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■上方落語「一門」
メルマガ629号で、アメリカで英語落語にチャレンジしている"桂かい枝"師匠を紹介しましたが、06年、天神橋筋に「ライブ繁昌邸」が竣工するなど、
近年上方落語の人気が急上昇。
以下、上方で活躍する「一門」です…
[笑福亭松鶴一門]…"笑福亭仁鶴"一門59名(名六代目笑福亭松鶴は故人)
弟子に鶴瓶がいる
[桂米朝一門]…三代目"桂米朝"一門58名
弟子に、月亭可朝、月亭八方、枝雀、雀々、ざこば、などがいる
[桂文枝一門]…"桂三枝"一門42名(五代目桂文枝は故人)
弟子に、きん枝、文珍、かい枝 がいる)
[桂春團治一門]…3代目"桂春團治"一門24名
[露の五郎兵衛一門]…2代目"露の五郎兵衛"一門12名
今年3月30日死去。前・上方落語協会会長
[桂米團治一門]…昨年、五代目"桂米團治"を、57年ぶりに、桂米朝の息子
"小米朝"が襲名した。
[林屋染丸一門]…4代目"林屋染丸"一門11名
[森乃福郎一門]…2代目"森乃福郎"
【吉村外喜雄のなんだかんだ - 670】
~ことば遊び~ 「落語・あたま山」
先々週の土曜日、香林坊赤羽亭・四列目のかぶりつきで、「桂米助、桂雀々・東西落語ふたりの会」を楽しんだ。
上方落語界で異彩を放つ"桂雀々"…もっさりと噺すが、オーバーなアクションが売り物で、身振り・手振りよろしく、
あほな人物をやらせたら天下一品!
この日の出しものは、得意ネタ「あたま山」…期待通り、お腹がよじれるくらい大笑いした。
645号の「落語・だくだく」は、噺家が自らの話芸を駆使して、
聴き手の想像力を喚起して笑わせる噺です。「あたま山」は、それを上回る奇想天外な噺…聴き手をイマジネーションの世界へ…
落語ならではの語り口で引き込んでいく。
♪けちな男がいて、さくらんぼを食べたが、もったいないからと、種まで飲み込んでしまった…この種、温かい腹の中で根をおろし、
やがて頭のてっぺんに芽を出した。
桜はすくすく育ち、幹が太くなって枝も広がっていく…やがて春になると花が咲いて、"あたま山の一本桜"と評判になった。
(ここからにぎやかなお囃子が入り、聴衆をイマジネーションの世界へ…雀々の話芸が冴える)
それを伝え聞いた"たいこもち"が、さっそく旦那に持ちかけて…
「それは見事でございますよ…どうです、出かけようじゃございませんか…
花奴に歌奴、冷奴なんぞ、芸者衆も勢ぞろいしておりますから…」
という調子で大店の旦那が、たいこもちや芸妓衆を連れて花見を始めるし、町内の連中も群れをなしてやってくるようになった。
花を見て楽しむだけならなんの問題もないが、花見客の目的は飲んで騒ぐこと…。
それも朝っぱらからドンちゃん騒ぎで、飲めばへどを吐くし、喧嘩にもなる。
「なにィ? 俺の言うことォ聞けねえか…」などと、江戸っ子は気が短い。
あまりうるさいので頭を振ると、「地震だ!」と驚き、大騒ぎして逃げてしまう。
こんな木があるからいけないのだと、桜の木を引き抜くと、頭の真ん中に大きな窪みが出来てしまった。 この男が用足しに行くと夕立にあって、穴に水が溜まった…が、根がけちでものぐさだから、水を捨てようとしない。
するとボウフラが湧き、それを餌にフナだのコイだの、ドジョウなどが湧いて、それを知った子供たちが釣りに来る。朝から夕方まで、 わめいたり歓声を上げたりと…そのうるさいこと。
子供が帰って一息ついたと思う間もなく、夜になると男たちが夜釣りにやってくるが、これも黙って釣るわけではない。酒を飲んだり、
女にもてた自慢話をしたりと、うんざりするほどだが、やがて舟を出す連中まで現れた。
投網で魚をごっそり獲ろうというのである。
櫓を漕ぐ音がギイギイとうるさいし、網を投げれば大きな音がする。
しかも、「舟をあっちィまわせ」だの、「揺らすと網が打てねえじゃないか」などと大騒ぎし、その挙句が「なにが釣れたい?」
「わらじが釣れた」「冗談じゃねえぜ」と馬鹿笑い。
こううるさくてはとてもたまらないと、頭の池に自分で身を投げてしまった…。
野口 卓著「古典落語の名作」より
■「ラ・フォル・ジュルネ」
連休の4日間、四国・柏島へスキューバーダイビングに出かける予定でしたが、黄砂で目を患い、やむなくキャンセル…。
その代わり5月3日、’09ラ・フォル・ジュルネ金沢音楽祭の指定席を求めて、県立音楽堂コンサートホールへ…。
モーツアルトの交響曲や歌劇の序曲、ミサ曲など、オーケストラ演奏を堪能した。
「ラ・フォル・ジュルネ金沢」は、昨年に続き、金沢では二回目の開催になる。
今年のテーマは「熱狂の日~モーツアルトと仲間たち~」
会場周辺は、県内外から音楽を楽しむ大勢の人たちで溢れた…。
1995年…「誰でもが楽しめるクラシックの音楽祭を作ろう」と、フランスのナント市で「ラ・フォル・ジュルネ」が誕生した。以後、 フランス国外に広がり、日本では、歴史と現代が融合した文化都市"金沢"が、東京に続いて、世界で五番目の開催都市になった。
【吉村外喜雄のなんだかんだ - 662】
~ことば遊び~ 「落語・道具屋」
今日は、バカバカしいお笑いを一席…橘家圓蔵師匠(元・月の家圓鏡)の十八番「道具屋」。
落語の舞台は、江戸庶民が住む長屋。大家と店子が繰りなす…人のいい、少々間の抜けた熊さんや八っつあん、与太郎が、
ばかばかしい失敗を繰り返す…。
そのバカさかげんを語る圓蔵師匠の芸の深さが、大爆笑をさそうのです。
♪いい大人になっても、定職に就かない与太郎。
心配する叔父さんが、露天の道具屋をやらせようと、荷物を持たせる。
しかし、首がすぐ抜けるお雛様とか、ヒョロッとよろけると、ビリッと破れる"ヒョロビリのももひき"とか、 叔父さんが火事で拾ってきたのこぎりとか、本物の短刀そっくりの木刀とか、俗に「クズ」と呼ばれている、陳腐な代物ばかり。
まあ、それでも最初はこんなものだと、路上に店を出した。
「さあさあ、寄ってらっしゃい見てらっしゃい。道具屋ができたよ…。
できたての道具屋、あったかい道具屋だ…ホカホカの道具屋だよ!」
まるで饅頭でも売っているような口調で、呼び込みをしていると、徐々に客が集まる。
『おい、そこにある"ノコ"を見せな』
「へ? ノコ? のこにあります?」
『くだらねえシャレを言うな、のこぎりだよ。むむ…、こりゃ少し甘いな』
「え~っ? 甘い? ちょっと貸してください…うわっ、こりゃ渋いよ!」
『バカ、味じゃないよ、刃の焼きが甘いんだよォ』
「あ、焼きのことですか。それなら甘くありませんよ。叔父さんが火事場で拾ったんだから」
『ひどいもん売るんじゃない、バカ!』
怒って帰る客。このような買わない客を、業界用語で"しょん便する"という。
そう教えられた与太郎は、もう二度と"小便"させないと、心に誓うが…
『おい、そのももひき見せてくれ。ほう…なかなかあったかそうだな…気に入ったよ、いくらだい?』
「値段を聞いているけど、買うのかしら…あのね、これは"小便"できないよ」
『え? だって前はちゃんと開いてるよ。小便なんか簡単にできそうだけどねえ」
「ほら、やっぱし小便しようとしてやがる。この野郎、絶対にさせないぞ!」
『そうなの? 小便もできないんじゃ仕方ないや。じゃ買わねえや、あばよ』
「オイ待て! 小便できないって言っているのに…」
「あっ違う! その小便ならできるよ! こりゃ小便違いだ…悔しいね」
次の客は短刀を見せろと言って、抜きにかかるが、なかなか抜けない。
与太郎にも手伝わせて、思い切り引っ張っているが…
『う~ん、よいしょ、なかなか抜けんな』
「う~ん、こらしょ、そりゃ抜けませんよ」
『う~ん、よいしょ、何でじゃ』
「う~ん、こらしょ、木刀ですから…」
『早く言わんか、この大バカもの! 手間どらせおって…ちゃんと抜けるやつはないのか』
「へぇ、お雛様の首が抜けます…」
■国民性「3匹のハエ」
アメリカ人、オランダ人、アフリカ人、日本人が戸外で食事をしていました。
するとハエが一匹飛んできて、アメリカ人の皿に止まりました。
と、アメリカ人はバッシーンと、本で叩いて殺してしまいました。
するとまた一匹、今度はアフリカ人の皿に…
するとアフリカ人は、パッとつかんで、食べてしまいました。
また一匹、今度はオランダ人の皿へ…
オランダ人は、静かに手を伸ばして、そっと捕まえると、
アフリカ人に差し出して言いました…「さあ、いくらで買いますか?」
その状況を見ていた日本人…携帯を持って席をはずした。
東京へ国際電話をかけるためである。
「モシモシ、アフリカにおける食料としてのハエの需要を調べてくれませんか?
有望な輸出商品になるかもしれません…」
【吉村外喜雄のなんだかんだ - 653】
~ことば遊び~ 「落語・痴楽つづり方狂室」
前回のことば遊び645号は、
四代目柳亭痴楽(~1993)の「だくだく」でした。
故・痴楽師匠は、私の好きな落語家の1人で、生まれはお隣の富山県です。
「破壊し尽くされた顔」をネタに、「柳亭痴楽はいい男…」のフレーズで、ラジオ・TVの人気者になった…ご記憶の方も多いことでしょう。
十八番は、新作落語「痴楽つづり方狂室」「恋の山手線」。
顔をくしゃくしゃにして、独特の節回しで演ずる…
そこで今日は、「恋の山手線」のさわりを一席。
♪柳亭痴楽は良い男、鶴田浩二や錦ノ助、それよりもっといい男…
上野を後に池袋、走る電車は内回り、私は近頃外回り…
痴楽つづり方狂室の始まり…
彼女は綺麗なうぐいす芸者(鶯谷)、にっぽり(日暮里)笑ったそのえくぼ…
田畑(田端)を売っても命がけ…我が胸の内、細々と(駒込)、
愛のすがもへ(巣鴨)伝えたい…おおつかな(大塚)ビックリ、故郷を訪ね、
彼女に会いに行けぶくろ(池袋)、いけば男がめじろ押し(目白)…
たかたの婆や(高田馬場)新大久保のおじさん達の意見でも、
しんじゅく(新宿)聞いてはいられない…
夜よぎ(代々木)なったら家を出て、腹じゅく(原宿)減ったと、渋や顔(渋谷)
彼女に会えればエビス顔(恵比寿)…
親父が生きて目黒い内は(目黒)、私もいくらか豪胆だ(五反田)…
おお先(大崎)真っ暗恋の鳥、彼女に贈るプレゼント…
どんな品がわ(品川)良いのやら、魂ちいも(田町)驚くような、
色よい返事をはま待つちょう(浜松町)…
そんな事ばかりが心ばしで(新橋)、誰に悩みを言うらくちょう(有楽町)…
思った私が素っ頓狂(東京)…
何だかんだ(神田)の行き違い、彼女はとうに飽きはばら(秋葉原)…
ホントにおかちな(御徒町)事ばかり…やまては(山手)は消えゆく恋でした。
痴楽つづり方狂室終わり…♪
■"柳屋小三治"師匠が考える"笑い"とは
「人を笑わせるのではない 笑ってしまうのが芸」
小三治の落語は"奇"をてらわない。無駄を削ぎ落とし、ただタンタンと語る…。
落語界を背負う、当代屈指の古典落語の最高峰と評される柳屋小三治師匠。
人を笑わせたくて噺家になる人が多い。修行を積んでいくうちに、人を笑わせることが、たいしたことではないことに気づく…
分かってくる。
今人気の若手漫才師のように、「ガハハ…」と笑わせようとしている間は、まだ一人前ではない。
笑わせようとして、笑わせるのは、同じことをやっていると、いずれ客がついて来なくなる…限りがある…飽きがくる。自分も飽きるし、
聞いている客も飽きる。
次々と新しい笑いを、客に提供しなければならない。
柳屋小三治師匠が考える"笑い"とは、面白い日常の話をそのまんま話して、笑わせる。
落語は、笑わせるためにやっているのではない。
聞き手が語りに引き込まれて、そこから自然に湧きあがってくる"笑い"…それが素晴らしい芸になる。
笑わせるのではなく、お客が"つい笑ってしまう芸"は、新しいネタを考えなくていい…プッシュがいらない…
ひたすら落語の世界を演じていればいい。
面白く出来ている落語は、笑いが多い少ないではなく、「ヘェ~ヘェ~」と、お客が笑いに引きこまれ、お客の目付きが変わってくる…
輝いてくる。
【吉村外喜雄のなんだかんだ - 645】
~ことば遊び~ 「落語・だくだく」
落語家は「想像力を生み出す芸人」…観客のイマジネーションのために、扇子や手ぬぐいを駆使して、どれだけ演じられるか… 想像力を喚起する落語という芸能…無限の可能性を秘めている。
想像力を喚起させてくれる落語といえば、「だくだく」がある…
狂言「棒しばり」などにも相通ずる、落語ならではのネタ噺です。
八五郎と泥棒が、常識では考えられない状況の中で、とぼけた洒落っ気を演じるのを、寄席のお客様に想像力を働かせていただき、
楽しんでもらおうというもの。
「だくだく」は、客席から笑いが取れないと、悲惨な結果になってしまう…
そんなこ難しい落語ですが、故・柳亭痴楽が得意ネタにしていた。
痴楽といえば、「痴楽つづり方狂室」や「恋の山手線」が有名。
顔をくしゃくしゃにして、独特の節回しで噺す、個性溢れる落語家だった…。
♪貧乏人の八五郎、長屋へ引っ越したはいいが、かついでいくのが面倒くさいと、家財一切、古道具屋に売っぱらってしまった。
家財道具が何もないから、新居はからっぽ。そこで、絵描きの先生に頼んで、壁一面に張った紙の上に、家具の絵を描いてもらって、
気分だけでも"ある"つもりになろう…と考えた。
床の間、箪笥、金庫、長火鉢など、長年欲しかったものを、次々と注文。
金庫はちょっと開いていて、銭がちらっと見えるように…だとか、
鉄瓶がチンチン煮立って、湯気を出しているところとか、猫があくびをしているところとか、なげしに先祖伝来の槍を架けるとか…
やたら変な注文が飛び出す。
出来上がって、八五郎、すっかり新世帯にいるような気分になって…床につく。
その晩泥棒が忍び込んだ。その泥棒そそっかしくて、その上…近眼。
盛り沢山の家財道具に歓喜したのもつかの間…盗もうとして手に触れると、すべて絵に描いたものばかり。びっくりするやら、感心するやら…
。
このまま帰ったのでは面白くないと、家の主(あるじ)がそういうつもりなら、こっちも"つもり"でいこうと…仕事を始めた。
まず、「金庫を開けたつもり…拾両ばかり盗んだつもり」
「箪笥の引き出しを開けたつもり」と、声を出しながら、絵に描いてある箪笥の引き出しを開ける仕草をする。
「大きな風呂敷を取り出して、十分に広げたつもり」
「箪笥の中から、結城紬の小袖を一枚盗ったつもり」などと、
次々と品物を風呂敷に入れる仕草を繰り返す。
「目ぼしい物は盗んだつもり」
「大きくふくらんだ風呂敷包みを、背負ったつもり」と…逃げ出そうとする。
さっきから目を覚まして、泥棒の様子を見ていた八五郎…
そのまま見逃すわけにはいかないと、跳ね起きる。
「なげしに架けた槍をおっ取って、リュウリュウとしごいたつもり」と、
今しがた泥棒がやっていたように、声を出して捕まえる仕草を始めた。
とどめとして、「泥棒目がけて脇腹をブスッと突いたつもり」…と、
泥棒、脇腹を押さえて…「う~ン、いタタタタ…だくだくッと、血が出たつもり」
※新宿末広亭で、柳亭痴楽がこの噺を演じて、高座から下がりかけた時、
1人の客が、「ア~ア、面白かった…つもり」と言った。
痴楽、そちらを振り向き、「いやな客…のつもり。ポカッと横っ面を殴り倒した…つもり」と言い返した。場内、笑いの渦に包まれた。
■回文
「たけやぶやけた」のように、後ろから読んでも、前から読んでも、同じ文や語句を「回文」といいます。
最近のコンテスト入賞作では、「いかした歯科医」「お帰り!笑顔」
がある。
「長き世のとおの眠りのみな目覚め波乗り舟の音の良きかな」
江戸時代、宝船に乗った七福神の絵に、この回文を書き添え、枕の下に敷くと、
良い初夢を見ることができ、縁起が良いとされた。
丑年にちなむ回文に、「さあ清水走れ丑年嬉し弾みし朝」がある。
のどかに牛が草を食む田舎…いいですね…「いなかいかない」
粟津温泉近く、旧8号線沿いのモーテルの看板に、「AKASAKA」があった。
前から読んでも、後ろから読んでも"赤坂"
【吉村外喜雄のなんだかんだ - 637】
~ことば遊び~ 「落語・牛ほめ」
丑年にちなんで、前座噺の演目として寄席によくかかる、「牛ほめ」を一席。
バカ息子の顔を立てようと、父親が秘策をさずけるが…最後のオチ…フッフッ
♪いつもボーッとしている息子の与太郎に、新築祝いの挨拶の口上を
覚えさせようとする父親。
「ロクに挨拶もできない」と、いつも小言ばかり言っている、叔父の左兵衛を見返すには、
絶好の機会である…。
首尾よく家を褒めて、叔父をいい気持ちにさせれば、小遣いが貰えるからと、
懸命に、与太郎をその気にさせようとする父だが…。
「結構なご普請でございます。天井は薩摩の鶉木理(うずらもく)。
畳は備後の五分縁(べり)で、左右の壁は砂摺(ず)りでございますな。
庭は御影づくりでございますね…」
という簡単な褒め口上を、なかなか覚えられない与太郎。
結局、口上を紙に書いてもらって、叔父の家へ向かう。
さて、しどろもどろになりながらも、なんとか口上を言い終えた与太郎。
何かを読みながら喋っているんじゃないかと、疑う叔父を尻目に、そそくさと台所へ…。
台所の柱に大きな節穴があり、悩みどころになっている叔父。
じつは、この節穴に、父が息子に授けた秘策があった。
竣工前、家を見に行った時に思いついた、とっておきの考えを息子に言わせ、叔父に一泡吹かせようという魂胆である。
『叔父さん、ここに大きな穴があいているけど、気にならないの?』
「ボーッとしているお前でも気付いたか…いや、気にはなっていたが、なかなかいい考えが浮かばず、どうしたものかと悩んでいるんだよ」
『心配ないよ叔父さん、秋葉様(防火の神様)のお札貼ったら…
穴が隠れて火の用心になるよ』
この言葉に感心した叔父は、「お小遣いをやる」と約束…
めでたし、めでたしとなるはずだったが…
調子に乗った与太郎は、叔父が大切に飼っていた、牛まで褒めると言い出す…。
『あれ、叔父さん、この牛の後を見て…大きな穴があいているよ、気にならないの?』
「それは尻の穴だよ。そんなもの気にならないよ」
『いやいや、心配ありません。秋葉様のお札をお貼んなさい』
「おいおい、バチがあたるぞ…そんな所に張って…どうするんだ」
『穴が隠れて"屁の用心"になります』
金原亭馬生「落語名作100選」より
■おじん駄じゃれ
毎・日曜夕方5時半から、欠かさず見ている「笑点・大喜利」。
のど自慢、水戸黄門に並ぶ、長期放映番組・御三家です。
師匠たちが笑いを競い合う中で、とりわけ異彩を放つ"林家木久扇"
「雨が漏るよ…ヤーネー」など、毎回おなじみの"駄じゃれ"を連発…。
そこで、"木久扇おじん駄じゃれ"あれこれ…
「九州の山へ登ったよ…あッそー」
「台所、ここにしようと思うんだけど…勝手にしろ!」
「隣の空き地に囲いが出来たよ…へぇー」
「お隣さんに塀が出来たよ…かっこい~」
「おい、あそこへ坊さんが通るよ…そうかい」
「この帽子、ドイツんだ?…オランダ…でもイラン」
「灰皿がこぼれたよ…はい、拭きましょう」
「土瓶が漏るよ…そこまで気づかなかったよ」
「この暦は誰んだ?…彼んだ~」
「カラスがお前の頭に、なんかおっことしたよ…フ~ン…(さわって)クソー」
「これはタコですか?…イカにも」
「美味しいね、この肉、鴨かい?…かもね」
"駄じゃれ"が大受けした時の、木久扇師匠の満面の笑顔が浮かんでくる…。
【吉村外喜雄のなんだかんだ - 627】
~ことば遊び~ 「江戸小噺・酒百態」
落語には、酒にからむ噺がたくさんあります。
酔っ払いの、へりくつ亭主の本音がポロっと…「替わり目」
酒に酔った久六が豹変して、笑いを誘う…「らくだ」
貧乏長屋の大家と店子が、連れ立って花見に行く…「長屋の花見」
(‘07.4.6配信)
のんべえの似た者親子の、ほのぼのと心温まる噺…「親子酒」
(‘08.1.8配信)
その他「試し酒」「花見の仇討」「青菜
(‘08.8.29配信)」など、
江戸庶民の人情噺が、おかしくも楽しく伝わってくる。
「一杯は、人…酒を呑み、二杯は、酒…酒を呑み、三杯は、酒…人を呑む」
"お酒でしくじった"苦い思い出の一つや二つ、誰にも思い当たるものがあります。
私は下戸なので、直ぐにお酒に飲まれてしまいます。
♪「お酒呑む人花ならつぼみ、今日もさけさけ、明日もさけ」なんてぇます。
また、「酒呑みは やっこ豆腐にさも似たり 初め四角で あとがぐずぐず」
なんてんで、お酒呑みにも、いろんな上戸がございますようで…
「怒り上戸」「泣き上戸」なんてんで、一番罪がないのが「寝上戸」…
酔っ払うとたわいなく寝ちまうなんてんで、罪がありません。
「笑い上戸」なんてのが一番うらやましい…本人も一座も陽気に盛り上がるようで…
「わっはっははは…ま…ね…君ね…今日はゆっくり…ゆっくり呑もうじゃないか。
ええ…帰るぅ…はっはっはっは…バカを言うな…ええ…うちから電話があったぁ
…わっはっは、何だってぇ?…うぅん?隣が火事…あっはっはっはっは、そりゃ面白い…」
なんてんで…呑めない私には、面白くもなんともありません。
ま、中には、泣き上戸なんてんで…
「まぁね…今日は、君とゆっくり…ゆっくり呑もうと思ってさ…あ…ありがとう…グスッ、
君なら分かってくれると思うんだよ。えッ、何がって…部長だよォ…何もあすこまで言う
ことはないと思うんだよ。僕だって、怠けている訳じゃないんだから…それをだよ…
みんなの前で…あすこまで言うなんて…僕、立つ瀬が無いじゃないか…トホホホホホ」
泣きながら酒を呑んでおりまして…
見ていて面白くないのが「薬上戸」…(呑みそうで呑まない、嫌そうな顔をして、ようやくの思いで呑み込む)…「ッくは~、 もう一杯」なんてんで。
見ていて面白いのが「壁塗り上戸」。むやみに壁を塗りたがる人がおりまして…
「ええ…もう呑めない…もう…今日はね…本当に呑めない…もう…たくさん…
もう入らない…もう呑めない…いいいいい」
(さかんに壁を塗るように、手を左右に振る)なんてんで、四隅を塗り固めたりいたしまして…。
中には「鶏上戸」なんてんで、にぎやかなのがございまして…
「おッとととととととと、ッくぴ…けっこう」
12月と新年は、お酒を呑む機会が多い…呑み過ぎ、飲酒運転には、くれぐれもご注意を…。
■ことば遊び 「わらべ・まじないことば」
『くわばらくわばら つるかめつるかめ
