■日本の庭園
西洋の庭園は、生垣や花壇を左右対称に
幾何学的に秩序よく人工的な美しさの、
2次元的・平面的景観を追究したものが多い。
対する日本庭園は、大自然から好ましい
景観を切り取り、3次元的・立体的な理想
郷を追究していく。
華道「生け花」のように、石、苔、樹木の
個々の個性をより強調し、変化を持たせ、
手前には低いもの、奥に高いものを配置
して、遠近感をつくり出す・・
心に描いた世界を「庭」という限られた
空間の中に、自然美を凝縮していく。
禅の心、仏教が説く宇宙感や、神仙の
世界をイメージして、庭園が造られていく。
1385 【吉村外喜雄のなんだかんだ】
「茶室の止め石」
五月の連休・・長町武家屋敷跡の「野村家」は、訪れる
観光客でいっぱいだった。
建物と庭は、自然の素材が見事に組み合わされ、
日本の ”美”をただよわせている。
風雨にさらされた柱や梁の渋さ、飛び石、漆黒の銀の
ような輝きを見せる屋根瓦、竹細工の扉や垣根。
こじんまりした日本庭園の泉水には、外を流れる七ケ
用水から引き込まれた水がサラサラ流れ、石、苔、竹、
モミジ・・ぎっしり詰まった伝統美がそこにある。
縁側にたたずみ、静かに座っているだけで、心が和む。
二十一世紀美術館に隣接するお茶室のお庭・・
二又に分かれた道の一方に置かれた「止め石」に
目がいく・・
黒く染めた荒縄で十文字に結ばれた、丸みを帯びた
石ころが、さりげなく置かれている。
これを「止め石」と言い、日本庭園や神社仏閣の境内に、
「これより立ち入り禁止」を表示するのに用いられる石
です。
「立ち入り禁止」などの看板の野暮さは「止め石」には
ない。なんとも繊細で奥ゆかしい・・日本人の心がそこ
にある。
見学を終え通りに出れば、情緒のない広告や看板が至る
所に・・醜いばかり。日本人が分からなくなってきた。
フランソワーズ・モレシャン「日本人の心」から抜粋