■釈迦の教え「煩悩の苦しみから自らを救う」
お釈迦さまが言われる教えは、ただ一つ・・
「悲しみや苦しみの基になることから、出来るだけ遠ざかる
ようにします。
煩悩とか欲というものは、苦しみの種を蒔いて歩いている
ようなものです。
目の前の、一時的な煩悩や欲に目がくらみ、人生を誤る
ようなことになってはいけません。
煩悩の苦しみから逃れるために、心を鎮めるとが出来る
ようになったとき、自らを救うことができるのです」
1098 【心と体の健康】 ~幸せな人生~
「釈迦の教え/苦しみから逃れる道(2)」
生まれて直ぐの赤ん坊の心は、どこにも傷のない、ツヤツヤした美麗な玉のようです。
しだいに成長し、知識がつき、言葉を覚え、家族や人との交わりを重ねるにつれ、心はどんどん傷ついていく。
ケンカをすれば憎しみで傷がつき、欲しいものが手に入らないと、貧欲の気持ちで傷がつく。
他人と比較して劣っていれば、妬みや嫉妬が傷になり、老いて病を発すれば、無常の悲しさで、傷はより深いものになる。
釈迦は言われた・・
「人は誰も、心に”苦しみ”(思うようにならないこと)を持って、生きてい る。
いかに人様以上に恵まれた人生であっても、心の苦しみは皆同じだ。
私たちは皆、生まれて、生きて、年をとって、病気で苦しんで死んでいく・・
誰もが、平等に苦しみを抱えている。
それは、人として生まれた以上、避けることのできない苦しみなのだ。
そして、その苦しみから逃れる道は一つだけ・・それは”自分を変える”ことである。
その自分自身を変えるための道こそが、私(釈迦)の教えなのです」
自分自身を変える・・それが、苦しみを消す唯一の方法なら、教えを学ばなければならない。
本当だろうか・・もしも教えを学ぶことで、自分自身を変えることができるなら、ヒビの入った心の苦しみから解放されるだろう・・。
教えの意味を探求し、学んでも、釈迦の教えを全て理解することは無理だろう。
しかし、「ここに、苦しみを消すための教えがある」と、心のよりどころにするなら、心の傷が治るかどうかは分からないが、立派なお医者さまに治療してもらっているような、安心感が嬉しいのです。
自分が辛い思いをすれば、それだけ、人の辛さを理解できるようになる。人生の辛さは、人生を生きてきた者にしか分からない。
大人の心はみんな傷だらけだが、それが大人の素晴らしさなのだ。
釈迦もまた、傷を負って修業に励み、精進を重ね、悟りを得たのです・・
だからこそ、その教えは慈悲に満ち、信頼できるのです。
佐々木閑・花園大文学部教授「釈迦に魅せられて」