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2009年05月 アーカイブ

2009年05月01日

宮城まり子とねむの木のこどもたち

私たちの年代で、「ねむの木学園」や「しいのみ学園」を知らないという人は、少ないだろう。
今年、「しいのみ学園」の曻地三郎氏は103歳に、「ねむの木学園」の宮城氏は82歳になる。
二人は現在も理事長・園長として現場に立ち、障がい児童の療育に忙しい日々を送っている。
曻地氏は、長男と次男が相次いで脳性小児マヒになった。
障がい児童の就学受け入れ先がなく、悩んだ。
なら自分が…同じ悩みを持つ子どもを引き受けようと、先祖代々の家屋敷を全て売り払い、昭和29年(1954)、 精神薄弱児の通園施設を開設した。

■しいのみ学園の「療育精神」

 

山の中に捨てられた小さな"しいのみ"は、人や獣に踏みにじられているけれども、 これに温かい水と太陽の光を与えるならば、必ず芽を出して来る。
障がい児は固い殻をかぶって動こうとしない。
その固い殻を槌や小刀で破ろうとすると、殻は破られるが、中身が傷ついてしまう。温かい水と太陽の光をじっと与えて、 気長に待っていると、殻はやぶれて芽が出てくる。これがわからないといけない。

"温かい愛情と厳しい研究" これがしいのみ学園の精神である

 


【心と体の健康情報 - 661】
「宮城まり子とねむの木のこどもたち」

連休スタート初日の4月29日、「ねむの木のこどもたちとまり子美術展」(4/28~5/23金沢21世紀美術館)を、 妻や孫たち、家族連れで鑑賞した。
会場で、宮城まり子さんと、ねむの木学園のコーラスグループの皆さんにお会いした。
車椅子に腰掛けて指揮する宮城まり子さん…プロはだしの団員のコーラスを聴いて…感動がこみ上げてくる…
展覧会会場に入り、展示されている子どもたちの作品を見た…瞬間…それは、想像をはるかに超える、一流アーチストの作品だった… 見る者を引きつけて離さないのです。
障がいを持った智恵遅れのこどもたち…その絵筆から産まれた絵…語りかける創造性・感性・表現…言葉では言い表せない、 心の内からの筆づかい…生きている息遣いとなって、伝わってくる。
以下、宮城まり子編「ねむの木のこどもたちとまり子」画集から…

~しょうごの世界~

 

中学を出た時も、 一字もかけず、又、読むことも出来なかった。
かぎのような、かっこのような、すじをかくのが、しょうごの字である。
「まりこさん、えをかく」彼はそういって、つぎつぎ絵をかく。

一字もかけないしょうごから、私に手紙がよく渡される。
子どもたちが「ま」と「り」と「こ」の三文字を、彼に教えた。

その形が「ま」 と読むことを、彼は知らない。
けれど、「ま」と「り」と「こ」ばかりかきこんだ手紙がとどけられる…

まりことこども(とみやま しょうご)
まりことこども(とみやま しょうご)

白鳥がいなくなったの…どこへいったかぼく知っている(ほんめ つとむ)
白鳥がいなくなったの…
どこへいったかぼく知っている
(ほんめ つとむ)
秋のドレス(かわむら たかゆき)
秋のドレス
(かわむら たかゆき)

私は、宮城まり子の中に天使を見た…まり子は天使たちと暮らしている…

■宮城まり子プロフィール
1927年東京生まれ。昭和30年「ガード下の靴みがき」で歌手デビュー。
その後、舞台、テレビで活躍。昭和43年、日本で初めて肢体不自由児養護施設「ねむの木学園」を創設。その後、 子ども達の映画を製作監督して、広く世に知られるようになる。
昭和59年、ねむの木のこども達による劇団「虹」を結成。コンサート活動を始める。
2年後に始めた本格的コーラスが評価され、ビクターからCD発売。子ども達の劇団とともに、芸術祭賞など多数の賞を受賞。

2009年05月08日

落語・道具屋

■「ラ・フォル・ジュルネ」

連休の4日間、四国・柏島へスキューバーダイビングに出かける予定でしたが、黄砂で目を患い、やむなくキャンセル…。
その代わり5月3日、’09ラ・フォル・ジュルネ金沢音楽祭の指定席を求めて、県立音楽堂コンサートホールへ…。
モーツアルトの交響曲や歌劇の序曲、ミサ曲など、オーケストラ演奏を堪能した。
「ラ・フォル・ジュルネ金沢」は、昨年に続き、金沢では二回目の開催になる。
今年のテーマは「熱狂の日~モーツアルトと仲間たち~」
会場周辺は、県内外から音楽を楽しむ大勢の人たちで溢れた…。

