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性善説・性悪説(2)

■「孟子」名言

自ら反(かえり)みて 縮 (なお)ければ 千万人といえども 吾往かん
「自分が正しいと思うときには、たとえ相手が1千万人であろうとも、
 断じてあとへは退かぬ。これこそが本当の勇気というものだ」

この「千万人…」の言葉、孟子が人から"勇気"について尋ねられたとき、
孔子の言葉として伝えている。

※孟子(前371?~289?) 中国戦国時代の賢人。
  孔子同様、儒教の道徳を説き、政治理念にかなう統治者を探して、
  20年の長きにわたり、中国を放浪した。その間に、為政者や弟子たちと
  交わした言葉が、孟子の死後、「言行録」として編まれた。


【心と体の健康情報 - 624】
~古典から学ぶ~  「性善説・性悪説(2)」

「性善説・性悪説」…その意味を私たちは、以下のように、間違って解釈しているようです。
「性善説」…人の本性は善である。よって人は、信じなければならない。
「性悪説」…人の本性は悪である。よって人は疑ってかかるべきで、信じては
        ならない。
正しい解釈は…
「性善説」…人は生まれつき善の性質を持っている。
        成長過程で学習し、人為的に悪行・悪知恵を身に付けていく。
「性悪説」…人は生まれつき悪の性質を持っている。
        成長過程で学習し、人為的に善行を身に付けるようになる。

■孟子の思想…性善説
孟子は、『人の性の善なるは、 猶(なお)水の下 (ひく)きに就くがごとし
と述べ、「人の性は善であり、どのような聖人も小人も、その性は一様である」
と唱えた。
本来人の性が"善"でありながら、時として"不善"を行うのは、この"善なる性"が、外部からもたらされるものによって、 失われてしまうからだとした。

そのことを孟子は、以下のように述べている。
大人(たいじん・大徳の人) とは、 其の赤子の心を失わざる者なり。
 学問の道は他無し、 其の放心(失われた心)を求むるのみ

「性善説」を唱えた"孟子"も、「性悪説」の"荀子"も孔子の弟子。
人間の本性は「善」なのか、或は本性は「悪」なのか…荀子は、孟子の「性善説」を意識して、あえて反対論を唱えた… 二千数百年を経た今の世に於いても、意見は対立したままで、答えは見つからない。

孟子言うには、孔子の教え「仁・義・礼・知」は、「人が外部から受け取るものではなく、生まれながらに所有しているもの… そのことに気付かないだけ」だと…。
それを努力して伸ばしてやらない限り、人間は禽獣同然の存在となる。
教育して初めて、「仁・義・礼・知」の得を身につけることが出来る…と言っている。

薄学な私が思うに…人は生まれながら、善か悪のどちらか…ということではなく、善も悪も両方、潜在的に所有していると思うのです。
教育や環境によって、いずれかの方により強く染まり、何か事があった時、「善の心」「悪の心」いずれかが、 その人の個性となって強く表れてくる。
人間の高い知能が、そうさせると思うのです。

インドで起きた「狼に育てられた少女」の実話から、環境や教育によって、人間は人にもなれば、狼にもなれる…人は教育によって、 初めて人間になる…
すなわち、学問をすることによって、人間としての徳を身に付けるのです。

孟子も、荀子も、つまるところ、同じことを言っているのですが、2人の違いは、君主の国家を治める手法に表れてくる…

孟子は、君主は徳によって仁政を行い、人民はその徳を慕って、心服するようになる。
1人ひとりの主体的努力によって、社会全体を統治出来る…といった楽観的な、人間中心主義を唱えているのです。

対する荀子は、君主は社会を法制度に則り治めなければ、人間は良くならない…という、社会制度重視の考えに立っている。
前者は、後世に「朱子学」のような、主観中心主義への道を開き、後者は、荀子の弟子たちによって、そのまま「法家思想」 になっていきます。

※ 「性善説・ 性悪説(1)」は、2005年9/13 に 配信。
  「性悪説」を唱えた荀子の弟子"韓非子"については…
  2005年10/4、10/11、10/18 の3回に分けて配信しました。
  ブログ 「吉村外喜雄のなんだかんだ」を開き、
  カテゴリー/月別分類、’05年9月と10月をご覧ください。

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