■小説「コンスタンティノープルの陥落」
コンスタンティノープルの攻防戦で死力を尽くした、塩野七生の小説。
1453年5月29日、東ローマ帝国の首都として千百年余り栄えた、難攻不落
の要塞都市コンスタンティノープルは、若干21歳の皇帝マホメッド二世率いる
トルコ軍の、1年にわたる猛攻の前に、ついに 陥落した。
代わって、赤字に新月と星をあしらったトルコの国旗が、金角湾の潮風にはた
めく。 東方キリスト教の総本山ハギヤ・ソフィアは、そのままイスラムの 聖堂
に変貌。アラーの神、コーランを手にするイスラム信者の教会になった。
地中海に君臨した首都をめぐる、キリスト教世界とイスラム世界との激しい
覇権闘争の顛末を描く、甘味でスリリングな・・お勧めの歴史絵巻です。
1040 「吉村外喜雄のなんだかんだ」
~歴史から学ぶ~ 「文明の衝突・宗教戦争」
アルジェリアのイスラム武装勢力人質事件で、78人が人質に取られ、
14人の尊い命が奪われた・・犠牲者の内10人が日本人という、最悪のテロ事件になった。
人類の歴史で、過去世界で繰広げられてきた宗教戦争は、世界大戦ほどの規模ではないにしても、敵対する民族を殺しつくすまで、戦闘が終わらない残忍性を秘めている。
イスラムのジハード(聖戦)や、キリスト教の十字軍のように、目的達成のためにはいかなる犠牲もいとわない、無謀な戦争へと発展していく。
宗教戦争の経験のない日本人にとって、その悲惨さと恐ろしさは、想像を絶するものがある。
中世における最も悲惨な宗教戦争は、十字軍の遠征であろう。
1099年に十字軍によるエルサレムへの攻撃が始まると、イスラム連合軍は総崩れ・・イスラムの支配者・軍隊・住民すべて、根絶やしに殺されてしまった。
エルサレムを手に入れた十字軍は、エルサレム王国を樹立・・
イスラム周辺の住民を虐殺し、彼らの財産を略奪し、富を奪った。
これに味を占めたヨーロッパの諸侯は、更なる富を求めて十字軍を編成し、イスラムを侵略・・略奪を繰り返した。
キリスト教とイスラム教の聖地を巡る骨肉の争いは、その後600年続いた。1187年、イスラムの英雄サラディンにより、エルサレムを奪還。
聖地再奪還に向け、第三次十字軍が編成されたが失敗に終わる。
1229年、神聖ローマ帝国の皇帝フリードリヒ二世による、第六次十字軍がエルサレムを奪還・・しかし、その15年後に、エルサレムは再びイスラムの手に・・。
その後1917年、英国軍がオスマントルコ軍を破って入場するまで、
約700年間イスラムの支配が続くことになる。
20世紀初頭からは、ユダヤ人のパレスチナ移住が増大・・
1948年、国連で「アラブからユダヤ国家を分離する」決議が採択されるや、イスラエルは独立を宣言。
その後イスラエルは、周辺アラブ諸国と4度にわたる中東戦争を経て、現在もパレスチナ武装勢力との抗争が続いている。
アフガニスタン、イラク、そして今回のアルジェリアテロ事件と、イスラム急進派やアルカイダのテロ組織が、活動を活発化・・
今後も「文明の衝突」と言われる宗教対立による戦いは、絶えることなく繰り返されるだろう。
竹田恒泰「竹田研究会」、塩野七生「十字軍物語」より