夢になれ夢になれ とっちゃすて とっちゃすて
ちちんぷいぷい ごようのおんたから
モシャシャのシャモシャ シャシャモ シャシャ
モシャシャなければ シャシャもシャもなし 』
<解 説>
・雷が鳴ったら、蚊帳を吊り、線香を焚いて「くわばらくわばら」と唱える。
・縁起の悪いことをしたり、言ったとき、「つるかめつるかめ」と唱える。
・災難を夢にとりなして、「夢になれ夢になれ」と唱えて、払い除ける。
・「とっちゃすて とっちゃすて」と三度唱えると、しもやけにならない。
・子どもが擦り傷などをこしらえたときに、「ちちんぷいぷい…」と唱える。
・糸かこんがらがったときに、「モシャシャの…」と唱えると、ほぐれてくる。
【吉村外喜雄のなんだかんだ - 619】
~ことば遊び~ 「江戸小噺」
落語は最後の"落ち"で…笑いを締めくくる。聴き手は"落ち"に込められた話芸に、りゅう飲を下げる。
"落ち"にはいろいろあって、ひねった表現の「考え落ち」、最後の一言でスッキリと決まる「途端落ち」、噺の途中に伏線が張ってある
「仕込み落ち」など、様々な手法があって、落語を楽しませてくれる。
一口小噺にも"落ち"がある。落語は噺が長くて、「ジョークのネタに…」ちょいと…なんていうわけにはいきませんが、小噺は、 覚えておけば、"かくし芸"になったりします…
■小噺-1
鼠が4匹ばかり、台所の梁(はり)の上を、つながって歩いております。
それを見た男、「おい、あの鼠を止めてみせようか!?」
『へえェ、そんなことができるのかい?』
「俺様の自慢は猫の声色(こわいろ)よ…ニャゴ、ニャゴ、ニャーゴー!」
鼠がピタッと止まって、こちらをうかがっている…。
「どうだい!? うめェもんだろう!」と、鼻高々な男。
それを見ていた鼠たち…
『親分、もう行きやしょうぜ! あんな下手くそな音色に、
どうして立ち止まるンで…?』
「あれでも一所懸命やっているんだ。たまには聞いてやらなくちゃ、
励みになるまい…」
■小噺-2
こちらは年頃の娘と、親父でございます。
真夜中に、表で犬がやかましく吠え立てております。
眼を覚ました親父が、隣に寝ている娘を起こしまして、
「おい、犬がバカに騒いでいる。何かあったんじゃないか…、
お父っあん、腰が痛いんだ。お前、ちょっと起きて、外ォ見ておくれ…」
娘が、雨戸のすき間から見ますてェと、野犬の群れが乱交パーティーの真っ最中…。
「キャンキャン、キャイン」…鳴きながら、雄雌つながっております。
顔を赤らめた娘は、慌てて雨戸を閉めましたな…。
「どうだったい?」
『別に何でもないわ…』
「おいおい、こんなに犬が騒いでいるんだ。何でもないことはないだろう。
よく見なくちゃいけませんよ…」
小言を言いながら起き上がった親父…
雨戸を開けて外を見るてェと、「え、へへん!」と咳払いを一つして、「なるほど、別に何でもないわいな…」
提供「風亭弥次郎」
■ことば遊び「屁の河童」
「語源」を探って、「へェ~」と納得するのも、ことば遊びの面白さです。
今日は「屁の河童」
の語源をたどってみます。
"たやすい"ことを「屁の河童」という。何とも可笑しな言葉です。
語源をたどっていくと、「木っ端の火」になる。
七輪で火をおこすとき、火種に木屑を入れ、燃え上がったところへ炭を入れる。
この木っ端は、ぱっと燃え上がるが、すぐ燃え尽きてしまうので、手早くしなければ間に合わない。そこで江戸時代、
"はかないもの"を「木っ端の火」と言った。
しかし、このままでは面白くないので、江戸っ子特有の洒落で、「河童の屁」と言うようになったのです。
いつのころからか、それがひっくり返って「屁の河童」となり、言葉の意味もひっくり返って、
"たやすく出来る"の意味に使われるようになった。
これこそ「へぇ~」ですね…。
【吉村外喜雄のなんだかんだ - 611】
~ことば遊び~ 「江戸小噺・おなら」
出張先での朝食…和食か洋食かと問われれば、惑わず洋食コースを選ぶ私…。
家でも、パン2枚にバターを塗り、目玉焼きソーセージに牛乳を添えるのが、長年の定番…。
昨年から、メタボを改善しようと、キャベツを刻んで皿に盛り、リンゴ半分と、五郎島の"蒸かし芋"2切れを添えて朝食にしている…
食生活を改善しようと始めたのはいいが、日に一度、所構わずオナラが出るのは問題です。
落語や小噺の下ネタには、「おなら」を題材にしたものがいろいろあります。
緊張した時に限って出るのが「おなら」。「場所柄をわきまえず…」と、怒るわけにもいかない…当の本人は、もっとバツが悪いのだから…。
■江戸小噺その一 「ただの風」
あるところに、大変けちな男がおりまして、くれるものなら、なんでももらうと言う。
「おおう、おめェかい…くれるもんならなんでももらうっ、てェやつは」
『へェ、左様でございます』
「じゃ、俺はお前にやりたいものがあるんだが、貰うかい?」
『ええ、いただけるもんなら、なんでも…』
「そうかい、実はな、俺はさっきから、腹が張ってしょうがねェんだ。
屁をお前にやるから、後ろへ回んな、いいか…」
なんてんで、男が後ろへ回りますと、大きなのを一発「ブー」。
と、男はそのおならを、両手で、ぱっとつかみまして、バーと駆け出しまして、どうするのかと思うと、自分の畑へ参りますと、
この手をパーッと広げまして、「ただの風よりましだろう…」
■江戸小噺その二 「仁王様」
あるとき、浅草の観音様に泥棒が入った。
賽銭箱を風呂敷でくるみますと、これをしょいまして、野郎、裏から逃げればいいものを、表から堂々と逃げようとしまして…。
ところが、表には門番の仁王様がいらっしゃいますから、逃がす訳はございません。
「この野郎ふてェ野郎だ!」なんてんで、泥棒の襟首をつかまえまして、目よりも高く吊り上げると、そのまま地面へ叩きつけまして…、
泥棒が四つん這いになると、上から、あの、何文あるか分からない大きな足で、ぐぐぐぐぐっと、踏みつけます。
ってェと、かの泥棒、下腹へ力を入れて力みましたから…たまりません。
さっそく大きな"おなら"を「ブゥ~ッ!」。
仁王様「む、むむむむ、臭せェ~もの…」(曲ェ者~)
泥 棒「ハ~ア~、臭うかあ~」(仁王かぁ~)
■ひょっとこ」「おかめ」の語源
「語源」を探って、「へェ~」と納得するのは、ことば遊びの楽しみの一つです。
今日は、「ひょっとこ、おかめ」の語源をたどってみます。
日本に古くからある「ひょっとこ」のお面。
醜男を代表する「ひょっとこ」は、「火男」からきたもので、火をおこすのに、口をつぼめて突き出し、息を吹きかけながら、
煙たいので片目を細めている顔つきを、お面にしたものです。
一方の「おかめ」。器量の悪い、下働きの女性のように見えますが、昔は、しもぶくれのした「おかめ顔」が美人だったのです。
熱田神宮の巫女であった「亀女」の顔が、こぼれんばかりの愛きょう顔をしていたため、人々がその顔をかたどったお面を作って親しんだ。
それが、現在に受け継がれているのです。
【吉村外喜雄のなんだかんだ - 596】
~ことば遊び~ 「落語・青菜」
落語には、殿様と職人、あるいは極端に気の短い男と、気の長い男というふうに、身分や性癖のまったく違った人物の、 ちぐはぐなやりとりと、間の抜けたやりとりで、笑わせる噺が多い。「青菜」もそうした噺の一つです…。
♪さるお屋敷で、旦那様が植木屋をねぎらい、
縁側で一休みするようにと勧めた。
「酒を飲むか」と尋ねると、『大好きだ』と答えたので、
「奥や、植木屋さんにな、ご酒を持ってきてあげてください」
と言って、肴に鯉のあらいを出して、雑談を始めた。
「ときに、植木屋さん、あなた、菜をおあがりかな」
と問うと、大好物だとのことなので、出してあげるようにと言う。
すると、「旦那様」と言って、奥様が打ち明けた。
「鞍馬から牛若丸がいでまして、その名を九郎判官」
「では、義経にしておきなさい」
と答えてから植木屋に、まだ菜があると思っていたら、
食べてしまってもうないんだそうだと、謝った。
ところが植木屋が、鞍馬とか義経とかのやりとりを、
来客だと勘違いしたので、夫婦の間の隠し言葉だと打ち明けて、
来客の折り、言ったものがなければ、お客様に対して失礼にあたる。
そこで、「鞍馬から牛若丸がいでまして、その名を九郎判官」
菜は食べてしまってないから、"菜を食ろう"というシャレで、
「その名を九郎判官」
そこで私が"よしとけ"と言うところを、「義経にしておけ」と、
こうしゃれたわけだ。
これを聞いた植木屋、さすがお屋敷は違うと、感心することしきり…。
自分も真似がしたくなった…。
長屋に戻ると早速、がさつな女房に「これこれしかじか」と、話して聞かせた。
「こういうことは、てめえにゃ言えめえ」 『言えるわよ、それくらいは』
「言えるなら言ってみろ」 『鯉のあらいを買ってごらんよ』
「あれッ、ちくしょうめ、人の急所を突いてきやがる」
と、言い合っているところに、大工の熊公がやって来たので、
女房を押入れに隠れさせて、早速、お屋敷の真似を始めた。
ところが酒は安物だし、鯉のあらいだと言って出したのが、鰯の塩焼き
という有様。
では、奥の手をと…「ときに、植木屋さん、あなた、菜をおあがりかな?」
『なに言ってんだ、植木屋はおめェじゃねえか…おらァ、大工だよ!』
「あなた、菜をおあがりか?」 『嫌れェだ!』
がきのころから菜は大嫌いだと言うのを、なんとかなだめて、
菜を食べさせることにし、ポンポンと手を叩いて命じると、
押入れから、汗びっしょりになった女房が出てきた。
『旦那様、鞍馬から牛若丸がいでまして、その名を九郎判官義経…』
全部言われてしまった植木屋、
「えッ、義経?…う~ん、じゃあ、"弁慶"にしておけ」
■小噺「うなぎ その1」
土用の丑の日、うなぎ屋は大忙しでうなぎを焼いています。
そこへ外国人がやってきて、
「おお~いい匂い。このウナギの蒲焼…セイヨウ料理デスカ?
ソレトモ日本リョウリデスカ?」
うなぎ屋、「えッエ~と、これは…洋食(養殖)です!」
■小噺「うなぎ その2」
熊公 | 「ご隠居に尋ねるが、ウナギは、なんでウナギと言うんだい…」 |
ご隠居 |
「鵜がウナギを飲み込もうしたが、長くて難儀した。 鵜が難儀したので、鵜が難儀した…鵜難儀…ウナギになったんじゃよ」 |
熊公 | 「ふ~ん、じゃ何だって蒲焼って言うんだい?」 |
ご隠居 |
「鵜に飲み込まれるようなバカな魚だからよ。 バカ焼き、バカ焼きって言っているうちに、カバ焼きになったのよ…」 |
熊公 |
「じゃあ、バカ焼きって言えばいいのに、なんだってカバ焼きってひっくり 返ったんだい?」 |
ご隠居 | 「よ~う考えてみな! ひっくり返さないと、うまく焼けないねェ!」 |
【吉村外喜雄のなんだかんだ - 586】
~ことば遊び~ 「土用の丑の日」
7月24日は「土用の丑の日」。土用・鰻の日にちなんで、ウナギにからむ話を、あれこれ集めてみました。読んだ後、
よろずウナギ物知り博士になっています…。
丑の日に「う」の付く物、「うどん・うり・梅干」などを食べると体に良い、という言い伝えが以前からあった。江戸時代の中期、
売上不振に悩んだウナギ屋が、"平賀源内"に相談を持ちかけた。ならばと、「鰻は土用の丑の日に」と書いた張り紙を出して、宣伝した。
それがきっかけで、ウナギを食べるようになった。
ウナギ料理は、好きな人が多い反面、形がニョロニョロしているからと、食わず嫌いの人も多い。そのウナギ料理、「くし打ち3年、 焼き一生」と言われ 、日本人が大切に守ってきた伝統の味、伝統の料理なのです。
「"くし"を"刺す"」のが、正しい言い方ですが、縁起が悪いからと、「打つ」と言う。
同じように"するめ"を「あたりめ」、すり鉢を「あたり鉢」、"箸"は「おてもと」と言ったりする。いずれも、古くからある、
縁起をかつぐ言葉づかいです。
ウナギのさばき方では、商人の町・関西では、「腹を割って…」というので"腹開き"。
一方、関東は武家の町。「腹を割く」は「切腹」をイメージして、縁起でもないと、
"背開き"になった。
ところで何故"蒲焼"というのか?昔、丸のまま竹に刺して、蒲(がま)の穂の形で焼いていたからなのか?
関東は、竹串に刺して素焼きにした後、一度蒸してからタレ焼きにします。
あっさりと淡白で柔らかな仕上がりになります。
関西の焼き方は、直に焼いた後、タレを付け焼きし、蒲焼に仕上げます。
芳ばしさと、パリパリ感があって、美味しい。
「うな丼」と「うな重」の違いは、江戸末期には、素焼きの丼に「うな丼」として出されていたが、大正時代になって、高価な
「漆塗り丼」が出て、昭和になって、東京の店が重箱に入れて出すようになった。
中身は同じなのに、重箱に入れて値段を高くする店が出始めたのです。
ウナギの名前の由来は、天然ウナギの胸が黄色いところから、奈良時代までは「胸黄(ムナギ)」と呼んでいた。
それがウナギと呼ばれるようになった。
ウナギを使った言葉に「ウナギの寝床」があり、「ウナギ登り」がある。ウナギが水中を真っ直ぐに登っていくことから、「物価が…」
などに使われます。
ウナギの赤ちゃんは、日本から南に二千キロ離れた、赤道直下のマリアナ諸島付近で誕生するそうです。
半年近く海流に乗り、アジア諸国沿岸に来ますが、大半は養殖用に捕獲されます。
「シラス」といって、「海のダイヤ」とも言われ、年々漁獲量が減少しています。
■石川県にしかない食べ方
[その1 めった汁]
暖まる「めった汁」はお袋の味。
大鍋には、豚肉、ジャガイモ、タマネギ、ニンジン、こんにゃく…
県外から来た人、「めった汁」って何?これって、石川県にしかない家庭料理なの?
そもそも、めった汁の「めった」って…何だ?
そりゃあ、「やったらめったら具を入れるからやろ」
違う、「具をめっためったに切るからや」、いや、「めったに食べないからや」
答えは、やったらめったら具を入れるの"めった"が語源のようです。
「豚汁」の方が世間に知られているが、違いは"さつま芋"が入っているのが「めった汁」。
金沢のお袋の味…その秘密は、さつま芋だったのです。
[その2 冷ヤッコに練りカラシ]
暑くなってくると、やっこ豆腐が美味しい。食べる時に、練りカラシを付けて食べる。
練りカラシを付けるのは、石川県人だけだって…「エッ!そうなの?」
生姜を擂って添えるのが、全国共通の食べ方なんだと…。
でも、練りカラシの方が、絶対美味しいんだから…嘘だと思うなら試してみては…
【吉村外喜雄のなんだかんだ - 578】
~ことば遊び~ 「かなざわなまり」
「はがいしい」「あ~はんげ~」「…がいてね」
「…げんて~」「あのォんねェ~」「…がいね」
前号で、上手な話し方をするには、「普段のままの話し方」で話すと良い…と言いましたが、金沢弁丸出しの人と接すると、
とりわけ親しみを覚えます。
金沢に生まれ育ち、日頃無意識に喋っている"かなざわことば(なまり)"。
よそから来た人には、意味不明の言葉がいろいろあるようです。
改めて、その言葉の一つひとつを取り上げててみると…結構面白いのです。
5月31日。バレーボール男子五輪予選。日本がイタリアに惜敗した。
第四セット…あと一点のマッチポイントを迎えながら、まさかの7連続失点。
テレビを見ていて、「あ~、はんげ~」
この言葉、私のような頭の薄い人のことを言っているのではない…。
金沢の代表的な方言、「はがいしい」
を、若い人が使うとこうなる。
この言葉の語源は、「歯がゆい」「もどかしい」
かなざわなまりの特長は、語尾が"柔らかい"こと。締りがなく、空気が抜けていくような話し方をする。
「あのォんねェ~、知っとるゥ~、○○さん結婚するげんてェ~」
こんな言い方をするのです。
この「あのォんねェ~」
から、かなざわなまりの、のんびりした言い回しが伝わってくる。
そのほか、「そやけどォ~、○○げんて~」といった、会話の途中や終りによく出てくるこのイントネーションには、
かなざわなまり独特の"うねり"が感じられる。
「げんて~」は、
「結婚しまさるがいてね~」という年寄りことばが、若い人達に変形して使われているのです。
「はよ帰るげんろ」「泊まったほうがいいげんよ」など、よく使われる言い回しです。それを聞いて、「ほんながかいね、よかったがいね」
と言う。
「…がいね」
もよく使われる言い回しです。
自分のことばをテープに録って、改めて聴くと、何とも気恥ずかしい…。
何気なく使っている方言が、思っている以上にダサく、田舎くさく感じるのです。
近所の人や、幼友達と話すときは、方言丸出しの私でも、ビジネスで県外の人と話す時は、標準語に近い喋り方をしている。
"ふだん着"と"よそいきの"使い分けをしているのです。
■’08サラリーマン川柳 ベスト10
(一位) 「空気読め!」 それより部下の気持ち読め!
(二位) 「今帰る」 妻から返信 「まだいいよ」
(三位) 減っていく…ボーナス・年金 髪・愛情
(四位) 円満は 見ざる 言わざる 逆らわず
(五位) ゴミ出し日 捨てにいかねば 捨てられる
(六位) 「好きです」と アドレス間違え 母さんに
(七位) 国民の 年金 損なの 関係ねえ
(八位) 社長より 現場を良く知る アルバイト
(九位) 赤字だぞ あんたが辞めれば すぐ黒字
(十位) 「いつ買った?」 返事はいつも 「安かった」
どれも、日頃思っていることであり、心掛けなければならないことばかりです。
男性は益々頼りなく…女性は益々しっかりして見える。
「21世紀は女性の時代」と、某評論家が言っていたのを思い出す…。
【吉村外喜雄のなんだかんだ - 574】
~ことば遊び~ 「なぞかけユーモア」
良い川柳には、「クスッ」と笑わせる、ユーモアのセンスが溢れています。
そこで、今日のことば遊び、「なぞかけユーモア」
とまいりましょうか…
最初に、「朝は四本足、昼二本足、夕べは三本足、これなァに!」
皆さまよくご存知、スフィンクスが、前を通る旅人にかけたなぞなぞです。
解けなかったら、食べてしまうという伝説です。答えは"人間"。
生まれてしばらくは這い這いし、二本足で歩くようになり、歳をとると杖を突いて歩く…。
日本のなぞかけの起源は、「日本書記」に天武天皇が「無端事(あとなしごと)」で以って問いたもうた…と言われている。
なぞかけは、落語のネタにも使われていて、落語「三十石」の中で、乗り合い船の客同士が、こんななぞかけをやっている。
♪「"数の一の字"とかけて、"感心な寺の小坊主"ととく…」
「 その心は、心棒(縦に一本心棒)、すると十字"住持"になる…と、どうだす」
(※十字→住持…住職のこと)
『ふッなんだ、くだらねえや、そんなもの。じゃ、俺がやってみようじゃねえか』
『数の"二"の字とかけて、
"道楽者の寺の小坊主"ときた…』
「ほう、こらおもろい。で、その心は?」
『辛抱しても、住持にならない…』
(※一にニをたすと、"サ"の字、あるいは"三"の字になるが、偉くはなれない)
「そりゃ…むちゃくちゃや」
「ほんなら題を変えて、"いろはのいの字"をかけて、 "茶の湯の釜"ととく」
「その心は…"ろ(炉)の上にある"…どうでえ!」
『では、私はその、"ろ"の字をもらいましょう』
「はあ、あげましょう」
『これをもろうて、"上唇"ととく…その心は、"は"(歯)の上にある』
「なるほど…」
「こんどは、"いろはにほへと"とかけましょうかな。これを貰って"花盛り"ととく」
『その心は…』
「ちりぬる前」
『うまいッ!こりゃァきれいだ。
ナゾッてえもんは、こういうふうにいかなくちゃ…いけねえョ』
■ことば遊び 「尻取り歌」
『いろはに こんぺいとう こんぺいとうは甘い 甘いは砂糖
砂糖は白い 白いはうさぎ うさぎははねる はねるはカエル
カエルは青い 青いは柳 柳はゆれる ゆれるは幽霊
幽霊は消える 消えるは電気 電気は光る 光るはおやじのはげ頭』
『ミカン キンカン わしゃすかん 親はせっかん 子はきかん
子ども羊かん やりゃ泣かん ミカン キンカン 酒のかん
主の言うこと わしゃきかん 隣のねえさん 気がきかん
ミカン キンカン そりゃあかん 角力取り裸で 風邪ひかん』
※くちずさむほどに、忘れていた子どもの頃が思い起こされる。
566 【吉村外喜雄のなんだかんだ】
~ことば遊び~ 「落語・味噌蔵」
落語ネタに欠かせないのが、そそっかしい男に間抜け男、放蕩息子にドケチ親父…。
「落語・味噌蔵」も、私の好きなネタ噺の一つです。
♪赤螺屋(あかにしや)の主(あるじ)ほどケチな旦那はいない!
もう四十に手が届こうというのに、
「世の中に女房くらい無駄なものはない。一日三度も食べるし、その上子供でもできたら、 大変なもの入りだ」とおっしゃる。
そうは言っても、老舗の味噌屋の主人である。いつまでも独り身では世間体が悪い。
親類が集まって、おかみさんを持たないなら、親類一同お付き合いをお断りしたいと、談判。
仕方なく、身体が丈夫で食の細い女なら…と、嫁をもらう。
婚礼が済むと、お嫁さんは二階で寝てもらい、自分は階下で寝ることにした。
ひどく寒い晩があって、煎餅布団だから眠れない。
女房が、婚礼に綿がたっぷり詰まった布団を持ってきたのを思い出して、二階へ…。
しばらく寒い晩が続いたので、二階に通ったが、間もなく嫁が身ごもったことがわかり、うろたえてしまった。
だが、女手がないと理由をつけて、お里に預けることに。
出産の費用や、親類を呼んでのご馳走は、里が引き受けてくれる。
月満ちて…男の子が生まれた。
お祝いに招待された味噌屋の主人は、定吉を供に渋々お里へ行くことになった。
定吉には大きなお重を持たせる。ご馳走をたっぷり持ち帰るためである。
出がけ、留守番の店の者に釘をさす。
「くれぐれも火の用心を…」
「近所から火事が出たら、商売物の味噌で味噌蔵に目塗りをするように」
焼けた味噌は、はがしてご飯のおかずにすれば、無駄がない。
旦那が出かけると、この時とばかりに、店の者が羽を伸ばすのは…世の常。
なにしろ毎日の食事は、具のない味噌汁だけで、お菜が出たことは一度もない。
「どうせ今晩、旦那は帰らないのだから、みんなで美味しいものをいただこう。
お金の方は番頭さんが帳面をごまかして…」と、店の皆がそそのかすと、
番頭も乗り気で「食べたいものを言いなさい!」
皆は大喜びで、刺身、酢の物、天ぷら、鯛の塩焼き、ブリの照り焼き、
玉子焼き、鰻、田楽!
