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能登・マクベス公演

能登演劇堂「マクベス」の舞台になった能登演劇堂。今から16年前の1983年、 仲代達也夫妻が能登に旅行し、中島町に立ち寄った際…「こんな素朴な土地で、無名塾の稽古が出来たらどんなにいいだろう」 と言ったのがきっかけ。町長の呼びかけで、能登の片田舎で、無名塾の合宿が始まったのです。

その後、「能登から演劇文化の発信を!」の機運が高まり、大勢の人の力を得て1995年、客席651席の立派な演劇場が完成した。

当時、人口わずか八千人の小さな町が、お荷物になるのを覚悟で、年間予算の3分の1を投じ、一か八かで造った大劇場。

この大英断で、能登の地に今、演劇文化が根付こうとしているのです。

■仲代達也の主な作品
◎シェイクスピア劇…「ハムレット」 「リチャード三世」 「マクベス」 「オセロ」
                             「乱(リア王)」 「ジュリアスシーザー」
◎映画
 「用心棒」 「椿三十郎」 「天国と地獄」 「陰武者」 「乱」 「切腹」 「人間の条件」
 「黒い河」 「炎上」 「我輩は猫である」 「鍵」 「阿修羅のごとく」 「男たちの大和」


【吉村外喜雄のなんだかんだ - 700】
「能登・マクベス公演・大英断」

能登の小さな町で、都会でしか見られないシェイクスピア劇が上演されている。
先週18日、七尾市中島・能登演劇堂・無名塾で、シェイクスピアの「マクベス」初日公演を観賞してきた。 マクベスは、 日本の戦国時代より五百年も昔の、11世紀半ばのスコットランドの物語ですが、恐ろしい物語です。
マクベス

勇猛な武将マクベスは、魔女たちから「やがて王になる」と予言され、先王を殺し、王位を手に入れる。
が、先王の子が軍を率いて報復、殺されてしまう…。

魔女の予言にほんろうされ、破滅していく男の物語です…日本の戦国武将、明智光秀の姿が浮かんでくる。

シェイクスピア4大悲劇の一つだが、前もってあらすじを読み、時代背景を知った上で観賞しないと、 演じている内容がチンプンカンプン…分からないまま、終わってしまいそう。

芝居の途中、舞台後方の大扉が観音開きに開け放たれ、舞台奥に広がる自然の風景が、スコットランドの荒野となって再現される… 背景の景色が舞台に見事に溶け込み、観客を魅了する。
日本演劇界初の試みだそうで、世界どの国にも無い、当劇場でしか見られない、素晴らしい演出が出来る劇場と、話題を呼んでいる。

開け放たれた舞台奥の大地を、馬に乗った騎兵が次々駆けぬけていく…クライマックスには、 森の奥から無数の兵隊が木の枝で身を隠し、城へと迫ってくる…森が動いて見えるのです。

舞台の巨大なお城のセットと、舞台奥に広がる森や山が、映画「乱」の一場面を見ているような臨場感を演出…思わず身を乗り出し、 見入っていた。
背景の杉山の照明と、前評判の"バーナムの森が動く場面"がクライマックスを盛り上げる。

舞台後ろの扉が全開されるや、観客席に新鮮な空気がここちよく流れ込む。
フッと…大雨の日はとうするのだろう? それより11月になると、劇場内に冷たい風が吹き込むだろうし…出演者は冷たい雨に打たれ、 寒さに震えるだろう。
舞台は水浸しになるかも?         (マクベス演出家/林清人・演出雑感から)

数年前の能登半島地震で観光客が激減…「これからどうしよう」と悩んでいた矢先、仲代達也から「復興の意味合いを込めて、 能登限定の芝居をやっては…」との申し出があり、「マクベス」の企画がスタートした。

過疎の地能登の劇場に足を運んでいただけるお客様を、三万数千人も集めなければならない。この不況時に、 能登限定で50日間のロングラン…お客様が来ていただけるだろうか?日本の演劇界では考えられないことです。
ある意味で大博打であり、大英断だったのです。

主催者は、たとえ1万人でもやろうと覚悟を決めて臨んだ…この大英断が、能登に新たな風を吹き込むことになった。
二ヶ月間に50回のステージをこなし、観客動員目標三万五千人…チケットは発売早々の八月末に売り切れた…予想を超える人気に、 主催者の喜びはひとしお…。

以前、この劇場で20日間公演をやった時、東京からの客が「遠くまで来て見た感動はものすごい!」… 東京で見るのとは違った感動があり、観光地能登への期待もあった…今回も、東京・大阪・名古屋…全国の仲代フアンが大勢、 能登に押しかけて来る。過疎地能登にもたらす、マクベスの経済的効果は大きい…

(仲代達也&谷本石川県知事の対談から)

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