精神医学では、まだ生まれる前の胎児期9ヶ月の頃から、満2歳までの33ヶ月を、神経が発達していく上で大変大切な「臨界期」
と呼んでいる。
この時期に、親から虐待されたり、育児を放棄されたりすると、幼児の神経系の発達に損傷を与え、「外傷的愛着」
という精神的障害を抱えた子どもになっていくという。
子どもの脳は、生後2年までの間に急速に成長するが、この間に発達するのは主に"右脳"で、"左脳"の発達は3歳以降になる。「臨界期」に影響を受けるのは"右脳"。
中でも、"眼か前頭皮質"と呼ばれる部分の発達が著しい。
右脳は、良好な対人関係を形成するのに重要な役割を持つ。共働きによる愛情不足、幼児虐待、などが社会問題になるにつれ、 「切れやすい子」「攻撃的な子」「恐怖にとらわれやすい人」を生み出しているのです。
精神科医/斉藤 学「本音のコラム」より
【心と体の健康情報 - 317】
~子育て心理学~ 「三つ子の魂百まで(2)」
三つ子の魂百までといいますが、人間は三才ころまでに急速に脳細胞から配線が伸び、かなりの回路が作られます。その配線を伸ばし、 回路を発達させるのは、外部から入ってくる刺激や環境、教育などです。
この時期、乳幼児に最も大きな影響を与えるのが母親です。わずかの部分で父親や家族が関与しています。 1才から3才の人格形成時における母親の存在の大きさは、どんなに強調しても強調しすぎることはありません。
生まれてきた赤ちゃんは、お母さんの胸に抱かれ、お母さんから「プラスの刺激」をいっぱいもらいます。そして赤ちゃんの脳の中で 「肯定的な感情」をはぐくみ、「喜びの回路」が作られていくのです。
ところが、おむつが濡れたままで、気持ちが悪いのに取り替えてもらえない…。
オッパイが欲しいのに飲ませてもらえない…。
お母さんが悲しそうな顔をしている…。
お父さんとお母さんが喧嘩をしている…。
これらは、赤ちゃんに「マイナスの刺激」を与え、そこから「怒りの回路」「悲しみの回路」「恐れの回路」が作られていきます。
大人になって、犬を見て怖がる人、好き嫌いをする人などは、自分では気づかない、小さな子供のころに「マイナスの刺激」を受け、
拒絶の回路が形成され、その後の人生を支配してしまったのです。三つ子の魂百までです。
生まれてから2~3歳までは、母親や家族から与えられる情報を、そのまんま受け止め、脳の回路が形成されていきます。
赤ちゃんは真っ白です。周りで発生する「プラスの刺激」「マイナスの刺激」何でも、意味や理屈がわからなくても、
完璧に吸収していくのです。
田舞徳太郎「幸福の心理学」パーソナリティの形成より
TV漫才を見ていて、直ぐに笑いこける人、笑う姿を横で見ていて、「何がそんなにおかしいんだろう?」と不思議がる人…。 人よりも笑いのスイッチが早く入る人、遅い人。ドラマを見ていて直ぐに涙腺が緩む人、そうでない人…。人によって様々です。 幼児期にそうした喜怒哀楽の物差しが出来上がり、性格の一部となって、一生を支配していくのです。
たとえば、両親が毎日のように大声で喧嘩していると、いつのまにか赤ちゃんの脳に、「怒り」や「恐れ」「悲しみ」 回路が増幅されて形成され、成人してから、人から大声で怒鳴られたりすると、恐怖と恐れで固まってしまい、パニックに陥り、 人間嫌いになってしまうのです。
1才になるかならない時期に、保育所に預けられた赤ちゃん。おとなしくしていたら構ってもらえない。 大きな声で泣いて自己主張すると、保母さんがやってきて抱いたり、あやしたりしてくれる。 「周りの赤ちゃんより激しく泣くことで思いがかなう」ということを、学習するのです。
夕方、お母さんが迎えに来て、有り余るほどの愛情を我が子に注ぎます。
赤ちゃんがむずかれば、大抵のことを聞いてくれる…。そんな回路ができてしまった赤ちゃんは、その後、自己中心的で、
我がままで身勝手な子どもに育っていくのです。