1995年…「誰でもが楽しめるクラシックの音楽祭を作ろう」と、フランスのナント市で「ラ・フォル・ジュルネ」が誕生した。以後、 フランス国外に広がり、日本では、歴史と現代が融合した文化都市"金沢"が、東京に続いて、世界で五番目の開催都市になった。


【吉村外喜雄のなんだかんだ - 662】
~ことば遊び~  「落語・道具屋」

今日は、バカバカしいお笑いを一席…橘家圓蔵師匠(元・月の家圓鏡)の十八番「道具屋」。
落語の舞台は、江戸庶民が住む長屋。大家と店子が繰りなす…人のいい、少々間の抜けた熊さんや八っつあん、与太郎が、 ばかばかしい失敗を繰り返す…。
そのバカさかげんを語る圓蔵師匠の芸の深さが、大爆笑をさそうのです。

♪いい大人になっても、定職に就かない与太郎。
心配する叔父さんが、露天の道具屋をやらせようと、荷物を持たせる。

しかし、首がすぐ抜けるお雛様とか、ヒョロッとよろけると、ビリッと破れる"ヒョロビリのももひき"とか、 叔父さんが火事で拾ってきたのこぎりとか、本物の短刀そっくりの木刀とか、俗に「クズ」と呼ばれている、陳腐な代物ばかり。

まあ、それでも最初はこんなものだと、路上に店を出した。
「さあさあ、寄ってらっしゃい見てらっしゃい。道具屋ができたよ…。
できたての道具屋、あったかい道具屋だ…ホカホカの道具屋だよ!」

まるで饅頭でも売っているような口調で、呼び込みをしていると、徐々に客が集まる。
『おい、そこにある"ノコ"を見せな』
「へ? ノコ? のこにあります?」
『くだらねえシャレを言うな、のこぎりだよ。むむ…、こりゃ少し甘いな』
「え~っ? 甘い? ちょっと貸してください…うわっ、こりゃ渋いよ!」
『バカ、味じゃないよ、刃の焼きが甘いんだよォ』
「あ、焼きのことですか。それなら甘くありませんよ。叔父さんが火事場で拾ったんだから」
『ひどいもん売るんじゃない、バカ!』

怒って帰る客。このような買わない客を、業界用語で"しょん便する"という。
そう教えられた与太郎は、もう二度と"小便"させないと、心に誓うが…

『おい、そのももひき見せてくれ。ほう…なかなかあったかそうだな…気に入ったよ、いくらだい?』
「値段を聞いているけど、買うのかしら…あのね、これは"小便"できないよ」
『え? だって前はちゃんと開いてるよ。小便なんか簡単にできそうだけどねえ」
「ほら、やっぱし小便しようとしてやがる。この野郎、絶対にさせないぞ!」

『そうなの? 小便もできないんじゃ仕方ないや。じゃ買わねえや、あばよ』
「オイ待て! 小便できないって言っているのに…」
「あっ違う! その小便ならできるよ! こりゃ小便違いだ…悔しいね」

次の客は短刀を見せろと言って、抜きにかかるが、なかなか抜けない。
与太郎にも手伝わせて、思い切り引っ張っているが…
『う~ん、よいしょ、なかなか抜けんな』
「う~ん、こらしょ、そりゃ抜けませんよ」
『う~ん、よいしょ、何でじゃ』
「う~ん、こらしょ、木刀ですから…」

『早く言わんか、この大バカもの! 手間どらせおって…ちゃんと抜けるやつはないのか』
「へぇ、お雛様の首が抜けます…」

2009年05月12日

プロのプレッシャー克服法

■「まさか」の坂

昨日11日、メーカーの招待で、春の海外コンベンション・ラスベガスツアーに出発する予定が…中止になった。
メキシコで発生した新型インフルエンザが中止の理由…思いもしなかったことです。心待ちにしていた海外旅行…仕方ないとは言え、残念です。

