■吉田首相「バカヤロー」発言…その後
国会議員の失言・暴言では、吉田首相の「バカヤロー」発言が一番記憶に
残っている…直後、
首相は発言を取り消し、野党議員も了承した。
「ついつぶやいた一言が、マイクに入ってしまった」
と、しょげ返る首相。
数日後元気を取り戻し、「これからもちょいちょい失言するかもしれないので、
よろしく」と、余裕しゃくしゃくだった。
この失言…議会軽視とみた右派社会党は、
懲罰委員会に動議を提出した。
(提出の背景に、鳩山一郎・三木武吉ら、自由党非主流派の後押しがあった)
動議採決に際して、非主流派に加え、主流派の広川農相一派が造反し可決。
直後、動議に賛成した30余名が自由党を脱党…野党と組んで、内閣不信任
案を可決してしまった。
これを受けて、吉田は衆議院を解散…総選挙で吉田率いる自由党は大敗。
かろうじて政権を維持したものの、小数与党に転落…吉田の影響力は急速に
衰えていった。
晩年、吉田は回想録の中で、「取るに足らない言葉尻をとらえて、不信任案に
同調した与党の仲間は”裏切り者”」と糾弾している。
失言が取り消されたことで、「無礼」と「バカヤロー」は議事録から削除され、
現在記録にはない。
818 【心と体の健康】
~幸せな人生~ 「口は禍の門(元)」
問責決議案が提出される日の前夜、柳田法相は辞任を決意した。
「口は禍の門」…中国の思想家・孔子の教えです。
類似語に「雉も鳴かずば打たれまい」がある。
失言で辞任した政治家…過去・数え上げればキリがない…
何か言えば叩かれるだけに、
政府要人の言動は、
とりわけ慎重でなければならない。
古くは、吉田茂首相が右派社会党議員との質疑応答中に、「バカヤロー」と暴言を吐き、
衆議院が解散されたのは、余りにも有名。
この一件、つい興奮して「バカヤロー!」と、
野党議員に向って大声を出したと伝えられてきたが、
映像資料によれば、吉田首相が席に戻る時、 小さな声で
「ばかやろう」とつぶやいた…
それが偶然マイクに拾われて、大騒ぎになったのです。
夫婦喧嘩も、夫や妻の不用意な一言が、相手を傷つけ、喧嘩の発端になっている。
柳田法相の場合は、地元支持者を前につい気がゆるみ、「ジョーク」
のつもりで言った二言が、シャレにもならなず、
野党議員の追求を受けることになった。
折悪しく、仙石官房長官も「自衛隊は暴力組織」と暴言を吐き…追求され謝罪したが…日頃は心の奥底に収めて、軽々しく口にすることのない本音…
つい気が緩んで…過度のストレスに陥って…
ポロッと口から出てくる…その一言が暴言になったり、
人を傷つけたりして、
取り返しのつかないことになってしまう。
諸外国の政治家と接するときの必須条件は、豊かな言語力と、しゃれたジョーク。
火災現場でダジャレを言う消防士はいない。手術中に漫談をする外科医もいない。
「尖閣」問題の渦中に身を置く閣僚が、支持者を前に笑いを取ろうと、
口から出た自虐ネタ…この失言が職務をおとしめることになった。
(読売新聞「編集手帳」)
生真面目な仙石官房長官…
大臣も人の子…失言もしよう。野党議員の追及を、
しゃれたジョークで笑いを誘い、サラッとかわしてしまう…
そんな芸当のできる大物政治家であってほしい。