■艶笑落語とは
落語の中に、艶笑落語という分野があります。
艶笑とはなんぞや?
要するにセクシー落語、ピンク落語といわれるものです。
表舞台の寄席などでは、決して演じられず、ごひいき客の
お座敷噺、高座が引けたあとの余興や、深夜テレビなどで
密かに演じられ、語り継がれてきたものです。
落語のオチは卑猥で、ちょっと顔を赤らめたりしますが、
江戸庶民文化の伝統から生まれたエロチカとして、
おおらかで楽しい笑いをさそい、和ませてくれます。
1029 【吉村外喜雄のなんだかんだ】
~ことば遊び~ 「艶笑落語・尻餅」
私が落語に興味を持つようになったのは19歳の時。
「山のあなあな・・」で知られる三遊亭歌奴(現在の三代目圓歌)が、石川県内をドサ回りしていた頃です。
当時、真打になりたての歌奴・・夜、高座が引けて一座がくつろいでいるとき・・お手伝いの私たちを労って「艶笑小話」を語ってくれた。
「お風呂でおならをしたら、前と後ろにプクプクパッチン。男のおならは・・女は・・」と・・お腹を抱えて笑ったものです。
♪大晦日だというのに、八五郎の家では夫婦喧嘩の真っ最中・・
隣り近所では餅つきの音もにぎやかに、正月の支度をしているというのに、八五郎の家では、貧乏ゆえに餅もつけない・・
「長屋の手前、餅つきの音だけでも聞かせてほしいンだよ」
『って言われてもなァ・・ん?』
自棄になった八公の頭に、とんでもない妙案がひらめいた。
『何とかしてやろうじゃないの・・その代わり・・何をやっても文句を言うなよ』
夜になって・・八公、子どもが寝たのを見計らい・・そっと外に出て・・
聞こえよがしに大声で・・
『え~餅屋でございます・・八五郎さんのお宅は・・ここですな!』
ご近所を意識して、餅屋が来たところから、餅をつく場面にいたるまで、すべて”音”だけで再現しようというのだ。
主になつて「オ~餅屋さん・・ご苦労様」
餅屋になって『ご祝儀ですか・・え~親方・・毎度ありがとうございます』
子どもにお世辞を言ったりする場面まで、一人二役の大奮闘。
餅屋になって『そろそろお餅をつきますので・・』
(おっかあ、臼を出せ) (そんなもの、うちにないわよ)
(お前の尻だよ、お尻を出せ!)
餅屋になって『臼をここへ据えて・・始めます』
(白い尻だなァ) (あんた!何を言ってるんだい)
嫌がるおかみさんに着物をまくらせ、手に水をつけて、
尻をペッタン、ペッタン・・
「コラショ、ヨイショ・・そらヨイヨイヨイ! アラヨ、コラヨ・・」
そのうち、かみさんの尻はまっ赤に・・
『そろそろつき上がったようだ・・それッ、こっちへ空けるよ』
(ひと臼ついたつもり・・) 「と・・次は二臼目だ」
たまりかけた女房が、「餅屋さん・・あと幾臼あるの?」
『へェ、あと二臼でしょうか』
「おまえさん、餅屋さんに頼んで、あとの二臼は・・
おこわにしてもらっとくれ」