■閉塞感
近年、絶望の淵に立たされた時、自ら”自殺”を選ぶのでは
なく、”他人を殺傷する”ことで、解決を図ろうとする者が現れ、
世間を騒がす大きな事件が起きています。
社会のひずみの表れだろうか・・秋葉原のスクランブル殺人
や、八戸市の家族殺害事件、20人が犠牲になったアメリカ
の学童乱射事件など・・痛ましい事件が後を絶たない。
そうした事件に共通するのは、「存在感」をとことんつぶされ
た、加害者の救いようのない”閉そく感”。
たえず自殺衝動にかられるが、”自死”ではなく、他人を殺
傷する道を選ぶことで、苦しみから逃れようとする。
加害者の多くは、「(殺す)相手は誰でもよかった」とうそぶく
・・そして「どうせ自分なんか」と吐き捨てるのです。
社会が、自らの存在を受け入れようとしなくなった時、生きる
意味を見失い、生きる意欲をなくすのです。
1074 【心と体の健康】
~幸せな人生~ 「生きる意欲」
人生、思い通りにならないことが多い中、私たちは、誰にも代わってもらえない”いのち”を燃やして生きている。
近年東京では、三十歳前後の若いホームレスが目立つようになったと、NHKクローズアップ現代。
過酷な労働や低賃金に耐えきれず、勤労意欲を失った人たちです。
パート社員や派遣社員だけでなく、近年、正社員まで職場でモノのように扱われ、切り捨てられていく・・
国が定めた最低賃も守られず、働かされる人たち・・人件費ではなく
”物件費”として、会社の帳簿で処理されていく。
人間扱いされないことへの、何とも言えない閉そく感、不安感にさいなまれる若者たち。
そうした若者が、社会に対する信頼感を失ったとしても、本人が悪いわけではない。
こんな世の中になった根本原因は、バブル崩壊後の社会構造の変化による「効率第一、能力第一」の考え方にあるようです。
社会の力が弱まり、使える人間は”立派”で、使えない人間は”いらない”・・簡単に切り捨てられていく・・そんな社会のあり方が不安をつのらせる。
今年に入って、アベノミクス効果か・・ようやく景気が上向き始めた。
私たちの世代が生きてきた右肩上がりの時代なら、何かで失敗し挫折しても、どこかで立ち直るきっかけがあり、チャンスがあった・・
今は、残念ながらそれが見えない。
高校・大学を出ても、希望する就職口が見つからず・・高い志で、夢に向かって意欲を掻き立てようにも、それを受け入れる社会の力が弱まってしまっている。
人生を生き抜く自信や存在感は打ち砕かれ、自分を諦めざるを得なくなっている・・「自分なんかどうなってもいい・・無理だよ・・どうせうまくいかないから」と、閉じこもる若者が増えているのです。
そんな生きにくさを抱えた社会は、「負けるのは、努力が足りないからだ」「勝ったのは、頑張ったからだ」と片付けられていく。
自分の損得しか考えない、視野の狭い若者が増えたとしても、非難のしようがないのです。
日本は、1998年から13年間続いた3万人を超える自殺者が、昨年ようやく3万人を切った・・長年の不景気で、倒産する会社も出つくしたのでしょう。こんな異常な社会を、私たちは何の疑問も抱かずに受け入れ、暮らしているのです。