■韓国勢の台頭と、元気のない日本の棋士界
先週5日の日曜、日本女子オープン最終日。
最終18番ホールでトップに並んだ"宮里藍"。
先月片山津の"横峯さくら"同様、1打差で又も韓国の選手に優勝を持っていかれた。
囲碁界も、つい最近まで日本は世界の碁界をリードしてきました。
中国も韓国も碁といえば、日本の棋士の指導や著書によって勉強したものでした。
ところが十数年前から力関係は全く逆転。
碁の世界戦のタイトルは、ほぼ韓国の棋士に独占されるようになりました。
その背景には、韓国の父母たちの教育熱心があり、10人中9人の親が「囲碁は教育にいい」と信じ、
子どもを囲碁教室に通わせる環境にあります(数年前から日本も…)。
同じ現象が、プロコルファーの世界にも起きている。
韓国勢が日本や米国ツアーの上位を席巻しているのです。
その韓国を、猛烈に追い上げているのが中国。
棋士たちは国家的支援を受け、住み込みで研鑽を積んでいる。
賞金額の大きい二つの世界棋戦…2008年の優勝者は、中国の棋士でした。
世界戦で結果を出せなくなった日本棋界…その現状を無念に思っているのは、私一人でしょうか…。
9/21中日新聞社説
【心と体の健康情報 - 606】
「3連敗の後の4連勝…その奇跡」
第1回ワールドマインドスポーツゲームズ(頭脳オリンピック)が、10月3日~18日、北京で開催されている。大会には、囲碁、 チェス、チェッカー、シャンチー(中国将棋)、ブリッジ(トランプ)の、5競技36種目に、 100以上の国から2,000名を超える選手が参加して、メダルを競う。
囲碁が趣味の私。この7月の「本因坊戦7番勝負」で、羽根直樹九段が、3連敗の後、カド番の絶望状況から4連勝して本因坊を奪取、
初タイトルを手にした。その劇的大逆転の一部始終を、TV観戦した。
ファンを興奮させた羽根直樹九段は、囲碁界を支える「平成の四天王」の一人である。
囲碁界の3連敗4連勝は、"趙治勲"二十五世本因坊が三度、"林海峰"名誉天元が二度記録している。趙は6歳、林は10歳で、
それぞれ韓国、台湾から来日。勝つことを宿命づけられた"粘着流・二枚腰"で知られる棋士である。
日本人の達成者は、棋界・将棋界いずれも、今回が初めてである。
プロゴルファーでも、プロ歌手でも、経費を差し引いて、年収1千万円以上の所得を手にするプロは一握りであろう。 棋士の世界も同様、プロ棋士になれるのは一握り。タイトルを争う棋士となると、更に絞られ、10人に満たない。
本因坊羽根直樹九段は、中部総本部(名古屋)元"王座"のタイトルを持つ、羽根泰正九段の息子。恵まれた家庭で育まれ、
3歳で囲碁大会に出場。
小学1年でプロを目指す院生生活に…。
超一流棋士のほとんどがそうであるように、中学3年の14歳で、プロ棋士になっている。
先月9月中旬、片山津ゴルフ倶楽部で、日本女子プロゴルフ選手権を観戦した。
2日間予選ラウンドを戦い、上位60位タイまでが決勝ラウンドに進出する。
優勝者は、賞金1,800万円に、ホンダの高級セダン。60位は30万円。
出場選手の半分以上が予選で涙を呑む。交通費、宿泊費を差し引いて、どれだけ残るのだろう…。専属のキャディを従え、 試合に臨む選手は、宮里藍など、一部の選手に限られる。プロで食えるようになるのは大変だ。
鍛え抜かれた天才たちの戦い。2日間予選を戦い抜いて、1アンダー以上が5名(1位から3位を韓国勢が占める)。
アンダーパーは横峰さくら他3名、1オーバー5名、2オーバー7名と続く熾烈な戦い。5オーバーした選手は、予選落ちの憂き目に…。
一打のミスショットが…ツキの有無が…明暗を分ける。
そもそも、差が生まれるのはなぜか。何が、勝負を分けるのでしょうか?
羽根本院坊は、その問いに答え…
「碁はうまい手を打ったから、リードできるというものではありません。
そもそも相手がミスをしなければ、勝つことは難しいものなのです。
最善と思う手を打つしかないのです。
相手のちょっとしたミスに気付くかどうか…その嗅覚、その瞬間を見抜く…それが、勝つ棋士と勝てない棋士の分かれ目になる」
勝負は妙手より、一手のミスで決まる。
一流棋士には、自らが信ずる"思想信条"というべき"棋風"があり、技量の差は紙一重なのです。
ゴルフも同様。天才女子プロゴルファーが戦う姿を目前にして、その精神力、判断力、運、勇気…そういうものが、
いかに勝敗を左右するか…。
弱気になって脱落した"上田桃子"。あくまで優勝を信じて戦い抜いた"横峯さくら"。
二人の明暗が、最終順位に表れてくる。
優勝を決する4日目、最終18番ホール・パー4。一打差の2位で追う横峯さくら。思い切り叩いた一打目がラフに転がり込んだ。 深さ15cmのラフ…誰もがこれまでと思った。アイアンで安全な場所に出し、3打目でピンに寄せてパー狙い… ボギーになる確率の方が高い。
残り173ヤード・砲台グリーン。手前には背丈もあるバンカー。
グリーンオーバーしたら、奥に深いラフが待っていて、フライヤーが怖い。
横峯、やおらウッドを取り出し、イチかバチか思い切り叩いた。
ボールはグリーン中央に向かって一直線…ワンバウンド、ツーバウンド…転がり、止まった…イャーまいった!
優勝こそ逃したものの、天才一流ゴルファーのすごさを堪能した。
勝負に掛けるプロの秘密…その一端を垣間見たのです。