■江戸小噺「五両五分」
呉服屋へ、主人の使いで品物を取りに行った
小僧が、値を聞くと、五両五分という。
「忘れるといけないので、紙に書きつけて下
さい」と頼むと、呉服屋の手代が・・
「五両五分が覚えにくいなら、それ、片方の
手の指を折り曲げて五両・・もう一方の手の
指を折り曲げて、五分と覚えておくがいい」
と教えてやった。
『はい、分かりました』
小僧は、両方の手の指をしっかり握りしめて
出て行ったが、すぐに引き返し・・
『どうぞ、二分負けておくれ』と頼むので・・
「なせだ?」と聞くと・・
『このままですと、お店に帰っても戸が開け
られません』
山住昭文「江戸のこばなし」
1215 【吉村外喜雄のなんだかんだ】
「1両、現在の貨幣価値は」
大泥棒が商家に押し入り、土蔵を破って千両箱をかついで逃走・・
千両って、今の時代どれくらいになるのだろう・・
鬼平犯科帖など、テレビ時代劇を観るたびに思うことです。
江戸時代の貨幣価値にからむ言葉には、「千両役者」「早起きは三文の 得」などがある。
当時は、盗んだ金が十両以上になると、斬首の刑になった。
また、繰り返し盗みに入って、合計が十両を超えると、同じく死刑に処せられた。
今の時代、投資にからむ詐欺事件が多発して、多数の被害者が出ている。それが数十億円になり、世間を騒がせているが、死刑になった例はない。
貨幣基準は、「金貨」は小判一枚を一両とし、「銀貨」は重さで秤る秤量貨幣、「銅銭」一枚は一文で、その時々の相場によって貨幣の交換が為された。
世の中が安定している江戸中期は、小判一枚=銀60匁=穴あき銅貨4000文でしたが、現在の為替のように時価相場で交換された。
当時、幕の内の相撲取りの年収は約10両。大卒の初任給に当てはめると、年収は約300万円になる・・一両は20~25万円といったところでしょうか。
江戸時代の物価を見ると、人件費は低く、物価は高かった・・
米は、一両の価値で約4万円分、給金は月一両二分、年間40万円が相場と「お宿かわせみ」に書いてあった。
こうして見ると、一両の価値は人件費と米の価格とでは、大きく異なってくる。
江戸初期では、一両で10万円の米が買えた・・中期から後期にかけては3~5万円・・インフレの幕末には、一両でわずか3~4千円分の米しか買えなかった。
かけそばは一杯16文・・幕末は20文。現在のかけそば400円をもとに計算すると・・一文=20~30円見当、一両=4000文として、13~16万円になる。
<江戸中期の物価>
・銭湯 8文=200 ・ソバうどん 16文= 400円
・床屋 28文=700円 ・天ぷらソバ 32文= 800円
・納豆 4文=100円 ・串団子 4文= 100円
・ゆで卵 18文=450円 ・釜めし 150文=2600円
・たばこ 8文=200円 ・スイカ 40文=1000円
・吉原揚げ代 1両2分= 15万円(貧乏人が遊べる所ではなかった)
・居酒屋 (酒1合) 26文= 650円 ・酒一升 250文=6250円
・駕籠(5キロ) 200文=5000円