心をコントロールする術
■剣道・精神修養における「四戒」
剣道の精神修養には、驚き・疑い・恐れ・惑いの「四戒」がある。
自分より強い相手と対峙する時、恐れを感じて恐くなります。
恐いと思った瞬間スキが生じ、それが弱点になります。
また、相手の方が「コテ打ちやメン打ちが得意」と思ったら、
心に惑いが生じ、弱さになります。
己に勝つには、逃げず・恐れず「四戒」と向き合わなければ
なりません。そのためには、勝つためのトレーニングではなく、
己を鍛えるトレーニングでなければなりません。
試合に臨むときは「四戒」を捨て、恐がらず平常心で、
”精神力”という鎧をまとって、ベストを尽くします。
反対に、相手の「四戒」を見抜き、その弱点を突いていけば、
勝利はあなたのものです。
936 【吉村外喜雄のなんだかんだ】
「心をコントロールする術」
今日のテーマ「心をコントロールする術」は、日本武道・・剣道の有段者に、その例を見ることができます。
剣道には、武士の考え方や生き方が息づいています。剣道に必要なものは、闘争心ではなく、落ち着いた精神や心の持ち方です。
江戸初期、最高の剣士と恐れられた柳生宗矩(むねのり)の「兵法家伝書」には、「敵を切るにはあらず・・卒尓に仕掛けずして、手前を構へて、敵に切られぬやうにすべし」「武士たるものは、剣をいかに用いるべきか・・そのために、いかに心を養うか」とある。
日本武道の剣道や合気道は、相手を倒すことよりも、相手の気合いや力をいかに取り込み、封じ込めるかに心を砕いて、自分自身をみつめ、鍛錬する・・日頃から己を律し、ひきよう者と言われない人間、「己に克つ」ことを価値観に据えて、日々稽古に励むのです。
打ち克つべきは敵ではなく、内なる己にある・・相手を倒すための強さではなく、己の人間としての強さこそ重要なのです。
この考え方が武士道の基本になり、精神的成長を何より大切にして、心技一体の精神を育んでいく・・それが脈々と受け継がれているのです。
話はそれるが、1月29日アメリカ男子ゴルフツアーの最終ラウンド・・
石川遼は、通算9アンダー13位で終えた。バランスの良いプレーで、上位をうかがう戦いができたのです。
「四日間、自分の技量に合った攻めに徹し、一か八か勝負したい欲求を極力抑え、難しい位置にあるピンは狙わない安全策をとった。
ドライバーを曲げても、2打目以降に集中し、確実にパーをセーブ。
大会を通じて”感情と技量”の均衡がとれ、自分をコントロール出来た」と試合後石川遼は語った・・一皮むけたようです。 (1/31読売朝刊)
剣道の基本は「礼に始まり礼に終わる」。相手を常に尊敬し、礼をきちんと守り、謙虚であること・・人間形成のうえで最も重要なことです。
剣道は、稽古で己の技を磨くことも大切だが、道場は自分の心技を鍛える所・・常に清掃し、きれいにしておく。防具や竹刀の手入れも怠らない・・これも稽古です。
精神を正しくし、心を磨くことを同時にやらなければ、剣道の技は身につかず、一流の剣士にはなれません。
剣道の勝負はあくまで”手段”である。”勝つ”ことだけが目的ではない。試合相手と自分が、共に”協力”して試合をつくりあげていく・・その精神が大切なのです。
外来のボクシングやレスリングは、勝つことを目的に闘い、”闘争心”こそがパワーの根源であると信じられてきた。
日本の剣道や弓道とは何かが違う・・武道とは一体何なのか?
答えは「人間形成の道場」である・・武道を通して強く立派な人間を目指すのです。
スポーツは、小さい人と大きい人が闘うと、普通は身体の大きな人が有利になる。剣道は、身体の大きさも老若も問わない。また、剣道の高段者は、他のスポーツと違って、歳をとっても、弱くなることはない・・むしろレベルアップしていく。体力やスピードは衰えるが、精神面がそれを埋め合わせ、更に高まっていくのです。
高段者ともなれば、長年に渡る心の修行で、相手の動きが見えるようになる。難行苦行の末悟りをひらいた禅僧と、相通じるものがある。
NHK・BS「武士道」より