■落語家の世界
落語は、江戸落語と上方落語に分かれます。
咄家が座布団に座るのは同じですが、上方では「見台」を置き、
場面の転換には、子拍子と呼ばれる拍子木を打ち、噺の途中で、
三味線や笛、太鼓などが入り、噺を盛り上げます。
江戸落語は、前座→二つ目→真打という順番で昇進しますが、
上方には、二つ目や真打の制度はありません。
師匠に入門して弟子になり、見習い期間を経て前座として高座に
上がることができます。通常は、師匠宅の諸事を済ませてから、
寄席や落語会で裏方を務めます。
二つ目に昇進すると、羽織・袴の着用が許され、一人前として
扱われます。真打になると、寄席でトリを務めたり、弟子を持てる
ようになります。
984 【吉村外喜雄のなんだかんだ】
~ことば遊び~ 「落語・芝浜」
大金を拾ってきた亭主に嘘をついて、飲んだくれ亭主を更生させる夫婦の人情噺です。
三年後に、嘘を隠し通すのが心苦しくて、告白する女房、
「だまして申し訳ない」と涙を流す。
噺家が女房をどう演じるかで、「芝浜」の印象が変わってきます。
♪腕はいいのだが、酒ばかり飲んで仕事に身が入らない、魚屋の勝五郎。業を煮やした女房に叩き起されて、久しぶりに芝の浜にある魚河岸へ出かけた。
波打ち際で一服し、顔でも洗おうと波打ち際に手をいれる・・
すると、長い紐が波に揺れている。
引き上げてみると、ズシリ重いボロ財布。
数えてみると、二分金で四十二両!
これだけあれば、しばらく遊んで暮らせるではないか。
急いで家に帰り、仲間を呼んで祝い酒・・
酔いつぶれて寝てしまった。
どのくらい寝込んだだろうか・・ふいに女房に起される。
「お前さん、早く商いに行っておくれよ」
『ところで、あの四十二両は?』と聞くと、
「お前さん、悪い夢でも見たんじゃないのかい」
金は夢で、酒盛りは本当かい・・情けねぇ夢を見たもんだ。
「今日からおれは酒を断つ」と女房に誓い、それからは人が変わったように、仕事に精を出すようになった。
三年後、得意先も増え、表通りに店を構えるまでになった。
その大晦日、女房が勝五郎に差し出したのが、見覚えのあるボロ財布。
「実は大家さんとも相談し、お奉行所に届けを出した。あんたには、すべてが夢ということにしておいたけど、落とし主が見つからないまま、お下げ渡しになったんだよ」
それを聞いた勝五郎、
『おめえが夢にしくれたから、おれたちの今がある』
「もう、お前さん、酒を飲んでも大丈夫だろう・・さあ、飲んでおくれ」
『三年ぶりの酒だ、もらおうか・・・いや、よそう・・また夢になるといけねえ』