8年前の2001年の秋も、ニューヨーク・コンベンションが、出発直前になって突然中止になり、悔しい思いをした。 9.11アメリカ同時多発テロが起きたのです。
昨年まで史上最長記録を更新していた好景気が、突然悪化したように、人生にも上り坂や下り坂がある。更に人生には、今回のような「まさか」 という坂があることを知らなければならない。


【心と体の健康情報 - 663】
幸せな人生を歩むために
「プロのプレッシャー克服法」

何かにチャレンジする時、準備不足や経験不足がプレッシャーになって、うまくいかなかったらどうしよう…とネガティブになり、 不安でがんじがらめ…普段の力を出せなくなってしまう…。
プレッシャーを抱えながら、いかに自分の力を出していくか…きついノルマや成果主義、熾烈な競争にさらされる現代社会では、 誰もがプレッシャーとの戦いを強いられる。
常に大きな成果を求められるプロフェッショナル…降りかかってくるプレッシャーも大きい。そのプロ達は… ある同じことを実践しているのです。

プレッシャー克服方(1)  「苦しい時にも、あえて笑う」
どんな苦しい時でも、笑い飛ばす… 笑顔でプレッシャーを跳ね飛ばす。
海外で巨大プラントの建設を率いる"高橋直夫"氏…
「笑って仕事しないとダメだ。考え過ぎると、頭や体の動きが鈍くなる。
苦しくてもあえて笑えば、プレッシャーの中でもいい仕事が出来る」と言い切る。

笑いの効用は、科学的にも解明されている。
ドイツの研究者が行った「笑いの実験」
Aのグループには、ペンを縦に口にくわえ、笑えないようにした。
もう一方のBのグループには、横にしたペンを歯で噛んで、笑っている顔を作り…そして、漫画を読ませた。

両方に漫画の印象を十段階で評価させたところ、笑いの表情を作ったBグループの方が「面白かった」と評価したのです。 つまり、心の底から笑わなくても、作り笑いをしただけで、脳は影響を受け、 考え方がよりポジティブになることが分かってきたのです。
ポジティブになることで、前頭葉が適切に働き、プレッシャーがかかっていても、的確な判断、 良いアイデアを生み出しやすくなると、考えられている。
 
Q. 「いざという時に力を発揮できるようにするには、脳をどのように活用すればよいのでしょうか?」
プレッシャーを解消する相談で、最も多かった質問です。
A. 仕事に入る時、「スイッチをONにする」ある?行動をする。
スイッチが入った瞬間、脳が集中的に働き出し、プレッシャーがあっても、プロは、 いいパフォーマンスができるようになるのです…。

いざ本番…スイッチをONにする時、頭の中で、モードの切り替えが行われる。
私たちの脳には、「集中モード」や「リラックスモード」など、様々なモードが眠っています。プロは本番に臨む時、「集中モード」 を呼び起こして、プレッシャーを乗り越えているのです。

問題は「どうやって集中モードを呼び起こすか?」に関心がいく。
モードの切り替えは、前頭葉が無意識のうちに行うことが多いため、自分の意志では、コントロールが難しいと考えられています。
ところが、自分の意志をコントロールすることができる、プロフェッショナルがいるのです。

次号につづく

(NHKプロフェッショナル 仕事の流儀から)

 

2009年05月15日

捨てるの…ちょっと待って

森 信三 「修身教授録」 Ⅱ第10講「賞味三十年」からの抜粋です。

 

人生の賞味期間は、三十年くらいのものです。その大切な歳月を充実して生きたなら、満足して死ねます。

「朝に道を聞かば、夕べに死すとも可なり」

よく知られる孔子のことばです。人生の真の意義は、時間の長さにはなく、いかに生きたかという、 その深さにあるということです。

 

人によって長短はあるにせよ、一人の人間が世の中のお役に立ち、持てる真価を発揮するのは、 二十代半ばから五十台半ばの三十年間でしょう。
ですから、人生の賞味期限を長くすれば、それだけ世の中へのお役立ち期間も長くなるということです。

平均寿命の短い昔は、元服15歳はもう一人前…大人の仲間入りをした。
現代は平均寿命が大幅に伸び、人生の「賞味期限」も倍くらい長くなった。

人生、50歳を過ぎる頃から充実してくる。60を過ぎると、様々なしがらみから解放され、時間に追われることもなくなり、 好きなだけ仕事をして、空いた時間、今まで出来なかったことがやれるようになる…趣味に、旅行に、日々充実してくる。


