7月1日に氷室万頭を食べる云われ
1828 【吉村外喜雄のなんだかんだ】
「7月1日に氷室万頭を食べる云われ」
節分に恵方巻きをほお張るように、金沢には毎年7月1日
に”氷室饅頭”を食べる風習がある。
江戸時代陰暦の6月1日、加賀藩の江戸藩邸から将軍に
”氷”を献上するのが恒例になっていた。
この氷、冬の間に加賀藩の”氷室”に、その冬に降った雪を
蓄え、届ける前日に氷室を開いて取り出した天然氷です。
取り出した氷は、笹の葉とむしろで幾重にも包み、二重に
した桐の長持ちに納め、8人の剛力脚夫によって、加賀藩
から江戸藩邸まで4日間120里(480キロ)の道を、
昼夜走り続けて送り届けた。
加賀藩には年に一度の大役です。無事に届くようにと、
神社に万頭を供えて無事安穏を祈願した。
五代藩主綱紀の頃、城下に幾つもの氷室が作られた。
城下の町民もこれに倣い、氷を食するようになったが、
氷は貴重品、庶民の口にはたやすく入らなかった。
代わりに、麦で作った饅頭を氷室開きの日に食べて、
無病息災を祈願するようになった。
氷室開きの風習は現在も続けられていて、金沢市・湯涌温
泉の間口4m、奥行6m、深さ2.5mの茅葺の氷室で、
6月30日に氷室開きの行事を行っている。
翌7月1日を「氷室の日」とし、氷室饅頭を食べて無病息災
を願う風習が、市民の暮らしに溶け込んでいるのです。