「銭湯で 上野の花の 噂かな」
この正岡子規の句が「長屋の花見」のマクラ
になっている。この句を噺に取り込んだのは、
四代目柳家小さん。
「花見に行ったかい」 『行ってきた』
「どこだ」 『飛鳥山』
「どうだった」
『大変な人だったぜ・・娘っ子は唄いだす、
お婆さんは踊りだすね・・いやあ、面白かったなぁ』
「俺も行ってみるかなぁ・・で、花はどうだつた?」
『花ッ・・さあ・・咲いてたかなあ?』
1372 【吉村外喜雄のなんだかんだ】
ことば遊び「落語・長屋の花見」
落語ならではの奇想天外な噺「あたま山」、
そして「長屋の花見」と・・江戸庶民最大の行楽、
花見を楽しんでいる様子が目に浮かんでくる。
♪大家から長屋中に呼び出しがかかった。
さしずめ店賃の催促だろう・・
というわけでまずは店子が顔を揃えて協議に及んだ。
ところが大家の話しというのは、店賃の催促ではなく、
長屋で花見に行こうということだった。
酒は一升瓶に3本、卵焼きとカマボコも用意してあると
聞いて、一同すっかり恐縮するが・・
よくよく話を聞けば、恐縮するほどのこともない。
酒というのは、実は番茶を煮出して水で薄めたもの。
卵焼きはタクアン、カマボコは月型に切った大根の
お香々だ。
大家が乗り気なので、一同仕方なく出かけることに
なった。
とはいえ、いやいや付き合っている連中だから、
バリバリ音をたてて卵焼きを食うし、カマボコは
消化にいいので、千六本に切って汁の実にするとか・・
店子「俺もカマボコ食うぞ!」・・ウッすっぱい!
店子大声で「大家さん、卵焼き取ってください」
大家「お隣さんがこっち見てるじゃないか・・」
店子「う~ん、そっち・・しっぽの無いとこを」
大家「ところで、誰も酔わないな・・おまえ、酔いな」
店子酔ったふりして「ウィ~酔った!」
大家「ずいぶん早いな」
店子「酔うのも早いが・・醒めるのも早い」
大家「嬉しいね・・おまえだけ酔ってくれた。
花見のために用意した灘の生一本だぞ!」
店子「宇治かと思った・・」