1688 【吉村外喜雄のなんだかんだ】
「寿命はどこまで伸びるか」
長寿国日本・・衛生環境や食生活の改善で、
平均寿命はどんどん延びていく。
「人生100年」も夢ではない今の時代、
いったい人間は何歳まで生きられるだろうか。
医療が急速に進歩する以前、明治から大正の頃の
日本人の平均寿命は約40歳だった。
それが現在、予想できる寿命の限界はおよそ115歳。
今、医学界はある種の遺伝子に注目している。
細胞が分裂するとき、遺伝子情報が書き込まれた
DNAは、同じ情報を持つ複製を作っていく。
ところがその過程で、わずかだが傷が付く。
医学界注目のこの遺伝子は、DNAに傷が付かないよう
調整する機能を持つ。この機能が働かないと、DNAが
もろくなり、寿命が半分になってしまう。
この遺伝子が活発にすれば、寿命が伸びることになる。
人間の細胞は、50~60回分裂すると細胞分裂が終了
する・・それが老化の一因になる。
ただ体の中には、新しい細胞を作り出す幹細胞がある。
現在の研究で、約300種類の細胞が、老化に何らか
関わっていることが分かっている。
通常細胞は、自ら死んで壊れるか、免疫細胞に食べられ
て消えていく。
ところが、寿命を伸ばす働きをする複数の細胞は、
なぜか体内に留まって、寿命を伸ばす役割を果たす
ことがわかってきた。
一方、老化を促進する細胞は、炎症を起こす様々な物質
を体内にまき散らす。その量が増えると、ガンや認知症
など、加齢に伴う病気の引き金になる。
食事や運動、生活習慣の違いが、遺伝子要因以上に老化
に大きく影響する。「不老不死」は古今東西の関心事です。
老いがどのように訪れ、何が寿命を決めるのか?
世界は、科学的手法を駆使してその答えに迫り、長寿の
鍵を見つけ出そうと、懸命に研究がなされているのです。
日本経済新聞