艶笑落語・短命
■間抜けオチ
落語にはいろんな「オチ」があるが、中でも面白いのが
「間抜けオチ」
「吉っぁん・・見ねぇ・・あのタバコ屋の前を行く女、
ありゃあ・・いい女だぜ」
『え? ああ・・ありゃ横丁の乾物屋の後家さんだよ』
「え? 昔はあんなにいい女じゃなかったぜ」
『そこだ! 女ってぇものは・・亭主が亡くなる・・ 独り身になると・・
頬に紅をさしたりするとね・・
がらっと見違えるように、色っぽくなるもんだ』
「へ・・えッ!? ほ~うッ・・そんなもんかねェ・・後家になると・・
ああも色っぽくなるもんかねェ・・
ナマノのんくよわゅみまなりへへッ・・うちの女房も後家にしてェ」
なんて・・落語の世界にはバカなやつもいるもんです
東西落語特選
1085 【吉村外喜雄のなんだかんだ】
~ことば遊び~ 「艶笑落語・短命」
今日の艶笑落語は、古今亭志ん生や柳家小さんが十八番にしたネタ「短命」です。
短命・・「指先が触れて、そのあとは・・」・・この程度の下ネタで艶笑落語にされ、昭和三十年代半ば頃まで、放送が自粛されたのです。
♪八五郎が隠居の所にやってきて、伊勢屋の三人目の旦那が死んだという。「どうしてまた・・」と隠居
『旦那ってェのは、三人とも婿養子なんでさァ』と八五郎
『最初の旦那は役者みたいないい男で、夫婦仲もよかったが、養子に来て半年ばかりして寝込んで・・そのまま亡くなった。
二人目は、最初の養子に懲りたのか、色の浅黒いガッチリとした男で、これも仲がよかったんだが・・一年半ほどして亡くなった。
そして三度目の養子が、昨日亡くなったんだ・・』
隠居が八五郎に、伊勢屋のおかみさんの器量を訪ねると・・これが評判の美人で、ふるいつきたくなるようないい女。店は番頭に任せっきりで、昼から奥の座敷で夫婦御膳を挟んで差し向かい・・
ここまで聞いたご隠居、「それだよ・・八っつあん」と意味ありげに言い・・
「二人っきり差し向かいの昼ご膳・・おかみさんがご飯をよそって、旦那に渡す・・受け取る茶碗の手と手が触れる・・目の前には、ふるいつきたくなるような美人・・座敷には二人のほか誰もいない・・短命だろう」
これが八五郎にはわからない? 「飯を食い過ぎて・・」とか、「食あたり」とか、見当違いのことばかり言っている。
隠居「わからないかね・・いいかい、手と手が触れて、目の前にはいい女・・二人のほかに誰もいない・・お前、ここで飯を食うかい?」
隠居、ここで川柳を例にあげる・・
「その当座 昼もタンスの 環が鳴る」
「新婚は 夜することを 昼間する」
八五郎そこまで言われて・・やっと気がついた。
八五郎・・葬式の手伝いの前に家に戻って、まずは腹ごしらえ・・
ここでさっきの隠居の話を思い出して、自分のかみさんに飯をよそわせる。
「ほれ!」と山盛りの茶碗を差し出すかみさん・・受け取ろうと手を出すと・・指先が触れた。
おッ!手と手が触れた・・ありがてェ・・手を動かすんじゃないよ・・あたりを見ると誰もいない・・顔を見....『ああ・・おれァ・・長命だ』