「さあさあ、みんなひとっ走り頼んできておくれ。それから田楽は豆腐屋に、
冷めてしまうとうまくないから、二、三丁ずつ焼いて、持ってきてもらうように…」
その夜、店の中は酒盛りのどんちゃん騒ぎ…。
そこへ、泊まるはずの旦那が帰ってきてしまった…さぁ大変。
旦那様、店内の有様を見て激怒していると、表の戸を叩く声がする。
「今晩は、今晩は、焼けてまいりました」との声。
どこからだと聞くと、横丁の豆腐屋からだと言う。
「二、三丁焼けてまいりました。あとからどんどん焼けてきます」
これを聞いた旦那様、「火元は近い!」と、慌てて表の戸を開けたとたん、
田楽のにおいがプ~ン。
「あッあ~ッ、いけない! 味噌蔵に火が入った」
学習研究社「落語ギャラリー60」
■ビックコミック・時事川柳
「ガソリンが 高騰したら 減った事故」
「AVを 見るには不向きな 大画面」
「歩道橋 一日誰も 渡ってない」
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「さて明日は 誰がテレビで 謝るか」
「ブロイラー 野に放したら 明日地鶏」
「父さんは 明日明日詐欺の 常習犯」
■2008年・サラリーマン川柳・入選作から
「箸つけた オレを見てから 食べる妻」
「張り替えは 昔障子で 今日付」
「安い値の ガソリン探し 遠出する」
「官僚が 言えなくなった 趣味ゴルフ」
【吉村外喜雄のなんだかんだ - 218】
~ことば遊び~ 「江戸小噺・鯛の塩焼き」
3/16、米男子ゴルフツアーがスタートした。
そのしょっぱな、タイガー・ウッズが最終18番で、8メートルのバーディパットをねじ込み、劇的な勝利を手にした。
早朝、テレビで観戦していた私…その瞬間、我がごとのように「やった~」
大相撲春場所は朝青龍が優勝し、ホッと一息。
サッカー、選抜、プロ野球開幕と、新聞のスポーツ覧は満開です。
兼六園の桜もほころび始めたようで…
今日の江戸小噺は「鯛の塩焼き」。桜花爛漫、春酣の頃のお話でございます。
♪お殿様が、お側付きの三太夫をお側に、お昼を召し上がっていらっしゃいます。
お昼ったって、我々下々のように、沢庵にお茶漬っていうわけにはいきません。
いくらご倹約中のお屋敷とはいえ、お殿様のお膳には、必ず鯛の塩焼きがついています。
もっとも鯛のお頭といっても、毎回付いてくるのですから、もう…お殿様も飽きあきなさって、お箸をお付けになることは…まずない。
ま、お飾りてェところでございましょうな。
ところがその日、どういう風の吹き回しか、殿様がこの鯛に一箸お付けになった。
「うむ、美味である。代わりをもて!」
『はッ』とお答えしたが、三太夫さん困りましたな…。
いつも召し上がらないから、お代わりの鯛のご用意がない。
『恐れながら、お庭をご覧遊ばせ。池畔の桜が見事に咲き揃いましてございます』
「おお、満開であるな」
と、お殿様が桜をご覧になっている間に、皿の上の鯛をクルッとひっくり返した…。
『お代わりをお持ちいたしました』
「む、大義である」…と、お殿様、また一箸お付けになった。
「美味である。代わりをもて!」
さすがの三太夫も、今度こそ、やりようがない。
またひっくり返せば、先ほどのお箸の跡が出てしまいますからな…。
『は、は~』と、平伏したまま固まっておりますと…お殿様
「これ、いかがいたした!? もう一度桜を見ようか?」
提供「風亭弥次郎」
■三遊亭歌奴 「下ネタ艶笑落語」
私がY社に勤めていた19歳の頃、お客様招待会をやることになり、東京から演劇一座がやってきた。
受け入れ側の一員として、一座に1ヶ月間同行することになった。
鶴来の体育館、根上の公民館と、県内をドサ廻り…
マン幕を張ったり、ゴザを敷いたり…雑務が私の仕事でした。
その一座に、真打になったばかりの「三遊亭歌奴(三遊亭園歌)」がいた。
ご存知「山の穴々…」の新作落語が大受けして、人気が出始めた頃です。
夜、高座が引けて、楽屋でくつろいでいる時、お手伝いをしている私達へのサービスだと、「下ネタ艶笑落語」を披露した。
♪「お風呂の中でオナラをしたら、鼻のまん前でブクブクパッチン…。
男のオナラは…、女は… 」と、 顔を見ているだけでフキ出したくなる歌奴の熱演に、お腹を抱えて笑ったものです…。
50年も前のことが、昨日のことのよううに思い起こされます。
【吉村外喜雄のなんだかんだ - 214】
~ことば遊び~ 「江戸小噺・四宿の屁」
毎年10月に、「 五郎島金時芋 」を箱入りで買ってきて、お世話になった人たちにお配りしている。
さて、芋といえばオナラ…川柳に、「コタツから 猫もあきれて 首を出し」というのがある。
被害にあったからといって、本気になって怒るわけにもいかず、当の本人はバツが悪い… それが"オナラ"である。
そこで今日は息抜きに、"オナラ"を題材にした下ネタ小噺を一席…。
♪江戸っ子のだじゃれ好き、遊び心は、"屁"のこき方にまで及びまして…
"江戸四宿"といえば「品川、千住、板橋、新宿」。
それぞれの宿場女郎の特徴を"オナラ"でもって表現しようというのです…。
■品川 「いま行ったのは…」
海に面した女郎屋で、 客が昼遊びしていると、 床の中で花魁(おいらん)が一発いたしてしまった…。
音のしないやつだが、このほうが臭いが強い。
客に嗅(か)がれては大変だから、花魁は夜着を手でしっかりと押さえて、足のほうからバタバタと空気抜きをはじめた。
「おい、なにをしているんだ?」
『沖を帆かけ船が通るから、その真似を…』
「くだらねえことをするなよ…」
もう臭わないだろうと、手を放したとたんに、客が「フッ」と笑って、
「いま行ったのは、肥船(こいぶね)じゃねえかァ…」
■新宿 「半分お出し!」
花魁と客が差し向かいで飲んでいるところに、 若い衆が挨拶にやって来たので、客が盃をすすめた。
花魁が酌をしようと、徳利を持って腰を浮かす…と同時に「ぷう~」とやってしまった。
売り物の花魁にキズをつけてはと思った若い衆、「あいすみません、お昼のおかずがゴボウだったので、お腹が張ってとんだ粗相を…
ご勘弁を願います」
なにもかも承知の客は、『色気を売る稼業は、そうでなくちゃ』と、若い衆に祝儀を与えた。
「ありがとう存じます。過ちの巧妙で…では、どうぞこゆるりと」
部屋を出た若い衆を、花魁が追いかけて、
『ちょいと、喜助どん。半分お出し…いまのはあたしの働きだよ!』
■板橋 「あたしも一緒に…」
芸者をあげて大一座で騒いでいると、やり手の婆さんが酌をするようにと、小職(こじょく)に命じた。言われた女の子が、
徳利を持ってお酌をしようとすると、「ぷう」。
『あきれたよ、この子は。お座敷でおならをするなんて、おまえは本当に行儀が悪い。
階下(した)へお行き!』
叱言(こごと)を言うと同時に、自分が「ぷう」
『お待ち、あたしも一緒に行くから…』
■千住 「前か後か?」
待ちくたびれた客のところに、ようやく女がやって来た。
しゃくだからと狸寝をしていると、
「ちょいと、おまいさん、寝たの? いびきをかいているわね。お起きよ、ちょいとォ!」
布団の上から客を叩くと、拍子で「ぶう~」
気づかなかっただろう…とは思ったが、揺り起こし、
「ねェ~知ってるんだろ、いまの大きなの…」と聞いた。
『なんだい、いまの大きなのって?』
「いまの大きな…地震さァ~!」
『地震…? 屁の前か? それとも後…?』
■勘違い「変換ミス」 日本漢字能力検定協会提供
正 「それは会社の方針とのこと、正しいようです」
誤 「それは会社の方針とのこと、但し異様です」
正 「常識力検定を導入し…」
誤 「上司、気力検定を導入し…」
正 「今日居ないもんね、ゴメンネ!」
誤 「胸囲ないもんね、ゴメンネ!」
正 「今日は、見に来てくれてありがとう」
誤 「今日は、ミニ着てくれてありがとう」
正 「規制中で渋滞だ」
誤 「寄生虫で重体だ」
正 「逢いたいの もう一度」
誤 「会いたい 飲もう 一度」
正 「同棲しよう! でも言えなかった」
誤 「同棲しよう! でも家なかった」
正 「誰か、ビデオとってるやつ いないか?」
誤 「誰か、美で劣ってるやつ いないか?」
【吉村外喜雄のなんだかんだ - 210】
~ことば遊び~ 「落語・こんにゃく問答」
「ことば遊び」を趣味にする、私にもってこいの、トンチに溢れ、お腹を抱えて笑える、勘違い「こんにゃく問答」の一席…。
♪上州は安中(あんなか)の古寺。長年住職が不在で、寺は荒れ果てている。
そこで、こんにゃく屋を営む六兵衛は、居候の八五郎に、坊主になってはどうかと勧める。
ある日、寺に一人の旅僧が訪れる。
越前永平寺の沙彌托善(しゃみたくぜん)と名乗り、住職と問答をしたいという。問答に負けたら、寺を追い払われる…。
今日は住職は留守だと言うと、托善は「命の限りお待ち申す」と言い残し、その場を引きあげていった。
八五郎は慌てて六兵衛のもとへ…六兵衛はこんな時でも頼もしい。
「おれがその坊主をなんとか退散させてやる。いざとなったら、ふん捕まえてぶち殺せ」
翌日、托善がやって来ると、本堂には大和尚になりすました六兵衛が、座ったまま一切口を開かず、押し黙って目を爛々と光らせている。
それを見た旅僧、住職が無言の行の最中だと思い込み、身振り手振りで問答を仕掛けてきた。
(以下は仕草だけ)
托善が手で小さな丸を作ると、六兵衛は両手で大きな丸を作る。
手を広げて10本の指を見せると、六兵衛は片手で5本指を出す。
しからばと、3本の指を出せば、 六兵衛、アッカンベ~
すると托善は逃げ出した!八五郎が追いかけてわけを聞いた。
ご住職は、無言の行をされているとお見受けし、そこで拙僧、まず胸の前に小さな輪を作り、ご住職のお胸の内はと尋ねますと、
大きな輪を作られ、大海のごとしとのこと…。
次に10本の指を立てて、「*十方(じつほう)世界は」と尋ねますと、5本の指を出され、「*5戒で保つ」と申された。
最後に3本の指を出して、「*三尊の弥陀は」と尋ねますと、「目の下にあり」と申されました。
とても拙僧の及ぶところではござらん。
一方、六兵衛はというと、あいつは、おれがこんにゃく屋だと知っていやがる。
まず小さい丸を作って、おめえのところのこんにゃくは、こんなに小さいってバカにしやがるから、こんなに大きいって、言ってやったんだ。
10丁でいくらだと聞くから、少し高いが五百文だというと、三百文に負けろ、とぬかしやがったから、アッカンベ~
*[十方世界] あまねく広い世界
*[五 戒] 人間が守るべき五つの戒律
*[三尊の阿弥陀] 阿弥陀、観音、勢至
正月休みの一週間、バリ島のリッツ・カールトンなどの高級リゾートホテルが集まる、
ビーチ・ジンバラに宿泊。スキューバーダイビングと観光を楽しみました。
【吉村外喜雄 - 206】
~ことば遊び~「落語・親子酒」
あけましておめでとうございます。
昨年の暮れ、身近にお付き合いしている友人…公の場で突然、禁酒を宣言した。
お酒を呑む機会が最も多い年末年始に、あれだけ好きだったお酒を絶ったのです。
心に期するものがあってのことでしょうが…驚きました。
そこで、年初め最初のメルマガということで、お酒に絡んだ落語小噺を一席…
♪親父と息子、二人そろっての大の酒好き。
ところが息子は酒で失敗をしてばかり。親父は、息子に酒をやめるように言う。
その代わり自分もやらないと、親子で禁酒の約束をした。
しかし、我慢できるのも二、三日まで…。
息子が年始まわりで出かけたある寒い日の晩…
「おい婆さんや、何か身体が温まるようなものはないかいな…」
『くず湯でも飲みますか?』。優しい女房は心を鬼にしてとぼける。
「もっとほかにあるだろう。なんか、ピリっとして温かくなるもんが…」
『唐辛子ですか?おじやかなんか?』
猪口を口に運ぶ真似をしても、知らんぷりをするので、
「頼むから一杯だけ。なに…倅がまだ帰って来ない」
とうとう根負けした女房は、お銚子一本差し出す。
こうなると、一杯で済むわけがない。あと一本、もう一本。
しまいには「持ってこ~いてんだ!」
やがて、べろんべろんに酔っ払ったところへ、息子が帰宅
『お父さん、ただいま帰りました』あろうことか、息子も泥酔状態。
乱暴に襖を開けると、中へ倒れ込んだ。
『山田さんの家(うち)に行きましたら、丁度いいところに来た、正月だから一杯やって行けと言われまして…。
親父と約束をしているのでと断ったら、以後出入りを止めると言われました。
あたし、怒っちゃいましたよ。たとえ出入りを止められても、男と男の約束を破ることはできません、と言ったら、「えらい!
その心意気が気に入った。その意気でもって一献いこう!」となりまして、結局二人で二升五合あけちゃいました。
やはり好きなものは、なかなか止められませんね…お父っあん』
ろれつの回らない息子に、ろれつの回らない親父が言葉を返す。
「何という情けない男だ、酒を飲むなと言うのは、お前の身を思えばこそ。
この身代をそっくりお前に譲っていこうと思うから、お前に口うるさく言うのだ。
そこをよ~く考えて…」
親父は酔った目で息子をじ~っと見て、「おい婆さんや、倅の顔を見なさい。七つにも八つにも見えるよ。こりゃ化けもんだ。
こんな化けもんには、とても身代は譲れない」
『冗談言っちゃいけません。あたしだって、こんなグルグル回る家は、貰ってもしょうがない…』
学習研究社「落語ギャラリー60」
■ことば遊び 「中村メイコ」名前の由来
9月まで、NHK・BSの朝のテレビ小説で再放送していた「さくら」。
ハワイ生まれの日系三世の"さくら"が、高山の中学の臨時教員になり、文化・習慣の違いから騒動を繰り返す、とても面白い番組だった。
東京で叔父(小林亜星)が金魚屋を営み、その奥さんが"中村メイコ"。何とも素敵な脇役を演じていた。
中村メイコの父親は、昭和初期の日本では育ちにくい、面白おかしいものを書くユーモア作家。それがよく売れて、人気作家になった。
メイコは、昭和9年5月15日、東京杉並の洋館建ての自宅で産声を上げた。
父は白い紙に「五月」と書いて言った。
「役所には五月(ごがつ)とだけ届けましょう。
その名前を見て、漢字好みの人は"さつき"、
西洋好みの人なら"メイ"と呼ぶかも しれません…」
読売新聞「時代の証言者」より
【吉村外喜雄のなんだかんだ - 202】
~ことば遊び~
「江戸小噺・大晦日のツケ払い」
12月に入り、年賀状の手配も終り、何となく気ぜわしい思いをしている毎日です。
江戸の昔は、普段はツケで買い物をして、支払いは盆暮れにまとめて支払うのが習慣でした。大晦日ともなりますと、このツケの支払い、
カケの受け取りで、大変でございますな…。
そりゃ金がありゃあいいですよ。その日暮らしの貧乏人の中には、どうしても金の工面がつかないという者が出てまいります。
そうかといって、商人の方だって、夜明けまでに取り損なえば、また半年待たなくっちゃいけないんでございますからな…。
♪この暮れは、どうにもこうにもやり繰りがつかないという男。
どこからか都合してきた棺桶の中に入って、女房に申しましたですな…。
「俺を死んだことにして、何とか今夜をやり過ごしてくれ」
『そんなバカなことをして、後をどうしなさる?』
「なぁに、元日に生き返ったと言えばよい」
無責任なヤツがあったもので…。そこへ米屋が掛取りにまいりましたな。
女房は、あまりの情けなさに涙を零しながら、しどろもどろの言い訳をいたしますてぇと、気のいい米屋、
『この暮れへきて、急に亡くなったとはお気の毒。せめてこれでも…』
と、いくらかの銭を置こうとする。
「とんでもないことで、お借りしたものをお返しも出来ないのに、これはいただけませぬ」
『そう言わずに取ってくだされ』
押し問答をしておりますと、棺桶から手が出て、
「呉れるというものは、もらっておけ!」
そんな気のいい米屋ばかりではありませんな。
♪大晦日、みすぼらしい姿の浪人が、米屋にまいりまして、
「お主のところの借財が払えぬ。拙者も侍の端くれ、申し訳のため、この店先にて腹を切り申すが、どうじゃ…?」
米屋の亭主はせせら笑って、
『お前様方のお決まりの脅し文句…。その手には乗らぬ』
進退窮まった浪人、肌脱ぎになりますてぇと、脇差を腹へ突き立て、へその際まで切りましたですな。
「うぅ…どうじゃ、かくの如くだ…!」
『どうせ切るなら、なぜみなお切りなさいませぬ?』
「うむ…、残りの半分は酒屋で切る」
掛取りに回る手代の方にも、泣き落としの決まり文句がございましたそうで、
「今日は大晦日、たとえ半金でも払ってくだされ。手ぶらで帰っては、主人の手前、わたしが首をくくらねばならぬ」
『すまぬが、今夜のところは、そうしておいておくれ』
こちらは橋の下を住まいとする、乞食夫婦でございます。
「ねえお前さん、町中では、払え、払えぬで大騒ぎしているようだけど、こっちは気楽でいいねぇ…」
『これ!大きな声で言うんじゃない』
「あれ、どうしてだい?」
『みんなが乞食になりたがる…』
■言葉の語源。今日は「女」のいる漢字から…
女性を呼ぶ言葉は、日本語を知るうえで大変面白い。
組み合わせによって、様々に使い分けられ、感情が込められたものもあります。
女三人寄れば「姦(かま)しい」、古い女と書いて「姑(しゅうとめ)」など、"ことば遊び"から生まれたような面白さがあります。
「娘」は、「む(産)す女」が「むすめ」になったと言われている。
親にとって娘は可愛くてしかたがない。そこで「愛」に「娘」で、「愛娘(まなむすめ)」が生まれた。しかし、
"まなむすこ"という漢字はない。
好きの「好」は、女の子は可愛くて愛らしい。転じて「女」と「子」をくっつけて「好」になった。「女」に「弱」で「嫋(たお)やか」。
しなやかで優美な女性の姿になります。
「嬶(かかあ)」は、鼻息のあらい妻という意味の、日本で生まれた国字です。
「女」に「老」又は「波」で「ばばぁ」。「眉」を付ければ「こびる」。女に「母」は「うば」。
「家」をくっつければ「よめ」。女に「喜」で「うれしい」と、昔の人のユーモア感覚がうかがえ、楽しくなってくる。
このように、辞書で「女扁」や「魚扁」を繰って、その言葉の意味を楽しむのも、いいものです。
【吉村外喜雄のなんだかんだ - 198】
~ことば遊び~
「江戸小噺・石川五右衛門」
今年も、早いもので11月。今席はひとつ泥棒の小噺を申し上げましょう。
11月と泥棒がどうしてくっつくのかって?実は、ほら、柴又の寅さんが言うじゃないですか…。「泥棒の始まりは石川県…じゃなくて、
石川五右衛門」って。
あの五右衛門が生まれたのが、永禄元年(1558)の11月15日なんでございます。今年は奇しくも、
五右衛門誕生450年って訳でしてな。
日本各地で泥棒どもが集まって、「大盗祭」という盛大な祝賀式典を開いているのだそうでございますよ。
またまたいい加減ななことを…ウソでしょうって? いやいや、これはウチの親戚に泥棒がいて、そこから聞いた話ですから、
間違いありませんよ!
という訳で、泥棒の小噺を一席。
♪石川五右衛門が捕らえられて、京都三条川原で釜茹での刑に処せられたのは、文禄3年(1594)8月24日のことでございます。 ただでさえ暑い真夏でございますから、さぞや暑かったことだろうと、お悔やをみ申し上げます。
この日はまた、泥棒稼業では「浜の真砂忌」と申しまして、旗日、つまり其の日一日、
泥棒はお休みすることになっておりますんですよ…(大ウソ)。
悪人とは申せ、五右衛門はさすが大物でございます。グラグラと油の煮えたぎる釜を前にしても、眉一つ動かさず、
立会いの役人に申しましたな。
「しばらくお待ちくだされ。この世の名残に、時世の一首を詠みとうござる」
『おお、奇特なことよ…早う詠め!』
「されば…かかる時 さこそ命の惜しからめ かねてなき身の 思ひ知らずば」
『な、なんと、それは太田道灌公のお歌ではないか!?』
「ふふン、これが本当の盗み納めじゃ…」
~提供「風亭弥次郎」~
ちなみに、石川五右衛門の辞世の句は、
「石川や 浜の真砂は尽きるとも 世に罪人の 種は尽きまじ」
また、太田道灌は室町中期の武将で、歌人。江戸城を造ったことで知られる。
■ことば遊び。
今日は、私が言うとバカにされる「おじん駄じゃれ」あれこれ。
「かけっこするから運動場貸して…」 『うん、どうじょ!』
「坊さんが通っていくよ…」 『アッ僧!』
「この帽子はどいつんだ…」 『オランダ!』
「何つくってんの? 生垣かい…」 『へい!』
・私が幼かった頃、祖母が私を膝の上に抱きながら、「長いなが~い」
お話をしてくれました。
「昔むかし、天から長いなが~い縄が降りてきた。
長いなが~い、とても長~い長縄だったそうな。
それを登っていったんだそうな。
登っても登っても、登っても登っても、終りがなかったそうな…。
おしまい」
くだらないって……だから私はバカにされるのです。
・今度は、孫を相手に「ほんとのお話」。
「昔々或るところに、男の人がいました。
その人の口の中には歯が一本もありませんでした…。
これがほんとの"歯無し(話)"です」
【吉村外喜雄のなんだかんだ - 194】
~ことば遊び~ 「落語・火炎太鼓」
たとえ、おじん駄じゃれと笑われようと、咄嗟(とっさ)にだじゃれが出るようなら、それは最高。
会話が弾み、笑いに包まれた時、自然と湧いてくるのが駄じゃれ。
落語は、最後の絶妙の"落ち"が、すべてを決める。
日ごろの何気ない会話で、ひょいと出る「おじん駄じゃれ」。
これも、会話を盛り上げ、会話を楽しむ心がなければ出来ない芸当です。
♪おまえさんほど商いの下手な人はいない。とべつ女房に愚痴を言われる道具屋の甚兵衛。
市で太鼓を買ってきたと言って、またしてもあきれさせた。
「太鼓はお祭り前とか、初午(はつうま)にしか売れない際物だから、また損をしちまうよ」
と言って、女房は馬鹿にしたが、汚い太鼓が一分(一両の四分の一)だと知って、まる損だと吐き捨てた。甚兵衛は気にもとめない。
小僧の定吉に、ほこりまみれの太鼓をはたかせると、「ドンドンド~ン」いい音がする。
「今、太鼓を叩いたのはその方の店か?」と、侍が訪ねてきた。
駕籠(かご)で通り合わせたとき、太鼓の音を耳にした殿様が、「どんな太鼓か見たい、屋敷に持参せよ」と言うのだ。
甚兵衛は喜んだが、駕籠の中で聞いた音だけではわからないと、女房は半信半疑である。
金蒔絵(きんまきえ)でも施した立派な太鼓だと思っているところに、ススの塊りのようなものを持っていけば、
どんなお叱りを受けるかしれない。
「欲を出さないで、仕入れた値で売ったら、逃げておいで」と言って、送り出した。
さて、太鼓を担いで甚兵衛はお屋敷へ。
『汚い太鼓です』と念を押し、恐る恐る差し出した。
ところが殿様は大変な気に入りようで、お買上になるという。
値を聞かれて『一分』と答えようとしたが、舌がもつれ『え…いち…』と言いかけると、「かまわん、手いっぱい申してみよ」と言われ、
『十万両…』。
「それは高すぎる」
『手一杯ですから、いくらでもおまけしますよ。値切ってください。いくらでもまけますから…』
結局、三百両で話がついた。
三百両、小判五十両包み6つだよ。
「よいか、まず五十両」 『へい、五十両』
「百両…、百五十両…、二百両だ」 『すいません、水ぅ一杯ください』
なぜあんなに汚い太鼓が三百両もするのか?
