■小話「靴下のしわ」
「 きみは婚約を解消されたんだってね・・
喧嘩でもしたのかい?」
『 うん、ヘマをやっちゃったんだよ。
よせばいいのに・・
靴下にシワが寄っているって、注意したのさ 』
「そんなの、大したことじゃないじゃないか」
『 ところが彼女・・
靴下を履いていなかったのさ 』
1541 【吉村外喜雄のなんだかんだ】
ことば遊び 「江戸小噺・鏡の無い村」
昔むかし・・
四国は山奥の山村には、鏡というものがなかった。
村の男衆、江戸見物に出かけることになった。
観音様をお詣りして・・仲見世へ。
ここに一軒の鏡屋がございまして、
鏡というものを見たことがございませんから、
「われ、そこに立ってみろ・・
あっれぇ~われが姿、ここへ写ってるでねぇか。
不思議なこつあるもんだ・・
こりゃ観音様のご利益に違げぇねぇ」
なんてんで、鏡を拝んだりしています。
村へ帰りまして、翌年また江戸見物へ。
その一年の間に、あいにく鏡屋が引っ越しをいたしまし
て、その後は琴と三味線を教える「琴三味線 指南所」
の看板が出ておりました。
村の衆、そんなことは知りませんから・・
「どこにあるだね・・その姿ぁ見せるちゅのは」
『なんでもはぁ、おら、この辺だと思っただが・・
アッ、こりゃいかねぇ、来年まで待たねばダメだ』
「どうして、来年まで待たねばならねぇ?」
『どうしてって、ここに書いてあるから
しょうがあんめぇに・・
”今年ゃ見せん”(琴三味線)と書いてある』
「あれぇ、それ弱ったでねぇかい。
おらがかか様、あんべぇ悪いっちゅだで、
かか様おっ死ぬ前に、もう一度あれ見て、
観音様のご利益仰ぐべぇと思っただが、
かか様・・来年までおっ死なねぇだろうか?」
『あ~あ、心配ぶつもんでねぇ・・
その下に”死なんじょ”(指南所)と書いてある』