■演者によって異なる、落語「死神」のサゲ
古典落語で、よく高座の演目にかかる「死神」。グリム童話の「死神の名付け親」を
読んだ三遊亭園朝(1839~1900)が、落語のネタにしたとされている。
◎円生師匠の「アァ~蝋燭が消える」と、高座でひっくり返るサゲが一般的だが、
正月など、縁起がからむ高座では、その直後にむっくり起き上がり、
「おめでとうございます」と、蝋燭の継ぎ足しに成功して生残るサゲをやる。
[志の輔師匠のサゲ]
◎見事…新しい蝋燭に火が灯る。死神「こんなはずではなかった」と嘆く。
男は喜びいさんで、新しい蝋燭を手に、洞穴の外に出てきた。
と、死神「もう外は明るいから、明かりはいらないんじゃないの…」と言う。
「アッそうだぁ」と、男は思わず「フッ!」と、蝋燭の火を消してしまった。
その途端…男は死んでしまった。
[その他]
◎成功して喜色満面となったところで「ハァクション!」と”くしゃみ”…
蝋燭は消え、噺家無言で倒れこむ。
◎継ぎ足した後に気が抜け、思わずため息が出て「ふぅ~」…火を消してしまう。
702 【吉村外喜雄のなんだかんだ】
♪お金の算段が出来ず、女房に悪態をつかれて家を飛び出してきた。
女房に言われたとおり「死んじゃおうか」
と思い始めた矢先、死神が現れた…
これも何かの縁、「金儲けの方法を教えてやる」と言う。
病人には必ず死神が付いている。死神が病人の足元にいれば助かる。
枕元に座っていたら、いくら手当てしても、
寿命だから助からない。
足元の死神は、これから教える呪文を唱えれば、
消えていなくなり、病人は助かる。
その呪文は「アジャラ・カモクレン・テケレッツノパア」
男は早速「いしゃ」の看板を出した。
と…まもなく、日本橋大店の番頭がやってきて、「病人を診てほしい」と言う。
旦那の様態がはかばかしくないので、易者に厄除け祈祷してもらったら、
こちらの方向で、 最初に出会った医者に診て貰うといい…
と言う。
旦那の寝床に通され、見ると、足元に死神が座っている。
「しめた!」と、例の呪文を唱えると、
旦那の様態が急に良くなり、全快した。
店の者喜んで、数十両の礼金を差し出した。
味をしめた男、次から次と病人を診るが、幸い足元に死神が座っていたので、
治してしまう。頭の方に座っていると 「寿命です」…
と言って家を出ると、亡くなるので、 生き神様ではないかと、評判が立った。
お陰で、生活も豊かになり、裏長屋から表に引っ越した。
女を囲うようになって、女房・
子どもを追い出してしまった。
女に「上方を見たい…」と言われ、家屋敷を処分して豪遊に出た。
しかし、金は使えば無くなる…金の切れ目が縁の切れ目…女は逃げ出し、一文無しになって江戸に戻った。
また医者をやれば、直ぐに金持ちになれると、たかをくくっていたが、
診る病人皆、枕元に死神が座っていて、 お金にならない。
困り果てた男は一計を案じた…枕元に座っている死神がうとうとしたすきに、
病人の床を180度回転させて、
足元に死神を座らせようという魂胆である。
気の利いた若い者を4人四隅に置いて、男の合図で回転させた瞬間に、
呪文を唱えると、死神の驚いたのなんの…「あっ!」と言って消えてしまった。
喜んだ店の者は、千両という大金を差し出す。
それはそうだろう…もう寿命が無いのを、無理やり助けたのだから…
得意満面になって帰る男の前に、例の死神が現れた。
「良い所に連れて行くから、付いて来い」という。
暗がりの洞穴みたいな所へ入っていくと、一面、
蝋燭がビッシリト灯っている場所に出る。激しく燃えているものや、
今にも消えそうなものなど…様々である。
その中に、今にも消えそうな一本があった…聞くとそれが男の蝋燭だという。
「そんなはずはない」と食い下がったが、死神は…
「さっきの病人の寿命と、お前の寿命が入れ替わったのだ」と言う。
あわてた男…大金を差し出して、新しい蝋燭に変えて欲しいという…
死神…新しい蝋燭を手渡して、今にも消えそうな蝋燭の火をうまく移せば、
助かると言う。
男は、必死に火を移そうとする…失敗すれば命は無い…手がブルブル震える。
なかなか火がつかず、あせる男…消えるよ…消えるよ…とうとう火が消えて…
高座の上でバタン…死んでしまった… フリー百科事典「ウィキペディア」