実は、あれは"火炎太鼓"という大変な銘器だったのです。
『いま、帰ったぞ』
甚兵衛は三百両を懐に、喜び勇んで店に戻ると、女房に報告した。
が、女房は信じない。
「追っかけられてきたんだろう?早く、天井裏に隠れておしまい」
甚兵衛は、懐から小判を出した。
信じられない面もちの女房を前に、金包みを広げる甚兵衛。
五十両…百両…百五十両までいったところで、女房が「水一杯おくれ」
『おれは二百両のところで飲んだ…どうだ、全部で三百両だぞ』
「お前さんは商売上手だねえ」と、女房も大喜び。
「お前さん、これからは音のするものに限るねえ…」
『そうだとも、今度は半鐘(はんしょう)を仕入れて、叩くよ』
「半鐘…半鐘はいけないよ、おジャンになるから…
」
"なんだかんだ"とメルマガを配信して丸5年、今日は区切りの500回!
引き続き10年、1000回(1000本安打達成を目指す心境)を目指します。
■ことば遊び「言葉の語源」
言葉の語源の意味を知るのは楽しいものです。
○ | まずは、「くだらない」
の語源。 お酒は昔から灘。上方が本場とされてきた。 江戸へは、東海道を下って運ばれてくる。 そこで、上方の酒を「下り酒」と呼んだ。 それに対して関東の酒は、原料の米、水質ともに悪いせいか、 上方へ下ることがなかった。 そこから「くだらない」が生まれた。 「価値がない」「つまらない」の意味の言葉を「くだらない」と言うようになった。 |
○ | 面白いのは、「ごまかす」
の語源です。 語源には諸説があるようですが、「胡麻菓子(ごまかし)」説が面白い。 見かけはゴマがついて、いかにも美味しそうだが、実は焼いてふくらませただけの、 まずい菓子のことを「胡麻菓子」と言ったことから、「だます」ことを「ごまかす」と言う ようになった。 |
【吉村外喜雄のなんだかんだ - 190】
~ことば遊び~ 「江戸小噺・弘法大師さま」
暑さも彼岸までとはよく申したもので、9月に入り、朝晩少しずつ、しのぎやすくなってまいりました。
今日はお彼岸にちなんで、坊さんの小話を一つ。
お坊さんの代表といえば、なんたって弘法大師様でございましょう。
この方は単に偉いお坊さんというだけでなく、文学にも博物学にも、天文学にも医学にも、経営学にも通じていたという。
今で言えば正にスーパーエリートだったのでこざいます。
それだけに弘法大師伝説は、日本全国いたるところに残っております。
弘法様が独鈷(とっこ)で地面を突いたら、たちまち温泉が湧き出したとか、門付けをしていた大師様に、喜捨(きしゃ)
を惜しんで小石を芋と偽ったら、畑の芋まですべて石ころになっちゃったとか。
♪汚い身なりの坊さんが、門口に立って読経を始めましてな…。
その家(や)の子どもが出てきて、「乞食坊主!あっちへ行け!」とののしる。
母親慌てて、
「これ、何ということをお言いだい!こんなナリをなさってはいるが、もしかしたら弘法大師様かもしれないよ」
坊さん、俄かに修(おさ)まって、
「むむむ…、隠そう隠そうと思いしに、ついに露見をいたせしか…」
と見得を切れば、奥から出てきた親父、
「つがもねぇ、こいつはそこの橋の下に住む、本物の乞食坊主よ」
坊さん頭を掻いて、
「ほい、また露見したわい」
さてこちらは、本物の弘法大師様が、無礼を働いた男を懲らしめるために、馬にしてしまったというお話でございます。
そのまま立ち去ろうとする大師様の衣の袖を掴んで、男の女房が必死に詫びを入れましたですよ…。
「お大師様、どうぞお許し下さいまし!この後は、見知らぬ他人にも必ず親切に致させます故、お情けでございます!
何卒元の人間の姿にお戻し下さいまし!」
馬にされちゃった亭主も、目に涙を浮かべ、たてがみを上下に振って、詫びている様子…。
さすがに気の毒に思ったのか、一つうなずいた大師様。
手にした錫杖(しゃくじょう)で馬の頭を指しますと、たちまち元の男の首に戻りました。
続いて肩、胸、腹、両手と戻した大師様が、錫杖を今まさに股間に向けようとしたその瞬間、女房思わず、「あっ!そこだけはそのままに…」
提供「風亭弥次郎」
■弘法大師(774~835)
真言宗の開祖"空海"の別名。弘法大師という名は、醍醐天皇がつけた。
18歳の時、京都の大学で儒学を学ぶ。20歳で出家。
31歳の時、遣唐使の一員として入唐。その時、空海伝説が生まれる。
一行はものすごい暴風雨に遭って、目的地の揚子江とは遠く離れた福建省に漂着。
言葉が通じず困っていたところ、空海が一筆書いた。
検問の役人は、その書と文章に感動して、通行許可証を下ろしたという。
空海は、清龍寺の恵果和尚の下で真言密教の奥義を受け、2年後に帰国。
帰国後、京都高野山金剛峰寺に入り、ここで真言宗の開祖となり、東寺を開く。
中国留学時書を習い、日本に持ち帰った。
書道家として能筆で、三筆の一人に数えられ、多くの書家に影響を与えた。
■前座
日本の古典芸能は上下関係がとても厳しい。
落語の世界も初めは"見習い"。
この間無給で、師匠の身の回りの雑務に明け暮れる。
その代わり、食事は一切師匠がみる。
見習いを終えると名前を貰い"前座"として楽屋入りを許される。
一番に楽屋に入り、めくりをその日の出し物順に揃えたり、お茶の準備をしたりする。
三味線以外の鳴り物はすべて前座の担当。
落語もさることながら、太鼓の修行もやらなければならない。
高座で芸人さんが入れ替わるたびに座布団を返し、メクリをめくる。
師匠にお茶を出し、ネタ帳を見せて今まで出た噺を示す。
よく似たネタが重ならないようにするためである。
師匠が高座から降りてきたら、脱いだ着物をたたむ。
こうした裏方をこなしながら、高座に耳を傾け、合間を縫って、稽古をつけてもらう。
前座の仕事は山ほどあるが、お手当ては微々たるもの。
数年間前座を務めると、辛い辛い修行時代が終る。
"二つ目"となり、
寄席に出られる身分になる。
更に精進を重ねること十年…実力も相応と認められると、晴れて"真打"に昇進。
「○○師匠」と呼ばれるようになる。
【吉村外喜雄のなんだかんだ - 182】
~ことば遊び~ 「落語・風呂敷」
・開場を知らせる入れ込み太鼓がが「ドンドンドントコイ!…」と鳴る。
一番太鼓です。
・開演5分前に二番太鼓が叩かれる。
「お多福コイコイ、ステツクテンテン」と聞こえる。
・開口一番は"前座"が務める。
続いて"二ツ目"が演目を演じ、最後に"真打"の登場となる。
・芸人さんが入れ替わるたびに聞こえてくるのが「出囃子」。
二ツ目になると、自分のオリジナル出囃子を決めることができる。
・終演…ハネ太鼓が叩かれる。「デテケデテケ、テンデンバラバラ…」と聞こえてくる。
「落語ギャラリー60」より
貧乏長屋の住人を題材にした人情噺は、話題に事欠かない。
♪『今日は帰れないかもしれない』
そう言って出かけた亭主の留守中、新公がやってきた。
女房は、新公を上らせてお茶を出すと、そこに"帰れない"はずの亭主が帰宅。
それもへべれけ。実は、亭主は大変なやきもち焼き。
酔っ払っているうえに、新公と鉢合わせなんてしたら、どうなることやら…。
慌てた女房は、とりあえず新公を押入れに隠してしまう。
亭主が寝たら、こっそり帰せばいい。
ところが、この日に限って亭主は寝ないし、押入れの前から動こうとしない。
困り果てた女房は、お酒を買いに出てくると言って、鳶頭(とびかしら)のもとに飛び込んできた。
状況を聞かされた鳶頭は、何を思ったか、風呂敷を持って出かけて行った。
見ると、女房の言う通り、亭主は押入れの前にでんと構えて、動く気配もない。
鳶頭は、家に入って来るなり亭主に、
「ちょっと脇でごたごたを収めての帰りでね」と、思わせぶりに言う。
すると亭主は、そのもめごとの顛末を聞きたがった。よしよし、思惑どおり。
鳶頭は話始める。
***「亭主の留守中に、若いのが尋ねて来た。
そこへ亭主が急に帰ってきたので、女房は焦った。
この亭主がものすごく嫉妬深いんだ。ひとまず押し入れに…。
そう、ちょうどお前の後ろにあるような、三尺の押入れにそいつを隠したのだが、
亭主は前で頑張ってなかなか寝ない。ちょうど、今のお前みたいにな…。
その若いやつ、押入れで歳とっちゃかわいそうだろ。
仕方ないから、この風呂敷を、こういうふうにかぶせたんだ」***
と、亭主の頭から風呂敷をすっぽり。
「お前がそいつとするね…見えるか? 見えねえだろ」
鳶頭が押入れをすーっと開ける。と、そこには新公が。
「声を落として押入れに『早く出ろよっ』…て、そいつに言ってやったんだよ。
そうしたら若い男は出てきた…。
押入れを出て、玄関へそっと出て行くのを見送りながら、『忘れもんするんじゃないよ』…と、そいつに言ってやったんだよ。
ついでに『下駄間違えんなよ』とも言ってやったから、そいつは下駄も間違えず、そそくさと去って行った。」
『あぁそうか、そいつは上手く逃がしやがった』
■ことば遊び 「お釈迦になった」の由来
パソコンで時間をかけて作った文章、ちょっとした操作ミスですべて消滅…。
こんな経験を何度かしている。
そのとき、あァ~「お釈迦になった」と悔やむ。
何で、こんな言いかたをするのか?不思議です。そこで、この言葉の由来を調べてみた。
細工職人が火を強くしすぎて溶接に失敗し、「火が強かった…」と、思わず発した言葉
から来ているという。
下町では「ヒ」を「シ」と発音したので、「シガツヨウカッダ…4月8日だ」と聞こえる。
4月8日はお釈迦様の誕生日。
そこから「お釈迦になった」と言うようになった。
何となく落語の落ちに似ていて、「クスッ」と笑いを誘う。
422号で題材にした
「猫も杓子も」もそう…。「女子も若子も」が語源です。
「女も子供も…めこもじゃくしも」と呼ぶ。
江戸っ子のだじゃれ・遊び心から、「猫も杓子も」と言うようになった。
【吉村外喜雄のなんだかんだ - 178】
~ことば遊び~ 「落語・饅頭こわい」
落語には、町内の若い衆が集まってよからぬ相談をしたり、皆で遊びに行って失敗すると
いった、下町情緒に溢れた噺がたくさんある。
今日は、ご存知「饅頭こわい」から、そのさわりを一席…
♪江戸時代の職人は朝が早かったが、仕事さえちゃんとすれば、働く時間は短かった。
仕事が終わり、湯に入ってさっぱりすると、仲間の家や髪結床、湯屋の二階などに集まり、
銭があれば酒を飲むが、無ければ、無駄話で時間をつぶした。
「そろったかい? 留のやろうが来ない?
しょうがねぇなあ、いつだってぐずなんだから」
『ああ、驚いた。うしろから追っかけてきやしないか…』
留が大声を上げながら駆け込んできた。
来る途中で青大将ににらまれたと、震えている。
これがきっかけで、みんなで怖いものを言い合うことになった。
長いものはウナギ、みみず、どじょうから、ソバやうどんも駄目で、だから褌も締めない、
というやつから、なめくじ、蛙、蜘蛛、おけら、蟻、馬と…いくらでも出てくる。
順々に自分の怖いものをあげる中、離れたところで白けている男が1人。
お前の怖いものは…と尋ねられると、
『なに言ってやんでぇ。黙って聞いてりゃいい若えもんが、あれが怖ぇのこれが怖ぇの…
人間は万物の霊長と言ってな、人間ほど強ぇものはねえんだ』と、強気に突っぱねる。
「そうは言っても、お前にだって何かはあるだろう」と、しつこく追求され、ついに男は口を割った。
『せっかく俺が思い出すまいと思っている時に…。
恥を忍んで正直に言うと…』弱々しい声になって、『饅頭…』
今までの威勢とは打って変わって、みるみる顔は青ざめてゆく。
しまいには、『気分が悪くなってきた。ちょいと隣の部屋で休ませてくれ』と言うので、
しばらく寝かすことに…。
本人がいなくなると、皆、この時とばかりに陰口を叩き始める。
「あの野郎ほど、普段からしゃくにさわるやつはねえ。
1人で強がりやがって、兄貴風を吹かせて…」
こうなったら饅頭を山ほど枕元に並べて、懲らしめてやろう…てんで、皆は饅頭を買いに
駆け出して行った。
やがて銘々が饅頭を手に戻ってくると、早速それを枕元に並べ、障子の向こうに隠れた。
いざ作戦決行!
寝ている男に向かって、「おい、起きてこっち見ろや!」
ざわつく様子に目を覚ました男。
『なんだい、気分が悪いんだから静かに!』と言いかけ、枕元にある饅頭の山に目をとめ…絶句。
が、次の瞬間『あ~っ、饅頭怖い』と、顔をしかめながらも、旨そうにパクつき始めた。
『いいアンコだねぇ。栗まんじゅうも怖い。ソバ饅頭も怖い。おお~怖い怖い』
冗談じゃない、なにが饅頭怖いだ。
一杯食わされ…いや、食われた。
悔しくて仕方ない若い衆、「てめえが本当に怖いのは一体何なんだい!」
『ここいらで、渋いお茶が一杯怖い…』
■沈没米駆逐艦 エモンズ号
連休中沖縄に出かけ、太平洋戦争で沈没したアメリカの戦艦を見てきた。
場所は、名護市から北30分の、周囲5キロの小さな島の沖合い、深さ50メートルの海底に横たわり、船名はエモンズ号。
船体は約100メートル、大き過ぎるうえ、太陽光線もわずかしか届かず、カメラには入りきらなかった。
【吉村外喜雄のなんだかんだ - 173】
~ことば遊び~ 「江戸小噺 どけち」
私たちの周りには、ケチなお方の一人や二人、必ずおられるようで…。
お陰で小噺の材料には苦労しません…てんで、三っつばかし、超どけちのお方を紹介します…。
■「かなづち」
旦那「おおい!定、定吉、いるかあ…、あ、ここの廊下に釘が出ていますよ、
着物でも引っ掛けて、かぎ裂きでもすると、えらい損をしちまうから、
あの、お隣へ行って、かなづちを借りてきなさい」
定吉『へーい、行って来ました』
旦那「どうした?」
定吉『貸さないんです』
旦那「どうして?」
定吉『お隣へまいりますと、鉄の釘打つのか? 竹の釘打つのか?
ってぇますから、鉄の釘打ちますってぇと、鉄と鉄がぶつかると、
かなづちが減るから、もったいなくて、貸せないってんです!』
旦那「なんてぇしみったれな事を言うんだ。釘一本打ったからって、
かなづちがどれくらい減るんだよ、しみったれだな…。
じゃ、しょうがない、うちのを出して使え…」
■「けちの秘訣」
男 「ええ、あなたは大変にけちで、お金を残しているということを
伺いましたが…。
私も、お金を残したいと思いまして、ぜひ、けちの秘訣を教えて
いただきたいのですが?」
けち『けちの秘訣ですか…わかりました。では、庭へ出てください。
庭にね、松ノ木がありますから、そこへはしごをかけて、登りなさい」
男 「枝にですか? はい、ぶら下がりました」
けち『では、はしごを片付けます』
男 「ああ、あぶない!」
けち『大丈夫、そうしたらね、ぶら下がったら、左手を離しなさい』
男 「左手をですか? はい、離しました」
けち『そうしたら、薬指も離しなさい』
男 「ええ! 薬指もですか? はい、離しました」
けち『中指も離しなさい』
男 「ええ! 中指も? はい、離しました」
けち『そうしたら、人差し指も離しなさい』
男 「ええ! 冗談じゃありませんよ、落っこっちゃいますよ、
人差し指だけは死んでも離せませんよ!」
けち「そうだろう、これだけは(人差し指と親指で輪を作って)、
離すんじゃあないよ!」
■「せんす」
八「熊公、なんだね、扇子一本あったら、何年使う?」
熊『自慢じゃありませんが、あたしは、扇子一本あったら、十年は使いますよ』
八「自慢しちゃあいけないよ、一本の扇子を十年なんて、そりゃ使い方が荒い、
乱暴だよ」
熊『乱暴だって? 一本の扇子を十年使えば、こりゃ十分だと思うけれども…。
じゃあ、八公は何年使うね!』
八「あたしは、自分の代では使いきれません。
あたしと同じように使えば、孫の代まで持たせますよ。
熊公は十年って、どうやって使うの?」
熊『ま、いろいろ考えたんだけどもね、これ、いっぺんに広げれば、
いっぺんに痛んじゃうから、まず、こっち半分広げて、これで五年
持たせるんだね。
で、こっちが痛んできたら、もう半分の方を広げて、これで五年持たせて、
しめて十年持たせようと思っているんですけど…。
八公は孫の代まで使わせるって、どうやるんだい…』
八「あたしは、熊みたいに、半分広げるなんて、しみったれた事はしませんよ。
あたしは、こう扇子をいっぱいに広げてね、アゴの下へ持ってくる…。
で、よく考えてみれば、これ、扇子を動かすから痛むんだから、
顔の方を動かす…」。
これじゃ、風もなにも来ゃあしません。
■「落語・長屋の花見」
この噺は大坂の「貧乏花見」を、明治の末に、三代目"蝶花楼馬楽"が改作したもので、当時の題名は「隅田の花見」であった。
その後、四代目"柳家小"さんが更に手を加え、今日の「長屋の花見」になった。
如何なる噺も、幾多の名人上手、はた又、奇人変人を経て、名作落語へと練りあげられたのである。
名だたる落語のほとんどが作者不明なところが、落語の良さなのです。
楽書館「あらすじで読む古典落語」
【吉村外喜雄のなんだかんだ - 169】
~ことば遊び~ 「落語・長屋の花見」
「桜咲く 桜の山の桜花 咲く桜あり 散る桜あり」
「一杯は人・酒を飲み 二杯は酒・酒を飲み 三杯は酒・人を飲む」
なんて申しまして、
♪「花見に行ったかい」
『行ってきた』
「どこだ」
『飛鳥山』
「どうだった」
『大変な人だぜ、おめえ…、娘っ子は唄いだす、お婆さんは踊りだすね、いやあ、面白かったなぁ~』
「おれも行ってみるか…、で、花はどうだったッ」
『花ッ…? さあ、咲いていたかなあ』
春爛漫、江戸っ子にとって、春の花見は心浮き立つ一大行事…。
お金に飽かして贅(ぜい)を尽くし、料亭おあつらえの花見弁当に、灘の生一本があれば言うことなし…なのだが、あいにくここは、
近所でも評判の貧乏長屋。
それでも花見に参加しようと、太っ腹の大家さんが、花見の酒と肴を用意した。
ところが出てきたのは、灘ならぬ宇治の生一本の"お茶け"。
重箱には、カマボコに見立てた大根の香々、卵焼きに見立てた沢庵がぎっしり。
酒、肴の運搬役は今月の長屋の月番さん。
大家さん、毛せんがわりのむしろを持たせ、長屋の衆を引き連れて、飛鳥山へ。
さて、花は満開、申し分なしなのだが、お茶に大根の香々、それに沢庵では、盛り上がろうにも盛り上がれない。
耐えかねた大家さんが、月番にお酒を注いでまわるよう命じる。が、中身はお茶け。
「おい、あんまり注ぐな。恨みでもあんのか」
なみなみ注がれて怒る者もあれば、「あたし下戸です」と言って拒否する者も。
「甘口、辛口ってのはあるけど、渋口だね、こりゃ」
続いて大家さんは『肴を食べなさい』と、これもまた月番に…。
しぶしぶ大根の香々をつまみ上げ、
「あたし歯が悪いんで、この頃はカマボコもよくきざまないと…」
「これはいいですね。胃の調子が悪いときには、カマボコおろしにして…」
「このカマボコは美味しいですが、やはり練馬の方のもんですか?」
「わたし、卵焼きは…尻尾(しっぽ)でないところを…」
と、長屋の衆は言いたい放題。
一同やけくそながらも、盛り上がってきたところで、再び大家さん、
『これだけいて一人も酔っていないね。月番さん、酔いなさい』
「では大家さん、つきましては…酔いました」
『やけに早いね』
などと言いながらも、大家さんは上機嫌。
「いやぁ、こりゃいい酒だ。いくら飲んでも頭に来ない」
花見も宴たけなわ。すると、長屋の一人が「大家さん!」と叫んだ。
「近々長屋にいいことがありますよ。"酒柱"が立ってますゥ…」
学習研究社「落語ギャラリー60」
■ミイラと古代エジプト展
先月東京へ出張した折、国立新美術館を見学したが、更にもう一ケ所、感動した所があった。
一昨年まで大英博物館で人気を博していた「ミイラと古代エジプトコレクション」が、初めて国外に持ち出され、日本で公開されたのです。
美しく彩色された木棺とミイラ、装飾品、ミイラマスクなど、130点あまり展示。
大英博物館秘蔵の、3千年前のエジプト王朝のコレクションの数々を、日本に居ながらにして見ることができるという、 又とない機会を得たのです。
古代エジプト人は、死後、肉体をミイラにすることで、魂が永遠に生きると信じていた。ミイラを作る過程と、 保存ために秘術を尽くした謎を解き明かしてくれると共に、3千数百年前栄誉栄華を極めた、王朝文化を垣間見た。
【吉村外喜雄のなんだかんだ - 165】
~ことば遊び~ 「落語・胴斬り」
