■ことばの語源 「オッス!」
挨拶を交わす言葉に「オッス!」がある…その語源は?
青年が、同輩または年下に向かって交わす「オッス!」
親しみを込めた挨拶ことばで、戦後間もなく、部活などで頻繁に
使われるようになった。
「オッス!」の語源は「おはようございます」が詰まったものです。
「おはようッす!」と縮まり、頭の”お”とおしまいの”す”を残して、
真ん中をすべて省略…「オッス!」になった。
912 【吉村外喜雄のなんだかんだ】
~ことば遊び~ 「落語・たらちね」
「たらちね」は古典落語の名作です。あらすじは知らなくても、題目はご存知でしょう。
前座の頃に身に付けるネタで…難しいので、きっちり噺せて、なお且つ笑いが取れるようになったら、二つ目が見えてきます。
語りの中で出てくる「チンチロリンのサ~クサク…」は、故植木等が、全盛期の頃歌って大うけしたことは、今も忘れられない。
♪人は好いが、貧乏でなかなか嫁の来てがなかった八五郎に、長屋の大家さんが、願ってもない縁談を持ち込んできた。
しかも、炊事・洗濯・縫いものは一通りこなし、嫁入り道具まで一揃い持って来るという。
器量も十人並み以上と、なかなか悪くなさそうだ。
あまりの好条件に、かえって驚く八っつぁん…
何か事情でもあるのかと、尋ねてみると、相手の女性には
傷があるという。
「なんです…傷ってのは…あっ、おでこに三日月の形をした
傷があるとか…」
『そうじゃないよ。実はね、屋敷奉公のせいで、ちょっと言葉が丁寧すぎるんですよ』
「へっ、丁寧すぎる? いいじゃありませんか…
おいらなんか乱暴すぎるって、怒られているんだから、
丁寧ならいいでしょう…よ~し、貰ったぞ! 嫁に貰いました!」
さあ、それからは嬉しくてしかたがない。
「ついに俺にもカカァができるんだ。そうなると、飯を食うの一つとっても、今までとは大違いだぞ。
お茶漬けなんぞ食っても、カカァは小さい茶碗でチンチロリン、上品に箸を使ってサークサク、沢庵食べてポ~リポリ…
チンチロリンのサークサク、サークサクのポ~リポリ…
とくらぁ」
「俺はガサツだから、大きい丼でガンガラガンのザックザク、
ボーリボリとくらあ…ガンガラガンのザックザク、ザックザクの
ボーリボリ…」
わけのわからない妄想で、すっかり盛り上がっているうちに、
いよいよ新妻がやって来る。
ひと通りの家財道具が運び込まれ、仲人として付き添ってきた大家が帰ると、ついに二人きりに…。
「いけねえ、まだ名前も聞いてなかったな…あの~お前さんはなんてえ名前だい」
『わらわの姓名を問いたもうや? 父はもと京都の産にして、
姓は安藤、名は慶三、あざなを五光と申せしが、わが母
三十三の折、一夜丹頂鶴を夢見、わらわをはらめるがゆえに、たらちねの胎内を出でしときには、鶴女と申せしが、
それ幼名、成長の後これを改め、清女(きよじょ)と申しはべるなり』
「え~ッ! 今のが全部名前かい? こりゃ大変だ…
まあいい、明日にでも相談して短くつめるよう…じゃ…
もう寝るか」
さて、あくる朝。働き者の嫁は、すっかり膳を整えて八五郎を
起こしにかかる。
『あ~ら我が君、日も東天に出現ましませば、早々ご起床召され。うがい手水(ちょうず)に身を浄め、神前仏前に御灯明を供え、御飯召し上がって然るびょう存じはべる。恐惶(きょうこう)謹言』
「朝飯で恐惶謹言だぁ? なら、酒を飲んだら、酔ってくだんのごとし…だろう」