■論語をネタにした落語「厩火事」
約二百年前に作られた古典落語に、以下の論語をネタにした噺がある。
「 厩(うまや)焚(や)けたり 子 朝より退きて曰く
人を傷(そこ)なえりや と。 馬を問わず 」 (郷党第十)
ある時、孔子の家の厩が焼けた。役所から帰った孔子は尋ねた。
「人に怪我はなかったか」と・・その場では、馬について尋ねなかった。
※毎週月曜と火曜、BS日テレPM6:00、大河ドラマ「恕の人・孔子伝」
”孔子”の生涯を放映しています。
958 【吉村外喜雄のなんだかんだ】
~ことば遊び~ 「落語・厩(うまや)火事」
仲人相手に亭主の愚痴・・「別れたい」は口先だけで、亭主に惚れきっている。そんな女心を、笑いを織り交ぜながら表現するのが、噺家の腕の見せどころです。
噺の中に出てくる二つの逸話から、亭主の本音を引き出そうとする女房・・ 思わず飛び出した男の本音が見事なオチになる。
柳家小三冶と春風亭小朝が、得意ネタにしている。
♪今日も、髪結いのおさきが駆け込んできた。三日とあけずにやって来ては、聞かされる夫婦喧嘩の愚痴と相談・・いくら仲人とはいえ、たまらない。
気さくで腕もいいおさきは、けっこう稼ぐ働き者だ。それに対して、六つ年下の八五郎は、おさきが惚れているのをいいことに、言うところの”髪結いの亭主”を決め込んでいる。
「今日ばかりは愛想が尽きた」とおさきは言う。
ならばと、「女房に稼がせて、酒を飲んで遊んでいるやつなんとは別れちまえ!」と言うと、おさき「そんな言い方しなくても・・」と、亭主をかばう。
「そんなら亭主の気持ちを試す良い方法がある」と話したのが、二つの逸話。
一つ目は、唐土(もろこし)の孔子という有名な学者の話。
留守中に厩が火事になり、愛馬が焼死してしまう。
ところが、家に戻った孔子は、馬のことは一言も触れず、家臣一同の無事を喜んだ。 使用人たちは主人の深い思いやりを知って感激した・・
これにより、人望はますます高まったという。
二つ目は、陶芸品に凝っている、麹町のさるお屋敷の旦那様の話。
あるとき、家宝の皿を手にした奥方が、二階から転落した。
奥方は必至で皿を守ったものの、旦那様が皿ばかり気にして、奥方の身を案じる言葉を口にしなかった。そのため離縁・・以後一生独り身で過ごしたという。
男の本心は、いざという時にならなければ、本当の気持ちはわからない・・「亭主にも試してみたら?」と仲人。
おさきは、一世一代の大芝居を打つ。
涙を流して喜ぶおさき、『そんなにあたしが大事かい』
「あたり前よ!おまえに怪我でもされたら、明日から遊んでて酒が飲めねぇ」