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歴史から学ぶ「辞世の句」

■徳川家康「東照宮遺訓」

一. 人の一生は 重き荷を負うて遠き路を行くが如し 急ぐべからず
一. 不自由を常と思えば不足なし
一. 心に望みおこらば 困窮したる時を思い出すべし
一. 堪忍は無事長久の基
一. 怒りを敵と思え
一. 勝つことばかり知りて負くる事を知らざれば 害その身に至る
一. 己を責めて 人を責むるな
一. 及ばざるは過ぎたるより勝れり

最初の「人の一生は重き荷を負うて…」は、ズシッと心にしみる言葉です。
この言葉は、"千利休"が言った言葉というのが、最近の歴史家の通説です。



【吉村外喜雄のなんだかんだ - 203】
~歴史から学ぶ~ 「辞世の句」

516号の 「ことば遊び」で、石川五右衛門が釜茹でにされる時、"辞世の句"を読む噺をしましたが、 歴史に名を残した人たちの辞世の句は何だったのか、集めてみました。

今宵は、赤穂浪士が元禄15年吉良亭に討ち入り、主君の仇討ち果たした日である。大石内蔵助は、翌年の2月4日、 享年44歳で切腹した。
辞世の句は、
あら楽し 思いは晴るる身は捨る 浮世の外にかかる雲なし
無事復讐を遂げ、武士の面目を保つことができて、晴れ晴れとした心境が詠まれている。
事件の大元、浅野内匠頭の句も有名です。
風さそふ 花よりもなほ 我はまた 春の名残を いかんとやせん

歴史に名を残した人たちが人生の最後に詠った句。万感の思いが伝わってきて、心打たれる。以下幾つか紹介しますが、 中でも戦国時代、1516年に北条早雲との戦いに破れて自刀した"三浦義同(よしあつ)"の辞世の句は、心打たれる。
討つ者も討たれる者も 土器(かわらけ) よ 砕けて後はもとの土くれ

この句は詠むほどに、世の無常、武家に生まれた無常を、土器・土くれといった無機質なモノに例え、 心の内の無念さを詠に込めている。 (濱野意忠)

数ある辞世の句で、最も知られていて有名なのは、豊臣秀吉。
露と落ち 露と消えにし 我が身かな 難波のことも 夢のまた夢

上杉謙信は、天正6年3月、毛利と連合して織田信長と対決しようとしたが、出陣直前に急死。死の予感があったのか、 2月に描かせた自画像に、辞世の句を書き残している。
四十九年 一酔の夢 一期の栄華 一盃の酒

松尾芭蕉(1694没)の辞世の句も、よく知られている。
旅に病んで 夢は枯野をかけめぐる
我が故郷の歌人…加賀千代女(1775没)。
月も見て われはこの世を かしくかな

石川五右衛門の句は、人の世を皮肉っている。
石川や 浜の真砂は 尽きるとも 世に盗人の 種は尽きまじ
細川ガラシャ婦人の句は美しい。
ちりぬべき 時知りてこそ 世の中の 花も花なれ 人も人なれ

浄瑠璃・滑稽本の作者、十返舎一九の辞世の句です。
この世をば どりゃお暇(いとま) に せん香の 煙とともに 灰 さようなら
このようにダジャレを言って、明るくこの世とオサラバしたいものです。

最後に、明治天皇の崩御に合わせて夫と共に自害した、乃木将軍の妻の句。
出でまして かへります日の なしと聞く けふの御幸に 逢ふぞ悲しき

室町・鎌倉の頃から、武家、文人、僧侶、庶民、おしなべて辞世の句を残している。古の人は何れも、高い教養があった。今の時代に、 このような辞世の句を残せる人はどれだけいるだろうか…。私には、とてもとても…とても…。 

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