■江戸小噺「いやな予感」
藪医者先生が、子どもの患者を死なせてしまった。
子どもの親が、「お上に訴える!」と騒ぎ出したので、
平謝りに謝って・・代わりに自分の子どもを差し出して、
なんとかその場は収まった。
数か月して・・またまた、ある家の奉公人を死なせて
しまったので、その償いに、今まで自分の身の回りの
世話をしていた、たった一人の奉公人を譲り渡して、
許してもらった。
それから数か月して、近所の小僧が飛んできて・・
「おかみさんが難産で、ひどく苦しがっていますので、
一刻も早く見に来て下さい」
と言うので、藪医者先生、いやな予感に襲われながら、
出がけに、自分の女房に向かって・・
「あの家の亭主・・どうやら・・お前に気があるらしい」
山住昭文「江戸のこばなし」
1048 【吉村外喜雄のなんだかんだ】
~ことば遊び~ 「艶笑落語・松茸(1)」
あと数日で三月・・日を追うごとに夜の明けるのが早くなり、 春がすぐそこに来ているのが感じられます・・。
今日から三回に分けて艶笑落語「松茸」です。
「山のあなあな・・」で知られる三遊亭圓歌が、このちょっと卑猥な落語「松茸」を、満面笑顔で語るとき・・圓歌ならではの可笑しさが、こみあげてくるのです。
♪昨年の秋、松茸は不作だったが・・私もアレは好きですネ・・えェ・・
焼いてよし、おツユにしてよし、ナマでよし・・まあ・・ナマじゃ、あんまり食べませんけどねェ・・ なかでも、ハモしゃぶしながら、ポン酢につけて・・たまんないねェ・・ 唾が出てきやがったぜ。
うちの女房なんかア・・ナマのやつをよく食べるんですが・・
なにも、こんなところで笑うこたアないヨ! そういうあんただって・・
けっこう食べたり・・食べさせたり・・なンぞしているくせに・・
「え~松茸ェ、マッタケェ~」 松茸屋が、松茸を売り歩いている・・
女『ちょいと、ちょいと、松茸屋さん・・ちょいとォ~』
松「ヘイ、毎度ありがとう存じます・・ え~、どのへんがよろしゅう
ござんしょう」
女『そうねェ・・あア、これがいいわ・・随分と立派じゃない の・・
おいしそうねェ・・これ、いくら?』
松「ヘイ、十五銭です・・」
女『まアねェ・・値段は手頃だけど・・あたし、ひとりだからねェ・・
こんな大きなの食べきれないわ・・
もう少し、ちっちゃいのにしようかしら・・こっちのは、いくら?」
松「ヘイ、十五銭です・・」
女『エ! 大きいのと・・おンなじなの?』
松「ヘイ、同じでござんす」
女『おかしいじゃァないの・・大きいのと小さいのと、同じ値段なんて・・』
松「ヘイ、あのう・・松茸ァ全部・・つっこみでございァす。
大きくても小さくても、味に変わりはございませんし、
小さい方が身が締まって、よろしいようで・・」