【吉村外喜雄のなんだかんだ - 664】
「捨てるの…ちょっと待って」

冷蔵庫の「牛乳」…「賞味期限が過ぎているから…」と、捨てようとする妻。
「飲むから、捨てないで…」と、私。「お腹壊しても知らないから…」と、妻の声…。
妻は「賞味期限を過ぎた食品は口にしてはいけない」と、信じ込んでいるのです。

牛乳…臭いを嗅ぎ、泡立っていないか目で確認し、一口含んで、何でもなければ飲む…もったいない世代の私…何でもないのに、 賞味期限が来たからと、捨てる気にはならない。
賞味期限は、製造した会社が、お客様が美味しくいただく目安の期間として定めたもの。そのうえ多くの企業は、 賞味期限を実際の賞味可能日数より短めに設定している。
だからと、賞味期限を3週間も過ぎた「絹ごし豆腐」を食べる気にはならない。
捨てる前に、臭いをかぎ、大丈夫そうだったら、恐る恐る一口舌に乗せる…個人差があるにせよ、"五感"でおおむね判断できるのです。

違和感がなければ、捨てずに料理などに使えばよい…食品は、賞味期限よりも、保存状態が大事…状態が良ければ、 期限に囚われることなく、無駄なく消費できるのです。

今月下旬、長島温泉へ孫を連れ、家族で一泊旅行する。
ホテルは、夕食も朝食もバイキング形式…和食、洋食、寿司、果物、飲み物、ショートケーキ等々、種類は豊富。好きなものを、 好きなだけ取って食べる…。
若いカップルや家族連れに好評だ。前回宿泊した時、妻は、目の前で握ってくれるトロが美味しいと、三回も席を立っている…。

並べられている料理…無くなると直ぐ追加が出てくる。残った料理…どうするのだろう? 捨てるのはもったいない… 船場吉兆のように、前夜の残りを翌朝また出す?それは困ります。

帰ってから友人と、こんな会話をしていたら…友人曰く。
ビヤガーデンでアルバイトしていた時、客が食べ残した"枝豆"…実の残った枝豆をより分けて、出しなおす。 客が飲み残した生ビールを集めて、ジョッキを満たす。

その時、泡の出し方を習った…割り箸を突っ込んでかき回すと、きれいな泡ができる。泡を作るのは割り箸が一番…そして、 何食わぬ顔でお客様の所へ… こんな事例、珍しくはない…「そう、そう…」と私もうなずく。
私も飲食店でアルバイトをしていた時、似たような経験をしている…。

最近のニュースで…韓国の飲食店の七割が、お客が食べ残した残飯を、そ知らぬ顔で新しい客に出すという。 韓国政府が改善指導をしても、なかなか守られず、対応に苦慮しているという…気持ち悪くて、韓国へ行く気にはなりません。

昨年京大が、京都市内50世帯の家庭ゴミを調べたところ、手つかずの食品が大量に見つかった。包装されたままのパン、うどん、 豆腐…農水省の調査では、家庭生ゴミの約40%が食べ残し…その内6%が、手つかずの食品だった。

ホテルやコンビニ、外食企業からは、弁当や野菜などの売れ残り食品が、毎日大量に廃棄される。農水省の推計では、家庭や企業から、 十分食べられるのに廃棄される食品は、年間600万トン…実に食品総量の4分の1が捨てられる計算になる。
国連は近い将来、穀類、肉、魚類、野菜の価格が1.2~1.8倍になると警告している。
世界人口の増加、温暖化による穀倉地の干ばつ、水害、バイオ燃料への転化、投機などが原因で、食料品が国の戦略品になろうとしている…。

自給率わずか39%の日本は今、飽食に浸りきっている…
大量に食べ、惜しげもなく捨てる…何かが狂っている。
何れ"罰"があたって、北朝鮮のようにひもじい思いをして、餓死者が出る国になるかも…
戦中戦後の食糧難時代を知る、私のひとり言です…。

読売新聞・特集「食ショック」より

2009年05月19日

プレッシャー克服法(2)

