■河豚の毒
スキューバーダイビングが趣味の私…越前海岸に潜った時、時折手ヤスで
河豚を突いて持ち帰った。
カワハギのように、頭と背の間に包丁を入れ、親指を差し入れ、身ぐるみ
はがしていく…すると、皮と内臓が丸ごとくっついてはがれ、身だけが残る。
骨付きのままブツ切りにして味噌汁の具にする…これがたまらなく美味しい。
昨年11月、富山県のすし店で、フグの肝臓を客に出して二人が重体になった。
テトロドトキシンと呼ばれる猛毒で、その毒性は青酸カリの400倍にもなる。
卵巣に最も多く、次いで肝臓、表皮、腸の順…この毒、熱っしてもこわれません。
河豚を調理できるのは、「河豚取り扱い講習会」に二日間受講し、筆記と実技
の試験に合格した者に限る。ただ、一度合格すれば更新や再講習はない。
食中毒を出した寿司店主…免許を取得したのは23年前だった。
中日新聞
735 【吉村外喜雄のなんだかんだ】
~ことば遊び~ 「落語・河豚鍋」
鍋物が美味しい季節です。そこで河豚を題材にした落語「河豚鍋」のさわりを一席…。
原作は”十返舎一九”の小咄「河豚汁」。これをもとに、
二代目林家染丸が上方落語に仕立てたものです。
免許がないと、フグの調理ができない今の時代と異なり、
昔は素人が家庭で調理して、
中毒死することがたびたび起きた。
「あら何ともなや 昨日は過ぎて 河豚と汁」…
芭蕉の句にそれが伺える。
♪ある商家の旦那が、一杯やろうと支度をしていたところに、
知り合いの男が顔を出した。
旦那「ちょうど飲もうと思っていたところだ…相手になってくれ」と男を誘う。
愛想のいい男は、旦那、おかみさん、女中、はては飼い猫にまでヨイショして、
出された地酒や、塩辛の味も褒め上げる。
そうこうするうちに、かねて用意の鍋が、良い具合に煮立ってきた。
「これは何の鍋でしょう?」と客人…旦那『これはテツだ』
「テツと言いますと?」…『河豚だ』
答えを聞くと、男の様子は一変…当たるのが怖いから、一口も食べようとしない。
旦那も旦那で、先に食べるのは怖い…
お互いに薦め合うが…どちらも先に食べるのはイヤで…
箸は進まない。
ちょうどその時、勝手口に物貰いがやってきた。
『そんなら、あいつに食べさせて、具合を見てやれ』
旦那は、物貰いに河豚鍋を食べさせて、安全かどうか確認することを思いついた。
『そら…よろしいな』と、少し分け与える。
頃合い由と…様子を見にやると…何でもない…
まずは大丈夫と、二人で鍋を平らげた。と、そこへ物貰いがやってきて…
「旦那さん方…大丈夫ですか? …大丈夫な・よ・う・で…なら、ゆっくり頂きます」
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