「だら」は、北陸地方の方言と思っていたら、山陰地方の一部でも使われているという。
昨年末の大掃除で、書棚を整理していたら、松本清張の「砂の器」が目に入った。
30年くらい前に、清張の作品に夢中になっていた頃、読んでいる。
正月串本へダイビングに出かけた折、行き帰りの車中で読んだが、筋書きはすべて忘れていた。
読み進めると、日本海側の片田舎の方言が、「砂の器」の謎解きにからんでいく。
当初、東北の「かめだ」と思って捜査したが、名前ではなく、島根県の「亀嵩(かめだか)」という地名だった…そんな筋書きで、
山陰と東北に共通のなまり・方言があることに着目…事件解決の糸口を見出していく…。
【吉村外喜雄のなんだかんだ - 655】
~かなざわなまり(4)~
「ダラ」「ダラくさい」「ダラブチ」「だらま」
「ダラなこと、しとんなま」…1年前、サッカーワールドカップ、アジア杯予選「日本対バーレーン戦」で、日本は前半致命的ミスで、
ゴールを決められた瞬間である。
試合は「1-0」で負けた。
こうした罵倒の言葉…金沢では「ダラ」「バカ」「アホ」の三つに分けられる。
かなざわ弁を代表する「ダラ」…ミスした時、「え~いダラ!」「アホンダラ」「ダラかいや!」と、罵声が飛んでくる…が、 京都ことばに似て当たりが柔らかく、言うほどに相手を傷つけない。
関東のバカと関西のアホが金沢に入り込んだのは、そんな昔のことではない。
戦後、ラジオやテレビが発達してからである。
思わず失敗したとき、「ダラな…」と舌打ちして、
自らを反省するときに使ったり、自分だけ損するような目に合ったときは、「ダラくさい」と、
独り言を言ったりする。
「ダラ」は「バカ」や「アホ」より、いろんな意味が含まれ、広い言い回しになる。
関東や関西では、相手に「ダラ!」と言っても通用しない。そんな時「アホンダラ」と言うと通じる…金沢から都会へ出た人は、 "ダラ"が付いていると、何となく胸がすっきりするのです。
私が子供の頃、母親に「ダラブチ、何しとんがいね!」と、
よく叱られたものです。
そもそも、「ダラ」には、愛情が込もった言い回しが含まれている。夫が妻のお尻をなでたりして、悪ふざけをした時、「ダラブチ、
いい加減にしまっしま!」と、妻に軽くいなされ…妻の顔は笑っている。
「ダラブチ」の語源は、仏教の「南無阿弥陀羅仏」が変化したものだという。
信仰心厚い金沢にふさわしい解釈だが、これが正しいとすれば、「ダラブチ」が持つ柔らかい響きが理解できるというものです。
「ダラマ」は、「え~いダラマ」と、 相手を軽く叱ったり、相手を見下げた言い回しの時に使ったり、「ありゃ だらまや」と、 知恵遅れの子供を指したりする言葉です。「ダラ」は北陸全域に存在するが、「ダラマ」は金沢にしかない方言です。
「頑張りまっし、金沢ことば」から