私のビルの一階に本社を置くフーズフォー
ラス社が、ユッケ中毒死亡事件を起こした。
謝罪会見で、それまでの応答に業を煮や
した記者が、「死者まで出しておきながら、
どう責任を取るのか!」とあおった。
2時間近く、丁寧に謝罪会見をこなしてい
た社長・・ついに感極まって
「私は法に触れることは何もしていません」
一時間後の夜7時のNHKニュースで、
その個所だけ切り取られ、全国に放映された。
この一言に、マスコミは集中砲火を浴びせた。
1人の有能な経営者が社会から抹殺された。
1465 【吉村外喜雄のなんだかんだ】
「有名人の放言」
以下、新潮新書・百田尚樹著「大放言」からの抜粋です。
かって、放言は一つの文化だった。
放言は常識に対するアンチテーゼであり、現状における
問題提起であり、過激な提言であった。またしばしば
毒舌的であり、ユーモラスで知的な面もあった。
過去、多くの有名人が様々な放言を繰り返してきた。
大衆は目くじらを立てたが、一方でそれを受け入れ、
楽しみ、笑った。
ところが、近年はそうした寛容さは失われつつある。
ちょっとした言動ミス、言い間違い、行き過ぎた表現
に、マスコミや野党は過剰に反応し、ハイエナのごとく
容赦しない。
世論も迎合し、「許せない」「責任を取れ」と集中砲火
を浴びせ、社会から抹殺に近い状況に追い込んでいく。
以前、集団食中毒事件を起こした某食品会社の社長が
言った「私は寝てないんだよ」の一言は、不祥事を起こ
した企業のトップの、許されざる「開き直り発言」と
マスコミから大バッシングを受けた。
しかしそれほどまでに糾弾される言葉であろうか?
一週間不眠不休で原因調査をしていた社長が、謝罪会見
の後、会社の廊下で記者につかまり、強引にインタビュ
ーされた場での発言だった。
原因はまだ不明で「わかったら発表します」と言う社長に、
記者は何か事実を隠しているのだろうと、食い下がった。
疲れ切っていた社長は「では、あと十分」と受け入れた。
記者は「何で時間を限るのか!」と詰問した。
そこで出たのが・・
「そんなこと言ったってねえ、私は寝てないんだよ」
の一言・・この一言にマスコミは食らいついた。
ピラニアのごとく、一斉に襲いかかったのです。
週刊誌は問題発言と大きく取り上げ、TV各社は連日の
ニュースで「私は寝てないんだよ」の一コマだけを流し
続けた。
「不祥事を起こしておきながら、とんでもない逆ギレ
社長」という印象を、視聴者に刷り込んでいった。
そして「会社を倒産に追い込むまで許さない」という
猛攻撃・・魔女狩りが始まった。食中毒問題よりも、
この社長の発言を”悪”と捉える報道だった。