堺市の豆腐店・橋本太七さんから、故芝寿し
創業社長梶谷忠司氏に、是非読んでほしい
と、川人正臣氏の著書「仕事と人生」が送られ
てきた。
その一冊が、あえの風で開催された商業界
ゼミのお礼にと、私に届けられた。
著書「仕事と人生」が縁で、川人さんとの交流
が始まり、私の師匠になって17年のお付き合
いになる。”縁”とは不思議なものです。
1691 「吉村外喜雄のなんだかんだ」
幸せな人生 「私にしかできないこと」
大阪府堺市に、安心堂という豆腐屋がある。
家族で手づくりの豆腐を提供している小さな豆腐屋さん
だが、豆腐づくりにかける情熱が、多くのファンをつく
ってきた。
店主の橋本太七さんがこだわっているのは、十勝の大豆
と伊豆大島でとれる天然にがり・・天然のにがりは反応
が早く、失敗することが多い。
そのため機械化は無理・・手づくりに頼らざるをえない。
失敗と苦労を重ねた結果、木綿豆腐でも絹ごしのように
柔らかい豆腐がつくれるようになり、人気商品になった。
阪神百貨店からも出店が促され、大阪の有名な料亭も
毎朝堺まで仕入れに来るほどで、口コミでお中元や
お歳暮に使う人が激増した。
それだけなら、こだわり商品のヒット例としてよくある
話だが、橋本さんの場合それだけではない・・
毎朝4時、仕事に取りかかる前、大豆とにがりを前にし
て「いい豆腐ができますように」と祈るのです。
「 一隅を照らすもので私はありたい。
私の受け持つ一隅がどんなに小さな惨めで
はかないものであっても、悪びれずひるまず、
いつもほのかに照らしていきたい 」
太七さんの息子さんが、ある朝、偶然に父親が身を清め
て祈る姿を見て感動し、家業を継ぐことを決意した。
豆腐屋を開業する前、金沢の芝ずしの工場長だった父親
が会社を辞め、堺の小さな豆腐屋になったことが恥ずか
しく、周りに父親の職業を語れなかったという。
全国には豆腐屋が何万件とあるが、橋本さんのような
真摯な姿勢で豆腐づくりに励む職人はいない・・
そこに、安心堂の豆腐が特別なものとして、高い評価を
受ける理由があるのです。
神渡良平著「安岡正篤人間学」より