1884 【吉村外喜雄のなんだかんだ】
「五感を備えたロボットの開発」
ギリシャの哲学者アリストテレスは、人間の感覚を5つに
分類した。中でも、すべての動物に備わる触覚は特別な
存在としている。
では私たちの身の回りで活躍するロボットはどうだろう?
掃除をこなし、重量物を運び、機械まで組み立てる。
人間以上の働きをする頼もしい存在だが、
”触覚”はまだ十分ではない。
触覚を持たないロボットは、力を加減することが出来ず、
卵ややわらかい果物を握りつぶしてしまう。
ロボット開発の最前線では今、最大の難関である”触覚”
を加え、5感を備えたアバターのようなロボットの開発が
行われようとしている。
視覚は「光の波長」、聴覚は「音の振動」で分析できるが、
複雑な触覚は測定が難しい。最近になって、指先の触覚の
生理学的研究が進んで、ロボットの開発に反映されるよう
になった。
慶応大学では、筆の書き心地をデーター化する研究を始め
た。人によって違う筆圧や筆運びの癖を、A Iに記憶保存
させ再現できれば、ペン先の微妙な調整などに役立てられ
る。
将来は、著名人の筆跡をそっくり真似ることも、夢では
なくなる。
触るロボットの開発が進む一方、"触られる”ことを目的
としたロボットも登場している。
「手触り癒しロボット」の脇の当たりに手を入れると、
暖かさが伝わり、赤ちゃんを抱いたような心地よさを感じ
る。
体温は38度前後。空気を体内に循環させ、手や胴に触る
と、柔らかい皮下脂肪の奥に骨のようなものが感じられる。
ペットの猫のような感覚のロボットが市販され、売れて
いるのです。
本物そっくりの触覚・手触りが、癒しを与えてくれる。
触って、話して、匂いを嗅いで、味わって・・
すべての感覚を取り込んだロボットの開発競争が進み、
今後、人間にどこまで似せることができるようになるか?
楽しみです。
日経新聞