「笑点」の司会でおなじみの、円楽師匠が引退表明した。
05年に脳梗塞で倒れ、その後復帰を目指してリハビリに努めたが、ろれつが回らず、「こんな状態で落語を語るのは情けない」と、
引退を決意したのです。
落語フアンにとっては寂しいかぎりです。
さて今日は、おかしみたっぷりの「胴斬り」を一席…
♪身分の違いもあるが、うっかり粗相でもすれば、無礼打ちにされても文句が言えない町人。剣の達人に斬られると、痛みを感じず、
気づかないことさえあるという。そこで、なんともユーモラスなのが「胴斬り」を紹介します。
♪脳天から唐竹割、左右対称に真二つにされたのに、腕前がいいので、斬られたほうは気づかない。
平気で鼻歌を歌いながら路地を曲がろうとして、左右がずれて離れてしまう…。
実にすごい斬りようがあったもんです。
ヘソの辺りで、横なぎに胴斬りにされた上半身と下半身が、別々に奉公に行った。ヘソから上は湯屋の番台に住み込み、ヘソから下は、
コンニャク屋に雇われ、桶の中で足踏みをして、コンニャク作りに励んでいる。
よそ見をしないので、仕事がはかどって好評だというから、なにが幸いするかわからない…。一方のヘソから上も、
珍しいもの見たさに客が押しかけて、なかなか繁盛している。
『おめえ、斬られちゃったんだってなあ、足のほうはどうだい?』
「あいつもね、遊んでいられねえって、コンニャク屋に奉公してるんだが、ここんとこしばらく会わねェんだよ。あっちへ行ったら、
様子見てもらいてェんだがなァ」
『いいとも、なんか言づてあるかい?』
「湯屋の番台で元気にやってるって、安心させておくんねェ。
ついちゃァ、ここんとこの陽気のせいか、のぼせてしょうがねえんだよ。膝ッ小僧の下の壷に、のぼせ除けのお灸をすえるよう、
頼んでみてくんねえか?」
『お灸は相方へすえなきゃ、効かないのかい。いいとも、行ってくるよ』
『お宅に、胴斬りになったヘソ下さんが、奉公に来てましょう?』
「はいはい、そこの三つ目の桶ですが、背ェが低いんで、覗かねえとわかりませんよ。いい職人でね、食うものも食わずに働いてます」
奉公人は、食べさせなければならないが、食べさせなくて済むとなると、店にとっては好都合。
友達だから、会わせてもらいたいと頼むと、どうぞごゆっくりと、愛想がいい。
『おう、いるかい』
「やあ、いらっしゃい」。覗き込むと確かにいる。
『威勢がいいねえ、鉢巻をして、…え? 鉢巻じゃねえ? ふんどしかよ…。
あのねえ、湯屋の番台のヘソ上さんに、伝言されてね。元気にやってるから、安心してくれって。それから、のぼせてしょうがないから、
ヘソ下さんの膝ッ小僧に灸をすえてもらいてえって、そう言ってたぜ…』
「わかりましたが、お帰りンなりましたら、膝ッ小僧に灸はすえるけど、あまり茶をがぶ飲みしねえようにと、 ヘソ上の野郎に言ってもらえませんか。ここんとこ、はばかりが近くて困ってるんですよ…」
■ことば遊び 「風が吹けば桶屋が儲かる」
『強風で土埃が目に入ると、目を悪くする人が増える。
目を悪くすると、角付けでもしようということになるから、三味線が売れる。
三味線の胴は猫皮だから、猫が減ってネズミが増える。
ネズミが増えれば、桶をかじって穴を開ける。すると桶屋が儲かる…』
この話、大嘘であることは、誰の目にも明らか。江戸庶民の駄洒落(ユーモア)である。狂言や落語をこよなく愛する江戸庶民。
"おかしみ"が伝わってくる。
「猫も杓子も」などの、洒落ッ気あふれる言葉文化の花が咲いた江戸時代。その遊び心は、今も脈々と生きている。
【吉村外喜雄のなんだかんだ - 161】
~ことば遊び~ 「落語・粗忽(そこつ)の使者」
少しおつむの弱い主人公や、そそっかしい八っあん、熊さんを題材に、笑いを誘うのが落語。時には、極端な言い回しをしたり、 徹底して歪曲した噺ネタで客を笑わす。そのネタ噺の一つが、「粗忽の使者」だろう。
♪大名、杉平柾目正(すぎだいら まさめのじょう)の家来に、地武太冶衛門という人がいた。これが度を越した粗忽者であった。
ある日使者の大役をおおせつかり、さっそく馬を曳(ひ)かせて飛び乗ったが、
驚いて、「別当! この馬には首がない!」
『後ろ前反対で、首は後ろについております』
「おお、粗忽な馬であるな、その首切って、こちらへ付けよ…」
万事がこんな調子だが、なんとか乗馬して、本郷の赤井御門守のお屋敷に到着した。用人の田中三太夫が出迎え、
挨拶を交わすとさっそく、
『して、お使者の御口上は?』
問われた冶衛門、「暫時お待ちくだされ、使者の口上は…」と言ったきり絶句し、自分の尻をつねり始めたのである。
いぶかしんだ三太夫に、『いかがなされた』と言われ、
使者の口上を失念したと白状した。
使者に参って口上を忘れては、武士の面目が立ち申さぬ。
拙者、この場を借りて一服いたす」
『では煙草盆を…』
「いや、そうではない、セ、切腹をいたす」
そんなことをされては迷惑である。なんとか思い出す工夫はないかと訊くと、「お力添えがあれば…」と打ち明けた。
治衛門は、幼少の頃から物忘れが激しく、そのたびに父にでん部をつねられた。「痛い!」と思うと、忘れたことを思い出すのが、 習わしになったと言うのだ。だから今もつねっているが、自分でやったのでは効果がない。
「ご貴殿、手前のでん部をつねりくれまいか」
快諾した三太夫に、「初めてお目にかかりながら、面目しだいもござらんが…」と、尻をまくって前屈みになった。
三太夫は老臣、力も弱く一向に効かない。
ついには音をあげ、当家に誰かふさわしいものを探してみようと言ったが、若者は笑い、年寄は苦い顔をするばかり。
この窮状を救わなければと名乗り出たのが、大工の留公である。
"閻魔(えんま)"と呼んでいる、ペンチの親玉のような釘抜きを使おうというのである。
職人であることが知れるといけないので、侍の身なりをこしらえ、三太夫の苗字田中をひっくり返して、中田。
留と太夫をくっつけて、中田留太夫と名乗らせた。
見られていては出来ないからと、三太夫を隣室に退出してもらった留公、いや、留太夫は、作業に取り掛かった。
『これが尻かい、かかとみたいになっちゃってんねェ。
さあ!いくぜ、おい、どうだ!』
「おお、効き申す。…が、もそっと手荒に…。うーん、…あッ、思い出してござる」
襖(ふすま)を開けた三太夫、『して、お使者の口上は…? 』
「聞かずに参った…」
■ことば遊び 小話「文鳥」
お城へ出入りの商人が、隣国中国の文鳥を手に入れました。全部で6羽。
大変珍しいので、お殿様に献上することになりました。ところがお殿様、とても縁起をかつぐお方。めでたい数でないと、お喜びになられません。
「まずいな。七・五・三のどれかでないと、まずい…」。いくら数えても、6羽しかいません。商人は思案の末、「ええ、ままよ!」と、 日本の文鳥を一羽まぜ、七羽にして殿様に献上しました。
「おお、これは珍しい」。殿様は大変ごきげんで、一羽一羽大変な可愛がりよう。
数週間後に呼び出され、「はて、中国の文鳥と申しながら、日本の文鳥が混じっておるぞ。どうしたことじゃ…」。商人は返事ができず、
震えておりました。
すると、日本の文鳥が小さな口を開けて申しました。
「お殿様、私は通訳にございます…」
【吉村外喜雄のなんだかんだ - 157】
~ことば遊び~
「落語・松竹梅/つづき」
毎年正月は、おめでたい噺を取り上げている。今年は「松竹梅」という、名前だけめでたい?落語のさわりを一席。今日は、 その続きです。
♪ …で、明日の結婚式に備えて、泊り込みで練習を始めた。
念には念を入れて…ってなわけで、とにかく3人は、何度も何度も繰り返し練習して…もう、寝言に出るほど練習した。
烏カァで夜が明けて…
「本日はお日柄もよく、皆様お集まりいただき、誠にありがとうございました」
当たり障りのない祝辞のほうは、松さんの力で、なんとか無事に終わりやして…
式次第もつつがなく、行なわれたまではいいんですがな…。
ところが梅三郎、ものすごい上がり症でしてな。これがただの上がり症じゃねェ…
さんざん練習したというのに、本番になると、パンとセリフがわかんなくなってしまいやして…。
どうしよう、どうしようと考えれば考えるほど、ドッポにはまるんですな…。
それでも、ご祝儀の時間は刻々と迫って来やすから、ますます錯乱状態に陥りやして…。
松「え~、最後にご祝儀を行います。なったなった蛇になった…当家の婿殿、
蛇になった」
竹「何蛇にな~られた?」
梅「大蛇にな~られた」
松太郎、耳打ちして、「おいおい…、そうじゃないでしょう…」
梅「あッ 間違えてたか…あ~あ~、間違えてた…もう一回やってくれ…」
松「では、もう一度…。なったなった蛇になった…当家の婿殿、蛇になった」
竹「何蛇にな~られた?」
梅「亡者にな~られた…?」
もう収拾がつきませんな…。これ以上やったらどんな悪いことになるか、ってェんで、松も竹吉も「…はい、ここでお開きで~す」 って、言わざるを得なくなりやして…。言うか言わないうちに、身支度を整えるのもそこそこに、そそくさと、2人は帰ってしまいやした。
こうして、最悪のところでお開きになってしまったんですが、式も終わっているのに、気づかない梅三郎。ブツブツと続けやす…。
「え? これで違うのか?…待てよ…なったなった蛇になった…当家の婿殿、蛇になった…だろ?…で、何蛇にな~られた?…
炊飯ジャーにな~られた…なんか違うな…」
最初のうちは、こんなのはまだ奥ゆかしかったのですが…。
「あれ? 変だな…なったなった蛇になった…当家の婿殿、蛇になった…
何蛇にな~られた?…カルト教の信者にな~られた…
あれ? これもおかしいなァ」
「あ、わかった! なったなった蛇になった…当家の婿殿、蛇になった…
何蛇にな~られた?…重傷患者にな~られた…?
これじゃ来られなくなった仲人と同じようなものだし…」
式が終わったというのに、独り言をブツブツ言ってやして、
こんなこと、式の最中に言ってたら、それこそ袋叩きに合いかねませんですな。
「なったなった蛇になった…当家の婿殿、蛇になった… 何蛇にな~られた?…
長者にな~られた…」
やっとのことで正解が出た頃には、あたりはもう真っ暗で…」
「え? 誰も聞いていないの?」と、そこへやって来た警備員さんが一言、
「あの…もう、式場、閉めたいんだけど…」
【吉村外喜雄のなんだかんだ - 155】
~ことば遊び~
「落語・松竹梅」
正月最初のメルマガは、「ガマの油売り」「おそろしく長い口上」「寿限無」など、落語ネタを題材にしてきました。
今年は「松竹梅」という、名前だけ?めでたい、落語のさわりを一席…。
♪長屋に、松太郎、竹吉、梅三郎なんてのがいたら、これはこれでめでてェんですが、彼らすべて器用でないのは、
しょうがねェところでして…
松さんが大家さんのところに、ある相談に行きやしてな…。
「大家さん…。あの、実はですね…。明日、うちの町内の自治会長さんとこの息子さんが結婚することになったんですがね…、
急に仲人夫婦の都合が悪くなりまして…それで突然、大役がうちらに回ってきましてね…。
大家さん、それで…、相談に乗っていただきたくて…」
『ほう、そうかい。松さん、それは大変だねェ』
「で、うちの長屋の竹吉、梅三郎も一緒に大役を仰せつかったんですけどね、この3人で何か出来ることはないかと、
話し合ったんですが…、今の今まで、あ~でもない、こ~でもないと、結論が出ないまんまでして…。
結婚式は明日なんで、いよいよ弱っちまって…。
で、大家さんは物を知ってるから、何かの足しになるだろうから、ご伝授いただいたらどうだろう…ってわけで、
あっしが代表で来たわけなんですが…」
『松さん、そうかい、それはありがたいねェ…。そういえば、あなた方は3人合わせるとちょうど"松竹梅"になって縁起がいい…。
じゃ、どうだろう、これは簡単だよ、そして縁起がいい…。
すぐに覚えられるよ。その面白いご祝儀を授けましょうか』
「すぐに覚えられる? そいつはありがたい…」
『これは、お開きの前にやっていただきたい…。いいご祝儀で、パッと盛り上がってお開きとなると、 あなた達の印象もグッと良くなるでしょう』
『まず松さん、あなたが、「え~、最後にご祝儀を行います」と言ってから、
「なったなった蛇(じゃ)になった…当家の婿殿、蛇になった」
って、 あなたが先導を切って言うんですよ! めでたい席の最後の最後に、
「蛇なつた」 だなんて、なんて嫌なことを…って、皆さんが思うでしょう?』
『で、次に竹さんが、 「何蛇(なにじゃ)にな~られた?」 って、すかさず聞くんです。 で、ここが一番大切なんですよ。
最後に梅さんが、
「長者にな~られた…」って 言えば、どうです?
皆さんは感心するでしょう。松さん達に大役を果たしてもらってよかった、今後もお願いしたい…って、信頼もつくってもんですよ』
「そうですか…? 早速、帰って練習します。大家さん、どうもありがとうございました」てんで…、明日の結婚式に備えて、
泊り込みで練習を始めた。
念には念を入れて… ってなわけで、とにかく3人は、何度も何度も繰り返し練習して…もう、寝言に 出るほど練習した…。
お後の噺は…12日金曜日につづく
■流行語大賞
2006年度流行語大賞は「イナバウアー」
荒川静香さんの、天女のような美しい滑りが、まぶたに焼き付いている。
トップ10に選ばれた流行語は、「品格」「えろかっこいい」「格差社会」「たらこ・たらこ・たらこ」「脳トレ」「ミクシィ」 「メタボリックシンドローム」
特に印象に残ったのは、日ハム・ヒルマン監督の「信じられな~い」と、早稲田実業・斉藤投手の「ハンカチ王子」でした。
【吉村外喜雄のなんだかんだ - 154】
~ことば遊び~
「江戸川柳」
毎年2月、応募作品の中から発表される、第一生命のサラリーマン川柳は、世相がみごとにおり込まれ、ユーモアに溢れ、面白い。
それにも増して面白いのが「江戸川柳」。親子・夫婦の間の人情、恋模様など、
ちょっと卑猥で滑稽で、日常生活を風刺しているのがいい。庶民の暮らしの泣き笑いが伝わってくる。
●よく知られているものに…
「雷を まねて腹かけ ヤッとさせ」 「大晦日 よく廻るのは 口ばかり」
「役人の 子はにぎにぎを よく覚え」 「弘法も 一度は筆で 恥をかき」
「清盛の 医者は裸で 脈をとり」
●お嫁さんを詠む
「形見分け 初めて嫁の 欲が知れ」 「叱らずに 隣の嫁を ほめておき」
「なりったけ 嫁小便を 細くする」 「屁をひって 嫁は雪隠 出にくがり」
昼寝をするとき、夫婦、昼間から並んで寝るのは、いやらしいと…
「夫とは 向きを違えて 昼寝する」
普段優しい姑が、時折嫁に見せる鋭い視線
「猫なでの 姑時々 目が光り」
●親子関係を詠んだものでは…
「寝かす子を あやして亭主 叱られる」 「母親は 息子の嘘を 足してやり」
「腹の立つ 晩真ん中へ 子を寝かし」 「子だくさん 州の字なりに寝る夫婦」
「父親に 似ぬを知ったは 母ばかり」
この子誰の子?そんな疑い、したくないよね!
「よく歩く 子にくたびれる 親の口」
わが家の孫、そっち行っちゃダメ! 走っちゃ危ない…くたびれること
●恋をした男女をよんだものに…
「気があれば 目も口ほどに物を言い」 「まず目と目 それから手と手 口と口」
「手がさわり 足がさわって 仲直り」 「その手代 その下女昼は もの言わず」
●江戸川柳、下ネタの妙。"クスッ"とくる面白さ。
「おかしさは 昼寝のへのこ動き出し」 「足を出す 息子は親の 手にあまり」
「寝てとけば 帯ほど長いものはなし」 「みんな留守 猫の交尾を よく見られ」
「大仏の へのこの寸は 書いてなし」
「つらいこと 目も歯もよくて いまひとつ」 「赤貝の 味わい蛸の 味がする」
■言葉あそび 「ことばの意味を問う」
今日は「猫も杓子も」 の語源をたどってみます。
日頃なにげなく使っている「猫も杓子も」、何ともおかしな言葉です。
外国人が日本語を学ぼうとするとき、何故そう言うのか知りたいと思うでしょう。
「だれもかれもみな」と言う意味の言葉ですが、この言葉のルーツは
「女子も若子も」である。"めこもじゃくしも"と呼ぶ。
「女も子供も…」という意味です。
江戸っ子のだじゃれ、遊び心が、「猫も杓子も」となったのです。
【吉村外喜雄のなんだかんだ - 150】
~ことば遊び~
「落語・六尺棒」
日本の総理大臣などが、西洋諸国を訪れて悩むことの一つに、場を和ませるとっさのジョークが言えないことがある。真面目で、
喜怒哀楽を表に出さない日本人を見て、お金儲けのことしか頭にない、エコノミックアニマルと、西欧人はさげすむのです。
事実は、日本人ほど多彩な笑いの文化を持った国はない。
落語、漫才、狂言、川柳など、多彩な笑いが庶民の中に根付いているのです。
落語で、馬鹿息子を題材にしたものが多いが、中でも「六尺棒」は面白い。
「親のすねかじる息子の歯の白さ」という川柳があるが、こういう息子には父親の意見も「馬の耳に念仏」で、
しばらく頭を下げていれば"こごと"は上を通り過ぎていくと、しぁしぁと聞き流してしまう…。
♪廓(くるわ)の女に引っかかって、三日も四日も家を空け、帰ると戸が閉まっているので、叩いて、「番頭、番頭…左兵衛、金蔵、
寅吉ッ…」
『ええ…、夜分遅く、表をドンドンお叩きになるのは、どなたですな?』
父親の白ばっくれた声にギクリとなり、
「あたくしですが…、ちょいと開けてください」
『商人(あきんど)の店は十時限り、お買物は明朝に願います。
はい、毎度ありがとう…』
「買物じゃない、あたしですよォ…」
あたしじゃわからないので、名前をはっきり言ってもらいたいと言われ、
息子の孝太郎だと告げたが、父親はとぼけて、
『ははぁ、孝太郎のお友達ですか…、手前どもにも孝太郎というせがれが
おりますが、商人の家に生まれながら、とんでもない遊び人でして、
親類協議のうえ勘当しましたから、そうお伝えを願います… 』
勘当という言葉にあわてて、明日からちゃんとすると謝ったが、
『明日からってのは、もう聞き飽きた、と、おことづけを願います』
どう言っても父親がとぼけ通すので、製造元はそっちじゃないか、
ものが良けりゃ自分のものにし、悪けりゃ捨てようってのは、
あまりにも勝手すぎると言ったために、父親が怒った。
『やかましい!黙ってりゃいい気になりやがって、ちったァ世間のせがれを
見習え。朝早くから起きて一日働き、夜んなりゃ親の肩を叩いたり、
腰をさすったり…。そばで見ていて涙が出らァ 』
勘当は解かない、跡は養子を取って継がせると、断固と言い切るので、
息子も頭にきた。
「自分の生まれた家を他人に取られるのは悔しいから、この家ィ火ィつけます…」
あわてた父親が六尺棒を片手に飛び出したが、息子の足にはかなわない。
見失って戻ると戸が閉まっている。叩きながら番頭の名を呼ぶと、
「表をドンドンお叩きになるのは、どなたでございましょう」
と、先に入っていた息子がからかう。
俺だと言っても、
「俺ではわかりません。商人の店は十時限り、お買物は明朝に願います…」
すっかり裏返しである。
名前を聞かれて、おまえの父親の幸右衛門だと答えると、
「ああ、右衛門のお友達ですか、手前どもにも右衛門という父親がありますが、
朝から晩まで働いて、金の勘定ばかりしています。親類相談のうえ、
あの右衛門は勘当…」
『親を勘当するやつがあるか!』
「やかましい!黙ってりゃいい気になりやがって、ちったァ世間の親を見習え。
風邪でも引いたとなると、小遣いやって女の所へ遊びに行けと言う。
そばで見ていて涙が出らァ」
『なにを云いやがる、父親の真似ばかりしやがって…。
そんなに真似がしたかったら、六尺棒持って、もう一編追いかけてこい!』
■ことば遊び イソップ物語 「井の中の蛙 大界(大海)を知らず…」
狐が井戸の底を覗きこみ、「蛙さん、可哀そうに、井戸の底から見える世界は、
丸く小さなお空だけ。それに引き換え僕なんか、春・夏・秋・冬、野山を駆け巡
り、小川で遊び、楽しいことだらけ…、君には想像できないような世界を沢山
知っているよ…」。
そんなやりとりから、「自分の狭い了見に囚われ、他に広い世界があることを
知らないで、得々と振舞っている様」を例えて、言うようになった…。
この狐の哀れみの言葉を耳にした蛙、何て返答しただろうか?
