■稲盛和夫の志
高い”志”で成功した経営者といえば、京セラ
の稲盛和夫。京セラを創業して間もない頃に、
松下幸之助の講演を聴く機会があった。
講演後の質疑応答で「松下電器はダム式経営
を行っているが、どうしたらダム式経営がで
きるのか」という質問が聴衆から出された。
幸之助「それはダムを造ろうと、強く思うこと
ですね」と答えたという・・「なんだ、当たり前
のことじゃないか」・・会場は笑いに包まれた。
しかし稲盛氏「そうか、ダムを造ろうという
強い思いがなければ、ダム式経営はできない
のだ。自分の会社も、ダム式経営をやろう」
それから寝ても覚めても、このことを忘れず
に取り組んだという。
「現在の京セラがあるのはこの言葉のお蔭」
と、後に稲盛氏は語っている。
1256 【幸せな人生 】 「吉田松陰の教え・・志」
吉田松陰は、弟子たちに「志」を持つことの大切さを教えている。
松陰が、塾生”入江すみ蔵”と書簡のやり取りをした中に、そのことが
言い交わされている。
「松蔭先生は、常日頃”志を持って生きる”ことの大切さ語っておられる
が、自分にとっての役割とは?志とは何か?・・分からないのです」
と弟子の入江は戸惑った。
「塾生に一番伝えたいこととは何でしょうか?」と先生に問うなら、「”志”を立てることが万物の源となす」と答えるでしょう・・最初に”志”あり
きと・・
”志”とは、ビジョンのことです。 ビジョンを一言で言うなら「自分は将来どうなりたいのか?」でしょう・・。
「将来どうなりたいのか・・考えなさい」と先生は繰り返し言われる。
志であれば何でもいいのか・・というと、そうではない。
先生は「地域の ためや、国のためになることを考えなさい」と言う。
先生の言う地域とは、自分が住む村のことであり、国とは藩のことである。
塾生には「小さな目標と大きな目標、両方同時に考えるようにしなさい」と指導された。
それを今ふうに言うと、船井行雄先生の口癖「世のため、人のためになることを第一に考えなさい」になる。
世の中のためになることが「大きな目標」で、身近な人の役に立つことが「小さな目標」になる。
弟子のすみ蔵、これを聞いてもまだ、「”志を持て”と先生は言われるが、何のことやら・・何をどうしたらいいのか・・さっぱり分かりません」と
答えた。
そこで先生は付け加えた・・目の前に起きることに、全身全霊でぶつかっていきなさい・・それを”至誠”と言う。
目の前に起きたこととは・・鳥に餌をやること、ご飯をちゃんと食べる
こと、箸の上げ下ろし、布団の上げ下げ、庭の掃除、農作業・・
すべて 全身全霊でやりなさい。
「これ以上は出来ない!」と思うまでやりなさい。
そうすることで、心がワクワクしたり、トキメクものにぶつかるでしょう…
それを”真骨頂”と言いま す。真骨頂とは、その人が持つ”長所”のことです。
どのように生きるかを考えるのは、真骨頂(長所)が何かが分かってか
らでよい。”志”は、己の生きざまの中から生まれてくるものであって、ちょっと頭で考えて生まれてくるような、簡単なものではありません。
己が真骨頂(長所)が見つかって後、自分がどう生きたらいいかを考え
ればよい。真骨頂を果たすことを”生きる”と言うべし・・と松蔭先生。
自分の長所に則って生きていくことが、志を果たすことになり、自分の
役割を果たすことになる・・と教えているのです。
佐藤芳直「船井行雄から学ぶ」
己の長所を知って後に、自分の生き方が定まる・・経営理念を成文化
する時も、このようにゆっくり時間をかけて考えることです。