江戸小噺・四宿の屁
■三遊亭歌奴 「下ネタ艶笑落語」
私がY社に勤めていた19歳の頃、お客様招待会をやることになり、東京から演劇一座がやってきた。
受け入れ側の一員として、一座に1ヶ月間同行することになった。
鶴来の体育館、根上の公民館と、県内をドサ廻り…
マン幕を張ったり、ゴザを敷いたり…雑務が私の仕事でした。
その一座に、真打になったばかりの「三遊亭歌奴(三遊亭園歌)」がいた。
ご存知「山の穴々…」の新作落語が大受けして、人気が出始めた頃です。
夜、高座が引けて、楽屋でくつろいでいる時、お手伝いをしている私達へのサービスだと、「下ネタ艶笑落語」を披露した。
♪「お風呂の中でオナラをしたら、鼻のまん前でブクブクパッチン…。
男のオナラは…、女は… 」と、 顔を見ているだけでフキ出したくなる歌奴の熱演に、お腹を抱えて笑ったものです…。
50年も前のことが、昨日のことのよううに思い起こされます。
【吉村外喜雄のなんだかんだ - 214】
~ことば遊び~ 「江戸小噺・四宿の屁」
毎年10月に、「 五郎島金時芋 」を箱入りで買ってきて、お世話になった人たちにお配りしている。
さて、芋といえばオナラ…川柳に、「コタツから 猫もあきれて 首を出し」というのがある。
被害にあったからといって、本気になって怒るわけにもいかず、当の本人はバツが悪い… それが"オナラ"である。
そこで今日は息抜きに、"オナラ"を題材にした下ネタ小噺を一席…。
♪江戸っ子のだじゃれ好き、遊び心は、"屁"のこき方にまで及びまして…
"江戸四宿"といえば「品川、千住、板橋、新宿」。
それぞれの宿場女郎の特徴を"オナラ"でもって表現しようというのです…。
■品川 「いま行ったのは…」
海に面した女郎屋で、 客が昼遊びしていると、 床の中で花魁(おいらん)が一発いたしてしまった…。
音のしないやつだが、このほうが臭いが強い。
客に嗅(か)がれては大変だから、花魁は夜着を手でしっかりと押さえて、足のほうからバタバタと空気抜きをはじめた。
「おい、なにをしているんだ?」
『沖を帆かけ船が通るから、その真似を…』
「くだらねえことをするなよ…」
もう臭わないだろうと、手を放したとたんに、客が「フッ」と笑って、
「いま行ったのは、肥船(こいぶね)じゃねえかァ…」
■新宿 「半分お出し!」
花魁と客が差し向かいで飲んでいるところに、 若い衆が挨拶にやって来たので、客が盃をすすめた。
花魁が酌をしようと、徳利を持って腰を浮かす…と同時に「ぷう~」とやってしまった。
売り物の花魁にキズをつけてはと思った若い衆、「あいすみません、お昼のおかずがゴボウだったので、お腹が張ってとんだ粗相を…
ご勘弁を願います」
なにもかも承知の客は、『色気を売る稼業は、そうでなくちゃ』と、若い衆に祝儀を与えた。
「ありがとう存じます。過ちの巧妙で…では、どうぞこゆるりと」
部屋を出た若い衆を、花魁が追いかけて、
『ちょいと、喜助どん。半分お出し…いまのはあたしの働きだよ!』
■板橋 「あたしも一緒に…」
芸者をあげて大一座で騒いでいると、やり手の婆さんが酌をするようにと、小職(こじょく)に命じた。言われた女の子が、
徳利を持ってお酌をしようとすると、「ぷう」。
『あきれたよ、この子は。お座敷でおならをするなんて、おまえは本当に行儀が悪い。
階下(した)へお行き!』
叱言(こごと)を言うと同時に、自分が「ぷう」
『お待ち、あたしも一緒に行くから…』
■千住 「前か後か?」
待ちくたびれた客のところに、ようやく女がやって来た。
しゃくだからと狸寝をしていると、
「ちょいと、おまいさん、寝たの? いびきをかいているわね。お起きよ、ちょいとォ!」
布団の上から客を叩くと、拍子で「ぶう~」
気づかなかっただろう…とは思ったが、揺り起こし、
「ねェ~知ってるんだろ、いまの大きなの…」と聞いた。
『なんだい、いまの大きなのって?』
「いまの大きな…地震さァ~!」
『地震…? 屁の前か? それとも後…?』