■グルタミン酸を発見して100年
日本人の食生活で親しんできた味には「甘味・酸味・苦味・塩味」が
ある。
今から百年前、昆布・トマト・チーズには、この四つの味に分類でき
ない、共通の味があることに気づいた研究者がいた。
東京帝国大学の”池田菊苗”教授です。
1908年、昆布ダシから抽出した「グルタミン酸」の結晶をなめて
みると昆布の味がした…うま味の正体を突き止めたのです。
特許を取得した池田教授は、翌年「味の素社」を創設して、
うま味調味料の製造・販売を開始した。
当時、日本の工業技術はすべて輸入に頼っていた。
その日本で、日本独自の工業製品を生み出したのです。
その後、1913年にカツオ節から「イノシン酸」を発見。
57年には、干しシイタケから「グアニル酸」を発見した。
いずれも日本人の発見です。
”味”には世界一うるさい日本の食文化が産んだ快挙である。
「日本の10大発明」の中に、「うま味調味料」が選ばれているのは
言うまでもない。
東京テクノ・フォーラム21「食」から
784 【心と体の健康情報】
~食と健康~ 「おいしさ」
博多で…本場の豚骨ラーメンが食べたくなって、
タクシーの運転手に地元の評判店に案内してもらった…
店に入るや、鼻をつく強烈な豚骨の臭い…
「臭い」…臭みを消す紅しょうがを丼にまぶして食べた。
臭い食べ物を初めて口にするときは、
鼻をつまんで食べるといい。
鼻をつまむと、口の中に広がる美味しさだけを、
味わうことができる。「食わず嫌い」の人、
「この味…嫌い」という人は、その食品の匂いが嫌いなのです。
おいしいと感じるのは、味覚より嗅覚の役割が大きい。
人間の鼻には、においのセンサーが約400種類もある。
一方”味”の識別は、甘味が1種類、
苦味は25種類と少なく、感度は嗅覚の方が何万倍も高いのです。
香りは、食物から発せられるが、口に含み、噛み、混ざるときにも生まれます。
それらが脳に情報となって送られ、記憶される。
香りは人の記憶と密接につながっていて、 「この香り、以前○○で嗅いだことがある」 と、瞬時に思い出すのです。
干物の”くさや”を、「馬小屋のような臭いだ」と思う人は、
頭の中の過去の記憶に結びつけ、
「嫌な臭い」に感じてしまう。
逆に、子どもの頃食卓に出され、親がうまそうに食べていたのを覚えていると…
珍味だと、美味しく食べられるのです。
「食欲がわかない人」を診察した先生の話では、匂いがわからない「嗅覚障害」に気付いていない患者が少なくないという。
私は「賞味期限」には無頓着。妻が「期限切れだから食べないで…」と言っても、
においを嗅ぎ、なめてみて、味と安全性を確かめ、
問題がないと判断したら食べてしまう。現代社会では賞味期限に頼って、人間が本来持っている能力を退化させてしまっている。
おいしさは四つに分類されます。
お腹が空くと何でもおいしく感じられる「生理的おいしさ」、味噌や沢庵など「食文化のおいしさ」、「情報のおいしさ」。
そして、カルビーの”かっぱえびせん”のような、
「やみつきになるおいしさ」…
この四つです。
雑誌の特集や民放TV番組では、毎日のように「おいしいもの情報」が流される。
TVで「バナナダイエットがいい」という情報が放映されると、
食品スーパーからバナナが消えてしまう…時折、
繰り返される珍現象です。
ラーメンや牛丼は、「油脂・砂糖・ダシ」
の三つのうま味が凝縮された食品です。
”止められない”やみつきのおいしさになり、
その誘惑に逆らえずに食べ続け、
メタボになっていく。
「毎日ハンバーガーを食べないと、ストレスで仕事が手につかない」という人や、
「朝は菓子パン、昼はポテトチップ、夜はカップラーメン」という偏食の人も珍しくない。現代人の食生活の乱れは、目を覆うばかりです。