1685 【吉村外喜雄のなんだかんだ】
「悪魔のおにぎり」
国内米消費量の5%を占めるといわれるコンビニの
おにぎり。この世界に悪魔が降臨した・・
「南極越冬隊のまかない飯に”悪魔のおにぎり”という
のがあるんだって」
昨年6月、ローソンの商品本部の堤洋平は、
上司から不意にこんな話題を振られた。
『悪魔のようなおいしさって、大げさじゃないの?』
”おにぎり仕事師”を自負する堤から見ると、悪魔の
おにぎりは天かすと天つゆ、青のりだけのシンプルな
レシピ。
試しに作って食べてみたら、「これはうまい!これは
悪魔だ」・・商品化を提案したが反応はいまひとつ。
通常は、店舗当たり1日10コ売れると大ヒット商品に
なる。堤は2ケ月間、1日15コ売ろうとプラン作りに
没頭した。 発売日は10月18日。
発売1週間で120万個売れ、 問い合わせが殺到した。
おにぎりトップのツナマヨを抜き去ったが、1日15コ
どころか、25コ、30コと爆発的に伸びていった。
悪魔の落とし穴はここにあった。「青のりが足りない」
水産物の仕入れ担当部所から、市場は青のり不足に陥り
、仕入れ価格が高騰。「これ以上は無理ですよ」
これまでか・・『一旦休止だな』
ところが、上司から冷酷な答えが返ってきた・・
「ダメだ!お客様は期待している・・絶対つなげろ」
「悪魔」は1日48コと、過去に例のない売れ行きを
見せた。
全国のローソンおにぎり工場からも悲鳴が上がった。
他の部所の担当者も、青のりの調達に奔走した。
一番不足したのは北海道・・青のり問屋は10キロの
青のりを、レンタカーで道内の工場を廻った。
普段わき役の青のりが市場から消え、相場は1.5倍に
・・天かすも天つゆも払底した。
品切れになったが、販売販売中止なしで年を越した。
今年から、おにぎりの定番に加わることになった。
飽和も指摘されるコンビニだが、「悪魔」は新たな見知
をローソンにもたらした。
読売新聞