■フランソワーズ・モレシャン(1936~ )
フランスのライフスタイルアドバイザー。エッセイスト。
評論家。コメンティーター。ジャーナリスト。タレント。
ユネスコ日本協会スペシャルアドバイザー。
元シャネルの美容部長。外国人タレントの草分け。
「魅力あふれる金沢」
北陸が大好きなモレシャン夫妻は、金沢市卯辰山に住居を構えている。
以下、読売新聞に月に一回掲載している「フランソワーズ・モレシャンの北陸記」コラムから、73号を転載します。
古都金沢の本当の素晴らしさを、私たちに気づかせてくれます。
♪散歩や買物の途中、通りすがりの人から、あるいは自宅に来る友人から、一日に一度は受ける質問・・「なぜ金沢を選ばれたのですか?」
パリと東京という大都会での人生を過ごした後に「なぜ、金沢のような
田舎に?」という秘めたニュアンスがあるようです。
正直に言いますと、もし世界が経済だけでなく、環境問題も含めて、これほどの状況にならなかったら・・もし社会が、マーケティングと情報化によって、これほど非人間的にならなければ、私は金沢に来なかったでしょう。
でも、なぜ金沢? 私にはまだ、人間的な環境が残されている街に見えるからです。
まず自然環境・・今私は、卯辰山に住んでいますが、山から降りてくる空気のおいしいこと。
猫たちの毛もフワフワで、長年の喫煙で肺に問題のある夫も元気・・
木々草花に囲まれた環境で、四季の楽しさに飽きることはありません。
鳥や虫の鳴き声が静寂を深め、自ら思案の声もよく聞こえます。
朝の空気とともにバルコニーでのコーヒータイム・・夕刻には食前酒アペリティフ。
目前には夕日きらきら輝く浅野川・・緑の丘は兼六園・・遠くには白山山系。この贅沢に、東京からの友人たちは・・羨望の溜息ばかり。
ところが、街中に住む金沢の人には、「卯辰山は不便でしょう」と言う・・
とんでもない。
東京やパリの大都市感覚では、卯辰山の我が家は街の中心のすぐ近く・・私はどこにでも歩いて街へ降りていきますよ!
さらに徒歩圏内には、伝統的な町屋敷や美術館があります。
石川県立美術館周辺、21世紀美術館、しいのき迎賓館と金沢城郭を散策・・素敵な景色を眺めながらのおしゃれなカフェでの一服・・レストラン、小料理屋での食事の喜び・・シェフ(料理人)は職人気質だ。
もう一つ、金沢びいきの最大の理由は・・駅前や武蔵、香林坊から竪町・・あちこちで買い物を楽しみますが、どのお店でも、店員さんたちの自然で丁寧な対応・・形だけの丁寧過ぎる失礼もなく、人間的なのです。
大都会で、時代や経済の発展とともに見失われた「街の魅力」・・
人・伝統・自然・新旧の文化・・他の街にない金沢の魅力こそが、
「美しい日本」のモデルなのです。