台湾の李登輝・元総統逝く
1836 【吉村外喜雄のなんだかんだ】
「台湾の李登輝・元総統逝く」
7月30日、台湾の民主化と台湾化を追及し続けた李登輝
(リトウキ)元総統が死去した。
2007年5月、「奥の細道」ゆかりの地を巡るため訪日した
李登輝氏。
「 日本人は自然に調和する心、高い精神性を持つまれな
民族だ。日本人に生まれたことを自慢に思いなさい 」
「 私は22歳まで日本人だった 」が口癖だった李氏は、
日本統治下の台湾に生まれ、京都大学に学んだ。
日本名は”岩里政男”
農業経済を研究する一方、「古事記」「源氏物語」などの
日本の古典、世界の文学作品、西田幾多郎、鈴木大拙、
マルクス、エンゲルスらの哲学・思想にも触れた。
戦後台湾に戻ったが、人口の8割を占める李氏ら台湾人は、
大陸から逃れてきた国民党政権による統治を受けた。
台湾に生まれながら、台湾のために何も出来ないことを
悲哀したが、それを民主化の原動力に変えた。
1988年から12年間台湾総統に・・在任中強力に推し進
めた民主化により、96年国民による総統の直接選挙を実現。
李氏はその選挙に勝ち、自ら台湾初の”民選総統”になった。
李氏は後に「 一滴の血を流すことなく、6度の憲法改正を
経て”静かな革命”を成就させた 」と回想している。
「 新渡戸稲造の『武士道』が、自分や台湾が危機に直面した
時、常に新たな認識を与えてくれ、私を公のために尽くす
人間に育てあげてくれた。
22歳まで日本人として培った素養で民主化を実現した 」
中国は、台湾独立派の李氏を激しく非難し続けたが、
決して揺るがなかった。
「 民主主義と自由は、人類の文明にとって最も重要な価値
観であり、平和と安定、繁栄と進歩をもたらす基盤だ。
中国は、富と軍事力による、かりそめの繁栄をけん伝して
いる 」
日本人として生まれ、台湾人として生きた李氏は、自ら台湾
に根付かせた「民主・自由」こそが世界共通の価値観であり、
中国をも変えうる・・と信じていた。
7/31読売新聞からの抜粋