■冬の金沢なまり
[たるき]
1月末、金沢は久しぶりの大雪に見舞われた。
子供の頃は今よりずっと寒く、たくさん雪が降った。
冬になると学校やお寺の軒先に、1メートルくらいの長い「つらら」が
下がった。子供のころ、「つらら(氷柱)」のことを「たるき」と言った。
語源は「垂氷(たるひ)」…垂れる氷。
東北宮城県と石川県、そして何故か雪の降らない長崎県…その三ケ所
でのみ呼ばれる方言です。「たるき」は、”たるひ”がナマったものです。
[雪すかし]
「今朝、たくさん積もったので”雪すかし”したら、足や腰が痛いわいね…」
何気なく言うこの「雪すかし」という言葉…これってかなざわ弁?
「すかし」は「空かし」の意味でしょうが、「雪を除ける」とか、「除雪する」と
言うのが普通…。
846 【吉村外喜雄のなんだかんだ】
~ことば遊び~ 「かなざわなまり(7)」
「あてがいな」「らくまつ」「まいどさん」
「だちゃかん」「言いまさんな」「おいでましたら」
「おいだすばせ」
夜の明けるのが日ごとに早まって、明るくなってきた…春はもうそこまで来ている。
あと二週間もすると選抜、そしてプロ野球が開幕し、桜が咲く。
60万人と36万人…兼六園事務所と県警が発表した、一昨年の兼六園の”
花見”の人出の数である。
花見の人数を厳密に数えられないだけに、どうしても食い違いが生じる…
これを金沢弁で「あてがいな…」と言う。
「あてがい」は、「いいかげん」「当てずっぽう」という意味になる。
また、何をするにも、
大ざっぱで無責任な人を、「あてがいな人」と言う。
「らくまつ」もあてがいな人…
当てずっぽうにモノを言う人に投げかけられる言葉です…「ノー天気な人」
「のん気者」のことです。
「まいどさん…このタケノコ、少しまけとくまっしま!」
『う~ん、だちゃかんわいね』
「そんなら、三本で千円にしとくまっしま!」
『アリャ~ムチャクチャ言いまさんな』
「まいどさん」は、子供の頃、
近所の商店主が訪ねて来たとき耳にした、親しみを込めた「こんにちわ」の挨拶言葉である。
また、金沢では「駄目だ」を
「だちゃかんわいね」
と言う…
これも味わいのある言葉です。
金沢市内の医院で…「○○さん、おいでましたら受付へお起こし下さい」のアナウンス。
「おいでます」は金沢で使われる方言で、 「いらっしゃる」の敬語になる。
県外から来た人が「エッ」と驚くのは、身内に対する場面である。
お客様が訪ねてきたとき、「父はおりません」
と言うところを、「父はおいでません」と言う。会社でも、「社長はおいでません」と言う社員さんを時折見かけ.。
身内を名乗るのに、敬語は可笑しいかもしれない…が、金沢は百万石城下町。
かって、家庭での父親は偉い人…
敬語の対象にされてきた…そのなごりです。
「おいでます」に、金沢ことば「あそばせ」がくっつくと、
「おいだすばせ」
になる。
昔「あそばせ」は宮廷言葉だっが、現代の日本では、この”京言葉”
を残す数少ない町が、金沢なのです。
茶屋街のお座敷に上がるとき、おかみさんの「お上がりあそばせ」がここちよい。
食事をすすめる際にも 「お箸をお付けあそばせ」と言う…
「召し上がれ」とは言わない… 金沢だなあ~と思う。
「頑張りまっし、
金沢ことば」より