■江戸小噺「ボケの始まり」
「お歳は? おいくつになられました?」
『今年で 75でございます』
「お元気そうで 何よりです」
『お蔭さまで 細かいものもよく見えますし、
歯も丈夫でございますが、どうしたわけか、
最近、とみに物覚えが悪くなりました・・』
『夕べもババァの寝床に行きましたところ、
「あれっ! たった今帰られたばかりなのに、
また来られましたか?」と言われました・・』
山住昭文「江戸のこばなし」
1055 【吉村外喜雄のなんだかんだ】
~ことば遊び~ 「艶笑落語・松茸(2)」
三遊亭圓歌の艶笑落語、「松茸」の続きです。
ユーモアたっぷり”クスリ”と笑ってしまうオチ・・江戸庶民の性に対する
おおらかさが、艶笑落語・艶笑小話となって、今に受け継がれているのです。
♪秋も深まる頃・・ポツンと枝に残った柿の実が、隣に並んだ栗の実に、
柿「お前さまはいいよなァ・・うらやましい」
栗『どうして?』
柿「どうしてって、そうじゃねェか・・おめえは、まず一番下に渋皮だろ・・
その上に固い皮があって、そいからイガのコートを着ておるじゃろ
う・・なア・・三枚もの厚い衣に包まれて、果報なお方じゃ。
私などは、身につけるものといえば、ただのうすッ皮一枚。
寒さが深まるにつれて、赤い顔して必死に力んでおらねばならぬ・・」
と、涙ながらに我が身の不運をかこつ。
栗『何言ってんだい・・このカキゃァ! つやつやしたいい血色してやが
って・・私なんざ・・皮むいてみろ・・寒さに青白くふるえてンだ・・』
柿「何だとォあまぐり野郎・・目の玉クリぬくぞ!」
栗『来るか・・このカキィ! カキむしるぞ』
てんで、喧嘩になってしまった。
柿がまっ赤になって毒づけば、栗も負けずにイガを逆立てましてネ・・
『野郎!』「チクショウ!」とやり逢ってっいるのを、
松の根本の松茸が顔を出して・・
「チェッ! うるせえやつらだなァ・・昼寝もロクスッポできやしねえや・・
おい!柿に栗! おめえたち、気は確かか・・
みろ! あそこでアケビが笑ってらア・・上を見りゃァ きりがない。
一重でも身に着けるものがあれば、ありがたいと思わなくちゃ・・
この俺を見ろ・・この寒いのに、ふんどしさえもしておらぬ 」