「井の中の蛙 大界を知らず」と哀れんだ狐さんに、蛙は「されど……」と、
胸を張って言い返した。
答えは、このメルマガの最後に…
【吉村外喜雄のなんだかんだ - 146】
~ことば遊び~
「落語・時そば」
町を流し歩くソバ屋を呼び止めた男が、客のくせに調子のいいことを並べて
ほめちぎる。
「おめえんとこの行灯、変わってるねェ~。的に矢が当たってるじゃねえか」
『へえ、手前どもの屋号は"当たり矢"と申します』
「当たり矢なんざうれしいねェ。おめえんとこの行灯見たら、呼び止めるからな」
『よろしくごひいきに。……へい、親方、お待ちどうさまでございます』
「おう、早いねえ…」
「ちょっと無駄話ししているうちに『親方、お待ちどうさま』はうれしいな。
こちとら江戸っ子だよ。催促してやっと持って来るなんてのは、
うまいものも、まずくなっちゃうぜ。いや、本当だよ。うれしいねェ」
こんな調子で、丸箸でなく、割箸を使っているのは清潔でいい。
ものは器で食わせるというが、いい丼を使っている。匂いがいい。
鰹節をおごってるな。出汁がきいてるぜ。しかも、ソバが細いのがうれしい。
なかには、うどんみたいに太いソバがあるが、あんなものは江戸っ子の食う
もんじゃないよ。腰があっていいね。
たいがい、まがいの竹輪麩(ちくわぶ)を使っているが、本物の竹輪で、
しかも厚く切ってある。夜鷹ソバにしちゃ出来すぎだ。
などとほめちぎって、「いくらだい」
『十六文ちょうだいします』
「銭は細かいんだ、手ェ出してくれ。いいかい? ほらいくよ。ひい、ふう、
みい、よ、いつ、む、なな、や、いま何時だい?」
『へえ、九つです』
「十、十一、十二…」と数えて、十六文払うと…、ぷいと行ってしまった。
これを見ていたのが、ちょっと抜けた男。ぺらぺら喋りすぎるし、ソバ屋を
持ち上げるので、食い逃げするのかと思ったら、銭を払って行ったので、
ますます気に入らない。
二人のやり取りをなぞっていたが、十六文と決まっているソバの値を、
わざわざ聞いたり、ていねいに勘定していたのを思い出した。
八文まで数えて「いま何刻だい?」 『へえ、九つです』
「十、十一、十二」と、一文かすめ取ったのに気づいた。
「あれじゃ、ソバ屋は生涯気がつかねえや。面白ぇな。おれもやってみよう…」
あいにく細かい銭を持っていないので、あくる晩、細かいのをそろえると、
待ちかねて飛び出した。
ところが、前夜のソバ屋とは雲泥の差で、もたもたして時間がかかるし、
割箸でなく丸箸を使っている。
丼は縁が欠けてノコギリのようで、口を切りそうになるありさま。
出汁は濃いし、ソバはうどんのように太くて、ねちゃねちゃと腰がない。
その上カンナで削ったように、薄い竹輪麩で情けなくなってしまう。
さて、金を払う段になって、
「銭、細かいんだ。ちょいと手ェ出してくれ。それいくよ…
ひい、ふう、みい、
よ、いつ、む、なな、や、いま何時だい?」
『へえ、四ツです』
「いつ、むう、なな、や……」
■「井の中の蛙 大界を知らず」の下の句…
「されど、
天の心(深さ)を知れり」
毎日飽きもせず、天空の一点を見上げているカエル。日々季節に合わせ姿を
変えていく天空…、そこに輝くお星さま…。何と奥が深く、素晴らしいことか…。
狐さんには、とても分からないだろう。だから、ちっとも寂しくなんかないし、
狐さんをうらやましいと思ったことはない。
狐の生き方は「広く浅く」。蛙は「一つことを、とことん深め・極める」人生。
■ことば遊び「変換ミス…その2」
パソコンや携帯メールの変漢ミス、本人は意外と気づかないものです。
2005年度・日本漢字能力検定協会が発表した「変換ミス年間賞」です。
「今年から 海外に住み始めました」と、メールしたつもりが…。
『今年から 貝が胃に棲み始めました』と、間違って送られた。
メールを貰った人、さぞや驚いたことでしょう。
・最近エントリーされた作品
「八日以後」が、『要介護』 「耳下腺炎」が、『時価千円』
「リスト表を送ります」が、『リスとヒョウを送ります』
「運転席側に置きっぱなし…」が、『運転席がワニ置きっぱなし…』
・私の作品
役人が職場で「職権乱用」が、『食券乱用』
【吉村外喜雄のなんだかんだ - 142】
~ことば遊び~
「落語・疝気(せんき)の虫」
落語の下ネタ、艶笑落語の面白さは、三遊亭歌奴(現在の円歌)が教えてくれた。
「山のあなあな…」で一躍有名になった、あの落語家です。
当時、歌奴はまだ真打。歌奴を含む芸人一座が、県内各地をどさ回りして歩いていた。私は、社命でその一座に加わり、一月余り、幔幕張りやゴザ敷きなどの、下働きをさせられた。
一日の出し物を終え、座員がくつろいでいる頃、歌奴はみんなを労おうと、艶笑小話を披露した。「お風呂の中でオナラをしたら、男のオナラ、元気よく飛び出してきたのはいいが、前にある邪魔なもの?に引っかかって……、女は…」、
みんな、お腹を抱えて笑いこけた。
寄席では、艶笑落語のたぐいのシモネタはやらない。年頃の娘さんがポッと頬を染める程度の噺に止める。ところが最近では、娘さんがケラケラ笑い、五十・六十のいい年をしたおじさんが頬をそめる…というのが一般的なようで…
♪江戸時代、冷えからくる腰や腹の痛みを、"疝気"と呼んだが、病気といえる病気ではないので、医者も手を焼き、効きもしない薬を与えたり、冷やさぬよう
にと、注意するくらいであった。
昔から、蕎麦(そば)は、体を冷やす食べ物で、「蕎麦は疝気に大毒」と言われ
ている。
見たこともない虫が現れたので、医者は首を傾けていたが、刺されたりしては
かなわないから、潰してしまおうとした。
すると、虫が命乞いをした…「なに、助けてくれ? お前はなんの虫だ?」
『へへへ、疝気の虫なんでこざんすよ…』
疝気の患者を治そうとしても、うまくいかず悩んでいた医者、いい機会だと、
「お前はどうして人の体に入って、人を苦しめるんだい?」
虫が言うには、人を苦しめる気はないが、蕎麦が好物なので、
人が食べたのを頂く。すると、威勢がよくなって運動せずにはいられなくなり、
筋を引っ張ったりするので、人が苦しむのだと言う。
いいことを聞いたと思った医者。さり気なく、嫌いな物を尋ねると、
"唐辛子"だという。『体ィついたら、そこが腐っちゃうんです』
「唐辛子と蕎麦が同時に入ってきたらどうするのだ? 」
と、さらに突っ込むと、恐いから、みんな別荘に逃げ込んでしまうらしい。
別荘とは"睾丸(ふぐり)の袋"だが、そこに非難するのである。
安全だと判断したら出てきて蕎麦を食べ、運動のため筋を引っ張るとのこと。
「人の体は、お前にとっては大家さんみたいなもんじゃないか…。
なぜ苦しめるのだ…」
意見していて、気がついたら夢であった。
そこへ往診の依頼があって、疝気で苦しんでいる患者がいるという。
患者の妻に問うと、お昼に蕎麦を少し食したとのこと。
「蕎麦!蕎麦はいけませんよ!」
治療の方法を教えるからと、奥さんに「盛りそばを注文するように」言うと、
けげんな顔になった。「それから、唐辛子水を丼に一杯こしらえて…」
蕎麦が届いた。食べるのは奥さんで、亭主は匂いをかぐだけ…。
別荘に潜んでいた疝気の虫が、匂いに気づき、次第に上がってきた。
口まで上ってみると、蕎麦は前の口に入っているので、
疝気の虫は、奥さんの口に飛び込んだ。たちまち暴れ出したので、
奥さんに唐辛子水を飲ませると、疝気の虫はパニックになって、
『大変だ、別荘へ…別荘、アレッ!別荘がない!』
ここで高座の古今亭志ん生、きょろきょろ見回し、困惑顔で立ち上がると、 しきりに首をひねりながら退場…。会場大爆笑
■ホールインワンしちゃいました!
今週の火曜日、金沢セントラルゴルフ、I Nの8番151ヤードで、ホールインワン
しました。
先週、大阪の川人さんの会社の研修に参加し、「運を呼び込むには…」と題し、
運にからむ話をしたばかり。それが呼び水になったのでしょうか?
思いがけない出来事に、ビックリ仰天!
幸運だったのは、キャディさん付のコンペだったこと…。普段はセルフで廻る、
プライベートゴルフがほとんど。キャディさんがいなければ、ホールインワンして
も、ゴルフ場は認定しない。一方、不運だったのは、コンペで、人数が多かった
こと…。ちなみに、ホールインワン賞は、キリンビール1年分でした。
ホールインワンなど、今の私には無縁と思っていた。だから、ゴルフ保険に入っ
ていない。幸運の女神は突然やってくる。人生に於いて、何事であれ、わずかな
チャンスを逃さないためには…、「幸運の前髪」を掴むには…、明確な目的意識を
もって日々努力を怠らず、心の準備をしておくことが大切と思うのです。
【吉村外喜雄のなんだかんだ - 138】
~ことば遊び~
「落語 桃太郎」
落語の演目には、親子のやりとりを扱ったものが少なくありません。
「桃太郎」もその一つ。子守歌代わりにおとぎ話を聞かせようとする父親と、
子の掛け合いが面白い。
とくに、桂三四の創作落語の語り口が好きで、たまらなく可笑しい…。
父「健一! 寝んかい」 子『なんで?』
父「なんでちゅうやつがあるかい、子どもが日が暮れたら寝んの、
当たり前やないかい」
子『寝むたないねん』
父「子どもがそない遅うまで起きてたら、恐~いお化けや幽霊がでてきよるぞ」
子『お化けや幽霊やて、今は火星まで探査に行く時代やで、おとうはん!
云うことが相変わらず可愛らしい…』
父「さあさあ、お父はんが面白い話を聞かしてやるさかい、
聞きながらねんねするんや。 "昔々…"」
子『何年ほど?』
父「何年ほど、て…、ずっと前から、ここは"昔々"ちゅうのやがな…」
子『なんぼ昔でも、年号というのがあるやろ』
父「年号もなにも無いくらいに昔や」
子『年号も無いとは、よっぽどの昔やな』
父「そうや、よっぽどの昔や」
父「"あるところに…"」
子『どこや?』
父「どこでもええやないかい。親が"あるところ"ちゅうてんねや、
あるところやなあと、思うとかんかい!」
子『頼りない話しやなあ、そんなことでは、現実感も何もあらへんで』
父「国の名ァも無いくらい昔や…」
子『国の名ァ無いんの? そら、縄文時代やな?』
父「じょ…、知らん知らん、とにかくあるところに…お爺さんとお婆さんが
住んでいたんや」
子『お爺さんの名前は?』
父「名前もないッ。それくらい昔や」
子『歳は?』
父「どつくで!歳も無い。もうええかげんにせェよ、おまえなァ、そないに次々と
ひっかかってたら…、ファ~… 寝る間もあらへんやないかい…」
何とか、桃太郎の話を子どもに聞かせているうちに…
子『これ、お父うはん…。ああ…寝てしもたがな。今どきの親は罪がないわい』
■桃太郎の話 [その二]
近ごろは生意気な子どもが増えておりまして、うかうかしていると、
大人でもやり込められてしまいまして…
子「お父っつぁん、桃太郎知ってるかい?」
父『知らいでかいな…』
子「じゃ、こんなの知ってるかい。昔々、お爺さんは川へ洗濯に…」
親『へえ、じゃ昔のおとぎ話と逆やないか…、お爺さんは川へ洗濯なら、
お婆さんは山へ芝刈りですか…』
子「そうじゃないんだ、お婆さんも川へ洗濯に行って、二人でじゃぶじゃぶ、
じゃぶじゃぶ、洗ってたんだ…」
親『へえへえ、それから…』
子「これでお終い」
親『お終いってね、せがれ、小噺ってのは落ちが肝心なんだよ、
その噺じゃ、落ちがないじゃありませんか…』
子「落ちないから、洗ってんだい!」
■ことば遊び「無理問答」
「○○とはこれいかに。△△と言うがごとし」 といった題で、
笑点の「大喜利」のネタにもよく使われます。
「一羽でも ニワトリとはこれいかに」
「一羽でも 千鳥というがごとし」 というふうに、言葉遊びをする。
「赤い花でも 葵(青い)とはこれいかに」
「見るものでも 菊(聞く)というがごとし」
「朝届いても 郵便(夕便)とはこれいかに」
「走って配っても 配達(這い立つ)というがごとし」
「一度打っても 碁(五)とはこれいかに」
「一篇でも 詩(四)というがごとし」
「何個あっても 荷(二)とはこれいかに」
「一回でも お産(三)というがごとし」
「一枚でもせんべいとはこれいかに」
「一つでも饅頭というがごとし」
【吉村外喜雄のなんだかんだ - 133】
~ことば遊び~
「なぞかけユーモア携帯用語」
携帯メールが若者の間でひんぱんに交わされるようになって、打ち込む字数が
極端に少ない「携帯用語」が氾濫している。それが若者文化になろうとしている。
「ケショり過ぎてパンダ。しかもプリン」。何のことやら、さっぱり解らない。
翻訳?すると、「化粧をしすぎて目の周りが真っ黒。しかも、染めていない
髪の毛が伸びて、みっともない(黄色いプリンの、底の茶色の部分)」
これって、"なぞかけユーモア"そのものじゃない…!
携帯が普及する以前、十年ほど前に「チョベリバ」が流行った。
これは「最悪」という意味に使われ、"超ベリーバッド"の略です。
「いけめん → かっこいい男」 「うざい → うっとうしい」
この二つはわかる。
「オケる → カラオケをする」 「グロい → グロテスク」
となるともう解らない。
「お持ち帰り → 合コンの後、男性が知り合った女性を連れ帰ること」
逆の場合もある。これはもうユーモア大賞ものです。
「ジモ → 地元」 「写メ → 写真付きメール」 「ナビる → 道案内する」
「ひじき → マスカラを塗りすぎたまつげ」 「ぶっち → 約束を破ること」
「オール → オールナイト。夜通し遊ぶ」 「イミプー → 意味不明」
文章にしてみたら、「いけめんとオケの後、お持ち帰りでオール」となった。
これ、通用するかな? ダメ…? 日本語に翻訳?すると、
「かっこいい男の子たちとカラオケを楽しんだ後、そのうちの一人をデートに
誘って、夜通し遊んだ」となりました…。
■言葉あそび 「ことばの意味を問う」
「語源」を探って、「へェ~」と納得するのも、ことば遊びの一つです。
今日は「ゴキブリ」の語源をたどってみます。
人間がこの世に生まれてくる遥か以前から生息し、現在もその姿を変えていな
いゴキブリ。これほど嫌われる動物も稀である。そんな「ゴキブリ」も、その語源
となると面白い。
「御器かぶり」が語源。「御器かぶり」が「ゴキブリ」と呼ばれるようになった。
「御器」とは食器のこと、「かぶり」とは、物を"かじる"の意味。
ゴキブリは"食器をかじる"の意味なのです。
【吉村外喜雄のなんだかんだ - 129】
~ことば遊び~
「社名の由来」
社名の由来を知るのも、意外と楽しいものです。
■キャノン
キャノンの社名は観音様から取ったという…
。前身「精機光学研究所」の
創立者が観音様を信仰し、試作したカメラを「カンノン」と名づけたことに
始まる。
火災をあしらった千手観音の像を、会社のマークにしたこともあるという。
「キャノン」が商標登録されたのは昭和10年。
観音様⇒Kwanon⇒CANON
ギリシャ語の「カノン(規範)」の意味も重ねている。
■ミノルタ
ミノルタの社名は、前身
「田嶋光学機器」の創業者・田嶋一雄の英語読みから
(M)achinery and (IN)strumente (O)ptica(L) by (TA)
shima
「実る田」のカナ表記の意味も…
■SONY
この命名は、皆さんもよくご存知です。
ソニーは、Sonus(音)とSonny(坊や)の合成語
■ブリジストン
ブリジストンは、創業者・
石橋正三郎さんの名前を英語読みしたもの。
ブリッジ(橋)ストーン(石)
■ノエビア
社名からか? よく
「外国の化粧品メーカー?」と尋ねられる。
現社長"大倉 昊"が、1964年航空機部品及びヨーロッパ雑貨の輸入商社
「J.OKURA&Co」を創業。1978年ノエビアに社名変更。
ノエビアは、スペイン語の「ノビオ(男の子)」と「ノビア(女の子)」の合成語で、
「恋人達」の意味。発想が、どこのネーミングより素敵です…
■グリコ
柿の煮汁から発見された「グリコーゲン」から…。
■キッコーマン
亀甲万=亀は万年から
■サントリー
日の出ラベル「サン」に、創業者・鳥井伸治郎の名前を合体
■パイロット万年筆
セーラー万年筆の「水夫」
に対抗して、パイロット「水先案内人」と命名
■シチズン
世界の市民(CITIZEN)に、
よい製品とサービスを提供したいというのが由来
■ヤンマー
創業者オーナーである山岡氏は、
学生の頃「ヤンマー」というあだ名だった。
■「ケチ」と「倹約」は混同されやすい
必要以上に金銭や品物を惜しむことを、「ケチ」という。
無駄使いをせず、お金を生かして、大切に使うことを「倹約」という。
昔、私の父親、同じ町内の商店主とちょくちょく、喫茶店でお茶を飲んだ。
ところが、ただの一度も連れは「今日は、私が…」と言って、財布を出した
ことがない。レジで払うのはいつも父。連れは「ごっつォさん」と言うだけで、
お金を払ったことがないという。
「あんなドケチな男はいない…」と、父が愚痴っていたのを思い出す。
このような人は心が貧しい…? だから誰も付き合おうとしない。
人間関係も乏しくなる。結果、世間にうとくなり、ご縁も遠ざかり、
運にも見放され、お金が回ってこなくなる…。
いくらケチって、財布の紐を堅くしても、倹約にはならない!
「風が吹けば、桶屋が儲かる」。ならば「ドケチ男は、お金が貯まらない」
【吉村外喜雄のなんだかんだ - 125】
~ことば遊び~
「落語 しわい屋」
今日は、古典落語の名作、どケチ噺「しわい屋」の一コマ。
♪「しわい屋は 七十五日 早く死ぬ…」、なんてェ川柳がございますが、
居るんですねェ、大変ケチなお方が…。
あるけちな男、うなぎ屋の隣へ引っ越してまいりますと、毎日毎日、
うなぎを焼く匂いを嗅ぎまして、「クンクン、ああ~いい匂いだ」なんてんで、
この匂いをおかずに、ご飯を食べておりますと、月末になりまして、
うなぎ屋の主人が、隣に住んでいる男に勘定書を付き付けた…。
「毎日においをかがせてやっているんだから、さあ代金を払ってもらおうか」
『えエッ、勘定を取りに来たって…、あたしは匂いを嗅いでいるだけだよ、
なんだい、この勘定書は…』
なんてんで、勘定書きを見ますと、「うなぎの嗅ぎ代、六百文」とあります。
隣の男、突然の無理難題に慌てず騒がず、懐から銭を取り出して、
手の中で、ジャラジャラ音を立てました。
「ほれ、においのかぎ賃だ。この銭の音を受け取って、とっとと帰りやがれ!」
翌日往来で薪を一本見つけまして、手を出して拾うのが面倒ってんで、
この…薪をけっとばしまして、ポンスコ、ポンスコ、自分のうちの前までまいり
ましたので、あとひとけり、ポーンとけとばしたら、見当が外れまして、
隣のうなぎ屋のガラス戸にぶつかり、ガラスが二枚ほど割れまして…。
それを見ていたうなぎ屋の主人、「あれ、あの薪一本のために、
ガラスを二枚…」、そのまま「う~ん」なんて、目を回してしまいまして…。
近所の人が驚いて、水を飲ませたり、薬を飲ませたりしましたが、
なかなか息を吹き返しません。するとそこへ、倅が帰ってまいりまして…。
倅の方は、わりかしと落ち着いているんですなァ…。
どうするのかと思って見ていますと、台所へまいりまして、口に水を含みます
と、おとっつぁんの顔めがけて、「ぷっぷっ~っ」と、水をかけまして…。
倅「おとっつぁん、しっかりおし、今の薬はただだよ!」つたら、
「う~ん」と目をさました。
ある日、うなぎ屋が親子で町を歩いておりましたら、
親父の方が足を滑らせまして、川へ落ちてしまいました。
泳げませんので、溺れております。
倅の方は助けたいんですが、これも泳ぎを知りません。通りすがりの人に、
倅「すいません、親父があすこで溺れているんですけど、助けてくれませんか」
男「はあ…、助けないことはありませんけど、助けたらいくらくれます?」
倅「ええ!お金取るんですか…、じゃ二百文だしますよ」
男「たった二百文ですか、三百文だしなさいよ」
倅「いや、いま親父の相場は安いんだ、二百文でお願いしますよ」
男「親父の相場なんて知るか! 三百文出しなよ!」ってぇと、
親父が川の中から、
「倅、二百文で頑張れ、三百出すなら、もぐっちまう…」
香林坊東急109の向かいに、"菊一"という老舗のおでん屋がある。
片町にハンドバック&アクセサリーの店を出していた、20代の頃、ちょく
ちょく暖簾をくぐった、思い出の店です…。
■言葉遊び 「字謎あそび」
その店の欄間に色紙が飾られていて、「春夏冬二升五合」とある。
このまま読んでも意味が通じない。トンチを効かさなければ読めません。
まず「春夏冬」、これには秋が抜けている。「秋がない」から「商い」と読みます。
「二升」は、「升+升」ですから「ますます」と読む。
「五合」は、一升の半分ですから「半升」、すなわち「繁盛」と読む。
これらを合わせて、「商い益々繁盛」になる。
・では、「一斗二升五合」は、どう読むのでしょうか?
