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歴史/武士の魂・切腹の作法

■家来の命を重んじた家康

奥州「九戸政実の乱」のときのエピソード・・
家康は、武州岩附まで出陣した。
そこで井伊直政に・・
「蒲生・浅野の協力して軍事を計るように」
と出陣を命じた。

これを聞いた重臣・本田直正・・
「このたびの討ち手はまず下の者をつかわし、
もし叶わないときにこそ、直政をつかわすの
が妥当ではありますまいか・・」

すると家康・・
「それは思慮のない者、北条氏直などがする
ことだ。
最初に軽い者をつかわして、らちが明かない
からといって、次に重い者をつかわせば、
最初に行った者は面目を失い、討ち死にする
ほかはない・・理由もなく家臣を殺してはな
らない」と言ったという。



1210 【吉村外喜雄のなんだかんだ】

歴史から学ぶ 「武士の魂・切腹の作法」


武士とは”死”を前提とした職業である。武士に生まれた以上、いつでも死ねる覚悟が出来ていなければならない。

死ぬこと自体は手段に過ぎない・・誰のために死ぬか、何のために死ぬかが大事になってくる。

武士は子どもの頃から、死に方や死に場所を叩き込まれて育つ。

格式ある家柄の子どもは、5~6歳の頃になると、父親から切腹の作法を習う。

「武士の本分は忠義である。義を貫くには、いついかなる時でも命を惜しんではならぬ」

「今日は切腹の作法を教える。まずは扇子を前に置け・・
これが短刀じゃ」

一通り作法をやって見せ・・
「態度はあくまで泰然自若、神妙に一礼して短刀を取り、鞘(さや)を払って逆手に持つ・・こうじゃ。次いでカカトを上げ、膝を左右に開く。
左手でおもむろに、衣服の前を広げ、呼吸を整えてから、短刀を左脇腹に突き立てる・・このあたりじゃ」


子どもは素直に父親のしぐさを真似る・・
「深く切ってはならぬぞ・・はらわたが飛び出して・・見苦しいからな」
「あ~ここからが肝心じゃ。からだを前のめりにして、首を差し伸べる。介錯人が切りやすいようにな・・分かったか?」
ハイ!

「間違うても首を引込めてはならぬ! 介錯人が慌てて・・頭を切ったり・・肩を切ったりするからな。スパッと一刀で首を落とせるように・・
寸分も動いてはならぬ・・そのほうがかたちもよいし、切られるほうも痛くはなかろう」

終わりに死生観を語って、主君に仕える武士の心得を諭す。

「人間は必ず死ぬ・・死ななかった人間は、今まで一人もいない。
死は生きてきたあかしでもある・・生きていなければ死ねないのだ。

武士は名誉ある死、義を貫くための死を願い、そこから逆算して生き方を決める・・自分の死に箔をつける生き方を選んでいく・・これが真っ当な武士の生きざまである」

                                                         ジェームス三木著「へその曲げ方」より

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