1714 【吉村外喜雄のなんだかんだ】
「朝ドラ・おしん再放送」
毎週月曜から土曜、朝7時15分から「おしん.」
が再放送されている。
昭和58年(1983)4月に「おしん」の放送が
始まると、瞬く間に「おしん症候群」と呼ばれる
ブームが巻き起こった。
おしんの奉公先・山形県酒田市には、団体がバスを
連ねて押しかけ、駅前には赤ん坊を背負ったおしん
像ができた。
銀山温泉の旅館では、わざわざ「大根めし」が
メニューに加えられ、各地でおしんの名を付けた
土産物が売られた。
明治から昭和の時代を、おしんという一人の女性が
小作農家の貧しさに耐えながら生きる姿は、修身が
復活したかのように受け取られた。
乙羽信子が演じるおしんは、晩年にかけて
スーパーの仕事に専念する。すると視聴者から
「商売の鬼になっている」「こんなおしんは見たく
ない」といった反響が増えてきた。
あの頃の日本人は金もうに走りすぎて、自分を見失
ってはいなかったか・・金儲けと、人としての幸せ
の区別がつかなくなってはいなかったか・・
外国で放送されると信じられないことが起こった。
イランでは最高視聴率が82%、タイでは81%、
北京でも76%を記録したという。
耐えるおしん、夢を捨てないおしん、優しさを失わ
ないおしんの姿が、言葉や宗教を超えて、人々に
届いたのだろう。
日経新聞・橋田寿賀子「私の履歴書」より