一斗は五升の倍なので「五升倍」、つまり「ご商売」と読む。
「ご商売益々繁盛」というわけです。
【吉村外喜雄のなんだかんだ - 121】
~ことば遊び~
「勘違い」
前回の下ネタ艶笑落語は"勘違い"。そこで、今回も勘違いの続きを…
■「聞き違い・勘違い」
パソコンもファックスもなかった昔、新聞記者が急ぎの原稿を電話で送った。
記者の間で大笑いして、後々まで語り草になったという、聞き違い・勘違いの
傑作があります。
読売新聞奈良支局から原稿が送られてきた。
読むと、
「宮様が東大寺で大カメをご覧になった」とある。
東大寺に大亀がいるとは、本社の誰も聞いたことがない。
原稿を送ってきた支局に、確認のため問い合わせた…。
「モシモシ、大きな亀でいいですか?」 『はい、
大きな鐘です』
「ツル、
カメの亀ですね!」 『はい、釣り鐘の鐘です』
「確認ですが、動物の亀ですね!」 『はい、
大仏の鐘です』
●思い込みはこわい。ホテルの「スイートルーム」が、
新婚さんが泊まるという
連想から、「SWEET(甘い)」と思い込んでいる人が多い。実際はそうではな
く、「SUITE(次の間付き)」なんだそうです。
●手近に置いて愛用するから、愛玩物という意味で「ペットボトル」
と言うよう
になったのかと思っていたら、何と、難しい英語三語の頭文字から取った
「P.E.T」なのだそうです。
●もう一つ、私達が普段着ている「Yシャツ」。
その語源、えりがYの字になっているからと思っていたら、そうではなく、
「ホワイトシャツ」と言うのを聞き違えて、Yシャツと言うようになったのです。
■「変換ミス」
パソコンや携帯電話の変漢ミスは、しょっちゅう起きる。
日本漢字能力検定協会が発表した「2005年度・変換ミス年間賞」
「今年から 海外に住み始めました」と、メールしたはずが、
『今年から 貝が胃に棲み始めました』と、間違って送られた。
これは、念願の海外移住を果たした女性が、友人に送ったメールです。
読んだ友人は、「彼女の胃は大丈夫かしら…」と、心配したそうです。
・その他のエントリー作品
「地区陸上大会」が、『チクリ苦情、退会』
「規制中で渋滞だ」が、『寄生虫で重体だ』
「正解はお金です」が、『政界はお金です』
「五百円でおやつ買わないと…」が、『五百円で親使わないと』
「言わなくったっていいじゃん」が、『岩魚食ったっていいじゃん』
「深くお詫び申し上げます」が、『不覚お詫び申し上げます」
「今度のイブ、空いています」が、『今度のイブ、相手います』
「経済波及効果」が、『経済は急降下』
私の若い頃、悪さをして、喜んでいる人がいたものです…。
金沢では、女性を隠語で「○○○」と言いますが、全国にはいろんな方言・
呼び方があるようで、関西では、この金沢言葉を知る人は少ない。
その昔、会社勤めをしていた頃、慰安旅行で白浜へ行った。
その時、悪さをする社員がいて、
「"さようなら"のことを、金沢では"○○○"と言うがや」と、ガイドさんに教えた
んです。
最後のお別れのとき、ガイドさんが、バスから降りてくるお客様一人ひとりに
手を振りながら、「○○○、○○○」と言って、頭を下げた。
してやったりと、男性社員はクスクス笑い。
ガイドさん気づいて、「何、これ!?」って、慌てて言うのを止めた…。
【吉村外喜雄のなんだかんだ - 116】
~ことば遊び~
「落語・クイ違い」
今日は息抜きに、久方ぶりの落語の下ネタ話。
「酒を飲んで上がるものは血圧。ところで、飲めば下がるものナーニ」と、
なぞなぞ? 飲めば下がるものとは、言わずと知れた酒席の話題。
飲むにつれ、出るとはなしに、アッチの話が飛び出してくる。
このたぐいの下ネタ話を、落語では「艶笑落語」と称している。
寄席では聞けない、おなじみさんだけに語って聞かせる小噺です。
♪えー、落語家の仲間にも、いろいろと、この…、隠語がございます。
女のことを「タレ」と申しますナ。芸者を「シャダレ」なんて言ってみたり、
年増(としま)の女を「マダレ」と言ったりします。
おばアさんを「バーダレ」なんてェのは、ちょっと、申し訳ない言い方ですが…。
反対に、このォ~、男の持っている道具のことを、「ロセン」と申します。
舟を動かすのに、櫓を押す、あの櫓をひっかけてささえるところが、
舟からこう、グッと突き出しております…。
あれを櫓栓、櫓の栓というんだそうで、船頭仲間じゃ、別の名前で「櫓マラ」
なんて、言うそうですナ…。
あたしどもの仲間に、ちょいと小粋な顔だちの男がおりまして…、
若いころから女の子に人気があったんですが、
そいつが仲間と日暮れ方、寄席の裏かなんかで集まっておりましたが…、
男「おう、俺は、ちょいと、今日はこれで帰らしてもらうぜ…」
立ち上がったもんですから、悪いやつらばかりで、さっそくヤイヤイ言い出します。
甲「おうおう、まだ、宵の口だぜ。ええ若いもんが、こんなに早く家へひっこ
もると、ロセンが夜泣きするぜ、エ!」
乙「夜中に、ひとりで淋しく、ロセンをなぜたり、サスったりしてるなァ、
ほんとにヨ、みっともいいもんじゃねえぜ」。
ワァワァ言って送り出したあとで、そばに落語ファンの、いいとこのお嬢さん
がひとり…おりましたんですがな…。
娘「あのォ~、ロセンってなンですか?」
いや、モノがモノだけに、みんなギョッとしたんですが…、
中で気ィきかせたヤツが、
『 あア、あのネ、ロセンてのは、犬のことなんですよ…』
娘「アラ、犬ですか」
『ええ、今、帰ったあいつはね、うちに、犬を一匹かわいがっていましてネ、
だからまァ、あァ言ってからかったんです、ええ…』
ゴマかしちゃったんですが…。
ところが、二、三日して、そのお嬢さんが、喫茶店でデートをしたんですナ。
いろいろと話題がはずんでいるうち…、
「ねえ、あなたのロセン、一度見せてくださらない?」
『えーッ、ぼ、ぼくのロッ、ロセンを??』
「ええ、見たいわァ! きっと、かわいらしいんでしょうねえ、そのロセン…」
『イッ、イヤ、カ、かわいいってもんじゃないんですけども…、
あンた、そんなモノ見たいんですか?』
「ええ、とっても! あたし、ロセン、だァい好き!」
『あ、あ、あ、あの…そ、そんなことを言っていいんですか?』
「どうして? あたし、毎晩、ロセンを抱いて寝るくらいなのヨ!」
『ロ、ロセンを抱いて…? そ、そんなバカな、ま、まさか、そんな…』
「ほんとよ、あなた、知らないの? 私だってロセンを持ってるのよ!」
『ぎやァー…』ってんで、野郎は逃げ出しちゃったてんですが…、
まァ、ひどいことをしたもんでございます。
■言葉遊び 「早口ことば」の続きです。
子ども達と上手に言えるようになるまで、大きな声で、何度も繰り返す…。
結構楽しいものです。
「新進シャンソン歌手総出演新春シャンソンショー」
「高架橋橋脚」(コウカハシ・キョウキャク)
「肉挽く肉挽き機に肉詰まり ひっかかった肉引き抜くのに
引き抜きにくい 肉挽き機で肉を引く」
「この釘はひきぬきにくい釘だ」 「買った肩たたき機高かった」
「長州しょっちゅう焼酎」 「コックのコップ」×3回 「僕のボブ」×5回
「服作る夫婦 靴作る夫婦 古服売る夫婦 古靴売る夫婦」
「規格価格か駆引き価格か」 「絵扇絵団扇」(エオウギ・エウチワ)
【吉村外喜雄のなんだかんだ - 112】
~ことば遊び~
「落語・酒の粕」
新年会など、お酒が美味しい季節。お酒の席での取り返しのつかない失敗…
誰にも一つや二つ、苦い思い出があります。「後悔先に立たず」である。
落語や小噺には、そんなお酒のしくじりを題材にしたものが多い。
そこで都々逸から一首。
♪「論語孟子を読んではみたが 酒を呑むなと書いてない」
■落語
「酒の粕」
♪
「お酒呑む人 花ならつぼみ 今日もさけさけ 明日もさけ」なんてェます。
お酒呑みにも、いろいろ上戸がございます。
"笑い上戸"なんかは、一座が陽気になります。
ほかに、"怒り上戸"に"泣き上戸"なんて、いろいろですな…。
おでん屋などで多いのが"鶏上戸"、「おっとととととととと、っくぴ、けっこう」。
罪のないのが、からっきしお酒の弱い、私(吉村)のような下戸。
酔っ払うと、たわいなく寝ちまうんで"寝上戸"。面白くもなんともありません。
熊「おい、与太郎、なに赤い顔して、ふらふら歩いてやんでェ」
与太郎『ああ、あにぃかい、あたいね、今、大家さんとこの大掃除手伝ったら、
こ~んなに大きな"酒の粕"二つも、もらって、
それ、焼いて食べたら、すっかりいい心持ちになっちゃって…』
熊「おい、よせやい、いい若いもんが、酒の粕食らったなんて、みっともねェ
や。そういう時はな、嘘でもいいから、酒呑んだって言ったほうが、
威勢がいいじゃねぇかィ」
与太郎『ああ、そうか、じゃ、今度からそう言うよ…』
『あ、向こうから、八のあにィが来たよ、八あにぃ!』
八「なんでェ」
与太郎『あのさ、あたいの顔、おかしいでしょう』
八「うめェ事言うなぁ、俺は前から思ってたんだよ、この町内で、
おめェくらいおかしな顔したやつはいねえってな!」
与太郎『そうじゃないよ、あのさ、あたいの顔、赤いでしょう…』
八「そういえば赤いな」
「なんだ、怒ってるエビのしっぽでも食って、腹でも下 したか…」
与太郎『そうじゃあないよ、あたいね、お酒呑んじゃったの!』
八「なんだって、昼間っから豪勢な野郎だな、どのくらい呑んだんだ?」
与太郎『あのね、このくらいの塊、二つ』
八「この野郎、酒の粕、食らったな!」
与太郎『あれェ、見てたァ…』
八「見てたァ、じゃねェや、どのくらい呑んだって聞かれて、このくらいの塊
二つってェば、酒の粕食らったってのが、すぐわかっちまうじゃあねェか。
そういう時はな、嘘でもいいから、このくらいの茶碗でもって、
二杯キューっと呑んだってみろ! その方が、威勢がいいじゃあねェか…」
与太郎『ああ、そうか、じゃ、今度からそう言うよ…』
『じゃ今度、誰の所へ行こうかな』
『あッそうだ、おばさんのところへ行ってみよう。おばさ~ん…』
おば「あら、与太さん、どうかしたのかい」
与太郎『あたいね、お酒呑んじゃったの!』
おば「まあ、ついこの間まで、子供だ、子供だと思っていたら、
お酒なんか呑むようになったんだねェ…、どのくらい呑んだんだい」
与太郎『このくらいの茶碗で、二杯、キューッと!』
おば「まあ~、ずいぶん呑むんだねェ、
だけど与太さん、呑むな、じゃないけど、冷やは毒だよ!」
与太郎『ううん…、焼いて食べたよ』
あけましておめでとうございます
私が生まれ育った香林坊。東急ホテルと109が建つ前は、松竹座、スメル館など
4館の映画館が並び、お正月は沢山の人でにぎわった。ストリップ劇場、立花座
横の急な坂を下りた右奥にも、東映・日活など、4館の映画館が並んでいた。
映画館が建つ前は「香林坊大神宮」でした。香林坊交差点に面して大きな鳥居が
あって、境内には大きな銀杏の木があった。毎年春と秋にお祭りがあって、祭礼
の前日、商店街の子ども達に混じって、店の軒先にしめ縄を張って歩いた。
春と秋のお祭り、そして初詣には、大神宮・尾山神社・石浦神社の境内に、沢山の
露店が並んだ。何の娯楽も無かった時代。露店を一軒一軒見て歩くのが何よりの
楽しみだった。
境内には見世物小屋が立った。"ろくろっ首"や"人魚"、"蛇女"などを出し物にし
た呼び込みは、祭りを盛り上げた。
また、バナナの叩き売りや、ガマの油売りなどの大道芸人の周りは、人だかりで
一杯。人垣をかき分けて前にしゃがみ込み、飽きもせずに見ていたものです。
【吉村外喜雄のなんだかんだ - 107】
~ことば遊び~
「ご存知 ガマの油売りの口上」
正月のBS2は、映画「男はつらいよ・寅次郎」特集を放映していた。ふーてん
の寅さんといえば大道商人。その口上では「バナナの叩き売り」「ガマの油売り」
が有名である。そのガマの油の口上、知名度が高い割には知られていない。
全部だと長過ぎるので、よく知られているさわりの部分を紹介します。
♪ さァ~さお立会い、御用とお急ぎでない方は、ゆっくり見ておいで!
-- 途中略--
…… だがしかしお立ち合い! ほうり銭や投げ銭はおよしなさい。
手前大道に未熟な渡世をいたすといえど、ほうり銭投げ銭は貰わぬ。
では何を稼業にいたすというに、手前持ちいだしたるは、これにある、
万金膏四六のガマの油だ。
そういうガマは、俺の家の縁の下や、流しの下にもいるというが、
それは俗にいう、おたま蛙、ひき蛙といって、薬効の効能の足しにはならん!
手前、持ちいだしたるは四六のガマ。四六、五六はどこでわかる。
前足の指が四本に、あと足の指が六本、これを名づけて四六のガマ。
このガマが棲めるところは、これよりはるゥ~か北にあたる、
筑波山のふもとにて、車前(おんばこ)という露草を食らう。
このガマの獲れるのは、五月に八月に十月。
これを名づけて五十八(ごはっそう)は四六のガマだ!
お立会い! 山中深く分けいって捕まえましたる、このガマ。
油を獲るには、四方に鏡を立て、下に鏡を敷き、その中にガマを追い込む。
ガマは己の姿が鏡に写るのを見て、ウウッ!おのれと驚き、
たらァりたらりと油汗を流す。
これを下の金網にすき取り、柳の小枝をもって三・七、二十一日の間、
とろォ~り、とろりと煮詰めたるが、この万金膏ガマの油。
赤いは、辰砂椰子油(しんしゃやしゆ)の、てれめんてえかにまんてえか、
金創には切り傷、効能は出痔・いぼ痔・はしり痔、ひびにあかぎれ、
しもやけの妙薬。そのほか腫れ物一切に効く…。
ま~だある。大の男が七転八倒する、虫歯の痛みもピタリと止まる。
いつもは一と貝で百文だが、今日は広めのため小貝を添え、二貝で百文だ!
いや、いや、ちょっと待て! ガマの油の効能はそればかりかというと、
まぁ~だある。刃物の切れ味を止めて見せようか…。
手前持ちいだしたるは、鈍刀たりといえども、先が斬れて元が斬れぬ、
なかばが斬れぬという、そんな代物ではない。
ご覧の通り、抜けば玉散る氷の刃(やいば)、目の前にて白紙を一枚切って
お目にかける。さッ!一枚の紙が二枚に切れる。二枚が四枚、四枚が八枚、
八枚が十六枚、十六枚が三十と二枚! 春は四月落花の形、比良の暮雪は、
ふうッと散らせば、雪降りの形だ、お立合い!
かほどに切れる業物(わざもの)でも、ひとたびガマの油を塗るときは、
たちまちなまくら、白紙一枚容易に斬れぬ。さ! この通り叩いても斬れぬ。
引いても斬れない。抜き取るときはどうかというと、鉄の一寸板もまっ二つ。
さわったばかりで、あッ痛! このくらいに斬れる。
だがお立合い、こんな傷はなんの造作もない。
ガマの油を一つけ、付けるときは、痛みが去って、血がぴたりと止まる。
いつもなら…一貝が百文だが、本日は出ばってのご披露、
小貝を添えて、二貝でたったの百文、さァ買った!買った!
なんとお立合い…… --以下略--
※今は亡きふ~てんの寅さん。あの人懐こい親しみのある顔でタンカを切り、
口上を述べている姿が浮かんでくる…。
■言葉遊び。創作「早口ことば」
「金沢金大機械科今学期学科課目各教官協議の結果下記の
如く確定。化学幾何学機械学国語語学古文国家学絵画卒論」
ちょっと長すぎたかな…
「ふかくさ ふかくさ ふかくさ すさくた ふたすさ ふかすか
ふかすふか すかすかくさ」
これ、スラスラと言えて、スラスラと意味がわかったら、あなたは変人。
こんなもの読めっこありません。意味だってチンプンカンプン。
でも、デタラメを並べたわけではない。ちゃんとした意味のある言葉なのです。
【吉村外喜雄のなんだかんだ - 104】
~ことば遊び~
「流行語大賞」
昨日、05年流行語大賞が発表された。パソコンのディスククリーンアップで、
ファイルデーターを圧縮するように、古い記憶がどんどん圧縮され、人生が
圧縮され、やたら人生が短く感じられるようになる。
そこで毎年、我が家の十大ニュースと流行語大賞を重ね合わせて、ファイル
しておくのはいかがでしょう。その時どきの世相が思い起こされ、貴重な思い
出コレクションになりそう…。
■2005年(平成17年)
≪大 賞≫
「小泉劇場」
と、ライブドア堀江貴文「想定内・想定外」
が選ばれた。
≪ベスト10入り≫
・「クールビズ」 ・「刺客」 ・「ブログ」 ・「フオーー!」 ・「富裕層」
・「ちょいモテオヤジ」 ・ロッテ優勝「ボビーマジック」 ・「萌え~」
■2004年(平成16年)
・アテネオリンピック水泳金メダリスト、北島康介の「チョー気持ちいい」
≪ベスト10に選ばれたもの≫
・アニマル浜口の「気合だ~」 ・自民党幹事長 武部 勤の「サプライズ」
・ライブドア社長 堀江貴文の「新規参入」 ・韓流ブーム「冬ソナ」
・浜田陽区の「△△って言うじゃない、○○切り! …残念!!」
・作家 片山恭一の「セカチュー」 ・「自己責任」 etc
[選に漏れたものにも、記憶に残るものが多い]
・巨人軍 渡辺恒雄の「たかが選手」 ・小泉首相の「人生いろいろ」
・皇太子さまの「人格否定」
■2003年(平成15年)
・テツ&トモの「なんでだろう~」 ・衆議院議員 野中広務の「毒まんじゅう」
・衆議院選挙で初めて戦われた「マニフェスト」
その他、星野仙一の「勝ちたいんや~!」、肺炎による感染症「SARS」、
フジテレビの人気番組"トリビアの泉"の「ヘエ~」、「ネット心中」、
「オレオレ詐欺」などがある。
■2002年(平成14年)
・「タマちゃん」 八月に多摩川に姿を現してから、全国のお茶の間の人気者に
…今年は「なかちゃん」が可愛かった。
・「W杯」ワールドカップで日本中が沸いた。
その他上位には、ノーベル賞「ダブル受賞」、「ムネオハウス」、「拉致」
「ベッカム様」などが記憶に新しい。
■2001年(平成13年)
・小泉内閣発足により、「米百表」「声域なき改革」「ワイドショー内閣」「骨太の
方針」など、小泉人気に集中。
その他上位は「狂牛病」、塩川正十郎の「塩じい」、「抵抗勢力」、
氷川きよしの「ヤダねったら、ヤダね…」などがある。
■2000年(平成12年)
・「IT革命」 この夏パソコンが急速普及、テレビの年間出荷台数を追い抜く。
・スマップ香取慎吾が扮する"慎吾ママ"の「おっはー」
その他上位には、柔道田村亮子のオリンピック「最高でも金、最低でも金」、
長野県 田中康夫知事の「官対民」、自己中心的世評を反映した「ジコチュー」、
オリンピック水泳銀メダリスト 但馬寧子の「めッちゃ悔し~い」などがある。
「五郎島の芋」を親戚・友人に配った。今年は出来がよく、栗のようにほこほこし
て美味しい。我が家の食卓、新米を炊いて、山で採ってきた"シバタケ"の吸い物…。
昨日はカナダ産の松茸ご飯。果物は柿にイチジク、みかん。我が家は今、秋の
味覚がいっぱい!
夏はウナギの蒲焼、秋はサンマの塩焼きが美味しい。脂ののった地のイワシを
湯にしたものを、酢醤油で戴くのもいい。冬は、寒ブリを三枚にさばいた残(骨)を、
近江町市場で仕入れてきて、粕汁にして、骨に付いた身をしゃぶる。これがなんとも
美味い! 季節折々、美味しいものを味わうときほど幸せを感じるときはない。
ところで、ウナギの蒲焼が庶民の口に入るようになったのは、江戸時代になって
から。そのウナギの調理法、関西では"腹開き"、関東は"背開き"なのはよく知
られている。
何故関東では"背開き"なのかというと、江戸は武家の町、"腹開き"は切腹を
イメージして縁起でもない。それで背開きが一般的になった…という、もっとも
らしい理由がある。
【吉村外喜雄のなんだかんだ - 100】
~ことば遊び~
「落語 目黒のさんま」
サンマは「秋刀魚」と書く。この庶民の魚サンマをネタにした落語に、あの有名な
「目黒のさんま」がある。
日本晴れの上天気なので、紅葉狩りでもしようかと思った殿様、武芸鍛錬のため
遠乗りがよろしいでしょうと言われ、下屋敷から遠くない目黒に行くことになった。
「あとへ続け! 参れッ」。家来の支度のことなど考えもしないで飛び出したので、
家来はあわてて厩(うまや)へ走って馬を引き出す始末。しかし殿様は乗馬で鍛え
ていないので、目黒に着いた頃には、尻が痛くなり、下馬しているところへ、家来
が到着した。
空腹を覚えた殿様が、弁当を持てと命じたが、火急のことで誰も持参していない。
しかし殿様は文句を言えない。文句を言えば、家来の誰かが罪を負うことになる
ので、「持参していない」と家来が言えば、「おお、さようか」と言うしかないので
ある。
そこへ、近くの農家から香しい魚の匂いが漂ってきた。家来に尋ねると、
「百姓家で焼いている、秋刀魚と申すゲス魚でございます。下民の食するもので、
殿様のお口にはとても…」とのこと。
「黙れッ、戦場へ来て腹が減っては戦ができるか! 苦しゅうない、これへ持参
いたせ」。正論である…。
家来が農家から買ってきた、焼きたての、脂の乗った旬の秋刀魚。それも遠乗り
後の空腹で、しかも野外とくる…。まずいわけがない。またたく間に残らず平らげ
てしまった。
『お屋敷へお立ち帰りののち、ここで秋刀魚を食したことは、ご内分に願います。
ご重役の耳に入りましては、我らの落ち度に相成ります』
「その方の迷惑になることならば、口外はいたさん」
口止めされてしまったが、日常の食膳に出るのは、決まって冷たい鯛ばかり。
どうしても、秋刀魚の味が忘れられない。
その後、親戚に客として招かれた。お好みの料理をお申し付けくださいと言わ
れた。この時とばかり、「ならば秋刀魚を!」と所望した。
もちろん用意などしていないので、日本橋の魚河岸に早馬を飛ばした。
脂の強い魚ゆえ、体に障っては一大事と、料理番が開いて蒸し器にかけ、小骨
を一本一本毛抜きで抜いて、ツミレにして、椀に入れて出した。
かすかに匂いはするが、そんなものが美味しいわけがない。
「この秋刀魚、いずかたより取り寄せた?」
『はい、日本橋の魚河岸にございます』
「それはいかん、秋刀魚は目黒にかぎる…」
■ことば遊び「無理問答」
「○○とはこれいかに。△△と言うがごとし」といった題で、
笑点の「大喜利」のネタにもよく使われます。
「一羽でも ニワトリとはこれいかに」
「一羽でも 千鳥というがごとし」 といった言葉遊びです。
「赤い花でも 葵(青い)とはこれいかに」
「見るものでも 菊(聞く)というがごとし」
「朝届いても 郵便(夕便)とはこれいかに」
「走って配っても 配達(這い立つ)というがごとし」
「一度打っても 碁(五)とはこれいかに」
「一篇でも 詩(四)というがごとし」
「何個あっても 荷(二)とはこれいかに」
「一回でも お産(三)というがごとし」
吉村外喜雄のなんだかんだ
~ことば遊び~
「落語・こんにゃく問答」
会話の中に、ひょいと出で来るジョークは、笑いを誘い、雰囲気を和ませ、
人間関係を親密なものにしてくれる。
名の知れた大学教授の講演を聴く機会が多い。共通しているのは、講義にあり
がちな堅苦しさはなく、聞き手を笑いに引き込み、時間を忘れさせてくれるこ
とだ。学生に人気がある教授ほど、その傾向が強い…。
「感性論哲学」の創始者、芳村思風先生。講義中、聴講生が散漫になりかけたの
を壇上から見ていて、フッと話を中断し、しばし沈黙してしまう…。
聴いている私たち、何だろう?次に話すことを忘れたのでは?と、みな先生に
意識が集中する…。 と、突然、「なんちゅうか、かんちゅうか、ほんちゅうか、
な~んちゃって…」の、お得意のジョークが飛び出してくる。
会場はドッと笑いの渦に包まれ、それまでの眠気もふっ飛んでしまう。先生は
笑いでもって、受講生を引き付ける"ネタ"を、幾つか隠し持っているのです。
何度か講義を受けているうちに、それが分ってくる。
そら!出るぞ、出るぞ…! 要望に応えて、先生の口からジョークが飛び出し
てくる。そのたんびに、会場は爆笑。講義が、何とも楽しいものになっていく。
受けを狙ったジョークや笑いは、言おうとして出てくるようなものではない。
日頃からユーモアを楽しむ心がないと、身に付かないもののようです。
さて今日は、洒落話しといきましょう。言葉遊びに「無理問答」というのがある。
落語のネタによく使われています。中でも有名なのが「こんにゃく問答」。
その中で交わす、八っつァん、熊さんの珍問答が面白い…。
「……、野郎、しからば一不審(いつぶしん)、もてまいろうか」
『なにをいってやんでえ畜生、高慢なことを言うな、 なんでも持ってこいっ
てんだ!』
「われ鉄眼の竜となって、汝(なんじ)を取り巻くときは、これいかにとくらァ
…! どうだ、驚いたかこの土手カボチャ」
『土手カボチャァ!? 畜生め! 汝、鉄眼の竜となれば、炎となって汝を
溶かす、とくらァ…、どうだ、おたんこなす』
「汝、火となるときは、われ、水となってこれを消す!と、どうだ!」
『水になれば、土手になってこれをふせぐ』
「土手になれば、猪になってこれをくづす」
『猪なら狩人になって、汝を撃つ』 「汝、狩人になれば、われ庄屋となる」
『汝、庄屋となるときは、代官となる』 「汝、代官となれば、われ奉行となる」
『奉行となれば、老中となる』 「老中となれば、将軍となる」
『将軍となれば、天子となる』 「太陽となる」
『高いもんになりやがったなこん畜生!
汝、太陽となれば、日蝕となって世界を暗くする』
「汝、日蝕となれば、百万がけのろうそくの灯りになって、世界を照らす」
『ろうそくになれば、風となって、その灯りを消す』
「風になれば、壁となって、これをふせぐ」
『ネズミとなって、食い破る』 「猫となって、汝をとる」
『汝猫となれば、われおさんどんとなって、これをブチ殺す』
「おさんどんになれば、権助となって、われ汝をくどく」
『べらんめェ、お前ぇなんかにくどかれてたまるか…嬶ぁが化けて出ら!』
「嬶ぁが出てきたか…。おおクワバラ、クワバラ、嬶ぁには勝てない…」
落語の「無用問答」はここまでにして、「ああ言えばこう言う」。こんな会話の
ヤリトリを"尻取り遊び"のように、瞬時に応酬し合って、勝ち負けを楽しむの
も、ユーモアや、営業のセンスを磨くのには役立つたかも…。
難しい研修カラキュラムだけでは疲れてしまう。15分ばかり、こんな課題で
場をなごますのも、いいかもしれませんね?