■趣味のゴルフが、プレッシャーに強い体質を養う

一番ホール…さあ本番、初っぱなのドライバーショット…緊張が走る。
今日こそは…とクラブを構えるが、プレッシャーが緊張となり、普段の練習通りの力が出ない。プレッシャーに強くならなければ、 ゴルフは上手くならない…。
プロは本番直前、いつも同じメニューで、集中力を高め、スイッチをONに切り替えていく。(NO600 重圧と戦うイチロー)

いつも同じ動作で…柔軟体操で軽く体をほぐす。手袋をはめ、手を軽く握り締める…その時「ヨシ!」と、スイッチが入る。
一番ホールに立ち、まず素振り…自分の番が来たら、左袖をちょいと引っ張ったり、クラブをチョンと地面を叩いたりする…打席の後ろに立ち、 方向と落とし所を見定める…いつもの決まった歩数で、同じリズムで打席に向かう…クラブを正眼に構え、背筋を立て、構えの姿勢に入る…。

そうしたさりげない動作を繰り返して、集中力を高めていく。本番前に毎回同じ"決まり事"をやって、平常心を保つ。集中力を高める。 そうやって、プレッシャーを跳ね除けていくのです。


【心と体の健康情報 - 665】
幸せな人生を歩むために
「プレッシャー克服法(2)」

いざという時…思うように力が発揮出来なくて、思い悩む…
プレッシャーを克服し、普段通りの力を発揮するには、どうしたらいいのでしょうか?誰もが持つ悩みです。
その答えは、 「脳を活性化させて、プレッシャーを解消する」

さあ、これから本番…脳の「スイッチをON」にします。スイッチが入った瞬間、脳が集中的に働き出し、プレッシャーがあっても、 いいパフォーマンスが出来るのです…。
スイッチをONにする時、頭の中でモードの切り替えが行われます。
私たちの脳には、「集中モード」や「リラックスモード」など、様々なモードが眠っています。プロは本番に臨む時、この「集中モード」 を呼び起こして、プレッシャーを乗り越えていくのです。

では、「どうすれば、集中モードを呼び起こすことができるか?」
モードの切り替えは、前頭葉で、無意識の中で行われるため、自分の意志ではコントロールが難しいと考えられています。ところが、 それをコントロールできる、プロフェッショナルがいるのです。

前号では、プレッシャー克服する方法は、「苦しい時にも、あえて笑う」でした。
プロは、どんな苦しい時でも笑顔で、プレッシャーを笑い飛ばす。
否定的な事は一切言わず、考えず、何事にも前向き、肯定的に…今、自分に出来ることは何かを懸命に考え、良いと思ったら、 惑わず実行する。

更にもう一つ、プロがやっているプレッシャー克服法があります。
「本番前の"決まり事"を持つ」 ことです。
大リーガーのイチローは、本番前の"決まり事"を固く守ることで知られている。
球場に入ると、決まったメニューを淡々とこなす。打席では、狙いを定めるように、バットを立てる。一連の動作をキチッとこなしていくと、 本人の意識には関わりなく、スイッチが入るのです。

決まり事の内容は人様々ですが、共通するポイントは、何かしら"体を動かす"ことです。 脳のモードを、自らの意識で変えることは難しいのですが、本番前に、いつも同じパターンで体を動かすと、運動系の神経回路から、 信号が前頭葉に送られ、集中モードへ切り替わっていくのです。

毎回決まった手順を繰り返して本番に臨む。プロは"決まり事"をやって集中モードに切り替え、プレッシャーを跳ね除け、 結果を出すのです。脳がプレッシャーに負けると、本番に集中することが出来ません。
ですから、いざ本番という時、プレッシャーを跳ね除ける一連の"決まり事"をやって行けば、集中モードに切り替わり、 力を発揮出来るのです。

NHKプロフェッショナル 仕事の流儀から

 

2009年05月23日

捨てるの…ちょっと待って(2)

■賞味期限間近のサプリメント

消費者の「鮮度信仰」を背景に、流通市場の「日付管理」に対する目は厳しくなる一方です。
我が社では、黒酢や冬虫夏草、ローヤルゼリー、ビタミン剤など、約40種類のサプリメントを販売しています。
何れも、賞味期限が残り3か月になったら、売り場から撤去しています。
期限切れ間近の商品を、うっかり販売してしまうのを防ぐためです。

東京では、食品の値上りが相次いだ昨年末から、賞味期限の近づいた商品を、アウトレットの割安価格で、 インターネットや業務用に販売する業者が急増している。
賞味期限間近の商品…「通常の半値以下」という魅力に引かれ、消費者や飲食業に人気があるのです。


