■回文
「たけやぶやけた」のように、後ろから読んでも、前から読んでも、同じ文や語句を「回文」といいます。
最近のコンテスト入賞作では、「いかした歯科医」「お帰り!笑顔」
がある。
「長き世のとおの眠りのみな目覚め波乗り舟の音の良きかな」
江戸時代、宝船に乗った七福神の絵に、この回文を書き添え、枕の下に敷くと、
良い初夢を見ることができ、縁起が良いとされた。
丑年にちなむ回文に、「さあ清水走れ丑年嬉し弾みし朝」がある。
のどかに牛が草を食む田舎…いいですね…「いなかいかない」
粟津温泉近く、旧8号線沿いのモーテルの看板に、「AKASAKA」があった。
前から読んでも、後ろから読んでも"赤坂"
【吉村外喜雄のなんだかんだ - 637】
~ことば遊び~ 「落語・牛ほめ」
丑年にちなんで、前座噺の演目として寄席によくかかる、「牛ほめ」を一席。
バカ息子の顔を立てようと、父親が秘策をさずけるが…最後のオチ…フッフッ
♪いつもボーッとしている息子の与太郎に、新築祝いの挨拶の口上を
覚えさせようとする父親。
「ロクに挨拶もできない」と、いつも小言ばかり言っている、叔父の左兵衛を見返すには、
絶好の機会である…。
首尾よく家を褒めて、叔父をいい気持ちにさせれば、小遣いが貰えるからと、
懸命に、与太郎をその気にさせようとする父だが…。
「結構なご普請でございます。天井は薩摩の鶉木理(うずらもく)。
畳は備後の五分縁(べり)で、左右の壁は砂摺(ず)りでございますな。
庭は御影づくりでございますね…」
という簡単な褒め口上を、なかなか覚えられない与太郎。
結局、口上を紙に書いてもらって、叔父の家へ向かう。
さて、しどろもどろになりながらも、なんとか口上を言い終えた与太郎。
何かを読みながら喋っているんじゃないかと、疑う叔父を尻目に、そそくさと台所へ…。
台所の柱に大きな節穴があり、悩みどころになっている叔父。
じつは、この節穴に、父が息子に授けた秘策があった。
竣工前、家を見に行った時に思いついた、とっておきの考えを息子に言わせ、叔父に一泡吹かせようという魂胆である。
『叔父さん、ここに大きな穴があいているけど、気にならないの?』
「ボーッとしているお前でも気付いたか…いや、気にはなっていたが、なかなかいい考えが浮かばず、どうしたものかと悩んでいるんだよ」
『心配ないよ叔父さん、秋葉様(防火の神様)のお札貼ったら…
穴が隠れて火の用心になるよ』
この言葉に感心した叔父は、「お小遣いをやる」と約束…
めでたし、めでたしとなるはずだったが…
調子に乗った与太郎は、叔父が大切に飼っていた、牛まで褒めると言い出す…。
『あれ、叔父さん、この牛の後を見て…大きな穴があいているよ、気にならないの?』
「それは尻の穴だよ。そんなもの気にならないよ」
『いやいや、心配ありません。秋葉様のお札をお貼んなさい』
「おいおい、バチがあたるぞ…そんな所に張って…どうするんだ」
『穴が隠れて"屁の用心"になります』
金原亭馬生「落語名作100選」より