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心に残るいい話 「待つということ」

■森 信三 「修身教授録2」第24講「出処進退」 より
 
人間の真の値打ちは、何か重大な場面に出くわしたり、
 せっぱ詰まった際に、それに対する対応、態度、言い回し
 などに表れてくるものです。
 ふだん評判が良くても、出処進退が悪いと、その一事だけで、
 今までの評価が台無しになってしまいます。
 我が身の利欲に目がくらんだり、義理を忘れたりするのです
             
菅首相…可能性がわずかでもあるなら、粘り強く信念を貫き、職責を全う
しようとする。その姿勢…古来、日本人が持つ美意識(武士道精神)の、
「引き際の清らかさ、いさぎよさ」とは、かけ離れた価値観の持ち主のようです。 
 
 
880 【吉村外喜雄のなんだかんだ】
~心に残るいい話~ 「待つということ」 
 
人間は一生のうち 逢うべき人には必ず逢える。
  しかも 一瞬早すぎず 一瞬遅すぎないときに…
                                                                   森 信三
 
人生を振り返ると…新たに何かを志し、決意も新たに行動を起こしたその時… 志を実現するために不可欠な人物との出逢いがあった。
もしあの時、あの運命の出逢いがなかったら… あの人にめぐり合うことがなかったら…今の自分は存在ないだろう。
何度かそのような体験を経て、今の自分がある…
”縁”とは不思議なものです。
 
以下、「理念と経営/くちびるに歌を、心に太陽を持て(4)」 を転載します。
心に残るいい話です。
『27歳の東京に住んでいた頃のある日、女性と新宿の「田園」 という喫茶店で待ち合わせた。五日前に知り合ったばかりで、 名前も年齢も住所も、勤めているのかどうかも知らなかった。
 
ぼくのほうから誘った…約束の日はぼくの誕生日だった。
ぼくは、会社から給料の前借りをして、 コーヒー代と食事代を調達し、六時に喫茶店に行った。
だが、七時になっても八時になっても、女は来ない。
 
ぼくはイライラしながら待った…連絡しようにも(今の時代のように携帯もなく) 彼女へ連絡のしようがない。
九時になって、ぼくは頭にきて喫茶店を飛び出した。
女性は、初めからぼくと逢う気などなかったのだと思った。
 
自分の愚かさに腹が立ち、近くの焼き鳥屋で酒をあおった。
そのとき突然、もしかすると、ぼくが指定した喫茶店は「田園」ではなく、「上高地」 ではなかったかと気づいた。
 
ぼくは、焼き鳥屋を飛び出すと、「田園」 から200メートルほどのところにある 「上高地」へ走った。
腕時計は十時を回っていた。息を切らせて店に走り込むと…
女性はいた…四時間半も待っていたのだ。
眼が濡れていた…ぼくを見ると、大急で涙をぬぐった。
 
その女性が今のぼくの妻だ。結婚して45年たち、ぼくが 「もしあのとき携帯電話でもあって、 五分後に待ち合わせ場所の間違いに気づき、四時間半待つことがなかったら、 俺たち結婚してなかったかもな…」と言うと…妻も「たぶんね」と笑った 』

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