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老舗と暖簾

■NHK・BS朝7時45分からの連続小説「都の風」(再放映中)

京都室町の呉服問屋の三姉妹。ある日当主(婿)に呼ばれ、当主の前に座らされた。
「末娘(ドラマの主人公)に婿を取って、当家の後を継がせることにする。長女は商家に嫁に出す。次女は養子を取って別家を持たせる。」と、 言い渡した。
そこから物語が展開し、大騒動が巻き起こる…

・三女に店を継がせることにした理由は…
長女は「新しものがりやのくせに、すぐに冷めてしまい、長続きしない。」
次女は「性格がおとなしく、身代を守っていくには頼りない。」
三女は「人の心が分る優しさと、何事にも前向きにとらまえる積極性がある。」



【吉村外喜雄のなんだかんだ - 199】
~歴史から学ぶ~ 「老舗と暖簾(のれん)」

512号に続き、伊勢の赤福。創業以来三百年、代々暖簾を継承してきた老舗である。 市場環境の変化に機敏に対応してきたからこそ、暖簾を守り通せたのでしょうが、それだけでは、 これほど長く暖簾を守ることは難しいのです。

「企業は外から潰れるのではないんですね。多くの場合、内から崩壊していく。内がしっかりしていなければダメなんです。」
日創研・田舞徳太郎氏が「理念と経営」9月号で、BSE問題で大打撃を受けた、(株)吉野家・安部修仁社長との対談で語っている。

今回の「製造日偽装事件」。平成12年の雪印乳業に端を発し、姉歯耐震強度偽造事件、不二家製菓など、 多くの企業が内部告発などで、企業内の悪事が表ざたになった。そして、消費者にソッポを向かれ、歴史の幕を閉じている。
何故、類似職種の経営者は、そうした事件を教訓に、自社を総点検し、悪習があれば正そうとしなかったのでしょうか?

赤福も、北海道の「白い恋人」の摘発で危機感を高めた。一度は悪習を断ち切ろうと、改善を図った…にもかかわらず、 利益率追求の誘惑に負け、長年続けてきた悪習を断ち切ることができなかった。経営者は見て見ぬ振りをしてしまったのです。
バレることはないと、たかをくくった経営者…。叩けば埃の出る企業がまだまだ隠れているのでは…。もうこれっきりにしてほしいものです。

以下、ほうじん「江戸異聞」から

父祖伝来の"家業"と"しきたり"を代々踏襲(とうしゅう)し、守ってきた「老舗」。
創業者や中興者は、"家訓"や"遺訓"を示して、末代までの安泰を願った。
子孫は家訓を守り、生き馬の目を抜く厳しい経営環境を生き延びて来た。そうした老舗の家訓には、 危険を伴う営業方法を戒めたものが多い。
中には、バカ旦那が出現したら、「当人を隠居さすべく候」という家訓を定め、バカ旦那を座敷牢に入れたり、 勘当して追放する店もあった。
三井の「大坂別家=暖簾分け」によれば、実子の相続は51件中、わずか12件。残りは"養子"が占めた。 男子相続で店を治めることができたのは、2割程度だったのです。

これが江戸っ子になると、もっと徹底する。日本橋博労町の紙問屋。
「当家に男子出生いたすとも、別家または養子に遣わすべし。男子相続は後代まで永く永く禁止し、 当家相続は養子に限ることを、堅く定めおき候。」
娘に優秀な婿を取るのが、商家の習いとなった。近年になって、東京神田・日本橋・京橋の老舗40店を調べたら、 すべて養子だった。
老舗は女系相続で、暖簾を守ろうとしているのです。

以外なのは、店の当主と娘の一存で、婿を決められななかったこと。親族・別家の同意だけでなく、 同業組合の"議決"が必要なのです。
つまり、商家の結婚は"私事"ではなく、同業組合の"公事"であり、婿は"公職"なのです。

江戸時代、万が一にも「お上」のご法度に触れるようなことがあると、家族に留まらず、町内や同業組合までも、 連座して罰せられた。
故に、一商家の婿取りであっても、親戚・組合の同意がいるのです。

この伝統は昭和の初期まで残り、市中の金融機関は、「婿取りだったら融資するが、息子が当主だったら融資しない。 」のが、一般的だった。その婿も、バカ婿であれば、はした金で離縁させられた。

私は商家の三男坊。二十歳の頃、私を養子に欲しいと、金沢の某老舗が人を介して申し込んできた。その老舗、 40年経た今も隆昌なのを見ると、ちょっぴり惜しい気がするが、「自分は養子向きではない。」と断ったのは、正しかったと思っている。

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