しつけは家庭の食事から
■江戸小噺 「汗」
「暑い!暑い! 今日の暑さは特別じゃ。
長吉、そこのうちわであおいでおくれ」
『はーい』
長吉が、旦那の後ろに回って、うちわの柄が折れるくらいに
力を入れて、風を送ってやった。
「もういい、もういい、さっぱりした。いやいや、お前のかげで、
汗はどこかへふっ飛んで行ったぞ」
と、気持ちよさそうに言うと、後ろの長吉、汗をふきふき・・
『おかげで、汗は全部わたしの方に参りました』
■江戸小噺 「もちっと上」
裏庭で、行水を使っていたおかみさんが、突然雷鳴をともなった
夕立ちが降りだしたので・・
「だれかいないかい? たらいを中に運んでおくれ」と、家の者に
呼びかけると、出てきた丁稚が、
あそこの辺りを手で隠して突っ立っているおかみさんを見て、
『おかみさん・・おへそは・・もちっと上』
997 【心と体の健康】 ~子育て~
「しつけは家庭の食事から」
某社の新卒社員採用試験・・面接と作文のみで試験は終了。
食堂で会社が用意した弁当を食べ終わったら、解散です。
この会社では、出身大学や成績で採否を決めたりはしません。
食堂に受験生だけを残し、物陰からそっと食事風景を観察して採否を判断するのです。
きちんと両手を合わせ、「いただきます」と言って箸をとる学生。
片肘ついて、半分足を投げ出して食べる学生。
隣の人に楽しそうに話しかけながら食べる学生。
一人黙々食べる学生。
早食い・・好き嫌い・・食べ方はまちまちです。緊張から解放された受験生・・日頃の食事の姿を垣間見ることができるのです。
食事の摂り方から、家庭の食事のあり方が見えてくる。
子どもの頃の食事のしつけは、人格形成にもろに影響するのです。
貧乏に育った子どもは、”心貧しく”なる一方、好き嫌いをせず、出されたものを粗末にしません。
飽食に育った子どもは、好き嫌いや食べ残しが多く、食事に対して感謝の心がなく、傲慢です。
家庭内暴力、深夜のはいかいなど、問題を抱える子どものほとんどは、食べたい時に食べたいだけ、食べたいものしか食べない・・そんな家庭で育っています。
日によって食事の時間がバラバラで、オヤツが夕食に重なったりする。食生活の乱れが、そのまま家庭環境の乱れになっている。
子どもに、どんな形で食事をさせるのか・・子どもを育てるとき、親が最初に考えなければならない問題です。
子どもは親のコピーです・・何れ親になり子育てをします。
日頃、規則正しく食事をし、好き嫌いをたしなめ、正しい箸の持ち方や食事のマナーを教えていく・・これが「しつける」ということです。
塾に通わせ、勉強のできる利口な子に育てても、まともに食事も出来ないようでは、親として責任を果たしことにはなりません。
まともな食事もできない人が、どうして子育てが出来るのでしょう。
結婚すれば、子どもが生まれます。産んだ子をどう育て、どうしつけるのか・・可愛いがるだけでは、子どもは育たないのです。