【吉村外喜雄のなんだかんだ - 666】
「捨てるの…ちょっと待って
(2)」

食品を購入する時、「賞味期限」や「産地ブラント」に無関心という人は、いないだろう。
消費者を裏切れば、「赤福」や、中国ウナギを国産と偽った「魚秀」のように、営業停止に追い込まれ、企業の屋台骨を揺るがすことになる。

広島銘菓「もみじ饅頭」の老舗・にしき堂…朝作られた饅頭が、その日に観光地の売店に並ぶ。もみじ饅頭…作ってから20日間は、 食べても大丈夫だという。
にしき堂では、賞味期限を"8日間"と定め、店頭では3日を過ぎると、特売に回し、半値で売ってしまう。
一番おいしく食べられるのは、生地とアンがなじむ3~4日目…饅頭は、4日を過ぎると、美味しさのピークを過ぎる。 消費者に新鮮なものを提供し、店の暖簾を守るのが、老舗の条件なのです。

茨城県で「干し芋」を加工販売しているM社…干し芋の賞味期限を偽装したとして、県から改善指導を受けた。「品質は問題がない…」 と、期限が来て返品された、干し芋の賞味期限を書き換えたのだが…製造業者に罪の意識はないだろう…。

私の子どもの頃、干し芋は家庭のおやつだった。
長期保存がきく保存食品で、かきもち同様、陰干しにして保存…干してしばらくすると、白い粉が吹いてくる。粉は糖の一種で、 美味しさを増す働きをする。

昔は、干し芋や味噌は自家製だった。
家庭で造る味噌は、防腐剤が入らない天然醸造。
しばらくすると、表面が白いカビ状のもので覆われる。
今だと、「カビが生えた…気持ち悪い…食べられない」と苦情が出て、返品されるだろう。
干し芋も同様…粉をふいた干し芋を見て、カビと勘違いして、捨ててしまう消費者がいるという。正月のお餅にカビが生えるのは、 安全な食品の証拠…もし、いつまでもピカピカだったら、カビも生えない、毒入りの危険なお餅、ということになる…。

レストランで食事をして、食べ残すことがある。
米国に本社があるステーキチェーンの六本木店…全店で、食べ残した客に「持ち帰り」を勧める運動を展開している。店から渡された、 お持ち帰り専用容器には、早く食べていただくための「日付シール」が張られている。

お隣の福井県でも、昨年「おいしいふくい食べきり運動」と銘打って、地域ぐるみのキャンペーンが展開された。
「量が多ければご相談ください。小盛りも注文できます」
福井県の飲食店…最近メニューに、上記のようなメッセージを添えたお店が急増している。470店のお店が登録していて、 この運動に参加しているのです。
運動に協力している某ホテルの宴会場には、"持ち帰り容器"が置いてある。

日本の食品の廃棄量は、家庭からのものを含め、約1900万トン…減る気配を見せない。
自給率39%の日本…消費者の賞味期限へのこだわりを変えない限り、廃棄量を抑制することは無理だろう。

食用油、マヨネーズは昨年7月から…物価の優等生"タマゴ"も値上げされた。
石油燃料に次いで、食糧品価格が高騰する中、食べきれないほど料理を並べ、食い散らかす飽食文化の日本…そろそろ、 見直す時に来ているようです。

読売新聞「食ショック」より

2009年05月26日

プロのアイデア発想法

■ひらめき

戦後の日本碁院を代表する棋士"呉清源"。若い頃、ときに夢の中で"妙手"を見つけたという。「眼が覚めてから、 その形を覚えていることがある…」と、作家・川端康成が著書「名人」に、本人から伝え聞いて書いている。

ビートルズの名曲「イエスタデイ」は、ポール・マッカートニーが、夢の中に現れたメロディーから生まれたと、言われている。
一芸に抜きんでた人は、夢の中にも、その天才的才能が表れるものらしい…。

人が見たもの、描いたものが、脳信号の動きをもとに、画像に再現する技術…京都の国際電気通信基礎技術研究所が、 開発に成功したという。
「□」や「×」などの図形やアルファベットを、見た人の脳から、情報として読み取り、コンピューターの画面上に映し出すことが出来るのです… 。

