■上方落語「一門」
メルマガ629号で、アメリカで英語落語にチャレンジしている"桂かい枝"師匠を紹介しましたが、06年、天神橋筋に「ライブ繁昌邸」が竣工するなど、
近年上方落語の人気が急上昇。
以下、上方で活躍する「一門」です…
[笑福亭松鶴一門]…"笑福亭仁鶴"一門59名(名六代目笑福亭松鶴は故人)
弟子に鶴瓶がいる
[桂米朝一門]…三代目"桂米朝"一門58名
弟子に、月亭可朝、月亭八方、枝雀、雀々、ざこば、などがいる
[桂文枝一門]…"桂三枝"一門42名(五代目桂文枝は故人)
弟子に、きん枝、文珍、かい枝 がいる)
[桂春團治一門]…3代目"桂春團治"一門24名
[露の五郎兵衛一門]…2代目"露の五郎兵衛"一門12名
今年3月30日死去。前・上方落語協会会長
[桂米團治一門]…昨年、五代目"桂米團治"を、57年ぶりに、桂米朝の息子
"小米朝"が襲名した。
[林屋染丸一門]…4代目"林屋染丸"一門11名
[森乃福郎一門]…2代目"森乃福郎"
【吉村外喜雄のなんだかんだ - 670】
~ことば遊び~ 「落語・あたま山」
先々週の土曜日、香林坊赤羽亭・四列目のかぶりつきで、「桂米助、桂雀々・東西落語ふたりの会」を楽しんだ。
上方落語界で異彩を放つ"桂雀々"…もっさりと噺すが、オーバーなアクションが売り物で、身振り・手振りよろしく、
あほな人物をやらせたら天下一品!
この日の出しものは、得意ネタ「あたま山」…期待通り、お腹がよじれるくらい大笑いした。
645号の「落語・だくだく」は、噺家が自らの話芸を駆使して、
聴き手の想像力を喚起して笑わせる噺です。「あたま山」は、それを上回る奇想天外な噺…聴き手をイマジネーションの世界へ…
落語ならではの語り口で引き込んでいく。
♪けちな男がいて、さくらんぼを食べたが、もったいないからと、種まで飲み込んでしまった…この種、温かい腹の中で根をおろし、
やがて頭のてっぺんに芽を出した。
桜はすくすく育ち、幹が太くなって枝も広がっていく…やがて春になると花が咲いて、"あたま山の一本桜"と評判になった。
(ここからにぎやかなお囃子が入り、聴衆をイマジネーションの世界へ…雀々の話芸が冴える)
それを伝え聞いた"たいこもち"が、さっそく旦那に持ちかけて…
「それは見事でございますよ…どうです、出かけようじゃございませんか…
花奴に歌奴、冷奴なんぞ、芸者衆も勢ぞろいしておりますから…」
という調子で大店の旦那が、たいこもちや芸妓衆を連れて花見を始めるし、町内の連中も群れをなしてやってくるようになった。
花を見て楽しむだけならなんの問題もないが、花見客の目的は飲んで騒ぐこと…。
それも朝っぱらからドンちゃん騒ぎで、飲めばへどを吐くし、喧嘩にもなる。
「なにィ? 俺の言うことォ聞けねえか…」などと、江戸っ子は気が短い。
あまりうるさいので頭を振ると、「地震だ!」と驚き、大騒ぎして逃げてしまう。
こんな木があるからいけないのだと、桜の木を引き抜くと、頭の真ん中に大きな窪みが出来てしまった。 この男が用足しに行くと夕立にあって、穴に水が溜まった…が、根がけちでものぐさだから、水を捨てようとしない。
するとボウフラが湧き、それを餌にフナだのコイだの、ドジョウなどが湧いて、それを知った子供たちが釣りに来る。朝から夕方まで、 わめいたり歓声を上げたりと…そのうるさいこと。
子供が帰って一息ついたと思う間もなく、夜になると男たちが夜釣りにやってくるが、これも黙って釣るわけではない。酒を飲んだり、
女にもてた自慢話をしたりと、うんざりするほどだが、やがて舟を出す連中まで現れた。
投網で魚をごっそり獲ろうというのである。
櫓を漕ぐ音がギイギイとうるさいし、網を投げれば大きな音がする。
しかも、「舟をあっちィまわせ」だの、「揺らすと網が打てねえじゃないか」などと大騒ぎし、その挙句が「なにが釣れたい?」
「わらじが釣れた」「冗談じゃねえぜ」と馬鹿笑い。
こううるさくてはとてもたまらないと、頭の池に自分で身を投げてしまった…。
野口 卓著「古典落語の名作」より