■国民総幸福量(GNH)
「国民総幸福量」が話題になった。これはブータンの開発政策の
根幹をなす概念で、11月に来日した現国王が1980年代に
提唱したものです。
その政策は、「持続可能で公平な社会経済開発」「自然環境の保護」
「文化財の保護」「良い統治」の4本柱からなっている。
国の未来を「経済開発GDP」に求めたら、自然環境の破壊を招き
ブータンの伝統と文化は失われるだろう。ブータンの国土に占める
森林面積は72%。医療費は無料、教育費も制服代など一部を除いて
無料。国民は、村の開発計画に、自分たちで優先順位を決め、政府に
提案する。
2005年の国勢調査では、「あなたは今幸せか?」の問いに、
45.1%が「とても幸せ」、51.6%が「幸せ」と回答している。
近年近代化が進み、若者の間に車や家電品、携帯電話などへの
物的欲求が高まり、幸不幸を測る物差しが変化しつつある。
922 【吉村外喜雄のなんだかんだ】
「都道府県・幸福度ランキング」
法政大学の研究グループが、47都道府県を対象に、初の「幸福度」ランキングを発表した。「暮らしの住みやすさ、質、豊かさ」を測る試みとして注目されている。
調査項目は…「出生率」「失業率」「刑法犯認知数」ほか、40の指標を基にランク付け。第一位は以前から住みよいと言われてきた福井県。以下、富山、石川と北陸三県が上位を独占した。
4位は鳥取県、8位の島根県、10位新潟県と、ベスト10に日本海側の県が目立つ。
どん尻は大阪で、高知県、兵庫県と西日本の県が続く。東京は38位、愛知は21位。先月旅行した、富士山が美しい静岡県は19位。東海地震への不安感が影響しているのでしょう。
日本が高度成長期で、右肩上がりの頃、若者の多くは都会にあこがれた。当時の豊かさの基準は「所得の大きさ」…国内総生産GDPが物差しになっていた。
近年は、住みやすさの基準を「自然環境」に求めるようになり、健康や治安など、”ゆとり”や”やすらぎ”に求めるようになった。
11月中旬ブータン国王夫妻が来日…国会で演説し、6日間、京都など国内を視察した。
ブータンといえば、「国民総幸福量(GNH)」と呼ばれる基準を提唱して、世界の注目を集めた国です。
今回日本で初めて、総幸福量(GHN)を都道府県に適用し、豊かさランキングを試みた。
面白いのは、太平洋側に比べ、経済発展が遅れている、日本海側の過疎県が上位を占めていることです。
福井県は、文部科学省の学力・体力テストで全国1位になっている。富山県も、世帯当たりの教育費は全国一位。地域のコミュニティーがしっかりしていて、子どもたちが伸び伸びと育つ環境が、北陸にあるのでしょう。
根拠となる指標には、「都会の魅力」…公共交通の利便性、ファッション・流行、娯楽といったデーターは含まれず、こうした文化度を加味したら、順位はまた違ったものになるだろう。
最下位の大阪…英国で調査した「世界の住みやすさ都市ランキング」によれば、世界の上位に入る。
逆に、総幸福度上位の県は、若者が都会へ流出し、車なしでは暮らせない・・「不便さランキング」では下位に入るだろう…あくまでも目安に過ぎないのです。
中日新聞