近い将来、睡眠中に見た「夢」や、脳裏に描く空想を、コンピューターが再現し、本人が人に伝える意志の有無に関わらず、 知ることが出来るようになるだろう…。


【心と体の健康情報 - 667】
幸せな人生を歩むために
「斬新な発想を生み出す、プロのアイディア発想法」

数日前に私が見た夢…先生が"造形モデル"(見たこともない素敵なデザインだった)を示し、このモデルを参考に、 オリジナリティな作品を創るようにと、学生に宿題を出した。
夢の中で…良いアイディアが湧かなくて悩む私…ふと、「サンゴと熱帯魚」を題材にすることを思いつく… 作品のアイディアが次々浮かんでくる…目が覚めた後も、そのアイディア…覚えていました。

「締め切りが直前に迫っていても、アイディアがまとまらない…」「何か良いアイディアがあれば、教えてほしい」… 私たちの切実な願いである。
どのように脳を活性化すれば、アイディアがスッと出てくるようになるのでしょうか。

そこのところを、プロフェッショナルに是非聞いてみたい…真剣な悩みです。
プロフェッショナルと言われる人たちは、どのようにして斬新な発想を生み出しているのでしょうか?

Q.「アイディアがひらめく」とは、どういうことでしょうか?
新しいアイディアは、ゼロから生まれたりしません…今までの経験や知識を組み合わせることで、生み出されます。そうした経験や知識は、 脳の"側頭葉"に蓄えられます。
アイディアが必要になると、側頭葉の上部にある"前頭葉"から、側頭葉に指令が発せられます。すると側頭葉は、蓄えられた記憶の中から、 「これはいい」と思うものを組み合わせて、前頭葉に送ります。幾つか送られてきた中から、前頭葉が採用したもの…それが「ひらめき」 となって、頭に浮かんでくるのです。

迷ったら寝る… 「"寝る"発想法」
夜中にふと目が覚め、思わぬアイディアが浮かぶ… そんなことがあって、忘れてしまわないようにと、枕元にペンとメモを置いて寝る…そんな体験、誰でも一度や二度はあると思う…。
眠りが覚める頃に…アッわかった!脳は、人が寝ている間も考えているのです。

「考えなければならないことがあったら、家に帰って寝る…迷ったら寝る」
これが、発想の極意なのです! 翌日の朝「ああ、こういうことか…」と…。
これは、昨年「崖の上のポニョ」で大ヒットを飛ばした、宮崎駿監督の言葉です。
「アイディアに行き詰ったら、15分でもいいから昼寝する…寝ると違いますよ」と、宮崎監督は言う。

松本清張の名作「砂の器」…1人の刑事の執念が、寝覚めた時、ひらめきとなって、迷宮入りを救っている。その第12章・ 混迷の一節…

「もう一つ、手紙を出すべき相手があった。それを思いついたのは、今朝…寝床の中である。今西(刑事) は目のあくのが早い方だった。
寝床で煙草をゆっくり一本吸うのが、習慣になっている。
こういうときに、ふと、思わぬ考えが起こるものだ。
どこかにまだ眠気が残っているような、うつろな意識の状態の中で、下から湧き上がってくる泡のように、 ぽかんと思いつきが出てくる…」

Q.なぜ、寝るといいんだろう
昨年、新作「崖の上のポニョ」が話題になった宮崎監督。良いアイディアが見つからない時、 1時間ほど昼寝をする…起きがけに、あれだけ行き詰ったかに見えた問題が、解けてしまう…そんなことがよくあるという。

「人間の作業能力は、起きた瞬間が一番高い」
人が起きて何かしている時は、脳は絶え間なく入ってくる情報にさらされ、蓄えてある記憶がバラバラのまま、まとまらない。

眠っている間に、経験や知識が整理されていくのです。それで、寝て起きた時にアイディアが湧いてくるのです。しかし、 寝さえすればアイディアが浮かんでくるかというと、そうはならない…大事な条件が一つある…「とことん考えてから、寝る」 ことです。
考えて、考えて、一日考えていると、さすがに脳は「勘弁してくれ」となり、気絶したみたいに眠りに落ちて…眠りから覚める頃に 「ア~わかった…」

プロフェッショナルの多くが、幾度となくこんな体験をしている。とことん考えたら、脳はよりポジティブに働く…「考えて、考えて、 とことん考えてから寝る」…
これがプロフェッショナルの「寝る発想法」なのです。