言葉遊び、今日は”江戸川柳”。 江戸川柳は、まず「七七」を出題し、それに
「五七五」を付けさせる遊びです。笑点「大喜利」のネタにもよく使われます。
下の句の出題 「斬りたくもあり 斬りたくもなし」
答えた上の句 「盗人を 捕らえてみれば わが子なり」
・秀吉か、家康が出題したと言われている下の句。
「○く□て、しかも△」 (丸く四角て、しかも三角)
・誰が答えたか、見事な上の句。
「蚊帳(かや)の手を 一つはずして 月を見る」
四角に吊られた蚊帳。四隅の吊り手の一つをはずせば三角になり、
そこから見上げる月は満月という詠み歌である。
・私のお粗末な上の句。
「お豆腐(□)を 斜めに切って(△) 皿(○)に取る」 これでは面白くない。
「日の丸の(○) 国旗(□)
を立てる 三脚へ(△)」
これも面白くない…
「おでん鍋(○) 卵こんにゃく(○△)
がんもどき(□)」
もうひとひねり…
「折り紙(□)を 折ってカブト(△)
を かぶる子(○)ら」
「サイコロ(□)で 目(○)
の数競う 三人(△)は」
「おにぎりを 握る母さん 魔法の手」
なんてのが次々浮かんできた… 皆さんも、何かよい句浮かびませんか?
【吉村外喜雄のなんだかんだ85】
~ことば遊び~
「サラリーマン川柳」
五月中旬に、毎年恒例、第一生命の「サラリーマン川柳優秀10点」が発表され
た。川柳は、その時々の世相がみごとにおり込まれていて、奥が深く面白い。
俳句の「五七五」を基本にしつつも、面白ければ字余りも可とし、季語も不要で、
自由奔放、楽しく詠い込むことができる。
●今年は、振り込め詐欺を取り上げた作品が、三点も入選している。
一位 「オレオレに 亭主と知りつつ 電話切る」
三位 「振り込めと 言われたその額 持ってない」
六位 「オレオレは マツケンサンバ だけでいい」
●家庭内を描いた作品も、相変わらず人気を集めている。
五位 「有害だ 混ぜるな危険! 嫁姑」
七位 「残念! 俺の給料 妻が斬り」
八位 「何食べる? 何があるのか 先に言え」
十位 「ケンカして わかった妻の 記憶力」
●昨年の韓流ブームを反映して…
二位 「ぺと言えば 母はヨンジュン 父加トちゃん」
四位 「ヨン様かあ オレは我が家で ヨソ様さ」
■昨年、平成十六年の入選作から…
「やめるのか 息子よその職 俺にくれ」 「小遣いが 欲しい父も チワワの目」
「オレオレと 帰るコールに どちら様」 「課長いる? 返った答えは いりません」
「『へえ~』じゃない おまえのことだ 『はい』と言え」
「着メロの 『乾杯』が鳴る 通夜の席」 「リストラで 辞めれるやつは できる奴」
「無駄省け 言っていた上司 省かれる」 「ゴミ出しを 忘れて会議 上の空」
■平成十五年の入選作から…
「タバコより 体に悪い 妻のグチ」 「ついに来た 俺も週休 七日制」
「化粧取り プールに入った ママはどこ」 「年収は ゴジラ松井の 一打席」
■平成十四年の入選作から…
「ふろの順 おやじ最後で 掃除つき」
「あかちょうちん 会議の時より 意見でる」
「気分よく 100円ショップで ムダ遣い」
「プロポーズ あの日にかえって 断りたい」
「誰の子か わからぬままに 十カ月」
「死ぬ前に 使ってみたい 保険金」
●夫の悲哀
「ゴミの日と 丸つけられた 誕生日」 「おならにも 家長のしめし 付ける音」
「まだ寝てる 帰ってみれば もう寝てる」 「いい家内 十年たったら おっ家内」
「運動会 抜くなその子は 課長の子」 「冷戦の 妻が六法 読み始め」
●我が家の妻もオバタリアン…
「目は一重 アゴ二重に 腹は三重」 「スカートの ホックつかんで くしゃみする」
「お父さん やさしく呼んで ゴミ渡す」 「髪染めて 出かける妻に 犬が吠え」
「オバタリアン 三人寄れば 暴力団」 「妻の後 入る湯船に お湯を足し」
●ゴルフ川柳…一向に上達しない私!
「ドライバー 今のは素振りか 空振りか」 「何故ここに 前のホールの OB球」
「スコアーに くよくよするな その腕で」 「池に谷 俺は自然が 大嫌い」
●ブラックユーモア
「親孝行 したい時には 職はなし」 「マザコンと 言われて母に 相談し」
「俺粗大 ゴミならおまえ 危険物」 「涙する 苦労語るにゃ 太りすぎ」
読んだ人が「クスッ!」と苦笑し、「そうそう…」と共感できるのが楽しい川柳。
憎まれ口を叩いたり、叩かれたり…。世相に対する軽い”批評”や”ヒニク”が
詠み込まれている。川柳を詠む人の”センス”がかかってくる。川柳を通して、
世間のおかしなところが浮き彫りになる。
■ことば遊び 「先頭車両」
JR西日本の事故の後、
「心なしか電車の先頭車両に乗る人が減ったようね」
と、ある女子高生の会話。
「先頭車両ってチョー怖い! なくしてしまったらいいのに…」
って言うじゃなァ~い。
先頭車両をなくしたら、二両目が先頭になるんですからァ…、残念!
ラッシュアワー時、先頭車両が”女性専用車両”になる通勤電車。
おばさんが駅員にからんでいた。
「女をまとめて殺すつもりなのォ!!」って言ってるじゃなァ~い。
そんなおばさん、何があっても絶対に死んだりしないんだからァ…、残念!
吉村外喜雄のなんだかんだ 第83号
~ことば遊び~
「落語・三方一両の”損”」
前号で、芝寿し梶谷会長の「三方一両得」の話をしました。
今日は、古典落語の名作「三方一両損」から、大岡裁きのさわりを紹介します。
この噺(はなし)は、江戸つ子気質の典型を扱ったものとして面白い。
えー♪ 神田白壁町の左官金太郎が、柳原で拾った財布の中に、書付と印形。
それに三両の金が入っていた。
書付から、落とし主が神田竪大工町の大工吉五郎とわかったので、
届けに行くが、二人とも職人なので、口が乱暴だ。
「おう! おめえが大工の吉五郎ってぇのか?」
『てめえはなんでえ』
「おれは左官の金太郎ってんだい」
『金太郎にしちゃァ、赤くねえな』
「まだ、うでてねえんだ」
『生で来やがったな、この野郎、なんか用があるのか』
「用がなくて、こんな小汚いところィ来るかい!」
こんな調子で、『印形と書付は貰っておくが、金はいらない。てめえにやる』
と、吉五郎が言えば、金太郎は、
「そんな金を貰うくらいだったら、最初から届けねえャ!」と、やり返す。
更に吉五郎が、『もとは俺の金だったが、いったん懐から飛び出したんだ。
二度と敷居をまたがせねえ。
てめえが拾ったんだから、褒美にくれてやらぁ~。帰りにでも一杯やれ!』
と言ったものだから、喧嘩になってしまった。
言い張っているうちに、双方こじれにこじれて、南町奉行大岡越前守さまに
訴えて出た。双方から願い出たものだから、すぐに奉行所から呼び出しが
かかった。
黙って言い分を聞いていた名奉行大岡越前守。 静かに口を開いて、
「左様か、両名とも、しからばこの三両の金子、いらぬと申すなら、越前、
預かりおくが、どうじゃ…」
その金があるから喧嘩になると、二人が納得したので、奉行は続けた。
「では、そのほうたちの正直に愛で、越前が二両ずつ褒美としてつかわそう」
それを聞いた二人は、「へへェ~」と、ありがたく頂戴した。
奉行が一両出し、両人に二両ずつ褒美として与えたので、”三方が一両の損”で、無事に裁きは終り、
越前守のはからいで、食事まで馳走になった。
「これこれ両人、いかに空腹じゃと申して、あまり食すではないぞ!」
『へえ~、多かァ(大岡)食わねえ、たった一膳
(越前)』
■ことば遊び。
韓国に行って、二言か三言しか韓国語が話せなくても、「はんぐんまる ちゃるはしねよ」(韓国語お上手ですね)と言われます。
「はんぐんまる ちゃるはしねよ」
「はんぐんまる」は日本語で”ハングル語”。
「ちゃるはしねよ」は”お上手ですね”。 ”韓国語お上手ですね”となる。
「ちゃるはしねよ」は、”上手に茶入れるが、箸ねエよ”と覚える。
「うりまる ちゃるはしねよ」も同じ言い方。
「うり」は”我(われ)”、「まる」は”言葉、○○語”。
「うりまる」”我々の言葉”となる。
頭に「より」”料理”をくっ付けて、「より ちゃるはしねよ」”
料理がお上手ですね”。
「のれ」”歌”が付くと、「のれ ちゃるはしねよ」”
歌がお上手ですね”など、
いろいろ使える。 尚、韓国で”日本語お上手ですね”と韓国人に言うときは、
「いるぽんまる ちゃるはしねよ」。”居るよ、日本丸”と覚える。
韓国には、日本語の上手な人が沢山います。ところが、日本で韓国語を話せる人
は少ない。それで、珍しがられるだけでなく、声をかけた途端に親切になって、
仲良くなってくれます。同じ文化圏なのに、これほど言葉が通じない隣国同士も、
世界では珍しい。
吉村外喜雄のなんだかんだ 第73号
~ことば遊び~
「ここにも一合残ってら!」
今日はちょっと息抜きに、落語の下ネタ話を一つ…
「酒を飲んで上がるものは血圧。ところで、飲めば下がるものナーニ」と、なぞなぞ? 飲めば下がるものとは、
言わずと知れた酒席の話題。飲むにつれ、出るとはなしに、アッチの話が飛び出してくる。
このたぐいの下ネタを、落語では「艶笑落語」と称している。
寄席では聞けない、おなじみさんだけに語って聞かせる、艶話である。
私が日立に勤めていた頃、日立チェーンストールのお客様招待会で、東京から演劇一座がやってきた。 受け入れ側スタッフとして、一ケ月ほど一座に同行したことがある。鶴来の体育館、根上の公民館と、県内をドサ廻り。 マン幕を張ったり、ゴザを敷いたりするのが私の仕事でした。
その一座に、真打になったばかりの「三遊亭歌奴(三遊亭園歌)」がいた。ご存知「山の穴々」 の出し物が大受けしていた。高座が引けて楽屋でくつろいでいるとき、お手伝いしている私達へのサービスだと、 下ネタ艶笑落語を披露してくれた。
「風呂の中でオナラをしたら、鼻のまん前にブクブクパッチン…。男のオナラは…、女は…」と、
顔を見ているだけでフキ出しそうな歌奴の熱演に、腹を抱えて笑ったものです。
で、とって置きの「艶笑落語」の小話を一席。「こんな下ネタを流すなんて不謹慎」と思われる向きには、
これから先は読まないほうがよろしいようで…。
「おい、酒を出せ」
『おまえさんねえ、酒なんかありゃしないよ』
「買ってこいよ!」
『お金がないんだよォ』
「金がなきゃ、何か質に入れてこさえろやい」
『質に入れるったって、タンスはからっぽだよ』
「からっぽだっていったって、そこを何とかするのが世話女房じゃねぇか。何とかしろ!」
『しょうがないねえ、おまえさんは、言い出すと後へ引かないんだから…。
じゃ、ちょっと待ってておくれ』
てんで、おかみさん、裏口から出て行くと、一升ぶらさげてアネさんかぶりをして帰ってきた。
「それみやがれ、何とかすりゃ、何とかなるじゃねえか」
『おまえさんねえ、この一升飲んだら、あしたっから仕事をしておくれよ。
もう何にも売るもんはないんだから』
「ないんだからって、おめえ…、なにを売ってきた?」
『おまえさん、これだよ』と、アネさんかぶりを取るとザンギリ頭。
「なんだい、おめえ、その頭は…。すまねえ、おめえの髪の毛まで売らせちゃって…。よし!おれは、あしたっから働くから…」
なァんてんで、すっかり仲よくなっちまって、二人で床に入って、亭主の手がスーッとすべっていったかと思うと、
「おッ!おめえ、ここにも一合残ってら!」
『 …… 』
私が最初に勤めた会社が日立の代理店。翌年、東京オリンピックが開かれ、家電の全盛期に入った。まだ娯楽の少ない時代。
会社の慰安旅行、温泉での新年会など、皆、楽しみにしていた。
当時はまだカラオケがなかった。宴会では、一芸を持った人が次々と隠し芸をやった。
まず社長(先祖は前田家の家老)が席に座ったまま、コインを使った手品を披露。
次いで総務部長が舞台に上がり、本格的奇術を披露。日本舞踊を踊る女子社員、ギターを肩にラテン】を奏でる若手。
宴もたけなわになると、恒例の裸踊り。営業部長が両手にお盆を持って、素っ裸になって、舞台袖から飛び出してくる…。
中締めの後は、お定まりの下ネタ数え歌。「一つとせ、二階の女とヤルときにゃ
よいよい…♪」と、人の塊ができて、大合唱。皆、何か一芸を身につけようと、密かに努力したものです。その頃収集したのが
「下ネタ艶話」や「寿限無」。
カラオケ一辺倒の今の宴会風景とは、一味違った楽しさがあった。
【吉村外喜雄のなんだかんだ 第63号】
~ことば遊び~
「おそろしく長い口上・続き」
……♪一ッぺぎへぎにへぎほし、はじかみ盆まめ盆米盆ごぼう。
摘み蓼(たで)つみ豆つみ山椒。書写山の写僧正。
こごめのなまごめ、小米のなまがみこみ、小米のこなまがみ。
繻子(しゅす)ひじゅす、繻子しゅちん。
親も嘉兵衛子も嘉兵衛、親かへい子かへい、子嘉兵衛親かへい。
古栗の木のふる切口。雨がっぱが番合羽か。
貴様のきゃはんも皮きゃ絆、我等がきゃはんも皮きゃ絆。
しっかわ袴のしっぽころびを、三針はりなかにちょと縫うて、
縫うてちょっと分出せ。
かいら撫子野石竹。のら如来のら如来、三のら如来に、むのら如来。
一寸のお小仏に、おけつまづきゃるな。細溝にどじょうにょろり。
京のなま鱈(たら)奈良なままな鰹、ちょっと四・五貫目。
お茶たちょ茶たちょ、ちゃっとたちょ茶たちゃ、青竹茶籠でお茶ちゃとたちゃ。
来るは来るは何が来る。高野の山のおこけら小僧。たぬき百疋、箸百ぜん、
天目百ぱい、棒八百本。
武具馬具ぶぐばぐ三ぶぐばぐ、合わせて武具馬具六ぶぐばぐ。
菊栗きくくり三きくくり、合わせてむきこみ、むむきごみ。
あのなげしの長なぎなたは、誰が長長刀ぞ。
向こうのごまがらは、えの胡麻からか真(ま)ごまからか、あれこそほんとの
ま胡麻殻。がらぴいぴい風車。
おきゃがれこぼし、おきゃがれこぼし、ゆんべもこぼして又こぼした。
たあぷぽぽ、たあぷぽぽ、ちりからからつつたっぽ。
たぽたぽ一丁だこ落したら煮てくお、煮ても焼いても食えれぬ物は、
五徳鉄きうかな熊。
どうじに石熊石持虎熊虎きす中にも、とうじの羅生門には、茨木童子が、
うで栗五合つかんでおむしゃるかの頼光のひざ元吉ず。
鮒きんかん椎茸定めてごたんなそば切りそうめん、うどんかぐどんな。
こしばち小棚のこ下に小桶にこ味噌がこ有るぞ、こ杓子こもって、こすくて
こよこせ。
おっとがってんだ、心得たんぽの川崎、神奈川保土ヶ谷、戸塚はしって
行かばゆいとを摺むく三里ばかりか、藤沢平塚大磯がしゃ小磯の宿を
七ツおきして早天さうさう相州小田原。
とうちん香、隠れござらぬ貴賤群集の、花のお江戸の花ういろう。
あれあの花を見て、お心をおやはらぎやっという、産子這子(うぶこはうこ)に
至るまで、このういろうのご評判、ご存知ないとは申されまい。
まいまいつぶり角出せ棒出せ、ぼうぼうまゆに、うす杵(きね)すりばち、
ばちばちぐわらぐわらぐわらと、はめをはづして今日おいでの何も様に、
上げねば成らぬ売らねばならぬと、息せい引っ張り東方世界の薬の元締め、
薬師如来も上覧あれと、ホホ敬うて、ういろうはいらっしゃりませぬかァ…♪
いかがでしたでしょうか? このような難しい長口上を、市川団十郎が舌も軽やかに演ずるのです。 一度見てみたいものです。何度も何度も繰り返していると、だんだん早口が板についてくる。 こんなバカバカしくも無駄なことが面白い!
明けましておめでとうございます
メルマガを始めて早や三回目のお正月を迎えました。
今年も一年お付き合いのほど、よろしくお願いします。
さて、今年最初のメルマガは、私の趣味「ことば遊び」の中から、メルマガ作成には
もっともやっかいな、「大道芸人の口上」を入力しました。暇のあるときにでも読んで
見てください。
【吉村外喜雄のなんだかんだ 第62号】
~ことば遊び~
「おそろしく長い口上」
よほど我慢しないと、最後まで読みきるのは難しい。後半は次号で紹介しますが、山本さんがご存知の”早口ことば” が随所に出てきて、繰り返し読むほどに、面白くなってきます。
♪拙者親方と申すは、お立合いのうちに、ご存知の方もござりましょうが、 江戸を立って二十里上方、相州小田原一色町をお過ぎなされて、 青物町へお出なさるれば、欄干橋虎屋藤右衛門、ただいまは剃髪いたして、 円斎と名のりまする。 元旦より大晦日まで、お手にいれまするこの薬は、昔、ちんの国の唐人、 ういろうという人、わが国へ来たり、帝へ参内の折から、この薬を深く愛用し、 用いる時は一粒づつ冠のすき間より取り出す、 よって、その名を帝より”とうちん香”とたまわる。 今ではこの薬、ことのほか評判となり広がり、方々に似たような看板を出し、 手前どもの薬はどうのこうのと、いろいろに申せども、 ひら仮名をもって「ういろう」と致したは、手前ども親方円斎ばかりなり。 もしやお立合いの内に、熱海へ湯治に出かけるか、 イヤ最前より家名の自慢ばかり申しても、ご存知ない方には、 魚鳥木の子、麺類の食合せ、そのほか万病速効あること、神のごとし。 ♪そりゃそりゃそりゃそりゃそりゃ、まいって来たわ、まわってくるは、 |
ここまでが舌ならしの前口上で、このあとが聞かせどころの本番となります。
来週をお楽しみに!
秋の味覚の王様松茸が市場に出回り始めた。石川県の主産地は能登半島の先端
珠洲。今年は豊作だという。
ところで、一本二千円もする松茸を前にして目を細め、舌鼓を打っているのは日本人
だけ。外国人にはその味覚がわからない。
中国では刻んで油で炒める食材にする。素材そのまま、香りや歯ざわりを楽しむ
のは、日本人だけである。
欧米人がマズイといって吐き出してしまうのは何故だろうか? その答えは、味噌・
醤油文化に慣れ親しんだ日本人だけの味覚感覚にあった。
松茸の味や香りを分析すると、その成分は、味噌・醤油の成分にそっくりなのです。
吉村外喜雄のなんだかんだ 第50号
~ことば遊び~
「さようならの意味」
言葉の語源の意味を知るのも、言葉遊びの一つ。語源を知って、「へぇ~」と、
結構楽しいものです。
昨日、「老荘思想」「禅のこころ」「菜根譚」など、東洋思想家としてその名を知られている”境野勝悟” 先生の講演を聴く機会を得た。
どんなむずかしい話をされるのかと思っていたら、講演の二時間、会場は笑いの渦。メインテーマは、
日頃なにげなく交わしている「さようなら」の語源と、意味についてでした。
先生は大学を卒業後、私立の学校で国語の教師として教鞭を執っていた。その時の校長は西欧人。校長から「さようなら」
の意味を職員に尋ねられた。が、誰も答えられなかった。その後、調べてみても意味が解からず、
ようやく言葉の意味が解ったのは、二十数年も後のことだったという。
「さようなら」は別れの言葉。その語源は江戸時代の武家ことば、「左様なればしかじか」 である。それをそのまま友達と別れるとき、○○さん「左様なれば…」、『左様なれば…』 と言い交わしたとしたら、どうもピンとこない? この言葉の後に、「ご機嫌よろしく」 が続くのです。「左様なれば、ご機嫌よろしく」となる。これでようやく意味が通じることになる。
明治になって、男女の別れの時に、男性が女性に「さようなら」と言い、それに女性が「ごきけんよう」 と返すようになった。大正・昭和と、男性中心社会になるにつれ、「さようなら」だけが一人歩きし、「ごきげんよう」 は置き去りにされてしまった。今も「ごきげんよう」と言うが、まれにしか使われない。
もう一つ、吉田金彦著「ことばのルーツ探し」には、あまり使われないが
「サラバ」
と「アバヨ!」
についての記述があります。
「サラバ」の語源は「左有らば」で、源氏物語にも使われている。
「アバヨ!」は、「逢はばや」が語源。「ではまた逢いましょう」という意味である。
今の別れが最後にならないように、との思い。若い人の間では、「では又、じゃあね!」になる
【吉村外喜雄のなんだかんだ 】
~ことば遊び~
「寿限無」
新年会シーズンです。私の二十代のころは、かくし芸全盛時代。宴会ともなると、手品やドジョウすくいなど、一芸に秀でた芸人が必ずいて、宴会を盛り上げたものです。
私がその頃覚えたかくし芸に、落語の「寿限無」がある。人前で披露する機会がなく、
ほとんど忘れてしまったが、あの長い名前だけは覚えていて、今でも早口で言うことができる。
なんと最近、その「寿限無」が幼稚園児の間で大流行していて、ジュゲム・ジュゲムと言葉遊びするちびっ子が、
続出しているというのです。事の起こりは、「寿限無」がNHK教育TVの子供番組に取り上げられたことから、
幼稚園児に火がついたのです。意味がわからなくても、子供達にはこのリズムとゴロが大受けして、
暗唱して遊んでいるといいます。
もう一つ火付け役をしたのは、「寿限無」を面白く絵本にした出版社。アッという
間に30万部売れた。児童向けの絵本では、過去前例のない大ブレーク!
ベストセラーになりました。
では、日本一長~くめでたい名前「寿限無」とは、どんな名前でしょうか?
正しく言えるでしょうか? そこで、初孫誕生を祝って、改めて紹介したいと思います。興味のある方は、
この機会にご家族で暗唱してはいかがでしょうか。
「寿限無、寿限無、五劫のすりきれ… 」 寿限無 |
「海砂利水魚の水行末、雲来末、 風来末…」 海砂利水魚 |
「食う寝るところに住むところ…
」 |
「やぶら小路ぶら小路…
」 |
「パイポパイポ、
パイポのシューリンガン、シューリンガンのグーリンダイ、グーリンダイのポンポコピーのポンポコナーの…
」 |
「長久命の長助。」
|
このめでたい名前を、全部我が子の名前にくっつけてしまったために、騒動が起きるお話です。