■国際テロ/ビン・ラディン
オサマ・ビン・ラディン…その所在はいまだ明らかでない。
サウジアラビアの、ムハマンド家の17番目の子として生まれた。
父は建設業を営む大富豪で、66年・自家用飛行機で事故死した。
3億ドルの膨大な遺産を手にしたオサマ…この資金をアルカイダ
やタリバンへの支援資金に使った。
オサマ・ビン・ラディンによる反米テロは、93年のニューヨーク
貿易センタービル爆破事件、ソマリア、サウジ、ケニアなどの
米軍基地や大使館爆破など…
パレスチナを不当に占拠し、アラブの地でイスラムの同胞に暴虐
の限りを尽くすイスラエル。そのイスラエルを支援し、聖地サウジ
に軍隊を駐留させるアメリカ…
イスラムへの侵略者に「ジハード」で報いようというのです。
1997年11月、エジプト・ルクソール無差別虐殺事件の後、
1998年アルカイダは「ジハード」の大儀のもと、イスラムの最大
の敵は、イスラエルとアメリカと宣言。
2002.10 インドネシア・バリ島・クタ/ディスコ爆破テロ
.11 ケニア・モンパサ/リゾートホテル爆破テロ
2010. 9.11 アメリカ同時多発テロ
834 【吉村外喜雄のなんだかんだ】
~歴史から学ぶ~
「イスラムにとって聖戦とは」
中東で宗教紛争が絶えないのは、キリスト教、イスラム教共に「一神教」…自らの宗教・宗派以外は異端者とする、宗教戦争なのです。
一千年栄えたローマは、多くの神々を有する「多神教」の国…支配した異国の宗教・異教徒に寛容だったことがある。
日本も多神教の国ゆえ、宗教には極めて寛容な民族です。
イスラムにとって、国家も民族も人種も問題ではなく、真に重要なのは、イスラム教を信仰しているか否かである。
ここまではキリスト教も同じなのだが、ここから先がイスラム的になる。
イスラムの考えは、世界には「イスラムの家」と「戦争の家」の二つしかなく、「イスラムの家」に住む者の責務は、その外側にある「戦争の家」に行って闘って勝利し、「イスラムの家」を拡大していくことです。
キリスト教にとっても、イエスの教えを広めることは最重要課題である。しかし布教活動は、司教や司祭などの教会専従者の責務であって、信徒が負うことはない。
イスラムがジハードの意識を高め、異教徒と戦ったのは、中東から勢力を拡大し、ビサンチン帝国(東ローマ帝国)を脅かし、北アフリカ地中海沿岸からスペインに至るまで、イスラム圏を急速に拡大していった、7~8世紀の間のわずか百年でしかない。
そして11~13世紀…キリスト教十字軍がイスラム圏に攻め入り、信者を虐殺した二百年…その二つの時代に集中している。
「イスラム原理主義」が台頭したのは、1967年の第3次中東戦争以降…アラブ諸国がイスラエルに大敗した時に始まる。
彼らが目指すところは、教徒に課せられた「5つの行」を厳格に実践し、古典的イスラム法を国法として厳格に社会に適用すること…イスラムの原点に立ち返って、イスラム共同体を再構築し、本来の姿に戻していくことにあった。
西欧では彼らを原理主義者と言う。異教徒の欧米人がイスラムに持ち込んだ文化や価値観が、イスラムの社会に著しい悪影響をもたらし、今や危機的状況に陥っていると考えたのです。
イスラムの教えから逸脱したアラブの政治指導者や、異教徒アメリカに追従する、腐敗した政治勢力の打倒を叫ぶようになったのです。
その影響が、イランのイスラム急進派革命、エジプトサダト大統領暗殺、アメリカのアフガン攻撃への報復、9・11テロへと発展。アラブの敵イスラエルと、支援する欧米キリスト教国に対し、敵意むき出しの「聖戦」…自爆テロへと拡大していくのです。
キリスト教国の迫害と侵略からイスラムを救出しようとする原理主義者。彼らの宗教的大儀「ジハード」を排除しない限り、「殉教テロ」は永遠に根絶できないでしょう…
塩野七生著「ローマ亡き後の地中海世界」より