのは、二十数年も後のことだったという。

「さようなら」は別れの言葉。その語源は江戸時代の武家ことば、「左様なればしかじか」 である。それをそのまま友達と別れるとき、○○さん「左様なれば…」、『左様なれば…』 と言い交わしたとしたら、どうもピンとこない? この言葉の後に、「ご機嫌よろしく」 が続くのです。「左様なれば、ご機嫌よろしく」となる。これでようやく意味が通じることになる。

明治になって、男女の別れの時に、男性が女性に「さようなら」と言い、それに女性が「ごきけんよう」 と返すようになった。大正・昭和と、男性中心社会になるにつれ、「さようなら」だけが一人歩きし、「ごきげんよう」 は置き去りにされてしまった。今も「ごきげんよう」と言うが、まれにしか使われない。

 

もう一つ、吉田金彦著「ことばのルーツ探し」には、あまり使われないが
「サラバ」 「アバヨ!」 についての記述があります。
「サラバ」の語源は「左有らば」で、源氏物語にも使われている。
「アバヨ!」は、「逢はばや」が語源。「ではまた逢いましょう」という意味である。
今の別れが最後にならないように、との思い。若い人の間では、「では又、じゃあね!」になる

2004年01月06日

寿限無

【吉村外喜雄のなんだかんだ 】
~ことば遊び~
「寿限無」

新年会シーズンです。私の二十代のころは、かくし芸全盛時代。宴会ともなると、手品やドジョウすくいなど、一芸に秀でた芸人が必ずいて、宴会を盛り上げたものです。
私がその頃覚えたかくし芸に、落語の「寿限無」がある。人前で披露する機会がなく、 ほとんど忘れてしまったが、あの長い名前だけは覚えていて、今でも早口で言うことができる。

なんと最近、その「寿限無」が幼稚園児の間で大流行していて、ジュゲム・ジュゲムと言葉遊びするちびっ子が、 続出しているというのです。事の起こりは、「寿限無」がNHK教育TVの子供番組に取り上げられたことから、 幼稚園児に火がついたのです。意味がわからなくても、子供達にはこのリズムとゴロが大受けして、 暗唱して遊んでいるといいます。
もう一つ火付け役をしたのは、「寿限無」を面白く絵本にした出版社。アッという
間に30万部売れた。児童向けの絵本では、過去前例のない大ブレーク!
ベストセラーになりました。

では、日本一長~くめでたい名前「寿限無」とは、どんな名前でしょうか? 
正しく言えるでしょうか? そこで、初孫誕生を祝って、改めて紹介したいと思います。興味のある方は、 この機会にご家族で暗唱してはいかがでしょうか。

寿限無、寿限無、五劫のすりきれ…

寿限無
 寿(よわい)限りない、いつまでも長生きできるように。めでたい!
五 劫
  3千年に一度天女が天下って舞いを舞う。それを繰り返すうちに衣がスリ切れてしまう。 そんな長さを1劫という。5劫というから、終りのない長い年月。めでたい!


海砂利水魚の水行末、雲来末、 風来末…

海砂利水魚
 海の中の砂利も、魚も、いくら数えても数えつくせるものではない。めでたい!
水行末、雲来末、風来末
 
水の行く末、雲の行く末、風の行く末、何れも果てしがなく、めでたい!


食う寝るところに住むところ…
  衣食住に不自由しない。めでたい!


やぶら小路ぶら小路…
 ”やぶこうじ”という木がある。春は若葉、夏は花咲き、秋実を結び、冬は赤く染まり、 露を防ぐめでたい木。


パイポパイポ、 パイポのシューリンガン、シューリンガンのグーリンダイ、グーリンダイのポンポコピーのポンポコナーの…
 昔、パイポという国に、シューリンガンという王様と、グーリンダイという王妃の間に生まれた、 ポンポコピーとポンポコナーという二人のお姫様がいて、この二人は生涯幸せで長生きした。めでたい!


長久命の長助。
  (最後にもう一つ加えて)親を長く助ける。これもめでたい!

このめでたい名前を、全部我が子の名前にくっつけてしまったために、騒動が起きるお話です。

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