NHKプロフェッショナル 仕事の流儀から

 

2009年05月29日

藤沢秀行・名誉棋聖逝く

■囲碁・7大タイトル獲得数
(棋聖・名人・本因坊・十段・天元・王座・基聖)

42…趙 治勲  35…小林光一  31…加藤正夫(故人)  21…坂田栄男
21…林 海峰  17…大竹英雄  15…張 栩   14…藤沢秀行(故人)
12…高川 格(故人)、依田紀基  11…王 立誠  10…武宮正樹

私が囲碁を覚えたのは昭和39年。昭和36年から昭和60年の25年間は、坂田栄男、藤沢秀行、林海峰、加藤正夫の全盛期だった。
この間のタイトル総数は127(年平均5個)…その半数の68個を、この四人が獲得している。

昭和61年から平成7年の10年間は、小林光一、趙治勲、加藤正夫、武宮正樹が活躍。
この間のタイトル総数は70…その7割49個を、この4人が獲得している。

平成8年から平成20年の13年間は、趙治勲、張栩、依田紀基、王 立誠が活躍。
この間のタイトル総数は91…その半数49個をこの4人が占め、現在"張栩"が史上初、7冠のうち"5冠"を独り占めしている。


【吉村外喜雄のなんだかんだ - 668】
「藤沢秀行・名誉棋聖逝く」

豪快・華麗な棋風で、囲碁界最高のタイトル「棋聖」6連覇の記録を持つ、藤沢秀行名誉棋聖(83歳)が、5月8日亡くなった。
名人位2期、棋聖6連覇を始め、王座5期、NHK杯2期など、通算獲得タイトル数は23…その独創的棋風は、自由奔放、豪放磊落… 昭和を代表する名棋士でした。
平成3年「王座」獲得、翌年67歳で防衛に成功…史上最高齢の防衛記録保持者である。
その人生は破天荒…酒、ギャンブル、借金などをめぐるエピソードには事欠かない。
「囲碁とは 勝負である前に 芸である」という名言を残している。

二十代後半から競輪にのめり込み、1点買いに250万円をつぎ込んだことは、 今も語り草になっている。
目当ての選手に、後続がきわどく迫ってくる…藤沢さん、金網をつかみ「ガマーン」と叫び続けた…最後に抜かれて大金は紙クズに… 金網は菱形にひしゃげた…その後「秀行引き寄せの金網」として、競輪場の名所になった。

三十過ぎてからは酒を愛し、酒のにおいをさせて対局に臨んだり、不動産業に手を出したり、囲碁ツアーを企画したりしたが、 いずれも赤字で、億単位の借金を抱えた。
借金返済のため、囲碁タイトルでは最も賞金の高い「棋聖戦」に自らのすべてを賭けた。
防衛戦の一ヶ月前から、好きな酒を断った執念は、語り草になっている。

秀行の型破り…賭け事にとどまらない。女性関係も…無頼ぐらいでは追っつかない。
将棋の"米長"永世棋聖の若い頃、米長の奥さんが、藤沢さんの奥さんを訪ね、「うちの主人は週に5日は帰ってこない…」と、 悩みを打ち明けたところ、藤沢夫人「うちは(愛人の家に入り浸って)3年、帰ってきませんでした…」

事業に失敗して借金の山を築き、高利貸しに追われ、自宅を競売に掛けられる修羅のさ中、 並ぶ者なき"棋聖戦6連覇"の偉業を成し遂げている。
第5局開始の朝、「負けたら首を吊ろう…」と、枝ぶりのよい木を探しながら、対局場に向かったという…。
この碁で藤沢は、一手に2時間57分という記録に残る長考の末、対局者"加藤正夫"の大石を全滅させるという、気迫の勝利を収めた。
勝利の後、「最善手を求めて命を削っているから、借金も女も怖くない」と語った。

私生活は破天荒だったが、囲碁は謙虚そのもの…「囲碁の神様が「100」知っているとしたら、自分は…」との問いに、 希代の名人が出した答えは、「6」だった。
享年83歳…誰よりもめちゃくちゃな人生を歩み、誰からも愛され、そして囲碁は誰よりも強かった。
戦前・戦後の乱世を、すさまじく生き抜いたプロ棋士…こういうスケールの大きな自由人は、もう現れないだろう。

5/9 読売新聞

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